壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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姥捨て山
物知り通信師(司教)


 日差しが眩しい。思えば、教会の中だとか洞窟とか廃墟とか、暗い場所ばかりにいた気がするな。

 

「うわー、この法衣ちゃんと着ないといけないのガチで嫌っす」

 

 げっ、と紫の法衣を着ながらエオスが嫌そうに顔をしかめた。なんで偽りたいんだよ。

 

「ちゃんと着なよ司教様」

「どうせなら、その白銀の法衣がいいっす」

「異端殲滅官になれば?」

「……それはちょっと」

 

 ガチトーンで否定された。そんなに嫌か。嫌だよな、わかるよ。デザインは気に入ってるけどな。

 

 ってか、司教だと異端殲滅官になっても、酷い仕事はしなくて済みそうだけど、そうでもないのか?

 

「ライは準備できたの?」

 

 覗き込んでくる、シリルの顔をよく見る。くすんだ灰色の髪に、水色の瞳。こいつも、よく見るとそこそこ整った顔立ちしてるな。女装とか意外と似合いそう。

 

 そんなことを思っていると、なんとなくあの呪いを受けた時のことを思い出す。

 

 ……俺も男なんだけど、か。壁ドンされながら言われたってことは、それだけ不満があったんだろうけど。

 まー、なんかこう、多感な時期の少年心を揺すぶってしまったかもしれないし、距離感はちゃんと気を付けないとな。

 

「ねえ、聞いてる?」

「はいはい、準備したよ。ほらよ」

 

 くるり、と一回転する。ひらり、と法衣が舞う。なんとなく、やってみたかった。

 

「……ライがそういうことすると違和感あるね」

「とても正しい意見でびっくりしちゃうね。こちとら、中身がおっさんなもので」

「そういうことじゃないけど。ライってそういうの気にするの?」

 

 そういうのってなんだ。体と中身が違うなら、そりゃ気にするだろ。

 

「そんな繊細な人間には見えないってか?」

「それもあるけど」

 

 あるのかよ。

 

「中身とか体とか、ちゃんと考えてるんだって。本当に、危機感とかなさそうだったし」

「……うっさいな。気を付けるよ」

「本当に気を付けてよ。ライって誰でも抱き締めたりしそうじゃん」

「しねーよ」

 

 じっ、と責めるような瞳に首を振る。

 どういうイメージ?抱きつき魔じゃないんだけどな。

 

「……俺がされるなら別にいいけど」

「えっ、なんの話?」

「なんでもない」

 

 不機嫌そうに、ぷいっと顔を背けてそのまま離れていった。

 ……本当に何?後で機嫌とってやるか。

 

 と、そんなやり取りをしてる間にみんなの準備が出来て、進み出す。

 

「とりあえず、これから向かう先の話をするっすよ」

 

 みんなの先頭に立って、エオスが話し始めた。紫の法衣を着ているのをちゃんと見ると、ちょっと風格があるな。格式が高い存在に見えてくる。

 

「ディオネさんは、西の方にいるっす。だから、そっちの方に向かうってことっすよ」

「今回も、あの移動するコツっての使うの?」

 

 俺も一回なぜか使えたあの転移のようなもの。あれが使えるなら、遠くにいても、すぐに探せそうなもんだけど。

 

 と、思っているとエオスが首を横に振った。

 

「短縮移動は、そうポンポン使えるもんじゃないっすね。あれは、事前にこのポイントに飛びますって用意がいるから、途中までならつかえるかもしれないっすけどね」

「俺が使えたのは?」

「あれは、聖典の一節を再現した行動だからたまたま行けたと思うっすよ。敵を引き連れて一緒に移動するってシチュエーションだったっすからね」

 

 そういうもんか。神聖印(ホーリーサイン)って聖典を再現してるようなシチュエーションだと、強く効果を発揮してんのかな。

 

「んで、西の方には自分は途中までしかついていかないっす。ちょっと知り合いがいるんで、そこまで行くって感じっすね」

「途中まででも手伝ってくれるなら、それでいいよ」

「おー、ライさんは寛大っすね」

 

