壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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アクシデントと邪教の顛末

 ざくざく、と地面を踏みしめる音だけが響いている。

 

 結局、短縮移動がそのままできなくて知らない場所に放り込まれてしまったってことなのかな。

 

「……にしても、どうなってんすかねこれ。今までもこんなことはなかったのに」

 

 一緒にエオスも、困惑してるから結構な緊急事態なんだろうな。

 

 近くには、他の三人はいなかったんだけど、別々の場所に飛ばされた、みたいなことなんかな。

 

「エオス、これって探せないの?」

「うーん、なんとなくこっちの方ってのはわかるんすけど、どうにも瘴気が濃いんすよね」

「じゃあ、あの通信の仕組みではできないの?」

「あー、それはきついっすねえ」

 

 霧のように濃い瘴気が、視界を塞いでてよくわからない。隣のエオスですら、見失いそうになる。

 

「通信の対象を選ぶのって、本来は目に見えるとか、通信の聖具を持ってる相手とかじゃないと、あんまりちゃんとできないんすよね」

 

 遠くの相手だと、そこに相手がいるぞってわかるものがいるみたいな話か?

 っていうか聖具っていうのか、ああいうやつ。

 

「でも、ディオネと俺は通路を作れたじゃん」

「それは、ディオネさんとライさんの魂が繋がってるからっすね。例えば、ライさんとシリルさんの魂が繋がってたら、いけるかもっすけどね」

「そんな、万能じゃないってことか」

「すっすっ」

 

 こいつの返事も本当によくわかんないな。

 

 にしても、本当に前が見えないな。どこだここ。

 傾斜があるから、山とかなのかな。

 

「ってか、これってまた邪教とかだったりする?」

「うーん、邪教じゃないとは思うんすよね」

「そうなん?」

 

 そもそも、あいつらが何なのかとかはよくわからんけど。

 

「前にライさんが撃ち込まれてたあの呪いが本命で、それで仕留められなかったからもういいってことみたいっすよ」

「傍迷惑なやつら」

「それはそうっすね」

 

 あはは、とエオスは苦笑する。木々が少しだけ生い茂ってるところにきた。まだ人がいそうにないな。

 

「あの後、あそこにいる邪教の連中を取っ捕まえて、色々話とか聞いたみたいなんすよ。で、どうやらライさんがこっちに来た辺りではすでに結構活動してたっぽいんすよね」

「マジか。えっ、俺がしてた仕事ってもしかして全部邪教絡みなんじゃない?」

 

 確かに、異端実体はこんなに出ないって話を聞いたしな。その元凶は魔王だったんだけど、魔王もあいつらが作ったらしいし。

 

「そうっすね。だいぶ前から準備はしてたみたいっすけど。ほら、ライさんが来てからたぶん何個か村が焼かれてたと思うんすけど、あれも邪教が与しやすそうな村を探して、いい感じに異端実体とか悪魔の隠し場所にしてたらしいっすからね」

 

 ……まあ、確かに普段からこんな勢いで村焼かれてたらやばいとは思ったけど。

 

「あいつらって悪魔と結託してるっすから、隠れて活動するための拠点が必要で、そのためにいくつもの村で活動してたっぽいっすよ。辺境とか、あまり人通りが多くないような村でっすけどね」

 

 言われてみれば、俺が行った場所はそういう場所が多かった気がする。

 結構周到に準備してたんだな。……俺も結構危なかったしな。

 

 異端実体を用意してて、神聖力に多少強い魔王を用意して、その上で神官を倒すための呪いとかまで用意してるのは、よほどの執念でもあったんかな。

 

「最後の方、魔王を潰した時点であいつらは呪いで神官を狙う方向性に決めて、活動が活発になった結果、逆にこっちから見つけやすくなったってことっすね」

「シリルと一緒に倒した悪魔も邪教関係でいいんだよな?」

「そうっす。悪魔を匿うところもこっちが暴いてたっすからね。それで一斉に炙り出して倒してたわけっす」

 

 なるほど、そういう流れか。……にしても、悪魔は異端実体ほどの圧を感じなかったな。悪魔はこの世界に来るまでに消耗してる、とかだったか。

 異端実体の方が強いってのも、よくわからん話だ。

 

「にしてもあいつら何やりたかったんだ」

「んー、神に対する不信感が強かったとかそんな感じらしいっすけどね」

「……にしても、よくそこまで聞き出せたな」

「それはライさんのお陰っすね」

「俺の……?」

 

