壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
「やほ」
「……」
朝起きた。すると、目の前に自分自身がいる。
……どうしよ。これ、アクイラとディオネにバレないかな。
普通に、ここってもうすぐそこにディオネとかいてもおかしくないんだけど。
「……出てきちゃった」
「はよ帰れ」
「……男のつもりの私の方が、みんなにとって毒だから、私の方がましじゃない?」
「なんだよ、毒って」
「そういうつもりじゃないのに、人の心の中に入り込んでるから」
「……なにそれ」
「無自覚に女の子の方が破壊力があるってこと。参った、私じゃ勝てない」
「なんで自分と競ってるんだよ」
……本当になんなん、こいつ。っていうか、俺であるはずなんだけど、なんか俺を俯瞰したみたいな感じで言ってくるしさ。
なんていうか、自分自身に言われてるとそうじゃないかって思ってしまう。
……だから、なんかマジで女になってるような感じとか。そういうことを考えてしまう。
「やっぱり、そっちに落としてもらうべきかな」
「うるさい、はよ戻れ。どこから出てきたんだよ」
「影からだけど?あそこつまんないから交代して?」
「嫌だけど」
「むう。けち」
ぺちっ、と頬を叩かれる。こいつ。
うざいので、手で両頬を挟んでやる。うわ、柔らか。
いやでも、俺なんだよな。
「みゅっ、離して」
「はいはい。はよ帰れ」
「あとで報復にめちゃくちゃやってやろうかな」
「やめてね」
「まずはシリルに抱き着きにいくか」
「その妙なシリル推しはなんなんだよ」
鬱陶しいな、本当に。
「ライさん、起きてますか?」
あっまずい。これを見られたら、なんかいろいろと面倒くさいぞ。
だって、俺でも何起きてるかわかんないもんな。
「……仕方ないから、帰るね」
ディオネに見つかる前に、影の中にずずず……っと引っ込んでいく。
……なんか、疲れたな。
「ライさん、どうしましたか?」
「ううん、なんでも」
するり、とディオネがしなだれかかってくる。
そのまま、自然と抱き締められた。
「何、ディオネ?」
「ふふっ、こうしてるとライさんを近くに感じられて好きです」
「なにそれ」
……あいつの言ってたことを、思い出した。抱き締められても、ドキドキしないって。
ディオネは、なんで俺が懐かれてるのかよくわからんぐらいには、普通に綺麗な女の子のわけで。
聖女だなんて言われてるのも納得する。……まだ、何が聖女なのかもよくわからんけどな。
でも、そんな子にこんなに接近されてるのに。俺は別に平常心のままで、特に心も動いてない。
……ドキドキとか、してない、かも。安心感はあるけど。
やっぱりこれって、そういうことなのか?
わからん。わからん、けど。そうなんかな。
「何を考え込んでるんですか?」
「……なんでも」
「教えてくれませんか?」
頬をつつかれた。なんなの。
……じくじくと、不安が心に滲んできた。俺って、本当に俺のままなのかな。
俺の状態って確か、元の体からディオネを通じてここにいる。ぶら下がってる、みたいな感じだっけ。
でも、それで新しく生まれた俺はもう、女の子になってしまったってこと?
それは、ちょっと。なんか、嫌な気がする。
……そういう意味では、あんまり元の世界とか気にしてないかも、しれない?
