壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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ディオネ救出隊結成とか

「んんっ」

 

 いつか、違和感もなくなってしまった凛とした澄んだ声が口から漏れる。

 

 ……夢の中ではそうでもなかったか。

 

 ――私が消えるまでに見つけてくださいね?

 

 昨日の、ディオネの残滓のようなものを思い浮かべる。

 

 ――見つけてやるよ。ガキのお願い事は聞いてやらないと。

 

 邪教のことは、なんか終わったらしい。あんまり詳しくはまだ知らないけど。

 

 だって、昨日あのまま疲れて帰っちゃったからね。

 

 んで、問題がひとつある。

 

「あ、ライさん。おはようございます」

「ライ、起きたの?」

「おっ、ライさんおはようっす!」

 

 家の扉が邪教に破壊されたので寝床がないってこと。とりあえず、アクイラを通してちょこっと寝床を用意してもらった。

 

 なんか、俺がやってた激務を考えるとちょっとぐらいは言うこと聞いてやろうみたいな考えが教会には一応あるらしくて、家も直してもらえるんだとか。

 

 そもそも、ディオネの住んでる場所なんだけどな。

 

 その用意してもらった場所に、なんか知らんけど昨日のメンバーがいるってこと。

 

 イェルクはシンプルに忙しくていないみたいだけどさ。シリルとエオス、お前らは暇なの?

 

 なんか起きたばっかりなのに疲れたので、アクイラにべったりとして体を預ける。

 

「もう、ライさん。朝からその感じなんですか?」

「うん」

「……ちゃんと起きてくださいね?」

「寝るー」

「本当にもう駄目そうですね……」

 

 昨日、ディオネの恩寵(グレイス)をうまく使えた気がしたんだけどすごい疲れた。おかしいな、魔王の時はそこまでじゃなかったけど。ディオネが使わないと、もしかして駄目なやつ?俺の体じゃないしな。

 

 ……昨日、ディオネの残滓のようなものは俺の体の中に取り込まれた。あれにくっついていた黒い靄、呪い一部も引き受けてしまったのかもしれない。

 

「……ライって普段そんな感じなの?」

「疲れてる時はこんなんですよ」

「こんなん言うな」

 

 なんとなく、馬鹿にされてる気がしたのでしっかりと立つ。着替えるか。

 

「わーわー、ライさん。いきなり脱ごうとしないでくださいっす」

「……あー、お前らいたんだっけ。帰ってもらっていい?」

「ちょちょっ、大事なこと伝えに来たのに~」

 

 急いで顔を背けるシリルと、ストップをかけてきたエオスのせいで、服にかえた手を止める。

 

「大事な話?」

「ディオネさんの探し方っすよ。ライさんからうすーく伸びてどこかに繋がってるのが見えるんすよね。で、これの見方を教えればライさんでも探せるんじゃないかなーって」

「……マジ?」

「マジっす」

 

 どうやって探そうかなと思ってたんだけど、それならありがたい。欲を言うと、エオスに探してもらえれば楽なんだけど、さすがにそんなわけにはいかないしな。

 

 どうやらこいつは司教らしいし、あのアルフとかいう枢機卿とも繋がりがあるっぽいしな。忙しそうだからしょうがない。

 ……なんで、こんなところにいるんだ。暇か?

 

「どうやんの」

「通信の仕組みの話をしたっすよね?補助対象への通路を作って、そこに声を乗せるってやつ。ライさんとディオネさんはなんかこう、繋がりみたいなのが見えるんで、うまく通路を作ったりとかできるんじゃないかなってことっす」

「……繋がりがあんの?」

「あるっすよ。元々同じ肉体に入ってた魂だからなんすかね」

 

 それはきっと、あの時ディオネの残滓のようなものを取り込んだから、とかそういうのじゃないのかな。

 

 ……にしても、通信の仕組みでいけるって話はよく分からないけど。

 

「そっか。じゃあ後で教えて」

「わかったっす。シリルさん、ライさん着替えるから外行くっすよ」

 

 シリルを連れて、エオスが外に行った。……お前は女だから出ていかなくてもいいんじゃない?いや、女でいいんだっけな。まあいいか。

 

 そういや、エオスはその話をしに来たってのはわかったけど、シリルは何なの?

 まあいいか。

 

 

 

「えっ、ライって男の魂なの」

「そうだよ」

 

 着替え終わってから、食事をしてる時にそういえばシリルにはしてなかったなと、俺の話をついでにすることにした。一応、ディオネの中にいる魂ってこととかは、邪教のアジトでやってたけどね。

 

 エオスはそこら辺は把握してるっぽいよな。司教だし、枢機卿とも繋がりがあるもんな。

 

「……なんか、納得した」

「ん、何が?」

「変に距離感近いところとか。ガキ扱いされてるだけじゃなかったんだ」

 

 うっ、嫌なことを。本当にそういう意識とか気にしてなかったんだよな。まあ、ガキ扱いしてたのは本当だけども。

 

