闇に溶けていた意識が覚醒し、赤子の視界でぼやけた光景から転生したことを察する。…やはりというか、転生のために一度死ぬことは避けられなかったらしい。
一度目の転生の際には死ぬ瞬間の記憶はなかったからまだ良かったが、二度目の転生は死ぬ瞬間までバッチリ記憶に残っている。…俺でなければトラウマ確定であった。
だが、こうして転生が終わったからにはもう躊躇する必要はない。早速前世で鍛えることができた魔力操作や気力操作に打ち込むことにする。この世界でスキルを考えなしに片っ端から取得するのはあまりに危険すぎる。システムが崩壊した際に反動ダメージを受け、魂魄が壊れてよくて廃人か、最悪存在ごと消えかねない。
魔法やら物理攻撃やら耐性やらは、あとで魔術でいくらでも再現できる。だからこそそちらの方面の熟練度稼ぎはガン無視し、魔力操作や気力操作の練度や精度の向上に努めるべきだろう。
ついでに鑑定や探知を取得して使いまくることで『外道耐性』を鍛えることも忘れない。万が一にも支配者スキルを獲得する羽目になった時の保険である。
あんな爆弾付きのブースターを好き好んで取得する趣味などないが、どこぞの愉悦趣味の邪神の差金で取得せざるを得ない状況になる可能性がゼロではないからである。
……さて、準備も整ったことだし早速地獄を見ようか。なぁに、死ななきゃ安い。死なないために死ぬような思いをするのは効果的だ。
◇ ◆ ◇ ◆
そこから一ヶ月ほどの時が過ぎた。前世からの下駄があるせいか、魔力操作や気力操作の伸びが想像を上回るほどよく、すでに双方共に精密操作の域に達している。
鑑定や探知はどちらもLV10となるも、当然のことながら『叡智』へと進化することはなく、そのままである。これは完全に想定内なので別にいい。
それに伴って外道耐性を獲得し、外道大耐性を経て外道無効へと至った。これで幾ばくかは支配者スキルの副作用を緩和してくれるはずである。とはいえ、だからと言って支配者スキルを獲得して乱発していい理由にはならないのだが。
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人族 LV1
名前:ユーゴー・バン・レングザンド
《ステータス》
HP:8/8(緑)
MP:256/256(青)
SP:218/218(黄)
:215/215(赤)
平均攻撃能力:4
平均防御能力:5
平均魔法能力:204
平均抵抗能力:199
平均速度能力:10
《スキル》
「HP自動回復LV8」「MP高速回復LV3」「MP消費大緩和LV2」「魔力精密操作LV2」「魔力付与LV10」「魔法付与LV1」「大魔力撃LV2」「魔神法LV2」「SP高速回復LV3」「SP消費大緩和LV2」「気力精密操作LV2」「気力付与LV10」「技能付与LV1」「大気力撃LV2」「闘神法LV2」「鑑定LV10」「探知LV10」「外道無効」「試練」「n%I=W」
スキルポイント:99800
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鑑定と探知を取得するのにスキルポイントを100ずつ消費したくらいで、あとは地道に操作系を外道耐性を鍛えるのに時間を全ツッパした。
歪なステータスをしているのには目を瞑るとして、ある程度体が仕上がってきたら更に『重魔法』を取得し、ドラゴンボール式鍛錬によってシステム外の基盤能力を鍛える腹積りである。魔術で再現するのを待つという手も考えたが、即効性の問題でスキルを取得することにした。
なんだかんだいってステータスに依存しない基礎スペックというのは存外馬鹿にできず、これが盤石だとシステムが崩壊してもさほど弱体化することなく生き残れるのではないか、と思った次第である。
…そして原作では見た覚えのないスキルである『試練』というものが、ここ最近の気がかりだ。
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『試練』
ステータスを制限することによって、ステータスや熟練度の成長率を跳ね上げる。
上昇率はステータス制限率の逆数の2乗に比例する。
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要約すれば1/2まで制限すれば成長率は4倍、1/5まで制限すれば25倍、1/10まで制限すれば100倍ということである。とはいえ使ってみたところ全ステータス一括でしか制限できず、小数点以下には制限できないようで、今の俺の場合では1/4までしか制限できない。
このように、普通に考えればぶっ壊れスキルだが、こんなものを仕込む存在は1人しか心当たりがない。
邪神を自称する上位存在こと『D』。原作でも最上位の神性存在として描写されていた絶対的な高次存在である。
あの邪神のことだ、必ずどこかに致命的な爆弾を仕掛けているはず。…とはいえ、この仕様はあまりに魅力的すぎる。
前世ではついぞ彰子への責任を取ることができずじまいだった。この世界に転生してきているだろう彼女の元へと向かいたいが、今の無力な自分ではそれすら不可能だろう。
俺はこの『試練』スキルを使うべきか、鍛練を続けながら熟考するのだった。
◇ ◆ ◇ ◆
(…………ふふっ。健吾くん、私のことをそんなふうに考えてくれてたんだ)
レングザンド帝国から遠く離れたとある伯爵領にて。その中心に位置する屋敷の一室、ベビーベッドに乗せられた可愛らしい赤子がうっとりと微笑む。
根岸彰子___改め、ソフィア・ケレンは自身が最初から保有していたスキルにより、ユーゴーの位置、思考などを把握していた。
仮に高レベルの『鑑定』を持つ者が今のソフィアを鑑定した場合、こう表示されたことだろう。
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人族 吸血鬼 LV1
個体名:ソフィア・ケレン
《ステータス》
HP:12/12(緑)
MP:168/168(青)
SP:135/135(黄)
:135/135(赤)
平均攻撃能力:9
平均防御能力:8
平均魔法能力:115
平均抵抗能力:108
平均速度能力:10
《スキル》
「吸血鬼LV1」「不死体LV1」「HP自動回復LV3」「MP回復速度LV8」「魔力操作LV8」「MP消費緩和LV6」「魔闘法LV6」「魔力撃LV7」「魔力付与LV6」「SP回復速度LV7」「気力操作LV7」「SP消費緩和LV6」「気闘法LV6」「気力撃LV6」「気力付与LV5」「外道大耐性LV5」「狂愛」「鑑定LV8」「探知LV7」「n%I=W」
スキルポイント:79800
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このうちユーゴーの状態を観測するのに貢献しているのが『狂愛』というスキルだ。
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『狂愛』
神へ至らんとするn%の力。運命の相手の位置、ステータス、思考、その他あらゆる情報をいつでもどこでも無制限に把握できる。また、Wのシステムを凌駕し、MA領域への干渉権を得る。
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ここまでならば『鑑定』でも取得できる情報。そして『叡智』スキルを持つどこぞの蜘蛛であれば、ここから更に深層の情報を読み取ることができる。
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『狂愛』
このスキルによる精神汚染や精神変質は発生せず、また支配者権限を確立した際には新たに『他の支配者スキルに対する絶対的優位性』を獲得する。
とうに愛に狂っているものの精神に、スキルによる汚染や変質は相応しくない。
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(…さて、私もしっかり練習しないと。彼の隣に立つに相応しい女となるためにも)
本来ならば試行錯誤を繰り返さなくてはならない魔力や気力の操作感覚は、ユーゴーの操作ログや操作感覚を参照して自身のそれへとフィードバックし、適合済み。ならば、あとは彼の操作ログと知識を参考にしながら反復練習あるのみ。
ユーゴーの役に立ち、隣に侍ることこそが、彼女___