壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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ちょっとストーリーあんま進まなかったり


いかにして邪教が生まれたか、とか

 なぜ、邪教と呼ばれるものができたのか。それは、些細な切っ掛けだった。

 

 例えば、神官の話を聞いたときに、神に関係する逸話の内容をいくつか知った。

 

 悪魔や、堕落した人間を神が信奉者を通して懲らしめるような物語がいくつもあった。

 

 そうして知っていくうちに、神官の祈りによって不思議な力が持たされるようなものも知った。

 

 少なくとも、神は実在する。こんな力があるのだから。

 

 その時に、男には一つの考えが過った。

 

 例えば、一つの不幸があったとき。小さな自分の娘が無惨にも殺されてしまったとき。

 それは、神から見捨てられたということなのだろうか。それとも、これは神のせいでもたらされたような不幸だったりするのだろうか。

 

 神が人の出来事に介入して、助けられる命を選別するのであれば、そんな存在はいない方がいいんじゃないか。

 

 そう思ったときにはもう、悪魔が目の前にいた。

 

 悪魔はきっと、騙してるだけとわかっていても、神への不信感を忘れられない私はその手を取った。

 

 悪魔に手引きされるまま、神への不信感を募らせたものたちで集まった。これが邪教の原型だ。

 邪教とは言うが、あくまで神へ抵抗するものだ。

 

 我々が目指すのは破壊者だ。この世界の仕組みを破壊する。それを試みるものたち。

 

 そうして、いつしかそれらは悪魔と協力して神に立ち向かう組織へと変貌した。

 悪魔は、人間の欲望が好きだ。だから、それを発散するような儀式を何度もして悪魔の力を強めていくような組織になった。人から見ればおぞましく見えるだろう。故に、邪教と呼ばれている。今日も、喘ぐような声が絶えない。

 

 まず、立ち向かう必要があるのは神官たちだ。神から直接力を与えられているような存在たち。

 

 協力してくれている悪魔も、あれを相手にするのは難しい。教会は巨大な組織だ、闇雲に戦っても勝てない。

 

 だからこちらの戦力もある程度増やす必要がある。

 

 神官に強い戦力がいる。それによって、構想されたのが魔王だ。

 

 人間と悪魔の融合体。人間の体には神聖力が効きづらい。さらに悪魔の体は人間よりもとても丈夫だ。

 だから、並の神官ならば勝てるはずだ。

 

 だが、魔王だけでは心もとない。

 

 そこで目を付けたのが異端実体だ。

 

 異端実体とは何か。それはこの世界に生まれた化け物だ。あれらは、悪魔たちから生まれる瘴気、その中にある負のエネルギーが人間の感情と混ざりあったときに、この世に生まれ堕ちる。

 

 これらがいれば、手駒になり得る。とはいっても、あれらは言うことなんか聞くわけがない。人間の強い感情を元にして、ひたすら暴れまわるだけだ。

 

 ただ、あれらは瘴気から生まれた存在。だから、魔王によって少しだけは言うことを聞くらしい。

 

 だから、魔王に異端実体を作らせた。子供を誘拐して、子供に悪夢を見せるようにして、それを元に異端実体を生み出すようにした。

 

 そうして、異端実体をそこら辺にばらまきながら、魔王には地下に潜らせて様子を見ていた。

 

 異端実体は、並の神官では倒せないはずなのに、ろくに被害を出せないまま倒されていく。異端実体の隠している村もろとも焼かれているなんてこともあった。

 どうやら、教会には特別強い神官がいるらしい。

 

 やがて、それらの神官は魔王の場所を探り当てて、あっさりと魔王を倒してしまった。

 

 これでもダメらしい。次の手を考えないと。

 

 そこで、まずは神官たちの力を見極めないといけない。

 

 神官は、聖典と呼ばれるものを再現する。祈り、信仰によって得た神聖力でそれを扱う。協力している悪魔たちを容易く倒しかねない。

 

 ならば、違う根源の力ならばどうか。

 

 西には魔術院と呼ばれる場所がある。魔術という別の力を使っている。

 

 どうやら、信仰とかそういったものとは違うものからエネルギーを得ている。

 

 それをサンプルにして、神官を打ち倒すための術を考えていく。魔術の知識は意外と役に立った。これは、呪いに似ている。

 呪いというのは、人間の負の感情を現象として呼び起こすようなのだ。こういった、何かしらのイメージを構築するのが魔術らしい。

 

 悪魔は、通常魔界と呼ばれる別世界にいる。そこから、こっちの世界へとやってくる。

 その時には世界を繋ぐ通路のようなものを構築する。

 

 魔術の知識を会得したことで、魔界からの門を作るようなことが可能になった。とはいっても、すぐに崩れてしまうが。

 

