歪んだ呪力
建物の外に出ると、朝になっていた。夜卜は幸せそうに眠っている。
「・・・大丈夫」
彼の頭を膝にのせて、冷えた指で額に触れる。
「無茶しすぎ」
心地いい静寂が流れる。そろそろ、夜卜を起こさないといけないと思ったそのとき、
「歪んだ呪力を察知して来てみたら――」
軽薄そうな声が背後から聞こえる
「すごいね、君たち」
声の主を探そうと振り返ると、そこには―
五条悟が立っていた。一目でわかる強さを纏って。夜卜の頭をそっと地面において、立ち上がる。
「呪霊は祓いました」
五条悟のもとに行き、一礼する。
「ご迷惑をおかけして、すみません」
五条は少し首を傾げて、
「ああ、違うよ」
いつも通りの笑みを浮かべて、
「歪んだ呪力ってのは――」
一歩、距離を詰めてくる
「君たちのこと」
その言葉に私は息をのむ。沈黙が場を支配する。
その瞬間、
「・・・っ」
夜卜が背後で目を覚ます
「・・・起きた?」
彼のそばに戻る。五条はそんな私達を見て、口を開いた。
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自分の白い肌が赤で染まっていくのを見た。
「白い肌?」
違う。これは自分の記憶じゃない。
「・・・起きた?」
緋色の声が聞こえる。近くで喋ってるはずなのに、どこか遠く聞こえる。
「・・・ああ」
ゆっくりと体を起こすと、五条悟が視界に移る。五条は俺と緋色を交互に見てから口を開く。
「さて、もう一人も起きてきたし?お嬢ちゃん、名前は?」
軽い調子で緋色に名前を尋ねる。けど、そこには有無を言わせない何かがあった。
「・・・雨宮、緋色」
五条は目を細めて
「雨宮、ね」
緋色の苗字を繰り返す
「聞いたことあるな。・・・雨乞いと境界の家系だっけ?」
視線が緋色に戻る
「なるほど」
何かに納得したようなそう呟く
「だから水なのか」
視線が夜卜に移る
「君は?」
「・・・・壱岐、夜卜」
その名前を聞いた瞬間、空気が変わる。五条の視線が鋭いものに変わる。
「へぇ」
それだけ、だが見られている。俺の知らない何かを知っている。
「なるほどね」
五条が小さく笑う
「大体わかった」
五条が目隠しをとる
「悪いけどさ、そのまま帰すわけにはいかないんだよね」
一歩、踏み出して。
「ちょっと、試そうか」
五条と目が合う
「壊れるかどうか」
言い終わるのほぼ同時に、五条の姿が消える
「っーー!」
反応するよりも早く、衝撃が来た。身体が吹っ飛ばされて、地面にたたきつけられる。
「・・・弱いね」
緋色が動く
「縛布」
布が広がる。
しかし――
「遅い」
五条悟には聞かない
「精密だね、綺麗でいい術式だ」
五条は緋色を指して、
「だからこそ、ずれてるのがわかる」
身体を無理やり立ち上げる。頭は痛いし、視界は揺れる。
それでも、
「・・来るな」
緋色に向けて、低く言う
「でも――」
「いいから」
緋色にばっかり頼ってられない。そう意気込んで動き出そうとした瞬間
「・・・っ!!」
緋色が頭を抱えて、倒れる。視線が緋色に釘付けになる。その隙に、五条は踏み込んでくる。
「ほら、混ざってる」
五条の拳が振り下ろされる。俺は反射で緋器と呼んで緋色を刀にする。だが、形が揺れて定まらない。緋色と俺の境界が曖昧になる。
「それ」
五条がわずかに目を細める
「もう始まってるね」
次の瞬間、視界が白くはじけた。地面が迫ってきてるのに、動けない。最後に見えたのは緋色が手を伸ばしてくる姿。
そして、
「うん。これは、アウトだね」
五条の声が響く
「でも面白い」
まずい意識がおちる
「連れてくね」
俺は最後に力を振り絞って緋色の手を握って意識をおとした。
なんの代償もなしに強くなれるわけねぇよな!!