壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
私の頭を、知らない人がずっと撫でてる。イリス、だっけ。色んな人を治してる人。
私がなんか、色々混ざってるらしいんだけどね。救世主?っていうこと、呪いとかが元の私がごちゃごちゃしてるせいで、私は変になってるらしい。
イェルクとエオスはどっかに連絡に行くって言ってどっか行った。アクイラとディオネが、私を見てるみたいな感じ。
シリルとエヌマエーラはどこ行ったんだろ。シリルに引っ付きすぎたかな。
うーん、引っ付くのってダメ?安心するのに。
なんか、ずっと私がふわふわしてて、自分がどこかわからなくなる。
消えてもいいと思ってたけど、ちょっとは怖いかも。
「ライちゃーん、ちょっとだけいろいろするからねー」
にこやかに笑ってるこの人は、イリスっていうらしい。みんなと知り合いらしい?
「イリス?」
「うん、何々?」
「みんなと知り合いなの?」
「おー、それが気になるの?えーっとね」
脇から持ち上げられて、座ったイリスの上に座らされる。
「エオスとはねー、腐れ縁なんだよね」
「そうなの?」
「うんうん、そーなの。昔からの知り合いなんだけど、姉妹みたいなもんだよねー」
「イリスの方がお姉ちゃん?」
「そーそー、そんな感じ。んで、イェルクとディオネとは仕事で付き合いがあるだけね。仲良しかって言われると、どうだろ。普通かな」
「……そうなんだ。よくわかんない」
なんか、イェルクとディオネは人とあんまり仲良くしないタイプだと思ってたから、その二人と話せるぐらいなら、仲良しじゃないのかな。
うーん。
……みんなのことも、ちょっとしか思い出せない。やっぱり、私っておかしいんだ。治療したら元に戻るのかな。
「……イリス、そんなに近づかなくてよくないですか?」
「おー、ディオネはこの子のこと大事なんだ?よかったね、ライちゃん。みんな君のこと好きだって」
「……ふーん。よくわかんないけど」
たぶん、前の私がなんかやったんだ。
……確かに、みんなの見る目が違う気がする。
「っていうか、治療するんだけどディオネたちも見るの?」
「あーえっと、私は出ておきますね?」
アクイラも行っちゃうんだ。あの人と一緒にいたとき、ディオネの影に入って抜け出したのはちょっと、やりすぎたかな。
あのあと、慌ててたし。
「……私がいたら不都合が?」
「ん?別にそんなことないけど、暇じゃない?」
「ライさんが、ちゃんと戻るかわかりませんから」
「えっ、私は信用ないってこと?」
「……そういうわけじゃないですけど、心配なので」
「厄介な保護者だー。やだよねー、ライちゃん」
なんで、ディオネはそこまで私を気にするんだろ。わかんないことがたくさんだ。
これも治療したら治るのかな。
「よくわかんないけど、治るんだよね?」
「うーん、そうだね。なんていうか、混じりあってるところをはっきりさせるの。しっかりと区切りをつけないと、ライちゃんはライちゃんのことがたぶんわからなくなっちゃうからね」
「私がわからないのって、そういう感じなの?」
「そうだよー、ライちゃんだって早く戻りたいよね?」
「……なんか、別にそうでもないけど」
「あらら、そうなの?」
「みんなに迷惑かけちゃってるから、戻った方がいいかなって」
「……君は、なんともな性格してるね?」
なんともな性格って何?
何も、わかんない。
「私はなんか、やりたいことはやった気がするから。後はみんなが幸せならいいなって」
「このこのー、君も幸せにならないといけないでしょ。みんな君のことを心配してるんだからさあ」
「……うん、頑張る」
「頑張るものじゃないんだけどねえ。じゃあ、そろそろ治しますか」
ポン、と私の頭に手が置かれた。
体の中に、なんかが触ってるような気持ち悪い感覚がする。
私の中に、ぽかぽかした不思議なものがある。結構大きくて、ぴかぴか光ってるようなもの。
それと、なんかぞわっとする気持ち悪いもの。私の体を作ってる、もやもやしたもの。
そして、私の中心部にあるもの。たぶん、私の本体。
こんなに変なものがたくさんあるから、私は変になってるんだ。変なの。
なんで、こんなことになってるんだろ。
その、それぞれの要素に仕切りが出来ていく。
いや、違う。もやもやしたものとぽかぽかしたものは、ある程度混ざってる?
私の本体だけが、いい感じに守られてる?
少しずつはっきりしてくる。
――そうか、ディオネと離れた後に呪いと一緒に生まれたんだ。
助けられたんだ、ディオネを。
アクイラもシリルも、ディオネもエヌマエーラも、エオスもみんな。助けてくれた。
そんなに無茶しなきゃいいのに。
私のために。私……?
いや、違う?
痛い。痛い痛い。
ずきり、と頭が軋むように痛い。
みんなとの記憶が、少しずつ戻ってきて。俺が何かがちょっとずつわかっていく。
あの巨大な異端実体と戦っていた時だとか、体を得てあのでかい異端実体を食べてしまったんだとか。
そうだった。俺はディオネの代わりにこの世界で色々とやってきたんだった。
にしても、こんな体になってたなんてな。ディオネの時よりも違和感がある。小さくて、弱々しい体に見えて、大きさがなぜか操作できるし。
神聖力もバカみたいにある。
頭に置かれていた手が、少し離された。
「どうかな?ライちゃん?」
「ライちゃんってなんだよ」
「おっ?そういうキャラの感じ?ってか、戻ってきた?」
「迷惑かけたな」
本当に、色々とみんなを心配させてしまったらしい。
「体の方はどう?」
「なんともないけど。にしても変な感じだな。体の中に、仕切りみたいなのがつけられてる気がするんだけど――」
「ライさん!」
「うわっ」
ディオネに引っ張られて、ぎゅっと抱き締められた。
「……痛いよディオネ」
「だって、その……ずっと、ライさんと話したりとか色々したかったのに遠くに行くんですから」
「それ言い出したら、ディオネだってそうでしょ」
「……それはそうですけど。お互い様ですね」
こうやって、ディオネと夢じゃないところで直に話すのは初めてなんじゃないだろうか。
ずきり、と頭が痛んだ。
なんだ、これ。
「ライさん?」
「……離して」
「……本当にどうかしたんですか?」
ディオネの腕の中から、するりと抜けた。頭が、痛い。
よろよろ、と自然とイリスの方へ寄った
「あれ、どうかした?」
「……痛い」
「ん?どこか痛むところが?」
「ライさん、どこか悪いんですか?」
「……わかんない」
なんか、痛い。なんで痛いんだろ。
ああ、急に色々思い出しちゃったからなんだ。忘れたらいいかな。
いやでも、それはよくない気がする。
「……ぎゅってして」
「えっ、何々?」
「はやく」
「えっ、ええ……」
引き気味に、イリスに抱き締められた。肌と肌が接触する感触で不思議と和らいでいく。
「……イリス」
「いや、私に睨まれても!?おーい、ライちゃん?ディオネに抱き締められた方がいいよね?」
「どっちもいる」
「なんだそりゃ」
ぐらぐらとした意識の中、ぐったりとイリスの腕に体重を預けた。
まだまだふわふわのライ