壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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誰がお嫁さんになるか

 暗闇の中で、自分自身と向き合っている。

 

 夢の中で、自分と会うとは思わなかったけどな。

 

 にしても。座り方だとか、仕草がやけに女の子っぽい気もするけど。

 ……これ、本当に俺か?

 

「ねえ、気になる?私のこと」

「そりゃなるだろ」

「分裂したんだよ、男のつもりの私」

 

 くすり、と笑うその表情も俺らしくない。

 

「その、男のつもりって何?」

「そのままだけど。例えば、私はもう自分のことははっきりと女の子だと思ってるの」

「……見た感じそうだよな。すげー複雑だわ」

「君も、もうだいぶ女の子でしょ」

「……は?」

「だから、あんまりよくないよね?」

「いやいやいや」

 

 なんて言った?俺がもうだいぶ女の子だって?

 

 そんなつもりないけどな。別に、今でも俺は自分のことを男だと思ってるし。

 

「たぶん、気付いてないだけだよ?私たちはもう、だいぶ女の子」

「……そんなわけねーだろ」

「あるよ。ディオネの体にいて、魂が混じりあってた時の影響が残ってたのも、きっと原因の一つだけど。それに、新しく生まれたこの体だって、女の子でしょ」

「……それは」

「そう、女の子の意識があるからこの体なんだと思うよ?」

 

 ……確かに、気になってた。なんでこの体、女の子なんだって。

 

 でも、そんなはずないし。

 

「気に入らないみたいだね?他にもさ、最近よく抱き締められてるでしょ」

「それがなんだよ」

「それってさ、至近距離で女の子に近づかれてもドキドキとかしなかったでしょ」

「……だから?」

「女の子同士だと思ってるんだよ、きっとね」

 

 なにそれ。確かに、ドキドキしたりはしないし、むしろ安心感とかはあったけどさ。

 

 だからって、そうなるか?

 

「逆に、今の私たちは男の子に抱き締められるとドキドキしそうじゃない?」

「何言ってんの、お前……?」

「抱き締められてみたいな、男の子に」

「……ほんとに何言ってんの?」

「お嫁さんになってみたいって思うでしょ」

「話聞いてくれる?」

 

 ダメだ、こいつ自分の世界に入ってる。

 

 ……っていうかさ、俺と同じ存在でそういうこと言うのやめてくれない??

 

 なんかさ、なんていうか。羞恥心とかそういうのがごちゃ混ぜになってて、こう、反応しづらいっていうかさ。

 

「あはは、うろたえてて面白いね」

「お前さあ……」

 

 冗談かよ。質が悪いな!

 

「いや、お嫁さんにはなってみたいよ?ほら、女の子の将来の夢でよくあるでしょ」

「そっちは本気なのかよ」

「うん。それだけ愛されてみたいなって、思うのも自然だと思うけどね?ねえ、私。お嫁さんになるなら、誰のお嫁さんがいいかな」

「……急に、なんて話題を振ってくるんだよ」

 

 ……誰のお嫁さんに、か。

 

 これってさ、そもそも女の子と付き合うとかそういうのはなしになるのか?

 

 そういう意味だと、こっちの男の知り合いってあんまいないしな。自動的に、シリルとイェルク辺りにならない?

 

 ……いやいやいや、何を真剣に考えてるんだ。

 

「イェルクはさ、そもそもそういう感情を持ってるかわからないよね。めちゃくちゃアプローチしても、友人として扱われそう」

「うわ、なんか想像しやすい話をするな」

「対してシリルはもう私のこと好きじゃん?」

「……ずっとお前、答えにくいこと言うじゃん」

「これは、そういうことだよね」

「おい」

 

 そういうことってなんだよ。お前、もう狙ってるの?

 

「まあでも、私たちには根本の男の体もあるわけで。そうなると、この分裂ももしかしたら男も生まれてきそうだよね」

「……そもそもなんだけど、お前はどうやって分裂してきたんだよ」

「うーん、なんだろうね?なんかね、一つの体では力を持て余してしまうみたいだから。勝手に分散しちゃったんだと思うよ?」

 

 ……分散?