「聖女様の中に入ってるのが男でがっかりしたか?」

「男の癖に、抱き着いたり押し倒してくるんだとは思ったけど」

 

 アクイラから、マジかという視線が飛んでくる。エオスも「マジっすか」って口に出てるし。

 

「……それは呪いのせいじゃん」

「いや、祓魔(エクソシズム)教えてた時も抱き着かれたけど」

「いやそれはその……女の子になってたからセーフ?」

「なってたなら、逆に距離感気を付けてほしいけど」

「……はい」

 

 ……過去の俺、大概だな。

 こういう時に、ディオネがいたら何か言ってただろうか。まあ、言ってただろうな。あいつからの感情めっちゃ重いし。

 

「……ライさん?」

 

 ……アクイラから鋭い視線が飛んできた。

 

「あの、アクイラ?違うからね?」

「ディオネさんの体なんだから、そういうのやめてくださいね」

「じゃあアクイラにしか抱き着けないか」

「そういう話じゃなくて」

 

 なんてやり取りをしながら、朝の支度を済ませた。聞いた話によると、邪教を潰したので教会の仕事も大幅に減って余裕ができたらしい。

 

 だから、今日はそんな急いでやる仕事とかはない。ちょうどいい。

 

 だって、俺はディオネを探しに行くんだから。まあ、ちょっとクソ野郎辺りには話を通すか。

 

「ライさん、私も行きますよ?」

 

 まるで考えを読んでたみたいに、アクイラが片付けながらそう言ってきた。怖いよ。

 

「……ありがたいけど、危なくなるかもしれないし」

「ライさんを一人で放り出すわけにはいかないでしょ」

「…………困った、否定できない」

 

 この世界のことってあんまよくわかってないんだよな。仕事で忙殺されてたし。

 ……これ、仕事させてあんまりそういうこと考える余裕をなくすとかだったらどうしようかな。もうないんだけども。

 

「んじゃ、自分も少しは行くっすかね」

「えっ、エオスも?」

 

 さっきのディオネの探し方ってお前なしだからってことじゃないの?

 

「だって、教えてもすぐに探せるようにはならないっぽいっすからね。……まあ、西の方なんでなんもないとは思うんすけど」

「西以外だとやばいの?」

「そうじゃないっすけど。異端殲滅官って王都にはヴァレンティナとイェルクがいるんすけど、東の方だとセシルとクラリッサがいて、南の方にレオンハルトがいるんすよね」

「……あー、それと会うとめんどくさそうってことか。あいつら、キャラ濃いしな。召集された時しかこっちの方に来ないってこと?」

「っすよ」

 

 お前、そんな返事ばっかなの?

 

 ってか、そんな感じなんだ。あいつらってここにばっか住んでるわけじゃないのか。

 

 ……俺、この世界のことだいぶ知らなくないか?しょうがないけどさ。

 

「……俺も行っていい?」

「なんでだよ」

「ライのことが心配だからだけど」

 

 不満そうに、じっとシリルが見つめてくる。

 

 ……なんか、こいつからの微妙に重い感情を持たれてる気がするけど気のせいかな。

 

「男の癖に、男を誑かしにいくようなやつ放っておけないでしょ」

「お前、いつまでその話してんだよ」

「それに、ライって思ったよりも弱っちいし」

「おい」

「昨日のこともう忘れた?」

「……」

 

 ディオネがいなくなって、弱ってたときにこいつに食らったデコピンはちゃんと俺の目を覚ましてくれた。

 

 ……そういう風に支えてやるよってことなのか?生意気なガキだよ。

 

「今度こそ守らせてよ、ライ」

「しょうがないから守らせてやるよ、ナイト様」

「……そういうとこ、変わらないんだね」

「お前がいつでも、そういうムーブしてるからだろ」

「危機感がない方が悪いと思うけど」

「男同士の友達だとこんなもんでしょ」

「……はあ」

 

 おい、なんだそのため息は。嫌がらせに抱きしめてやろうか。

 

 でも、いいのかな。こいつも仕事あるはずなのに。

 

 なんて、言いたいけど今回はやめておくか。ディオネを助けに行くのに力を貸してくれるんだし。

 

 そもそも、ディオネだっていつまで大丈夫なのかもわからないし。 

 

 いつか、魂が混じりあって俺がどうにかなってしまいそうだったときも、あいつはそういう気持ちだったのかもしれない。

 

 ――ちょっとだけ、魂のことは解決策を考えています。

 

 いつか、あいつはそう言ってたけど、あいつの魂がこの体から抜けてしまったから、それもわからなくなってしまった。

 

 正直、今のディオネがどういう状態なのかとか、連れ戻した後にどうすればいいかはよくわからないけど。

 

 辛い目にあって泣いてた女の子を、犠牲にするなんて性に合わないから。あいつが嫌がってても助けてやらないとな。

 

 そんな考えを息に混ぜて吐き出した。こういうのを声に出すのは苦手だから。

 

 よし、じゃあ早速ディオネ救出の準備するか。




次回でこの章は終わり予定

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