 あはは、とエオスは軽く笑う。欲を言えばそりゃ、ずっと手伝ってほしいけどさ。こいつ、比較的まともそうだし。

 

「そもそも、お前ってついてきてもいいの?忙しそうじゃないの?」

「んまあ、そうっすよ。司教としての取りまとめとか、通信局も自分がトップっすからね。でもまあ、ディオネさんを放っておくのもどうかなって」

 

 ディオネと仲が良かったんだろうか。だったら、もう少しぐらいあいつの面倒は見てほしかったけど。

 

「それだけ?」

「ん?他にも、派閥的にこっち力いれた方がよかったかなーとかはあるっすけど」

 

 ……クソ野郎が言ってた話か。あのクソ野郎的には、異端殲滅官であるイェルクとアルフの手下っぽいエオスとシリルがいるから、なんかいい感じになってるみたいな話だったかな。

 

「派閥とか大変だな」

「そりゃまあ、そんなもんっすね。ライさんは結構特殊な立ち位置なんで、変な横槍入れられないように、こうして守ってあげてるってことっすよ」

「そりゃどうも」

 

 と、話しているうちに馬車がやってきた。これである程度は移動するらしい。

 

「ライさん、持ち物とか忘れ物ないですか?」

「ままー」

「ふざけてないで確認してください、もう」

 

 母性が目覚めたのか、軽く撫でられた。なんか、あんま悪い気はしないな。このまま寝れそうまである。

 

 やっぱりアクイラだわ。こいつとじゃれついてる時にだけ精神のポイントを回復させてる。

 

 ふと、視線を横にやると他の三人からすごい目で見られてる。……ゆっくり、アクイラから離れた。

 

 馬車の扉を開いて、片方の席の真ん中に座る。

 

 すると、両側をシリルとイェルクに挟まれる形になっていた。……なにこれ?

 

「お前ら、何?」

 

 つい気になったので聞いてみる。

 

「「心配だから」」

「……あっそ」

 

 何ハモってんだ。ってか、心配ってなんだよ。

 

 両手に花の逆か。

 

「……ライさん、それぐらいにしといてくださいね?」

「それぐらいってなんだよ」

「人を誑かすの」

「してないから」

 

 別に、シリルもイェルクも、友達ぐらいの距離感で詰めていっただけだろ。……それがよくないか。

 

「にしても、日帰り以外で外に出るのは初めてだな」

 

 ガタガタ、と揺れる馬車の窓の外を眺めた。ゆっくりと景色が変わっていく。

 

「西の方って何があんの?」

「んー、西の方はそうっすねー。魔術院があるっすね」

「……魔術院?」

 

 待て待て。この世界って魔術とかあるの?不思議な力って神聖力とかだけじゃないのかよ。

 

「なんか、神官とは全然違う技術体系の力を使ってる連中っす。なんでも、邪教にもちょっと関係してたって話もあるらしいっすけど」

「マジかよ」

「まっ、敵対組織とかじゃないんで大丈夫っすよ」

 

 ……敵対してないならいいか。

 

 いやでもさ、ちょっと気になるな。魔術があるらしいなら、そりゃ気になるよな。

 

 どういう感じなんだろう。

 

 神官は祈りを力にしている。信仰そのものが、神聖力になってるって感じだ。

 

 でも、魔術はたぶん違うんだろうな。どうにかして、魔力みたいなのを取り込んで、それを魔術に変換して、とかそんな感じだろうな。

 

 ディオネを助けたら、確認してやろうかな。……そんなこと気にしてる場合じゃないな。まず、あいつを探してやらないと。

 

 そんなことをボーッと考えていると、少しずつ揺れる馬車の振動に刺激されたのか、少しずつ頭が重くなってきた。

 

 こくり、と首が動いてから、がくっと頭が揺れる。ゆっくりと、目蓋が下がっていく。

 

 横にいるイェルクにもたれるようにして、意識を手放した。




新章です
なんか大人数パーティになってしまったな

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