 確かに、なんか俺の力ってすごい溢れててやばいかなーって時もあったけど。そんなはち切れそうなレベルであったの?

 マジか、すごいな。

 

 いや、すごいとかそういう問題かはわからんけど。

 

 だって、このままだとまだ分裂するかもしれんじゃん。そうなると制御とかできないし。

 

 何人もいる俺が好き勝手に動き出したら面倒くさすぎる。

 

「で、どう?」

 

 ずいっ、と俺が目の前まで近づいてきた。

 

「何が?」

「ちゃんとわかった?女の子になってるって」

「なってねーって」

「ふーん。……じゃあ、私は女の子が好きなの?」

「そうなるんじゃない?」

「へえ」

 

 離れてから、にやりと少しだけ口角が上がる。

 

「じゃあ、ディオネと幸せになってみる?」

「……なんか、お前の話題ってずっと急だよな」

「どうせならさ、ディオネを連れて現代まで行っちゃいなよ。駆け落ちするって、言ったこともあったよね」

「いやあるけどさ」

「こっちでは私がシリルと遊んでおくからさ」

「おい」

「他のみんなとも遊んでおくね」

 

 こいつ。

 

 なんだよ、遊んでおくって。全部、本気で言ってるのかわからんし。

 

「あっ、そうだ。私も勝手に行動していい?」

「いや、ややこしくなるだろ」

「えー。男の子と触れ合いたかったな」

「なんだ、この不純モンスターは」

「あはは、不純モンスターだって。イェルクとシリルどっちも狙ってもいいかな?」

「いいわけないだろ、バカ」

「そっか。やっぱり、シリルにしようかな」

「……だから、勝手に行動しようとするな」

 

 本当になんなんだよ。いや、ほんとにこれ俺か?偽者だったりしない?してくれよ。

 

 もう頭が痛いんだけど。

 

「えー、けち」

「しょうがないだろ」

「じゃあ、私が行動するからそっちが休んでてよ」

「それだとお前が何やからすかわからないじゃん」

「お嫁さんになりに行くだけなのに」

「それがダメだって言ってんだろ」

「わがままだなあ、私って」

「無茶苦茶すぎる」

 

 本当に誰か助けてほしいな。

 っていうか、シリル。逃げてくれ、マジで。

 

 俺がとても複雑になるから。

 

「逆にそっちの好きな女の子聞かせてよ」

「……知らんって、そんなん。どいつもこいつも、こんな酷い世界で頑張ってるガキってことしかわかんねーし」

「それもそうだね。でもさ、ディオネに関してはちゃんと責任取った方がよくない?」

「……何が?」

「あの子の心を完全に奪ってしまった責任?いや、他の子のも割と奪ってる気がするけど」

「もういいよ、話がややこしいな。とりあえず、お前は待機。勝手に動くなよ」

「けち」

 

 とりあえず、こいつを制御しないと始まらない。

 

 ……疲れる日々が続くなあ。

 

「あっ、そうだ。寂しくて抱き締められたい時ってあるじゃん?」

「またなんか言い出した」

「その時、私がやってあげようか?」

「自分同士で抱きついてどうするんだよ」

「んー、ダメか。安心した隙になんとかしていけるかなと思ったのに」

「油断も隙もないな」

 

 とりあえず、こいつのことは考えないことにするか。

 

 なんかさ、シリルの横に女として並び立ってる俺とか想像しそうになるし。

 

 それから逃げても、ディオネと現代にいる風景とか思い出しそうだし。

 

 なんとか現実逃避をしたいな、と思ってるとようやく視界がぼやけてきた。

 

 ……夢も、もうこりごりかもしれん。寝よ。




正直、もうここからお嫁さんエンドとかに突き進んでもそれはそれであり
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