壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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ようやく分裂も終わりか?本当?

 地面にぶつかった。めっちゃ痛いんだけど。

 

 ……あれ、ここどこだ。なんか、大きな広間みたいなところに出たな。

 

「いててっ」

 

 もう一人の俺も同じように落ちてきた。

 

 辺りを見渡すと、何人かいる。何人かっていうか、見覚えのあるような。

 

「……ライ?」

「おっ、シリルじゃん。……っていうか、めっちゃいる!?」

 

 

 よく見ると、ほとんど知り合いじゃん。ディオネもいるし、エヌマエーラもいて……なんか知らないやつもいる。なんだ、この派手そうなやつ。

 

 ってか、エヌマエーラいるの?ここってどこだよ。

 

 もしかして、魔術院……?だったらなんで、ディオネたちがいるの?

 

 いや、わっかんねー。どういう状況?

 

「あの、ライさん?」

 

 ゆっくりと、確認するようにディオネが近づいてきた。

 

「ん、何?」

 

 と答えた時にここにも他の俺がいることに気付いた。しかも、二人も。

 

 ……えっ、馴染んでるし。あっ、あいつもしかして女の子の俺とか言ってたやつ?もう一人はわからんな。

 じゃあ、敵じゃないのかな。

 

「ライさんは、その。本体みたいなライさんでいいんですか?」

「うん、そうだけど。ってことは、やっぱり偽物っていうか、分裂した俺とめっちゃ会ってる感じ?」

「まあ、そうなりますね」

「やっぱりかあ」

 

 疲れたのでとりあえず、アクイラのところまで行く。

 近くに別の俺がいたので排除。

 

「うわっ、なんか私に退かされた!?」

「アクイラ~」

 

 そのままアクイラに適当に抱きついて、ゆっくりと目を瞑る。

 

「な、なんですかライさん。いやその……いつも通りと言えばそうなんですけどね!?」

「つかれたよ、ままー」

「違いますよ!?もう!」

 

 とか言いながら、ゆっくりと頭を撫でられる。

 

 ……それは何か違うな。アクイラをいじるついでに、癒されたかっただけなんだよな。

 

 そういうお姉さんムーブを求めていたわけでは。いや、お姉さんがいてもいいのか?

 

 思えば、俺の周囲ってガキみたいなのばっかだしな。たまにはありか。

 

 エヌマエーラとかもいるけど、なんかあいつは残念魔術師だし、いっか!

 

 よーし、疲れたので休むぞ!

 

「はいはい、ライさん。ややこしいので起きてください」

「あーれー」

 

 アクイラから剥がされてしまった。

 

 なんで?

 疲れてんだけど。

 

 そのまま、ディオネに抱き締められてるし。おい。

 まあいいか。

 

「ほう!この少女が本体か!ふむ、見る限りは他の存在と変わらぬな。ただ、他の存在よりも揺るぎがないし、明確にディオネとの繋がりが見える。本体で間違いがない」

 

 うわっ、派手そうなやつがくそでかい声だしててうるさい!

 

「おっと、紹介が遅れたな。我の名は、ヴィアルだ!」

「ごめんなさいね、こいつこんなんだから」

「エヌマエーラ、これどういう状況?」

「うーん、みんな勝手に飛んできてるのよね。あんたたち、ポンポン来すぎ」

「ここ、魔術院?」

「そうよ」

 

 ……えーっと、なんだ?つまりは、ディオネたちもなんか、ここに飛んできててその場所に俺が来たって感じかな。

 

 うーん。

 

「うーん」

「うーん」

「うーん」

「おい」

 

 三人の俺が真似して悩んでるし、何?

 

「ライさん」

「何?」

「とりあえず、状況を整理しましょうか」

「それはそうだな」

 

 

 

 

 話を聞いたけど……えーっとなんだ?