なんか、だんだんダメになってしまう気がする。やっぱ、戻った方がいいな。元の世界にさ。
「ラーイーさーん?」
「……ん?」
「無視しないでください、泣きますよ……」
「なんでだよ」
怖い脅しだな。散々、泣いてたやつからそれを言われると弱い。
「だって、不安になるじゃないですか。……無理矢理にでも、ライさんのことを私のものにしてしまえば、もう悩まなくて済みますかね?」
「待て待て待て」
「……ライさんが、やっぱり悪いですよね」
ぎゅっ、と抱き締める力が強くなる。
お前、ヤンデレ属性まで備えてるのかよ。
「私、聖女なんですよ?聖女って、称号みたいなものでしかないですけど。それでも、たくさん人を助けた人ってみんなに思われてるので、融通利くと思うんですよね」
「……お前、本気?」
「なんかもう、それでいいかなと。他の人にライさんが段々取られそうな気がして。怖くなってきちゃいました」
……段々と、悩みの種が増えてくる。これ、どうしようかな。だんだん抱き締める力強くなってるし。
抱き枕として使われてるのはまだいいけどさ。さすがに、そろそろ離してほしいしな。
ってか、俺の状態ってディオネが頼み込んでもなんとか独占とかできるもんなんかな。危険存在みたいな扱いされてるんじゃなかった?
いや、いけたらダメなんだけどな。監禁されてしまう。
ちょっと、撹乱するか。一撃衝撃与えたら、正気に戻るだろ。
「ちょいちょい、ディオネ」
「……なんですか?」
「好きだよ」
「…………はえ?」
「冗談」
「……やっぱり、このまま二人で閉じ籠っちゃっていいですか?」
やばい、ふざけてたら悪化した。
「いやまあ、好きではあるんだけどさ」
「……え?本当?本当ですか!?」
「でもなんか、俺って女の子っぽくなっちゃってるみたいでさ?そうなると、なんか微妙だよな」
「なんですか、微妙って……いやでもその。ライさんはなんとなく、女の子っぽくなってる気がして。そうなると、やっぱり私は男のライさんに会いたいなあって」
少しだけ、抱き締める力が弱まった。
と思えば、そのまま解放される。
「なんか、最近みんなライさんのこと好きそうで。私は負けないつもりなのに、なんか不安になってしまって暴走してしまいました」
「ほどほどにしとけよ」
「で、さっきの好きって本気ってことでいいですか?」
「好ましいってことね」
「じゃあ好きじゃないですか」
「このガキも頑張ってるなって」
「もう!ライさん!」
「いでででで」
頬を引っ張られた。そういえば、触った自分の頬は柔らかかったな。じゃあ、これ触ってるディオネもそう思ってんのかな。
「柔らかい……」
思ってるわ。
「痛いんだけど」
「ライさんが悪いですよ。これは本当に悪いですー!人の好意をのらりくらり避けて!」
「いやなんかさ、正直俺は自分の気持ちとかよくわかんないしさ」
これは、本当にそう。
好きとか嫌いとか、よくわからん。そこら辺はずっと、曖昧にして生きている気がする。
まあさすがに。ディオネレベルで好意を向けられたらわかるけど。例えば、アクイラはディオネほど好いてはないだろうなとか。
「……他の人はどうなんですか?シリルとかイェルクとか」
「いや、わからんけど。なんでその二人?」
「男の人となら、どうなのか気になるじゃないですか。女の子っぽくなってるって自覚するのって、そういうことかなと」
「いや、違うけど」
「ふーん。じゃあ、まだチャンスありますよね?」
「さあね」
「もう無理矢理キスとかしてもいいですか?」
「お前、男の俺が好きなんじゃないの?」
「……そこなんですよね。早くライさんは、男に戻ってください。あっ、女の状態のライさんを虜にしてしまえば、男になった時とかそのまま私のものにできないですか?」
「待て待て、病むな病むな」
……今日は仕事ないんだっけ。まあいいか、それは。
あっても、ディオネのメンタルケアしないとやばそうだから、そっちに集中するか。
「今日はディオネの話を聞いてやるから」
「毎日聞いてください」
「それはちょっと」
「……ずるい」
……こいつ、重いからなかなか相手をするのも大変だ。
まあ、別にいいけどな。ディオネのことはだいたい付き合ってやってもいいし。
それよりも、分裂したやつをなんとかしたいな。
ライとくっついてほしい人
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ディオネ
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シリル
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イェルク
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アクイラ
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ヴァレンティナ
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クラリッサ
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エオス
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イリス
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その他