 ある一点に刻印を掘り、そこから魔界の門を出現させる。これを利用して、刻印を神官に掘り込んで、その体を門に見立てて悪魔に乗っ取らせることにした。

 

 ただ、神官の神聖力と打ち消し合うので、それには神官を弱らせるような呪いも付与しておく。それによって、発情するような効果にはなってしまったがまあいいだろう。

 

 そうして、神官たちを何人かその方法で仕留めた。白目で失神していく神官を悪魔で乗っ取っていく。

 

 でも、神官たちの体が持たなくて、すぐに悪魔たちは戻っていくか、体に残ってそのまま動けなくなった。

 そうしているうちに、神官たちに見つかって討伐されていく。

 

 そのうちに、特別な神官の一人である聖女に呪いを打ち込むことができた。でも、それもうまく行かない。

 

 どうやら、聖女には別の魂が入ってるらしいが、それは問題じゃない。

 異端殲滅官、特別な神官たち。あれらをなんとかしなければ、我らの目的は達成できない。

 聖女は死なないらしい。あれを打ち破れるのなら、我らにもまだ希望はあるのかもしれない。

 

 だから、呪いを強化する。強力な神聖力を持つ、あれらを倒すために内側から食い破るように仕掛けをするしかない。

 

 そうして、再び聖女の肉体を持つあれに近づいた。

 

 ……気付けば、あれと一緒に転移していたらしいが、それもまあいいだろう。ここにはもう、ぐったりと寝ているその存在がいるだけだから、そのまま隠れ家に運べばいい。

 

 そうして、あれを殺せるのかを試すことにした。聖女は死なないということは前から知っていたから。

 

 それなのに。

 

 おかしい。呪印は正常に発動していたはずだ。目の前にいる聖女の肉体を眺める。

 

 触っている手からは、熱が伝わってくる。呪いの影響で熱くなってるのがわかる。

 

 けれど、本来望んだ効果は生まれていない。

 

 あの呪いは、対象の神聖力を吸収して対象の神聖力に耐性がある存在が生まれてくるものだ。

 少し前までは、正確に発動していたのに、それ以降何も影響が出ていない。

 

「失敗しましたかね」

 

 支えていた聖女の肉体をその場に寝かせた。

 

 この状態でも弱ってはいるはずだ。もしかしたら、殺せるんじゃないだろうか。そんな考えが、脳裏を過る。

 

 細い首を手で掴んだ。

 

「……っ」

 

 小さな体が跳ねる。ゆっくりと力を込めていく。指が、その白い肌に食い込んでいく。

 

「……ぁっ、ひぃっ」

 

 絞まっていく首から、呻くような声が漏れていく。まだ意識はない。

 

 このままなら、いける。抵抗される余地もない。そう考えながら、力を強めていく。

 

 びくんっ、と体が跳ねる。息ができなくなったのか、苦しそうに震えている。

 

 ゆっくりと、目が見開いた。

 

「……なにっ、してんだっ」

 

 がしっ、と男の手を掴む。

 

「……なんだ、その神聖力は」

 

 驚いて、力を緩めた。その隙に、倒れていた聖女……ではない。その肉体を動かしてるその存在は首を締める手を振り払った。

 

「別に、俺に酷いことするのはまだいいよ。それぐらいなら、覚悟してやる。でも、この体にはダメだ。これはあいつの、ディオネのものだ。それを傷つけさせてやらない」

 

 ゆらり、とそれは立ち上がった。身に纏うのは、爆発的な神聖力。

 

「恩寵、か」

「せめてあいつの代わりに、あんたらは止めてやる」

 

 ゆっくりと、その少女は一歩踏み出した。あまりの密度の神聖力に、男の肌にびりびり痺れるような感覚が走る。

 

「寝てろ」

 

 そうか、今回も敵わなかったか。

 潔く敗北を認めて、迫り来る少女の蹴りで意識を飛ばした。

 

◇◇◇

 

 体の中からディオネが抜けていった。

 

 あの、よくわからない呪いを俺から消すために、あれを抱えてどっかに行ってしまった。

 

 ……そんな、バカな。俺はあいつを守るって決めたのに。俺のせいであいつを消すなんて、許していいわけがない。

 

 どこにいったのかわからないけど、絶対にあいつを連れ戻してやる。

 

 まずは、このふざけた場所を破壊する。目の前の山羊頭はとりあえず蹴っ飛ばして寝ている。

 この体にある神聖力とかはそのままだ。これはディオネに付随するものだと勝手に思ってるから、なくなってないのなら、ディオネはきっとまだ消えてないはず。

 

「……俺が代わりに消えてあげられればよかったのにな」

 

 こんなことを言うと、あいつは怒るだろうけど。

 

 そう思って、まだ倦怠感の残っているこの体を動かすことにした。




なんとなく気になったのでアンケート
別に話の展開は左右されないので興味本位です

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