 

 俺が暴走みたいになってるのはわかったよ。それでなんか、俺が誘惑とかして……なんか自分で言ってるとキモいな。

 

 まあいいや。それで、俺がみんなを仲間にしようとしたりとかしながら沸いてきてて、でもそっち側じゃない穏健派みたいな俺もいて。

 

 そのうちの一人が、逃がそうとする感じで魔術院に飛ばしてここに来て、解析の魔術師のヴィアル……あのうるさいやつが影から通ってくるのを防いでた。

 

 でも、それを突破してやってきてて、でもそれをぼこぼこに叩きのめしてて……ぼこぼこにしてたの?俺の一部みたいなのを?こっわ。

 

 いや、クラリッサとかヴァレンティナもやってたからいっか。

 

 ともかく、そいつらを撃退してから俺がやってきたってことね。

 

 それで、本体がいれば解決しそうって話の時にちょうど俺がきたらしい。

 

 解決するには、シリルが俺に触ってなんかするんだってさ。

 

「で、なんで俺はシリルに触られる必要があんの?」

「俺の恩寵は、触れたものに性質を付与できる。だからこれで、散らばったライを一つに纏めるようにすれば、一応元に戻るはずだよ」

「ほーん?」

 

 シリルってそんな恩寵だっけ。

 

 いや、待てよ。俺が幼児みたいになってたのを治すときもシリルの恩寵にやってもらったんだっけな。

 

「ほら、早くライさんに触ってください」

「ディオネ、その言い方なんとかならない?」

「わかった、触るよ」

「シリルも反応しなさすぎじゃね?」

「ライに散々からかわれたからね」

「あっそ」

 

 ゆっくりと、シリルが俺に触れる。じんわりと、何かが流れてきた気がした。

 

 すると。

 

 ずずず、と俺の影に何かが集まってくる。

 

「ほう、集まりだしたな。これだけでは、まだ足りないだろう。我々も手伝うとするか」

 

 ヴィアルがなんか言ってる。

 

 ……こいつ、話を聞く限りはぽっと出便利キャラすぎるな。

 解析っていうけど、さらっと見ただけで体の中身とかまで理解されてるんだよな。そんなわかるもんか?

 

 っていっても、魔術は力の流れとかを作るからそういうあやふやなものとかも見れるようになるのかもしれん。

 

 そもそも、魔術師でも上澄みだしな。

 

 エヌマエーラと、ヴィアルが指を滑らせると何かが構築されていく。

 それが、俺の周囲に形成されて覆い被さってくる。

 

 影に集まった俺の部分を逃がさないようにして。

 

 そうして、ようやく俺は元の俺に戻った。……と思いきや。

 

「よっ、私。いつも男のつもりなの、そろそろやばいよね」

「よっ、俺。こいつらすぐに女っぽくなってて嫌だよな」

「んー、結局私たちって感情バラバラすぎてよくわかんなくて面白いよね」

 

 ここに元々いた俺は残ってるんだけど?

 これ、いいのか?

 

「疲れたから、ライの一人もらってもいい?」

「わふっ」

 

 女っぽい俺の一人をエヌマエーラがかっさらっていく。おい。

 

「じゃあ、私は本体のライさんを」

「なんでそのノリでまた捕まえようとしてるんだよ」

「……ダメですか?」

「ダメです。ってか、これ大丈夫なん?」

「どうなんでしょうね?」

「おい」

「とりあえず、ライさんの暴走は止まったんじゃないですか?」

 

 ……止まったならいいけどな。

 

 毎回、問題が解決するときってなんかあっさりしてるんだよな。起きてることはやばいのにさ。

 

「はっはっはっ!問題なくなったのであればよかったではないか!どうせなら、魔術院を見ていくか?」

 

 ……興味はあるけどな。

 

「いや、いいよ。どうなってるかまだわかんないし。暇があったら来るわ」

「興味があるものへ、魔術院の扉はいつでも開いてるぞ!」

 

 そういうもんなんだ?

 まあいいか。一件落着ってことで。帰ろ。

 

◇◇◇

 

 本体を失った結果、散らばったライは最終的に本体にほとんど統合された。

 

 けれど、残った一部はまだ散らばったまま。

 

 その数人はクラリッサとヴァレンティナが捕獲した。

 

 残りは――

 

「よっ、エオス匿って?」

「えっ、ライさん急っすね?」

 

「あはっ、イリス。ねえ遊んでよ」

「はいはい、あっライちゃん?よーしよしよし、腕の中にしまっちゃうよ~」

「……あれ、もう抱き締められてる?」

 

 他の者たちが捕獲して、また混乱を産み出そうとしていた。




まだライは増えたままらしい
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