緋色と共に建物を出るために、来た道を引き返していたとき、多数の呪力を感知した。反射的に、血で刀を作って、警戒態勢に入る。緋色はまだ使わない。呪霊が姿を現す。想定より明らかに多い。
「・・・20体はいるな」
一つ一つは3級呪霊でも集まれば、厄介だ。そしてもすでに囲まれている。
「右から来る」
血の刀で応戦する。最初の3体までは何とかなった。しかし、だんだん数の暴力で追い込まれていく。
「・・数が多い」
その瞬間、血の刀が砕ける
「っくそ!」
「夜卜、私を使って!!」
緋色を使う以外の選択肢がない。
「わかってる」
緋色を使って応戦する。だが、夜卜の体も疲労で限界だった。呪霊の攻撃が見えていなかった。避けられない。そう思ったとき、すぐ近くから声がした。
「―貸して」
夜卜の目の色が済んだ青色からくすんだ緋色に変わる。それと同時に夜卜の体の主導権が緋色に移る。
「・・・は?」
体は動いている。いつも以上に速く、強く、上手く体を動かしている。でも自分の意志じゃない。どこか夢を見ているような視点。
「少しだけ、我慢して」
次の瞬間、体が踏み込む。踏み込み、角度、間合いの全部が無駄なくつながる。刀を振るう。二体の呪霊が崩れ落ちる。そのまま回転して、三体目も斬る。
「っ!」
緋色は本当はこんなに強かったのか。
・・・また俺は緋色に助けられてばっかり。
「集中して」
緋色が態勢を整えて、一度引く。自分の体から呪力が流れてくる。
そして―
「縛布」
夜卜の体から布のような呪力が広がる。
「っな!?」
見たことがある。これは緋色の術式だ。緋色の術式。
“界律巫術”
緋色の家に代々受け継がれている術式。そのいったんが今、自分の体から出ている。呪霊がからめとられて、動きが止まる。身体が思いっきり踏み込んで、4体の呪霊を一刀両断する。残り、10体。
「縛布」
再び、呪霊の動きが鈍る。布を引きちぎろうと暴れている。
そのとき、仮面が現れた。1つ、2つ、3つとどんどん増えて言って10体の仮面をした狼が現れる。
「行って。」
緋色が命じると、音もなく呪霊に飛びついた。
「・・・なんだ、これ」
「みてればいい」
仮面たちが呪霊たちにかみつく。呪霊の抵抗がどんどん弱くなっていく。
「終わり」
身体が動いて、最後の踏み込みを行う。刀を振るうとすべての呪霊が崩れ落ちる。その瞬間、体の感覚がもどる。目の色も戻っている。
「・・・っ」
膝がわずかにゆれる。
「・・・・今のは」
「終わったから返す」
「お前、今俺の体で自分の術式使ったのか?」
「うん。できたから」
「・・できたからって。どこまでできる?」
「人間の時と同じことはさすがに無理」
「でも、必要ならまたやる。・・・だから、今度は夜卜から頼って」
緋色は刀から人間の姿に戻って、そっと手を握りながら、微笑んでくる。
それは頼もしさで、嬉しさで、同時に少しだけ怖かった。
「早くいくぞ、まだ呪霊はいるんだ」
なんだかいやなう予感がして、話題を変える。
「ふふ、油断しないでね?夜卜」
そう話す緋色からはさっきまでの怖さは感じられなかった。
ヤンデレ怖し。