人の生き様大好き系上位存在が蔓延る世界に生まれ落ちた生存本能極振り転生者   作:せぞんのう

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9 俺が生きる意味

 俺は死にたくない。

 生きたい、生き残りたい。

 それはもう、俺の根底に刻まれた核だ。

 この核は、悪魔にだって壊させはしない。

 そんな俺にアミィは言った。

 

『貴方はどうして生きたいの?』

 

 どうして生きたい、か。

 死にたくないと願い、生きるためにはどんなことだってすると誓った。

 だが、()()()()()()()()()()()()()

 この世界には前世のような娯楽はない、死地を生き延びても待っているのは次の死地だ。

 そんな人生に、何の意味がある?

 

 生き残るためなら、息を潜めて隠れるのが最善だ。

 でもそれでは、とてもじゃないけど生きているとは言えない。

 生きる目的がなければ、人は生きているとは言えないだろう。

 だったら、俺の生きる目的は。

 どうして俺はこうまでして生きたいと思うのか。

 それは、とても単純な理由だ。

 

 

 ◯

 

 

 アンドラスの契約者は、稲妻を操る能力を持っていた。

 俺の炎もそうだが、こういった純粋な直接戦闘力は、非常に厄介だ。

 まず、ノーモーションで魔力さえあれば放つことができる。

 普通ならこういった力を生み出すためには魔術が必要だ。

 

 そのため、同種の能力者同士の対決は、純粋な出力勝負になりやすい。

 この出力を決めるのは、消費する魔力量の他に使()()()()()()()()が重要になる。

 異能バトルにおいては鉄板の要因だ。

 この盗賊は異能をかなり使いこなしているようで、その出力方法は独特だった。

 鉄砲から射出しようとしてきたのだ。

 本人の中で、銃弾は速いとイメージが刷り込まれているのだろう。

 それを利用して、高速で稲妻の弾丸を発射するスタイルというわけだ。

 なかなか厄介な相手と言える。

 そんな相手と俺の戦いの結果は、

 

「がああああああああっ!」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

「な、あ……なん、で……」

「相性勝ちだよ」

 

 ()()()()()()()

 だったら炎という熱を操る俺が、電撃に生じる熱を操れない道理はない。

 そんな俺のイメージが盗賊にとってはあまりに致命的だった。

 そしてこれが、その結果だ。

 自身の電撃に()()()()盗賊は地面に倒れ伏す。

 俺はそれを、ただ冷静に眺めていた。

 次に起こることが、想像できていたからだ。

 

 

「あーあ、つまらないなぁ」

 

 

 どこからともなく、声が聞こえてきたのである。

 ――俺の眼の前には、コウモリの羽を生やした少年が宙に浮かび、倒れた男を見下ろしていた。

 如何にも悪魔といった様子の風貌だ。

 こいつの名を、俺は知っている。

 

「――アンドラス」

「あはっ! また君かぁ、ほんっとふざけてるよねぇ。今度はどんなバカげた方法で契約者をこんな風にしたんだい? あーあ、早く死んでくれないかなぁ、君。僕の作った玩具をすぐに壊しちゃうんだもの」

 

 大悪魔アンドラス。

 こいつをけしかけた親玉が、どういうわけかこの場に現れた。

 いや、こうしてこいつがこの場に現れるのは初めてのことではないが。

 そもそもアンドラスは、自身の契約者が死亡する際、自動的にその魔力を消費してアンドラスを召喚するよう契約に盛り込んでいる。

 ガルグイユの時もそうだったが、アンドラスの契約者を倒すと自動的にアンドラスが召喚されるのだ。

 目的は――

 

「こいつもつっかえないなぁ! ほんっと、僕の契約者はどうしてこうも役立たず揃いなん……だっ!」

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 そう、目的は死体蹴り。

 死んだ契約者を嘲笑い、愚弄して愉しむために現れるのだ。

 

「おい! それ以上やめろ!」

「あはっ! なになに? 自分で殺そうとしておいて、僕がトドメを指すのは止めるわけ? ほんっと、君って意味不明だなぁ。いっちょ前に正義でも気取ってるつもりですかぁ?」

 

 そして、愚弄するのは契約者だけではない。

 それを殺した人間も、アンドラスにとっては嘲笑の対象だ。

 

「なんだっけぇ? 生き残りたいからだっけぇ? そんな理由で他人を踏み台にするヤツが、いっちょ前に道徳を語るとかおかしいったらないよねぇ」

「今、文字通りそいつを踏み台にしてるのはお前だろ」

「ええ? だって彼、踏み台にされる価値もないただの馬鹿だよ?」

 

 アンドラスの言葉を正面から聞く必要はない。

 どうせこいつは、本当にただこの場に召喚されて俺を煽って帰っていくだけの存在だからだ。

 