 山羊頭を蹴っ飛ばしたぐらいしかやってないけど。

 

「あいつらの最後の呪いが最高傑作だったらしくて、それでライさんを仕留められなかったから、もうダメだと思って素直に話してくれる気になったみたいっす」

「……それで、ディオネはどっか行っちゃったんだけどな」

「まあそれは、ライさんが見つけてくれるからいいとして」

「おい」

 

 話しながらもずっと歩くけど、結局どこに向かってるのかもわからないまま。

 

「今更なんだけど、この瘴気って消せないの?」

 

 確か、シリルの話によると、瘴気は神聖力と打ち消し合うはずだ。

 

「まあ、それでもいいんすけど。これだけ歩いててもずっと瘴気の中にいるんすよね」

「まあそうだな」

「だから、これ全部消すってなるとまあまあな神聖力がいるんすよ」

 

 そういえば、短縮移動もエオスの神聖力で行ってたし、じゃあ結構きついのかな。

 

「まあ、それぐらいなら問題ないんすけど」

「ないんかい」

「でも、これだけ瘴気を発生させる何かがいたってことっすよ」

「……なるほど」

 

 つまりは、それだけやばい存在がいるってこと?

 

 それだったら、普通に嫌だけどな。イェルクとシリル、早く来てくれない?あと、絶対にアクイラを守っててくれよ。傷ついてたら、殴るぞ普通に。

 

「で、自分からはそんなやばそうな存在は確認できないんで、どうしようかなって感じなんすよ」

「今更なんだけど、エオスの恩寵って探したいものを探す、でいいんだよね」

「そうっすね」

「それで探せないってなると、みんなで一応集まるしかないか。イェルクいるなら、もう瘴気吹っ飛ばしても良さそうだし」

 

 イェルクが正直どの程度強いかはわからない。だって、一方的に敵倒してるところしか見たことないし。

 でも、この世界でもかなり強い方だと思うから、きっとなんとか戦力的には問題ないはずだ。

 

 一応、俺も戦えるようになったし。そういえば、エオスってどれぐらい強いんだろう。

 

 ちらり、とエオスの様子を見る。瘴気でよく見えないけど、顔色ひとつ変えないで平然と歩いている。

 

 俺はディオネの体だから平気なんだけど、たぶんこれは普通の人だと悪影響が出るやつなんだと思う。

 

 こいつは平然としてるから、そこらの神官より強いんじゃないか?司教だしな。

 

「ん、なんすか?」

「いや、エオスってどれぐらい強いんだろうって思ってさ」

 

 見てるのがバレて、横目でこっちを見てくる。フッと軽く笑った。

 

「まあまあ強いっすよ。何せ、通信は強化でやってるっすから、強化のスペシャリストっす」

「……でも祓魔じゃないと、悪魔にはあんまり意味なくない?」

「まあそこは、なんとかするっす」

 

 なんとか、か。俺みたいに直接神聖力流し込んだりするのかな。

 

 ……そもそも、強化は身体能力を上昇させてるだけで、そんな爆発的に強くなったりしないと思うけど。

 極めるとそうでもないのかもしれない。

 

「そもそも、自分の本業は戦いじゃなくて連絡っすからね。ついでに、こういうこともしてるだけで」

「……そもそも、司教がなんで馬車で俺ら送ってたりしてたの?」

「それは、異端殲滅官をそこら辺の神官には任せにくいからじゃないっすかね。ライさんは、ただでさえ特殊っすから」

「そーですか」

 

 まあ、特殊だけども。

 

「にしても、悪魔すらいないなんてこれはどうなってるのかもわかんないっすね」

 

 はあ、とため息をついた時。

 

「そうね。こんな淀んだ空気の場所だもの。いてもおかしくないわ」

 

 知らない声がした。エオスのいない反対側。俺の隣に、ローブを着た女がいつの間にかいた。

 

「どうやら、邪教とかを疑ってるみたいね?あれのことは興味があったの。聞かせてもらえないかしら」

「……誰っすか?」

 

 自然と会話に混ざろうとするそれに、エオスが割って入る。

 

 僅かに口角を上げて、妖しく女は微笑んだ。

 

「私はエヌマエーラ、見ての通り魔術師よ?」

 

 また、なんか面倒なことが始まる予感がして、思わず息を吐いた。




なんか本来はこの物語はシリルくん辺りをメインにした掛け合いをやる予定なんですけど、いっつもシリル君どっか行ってるんだよな

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