壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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集まってくる異端殲滅官たち

 なんだか様子のおかしなヴァレンティナから解放されて、今日の仕事を終えた。

 まあ、特になんもしてないけど。

 

 にしてもなんだったんだろ、ヴァレンティナのやつ。急に雰囲気変わってさ。

 

 ……キスするだとか、頬擦りまでしてくるし。甘えてきた猫かなんか?

 

 いやいやいや、なんで甘えてきてるんだよ。デコピンか?

 それでも、普通はそうならないけど。

 

 もう、俺に対する態度が変なやつしかいなくて、もうよくわからん。

 

 疲れた。

 

「……ライさん、だらしないですよ」

「アクイラだ」

「えっ、なんですか?」

「抱っこしてもらうか」

「本当になんですか???」

 

 疲れて、ディオネの部屋に戻ってきたけど、たまたまそこにいたアクイラにもたれかかる。アクイラにこういうことするのに抵抗感はないんだよな。

 

「……アクイラばっかりずるいです」

「ら、ライさーん。私じゃなくてディオネ様に甘えてみませんか?」

「えー?」

「なんで不満そうなんですか!?」

 

 慌ててるアクイラを見るのも面白い。どうせだから、このままで寝てやろうかしたところ、ディオネからぐいっと引っ張られた。

 

「……ライさん、私じゃ不満ですか?」

「ディオネはなんか、逆に頭撫でてやりたいよね」

 

 軽くそんなことを言っていたら、ぎゅっと抱き締められた。

 

「そんなことされたら、愛おしすぎてずっと抱きしめたくなってしまいます」

「抱き締めてるじゃん」

「死ぬまでずっと、このままでいたいです……」

「正気に戻って?」

 

 ディオネの俺への感情はどうなってんだよ。軽口だけでここまでいくことある?

 全然離してくれそうにないし。

 

「今日ってずっと、ヴァレンティナと一緒にいたんですよね?」

「えっ、そうだけど」

「……ずるいなあ。しかも、ヴァレンティナだからちょっと嫌ですよね」

 

 嫌なんだ。

 

「ヴァレンティナってライさんへの距離が近いし」

「……それはヴァレンティナに限った話じゃないかな」

「私は、ライさんとは一緒に仕事できないですし……いいなあ」

 

 ディオネは、メンタル的には問題ないけどさ。なんか、教会側が俺とディオネを一緒に仕事させたくないみたいで、許可されてないんだって。なんでだよ。

 

 そんなわけで、まだヴァレンティナとの仕事も増えそうで嫌ってことだ。

 

 ディオネに抱き締められる力が少しずつ強くなる。

 

「……好きですよ、ライさん。でも、どうせなら男のライさんとちゃんと会いたかったです」

「……別に、たまたま体が女になってるだけだけどな」

「今のライさんは結構、女の子じゃないですか?」

「……どこが?」

「なんか、かわいいです」

「なんだよ、それ」

 

 女の子みたい、か。そんなつもりはないんだけどな。体に引っ張られてるとか?

 

 そもそもだ、なんで女の子の体になってるんだ。別にあの呪いはそういう性別の指定とかなさそうだし。

 

 ……もしかしたら、俺が長期間女の子の体にいたせいで、そういう意識が根付いてしまったとか?

 いやいやいや。そんなわけ。

 

「私、このまま寝ようかな」

「……人を抱き枕にしようとしてない?」

「します」

「ほどほどにしてね」

「えっ、いいんですか!?ふふっ、ライさんをたくさん堪能しますね?」

 

 ……まあいいか。抱き締められてるのは、なんか悪い気しないしさ。

 

 それもそれで変だけど。

 

 ……なんか、弱くなってしまった気がする。

 

「……二人とも、まだご飯も食べてないですからね?」

「アクイラはえらいねえ」

「……やっぱり、ライさんおかしくないですか!?」

「おかしくなってるなら、ついでだし。アクイラもこっち来て混ざろうよ」

「でぃ、ディオネ様。なんとかしてください……」

「そうですね、ライは私のものなのであげません」

「……それでいいです」

 

 いよいよ、ディオネから離れられなくなってしまった。

 こいつ、抱き締めすぎだろ。ほどほどにしてほしいけど。

 

 あと、もうちょっとアクイラにだる絡みしたかった。

 

◇◇◇

 

「ねえ、ヴァレンティナ」

「あら、あらあら。どうしたの?ライ」

「なんで、手を繋いでんの?」

「繋ぎたいからだけど」

 

 翌日、また仕事だということでヴァレンティナと歩いてるけど。今度は教会本部に行くらしい。

 

 ……また、クソ野郎との会話か。だるいな。

 

 人通りの少ない裏の通路のようなところから、異端殲滅局の部屋の扉に向かう。

 

 ぎぃぃ、と音を立てながら扉が開いていった。

 

「おや、どうも。その可愛らしい姿を見るのは初めてですね、ライ」

 

 くつくつ、と笑いながら何かの資料を見ているグレゴリーが見えた。

 

「久しぶり、クソ野郎」

「まるで、保護者同伴ですね」

「……うるさいな。ヴァレンティナが離さないんだよ」

「以前なら、それぐらいは突き放しそうに見えましたが。にしても、今の君はよほど子供っぽいらしい」

 

 ずっと、俺の様子を見て笑ってやがる。

 

 うざいな、本当に。

 

 ……っていうか、会うやつがみんなかわいいだとか子供っぽいだとか言いすぎじゃない?

 

「どうやら、君は体に影響されてしまっているらしい。面白い事例ですね」

「人を研究対象みたいに」

「似たようなものでしょう」

 

 こいつ。

 

「……ってか、用件ってなに?」

「ああ、大したことではありませんよ。最近どうにも。獣の鳴き声のようなものが辺りから聞こえるという話があります。それを、君たちに調べてほしいというだけのことです」

「……昨日、見回りに行かされたのもそのせい?」

「そうですね」

 

 また、新しい敵が出てきたのか。面倒くさいな。

 

「君のその体が、一体どれ程の力を見せるのかも、気になりますからね」

「……うざ。そんな、興味津々ってか?」

「それはもちろん」

「人の体のこと気にしすぎだろ、気持ち悪い」

「確かに。言われてみればそうかもしれませんが。でも、今のライは特殊な存在ですから、知っておくにこしたことはないでしょう」

 

 ……まあ、俺もどういう存在なのかわかりかねてるけどさ。

 

「そうかよ。俺も、別にこの体で何ができるか知らないしな」

「そうですか。わかったなら、教えてください」

「……あっそ」

 

 教えたくはないが、このせいでディオネとかになんか面倒くさいことが起こると嫌だしな。多少は従っておくか。

 

「それと、この件で東からクラリッサとセシルがそのうち来るみたいです。今のあなたの様子でも見てもらったらいかがですか?」

 

 ……また、そういうやつ?

 

 異端殲滅官とばっか仕事させるのやめろ!

 とは言えないんだけど。

 

 結局、この日はこのままヴァレンティナに連れられる形で見回りをして、なにも起きずに終わった。

 

 でも、もうクラリッサとセシルが着いたらしい報告が来て、普通に嫌だ。

 

 嫌だなあ、嫌だね。

 

 ……嫌だ。アクイラにくるまって、精神を回復させとこ。

 

「なんで、私に抱きつくんです!?」

「ままー」

「違いますからね!?」




アクイラは主にライのメンタル回復役として重宝されている
理由は一番普通の子だから
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