「彼ねぇ、本当にクズなんだ。優しい両親のもとに生まれたのに、自分の私欲を満たすためだけに盗みを働いて捕まって、それからはどんどん人生の下り坂を転げ落ちていったんだ」

「……」

「そもそも彼は幼い頃に悪魔を召喚するためのスクロールをどこかで手に入れていたみたい。だからちょっと転げ落ちても、取り返せるって思ってた。いや傑作だよね、そんな温いヤツが悪魔と契約できるわけないじゃん! まぁ僕は優しいから試練さえ突破できたら契約してあげるけど!」

 

 そしてその試練こそ、代償によって魔力を増量させるためのプロセスの一つだ。

 アミィは肉体の記憶を想起させて苦痛を与えていたが、あんな感じのことをしたんだろう。

 流石に、もう少し肉体そのものに苦痛を与えたり、抜け道がない試練になっているだろうが。

 

「あの時はねぇ、面白かったなぁ。許して、ママ! だって! 試練が終わって力を手に入れたら、その時のことは都合よく忘れちゃったみたいだけどね!」

「回りくどいな、何を言いたいのかはっきりさせろ」

「君もこいつも、人間なんて所詮は二枚舌の愚者ってことさ。他の悪魔は人類は輝きを放つ素晴らしい存在なんて言うけれど、僕はそうは思わないね!」

 

 そうして、アンドラスは愉しげに、ただただ笑う。

 ゆっくりとその体が消え始めていた。

 こいつは、本気で俺と契約者を嘲笑うためだけにこの場に召喚され、そしてこちらが手出しする前に逃亡する。

 過去にも、何度かこの場面に俺は遭遇した。

 こいつが俺を、狙うからだ。

 

「そもそもの話。元はと言えばその男が転げ落ちたのも、召喚のスクロールがあったからだ。そんなものがなければ、こいつはどこかで踏みとどまれたかも知れない!」

「はっ」

 

 俺の言葉を、アンドラスは鼻で笑う。

 実際、そんな可能性はほとんどない事はわかっている。

 それでも、ゼロとイチはあまりに大きな違いのはずだ。

 

「俺もそうだ。お前達がいなければ、そもそもこんな風に必死に生き残ろうとする必要なんてなかった」

 

 アミィは問う。

 俺はどうして生きるのか。

 答えは、とても単純だ。

 

 

「だからお前みたいな、()()()()()

 

 

 その言葉に、アンドラスはこれまでで一番侮蔑に満ちた笑みを浮かべた。

 

「ぷっ、はははは! 悪魔を殺す!? 人間が!? ムリムリ、何言ってるのさ! そんなことできるわけない。そもそも君、ようやく悪魔と契約したんだろ? それこそ矛盾してるじゃないか! 何より――」

「何より?」

「――時間切れさぁ! 僕の召喚はこれでおしまい。今回も君は、僕にたらたら文句を垂れて、何も出来ずに終わ――――」

 

 だから俺は、アンドラスを睨んで――

 

()()()()()! ――アミィ!」

 

 これまでずっと隠れさせていたアミィに合図を送る。

 途端、飛び出したアミィが――――()()()()()()()()()()

 

「――は?」

「お前が消えるのは、その魔法陣の魔力が切れるからだ。なら、そこに魔力を注げばお前はこの場に残り続ける!」

「ありえない! この魔法陣を維持するだけの魔力を、契約者が手にできるわけ――まて、お前……アウナス!?」

 

 アンドラスが、アミィに気づいた。

 地面に手を当て魔力を注いだアミィが、アンドラスを見上げてにやりと笑みを浮かべる。

 

「あら、序列六十三位のアンドラスじゃない。奇遇ねぇ、こんなところで会うなんて」

「奇遇だと!? ふざけるな、なんでここにいる。顕現したのか!? いや、違う――――」

 

 アンドラスがそこで目を大きく見開く。

 

「――――――――――――――――本体?」

「なぁ、アンドラス」

 

 呆然とするアンドラスに、俺はゆっくりと近づきながら言った。

 

「俺はさ、いいことを聞いたんだよ」

「なに、を」

「理由あって俺とアミィは魔力の大半を分け合ってる状態にある。すると、アミィが死ねば俺も死ぬんだと。ようするに――()()()()()()んだな」

 

 アンドラスの顔が、引きつった。

 俺の言いたいことが、飲み込めたからだろう。

 

「もちろん、それが俺と二人で一つになってるからかもしれない。正直普通に悪魔を殺すことができるのか、俺と混ざったことが原因なのかまではわからなかった」

「は、はは……僕が思うに可能性は後者のほうが高いんじゃないかな」

 

 アミィとの関係を明かすことはリスクでもある。

 だが、問題ない。

 

 

「そうだな。だからこれから、検証してみよう。――――付き合ってくれ、アンドラス」

 

 

 こいつが二度と、俺達に歯向かうことのないようにすればいいだけのことだからだ。

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