壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

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危険認定?

 ディオネの部屋の中で、ぐったりと寝転ぶ。

 

 ずっと、俺の中では膨れ上がった感情の俺たちが渦巻いてて重たいままだ。

 

 こうしていると、分裂した俺たちの繋がり……魂だとかそれらしきものを知覚しやすくなった。

 

 俺とディオネは、ずっと何かで繋がっている。それを通して本体……現代にいる俺とも繋がっているらしい。

 

 それが、今まで以上にはっきりとわかるようになった。

 

 だから、元々の体の俺への繋がりがわかるようになった。

 

 こうなると、意外と早く帰れるのかもしれない。これを辿ればいいわけだし、魂だけならそのまま通れるかもしれないから。

 

 ともかく、そんな中で帰ってきたわけだが。

 

 とりあえず行かないといけないところはある。

 

 その前に、よっこしょ。

 

「……な、なんですか?ライさん」

「補給?」

「どいてください」

 

 ……アクイラに癒されるチャンスはキャンセルされてしまった。

 

 シリルでもいじりにいこうかな。……でもなあ、聞いた話だとさ、女の子っぽい方の俺と一緒にいたらしいじゃん。

 

 で、そこで異常に気付いて集合したって流れだったんだけどさ。その前に話してたってことはさ。

 

 あの俺って男とこう、親密になりたいとか言ってる方だったはず。そうなれば、シリルとなんかいい感じになろうと変なことをしてたことも考えられるわけで。

 

 そうなった場合、なんか今まで以上に意識してるシリルが爆誕してしまうとすごい話しづらい。

 

 ……やめとくか。

 

 それに、行くところもあるしな。

 

 

 

 

 

「あら、あらあら。そっちはちゃんとしたライね?」

「……ん、お帰り?」

「……二人ともごめんね?」

 

 急いで、クラリッサとヴァレンティナのところに行った。

 

 結構時間経ってたけどさ、一応大変なことになってたし。大丈夫だと思うけど、俺のやらかしたことだし。

 

 そんなわけで、二人のところに来たんだけどさ。なんか、俺の分裂体がめっちゃ捕まってる。

 

 

 しかも、何人か助けてほしそうにこっちを見てるし。いやさ、俺と同じだから悪いんだけど。

 お前ら暴れたしなあ。

 

「ライこそ、大丈夫かしら?」

 

 ヴァレンティナが首を傾げる。その後ろにも、大丈夫じゃない俺がいるけどそれはいいのか。

 まあ、いいか。

 

「暴走はしたけど大丈夫。そっちこそ、大丈夫?」

「……ん、問題ない。ライ、いっぱい捕まえた」

「……そっか」

 

 どう反応しろと?

 

 本当に何人もの俺がいてややこしいな。

 

 まあ、どうせ回収するつもりだったしな。

 

 どろり、と手の先から影みたいなものが出てくる。

 

 俺の体のうちの、呪いの器の力もなんとなく使えるようになってきたみたいだ。

 

 そもそも、俺が自己認識が変になって幼児になってたときは、勝手に体を成長させるとかができたみたいだから、この体は結構操作できるんだよな。

 

 救世主伝説とやらに沿ってる方が、今回の暴走のせいで若干弱まってこっちの、呪いの方の側面が強まったみたいだから、そういうこともできるらしい。

 

 だから、手の先からこうして影を伸ばせる。影が、他の俺の足元まで伸びていく。

 

 そして、そのままどぽんっと吸い込んでいった。

 よし、回収。

 

「……ライ、何をしたの?」

「回収した。元々は俺だし」

 

 ストックしてるだけで、完全に取り込んではないけど。なんか、完全に取り込むと負担がすごいんだよな。

 だから、こう曖昧な状態にしてる。

 

 何体でも取り込めんのかな。今も、魔術院にいたときのやつを取り込んだままなんだけどな。

 

 なんか、これそのまま分裂体出せるからゲームの残機みたいになってるけど。まあ、本体が死んだから関係ないけど。

 

「ライー?勝手に回収されると困るわ。教会へ報告しないといけないもの」

「……えっ、マジで?」

「マジよ。なので、代わりにあなたを連れていってもいいかしら?」

「……まじかあ」

「ついでに、ちょっと補給するわ」

 

 するり、とヴァレンティナの手が俺に回された。

 

 そのまま、しなだれかかってくる。頬に髪が触れてくすぐったい。

 

「お前じゃなくて、そこら辺のやつみんななんだけどさ。抱き締めすぎなんだよ」

「抱き心地がいいのよね」

「早く離れてもらえる?」

「嫌よ」

 

 ……全然離れてくれないし。なんなんだよ。

 

 クラリッサの方をちらりと見る。なんか、そわそわしてるな。どうかしたんだろうか。

 

「……ライ、後で私もそれやって、いい?」

「なんでだよ」

「……私が触れても大丈夫な人、あんまいない、から?」

「ヴァレンティナとかもいけるんじゃね?なんか、燃やしてる関係で凍結とか効かなさそう」

「おぞましいことを言わないで」

 

 ぎゅっ、と抱き締める力が強まる。なんで?

 

「……まあ、クラリッサもやっていいことにするか。今回、迷惑かけたし」

「……やった。じゃあ今からもらう」

「ちょっと、今は私がやってるでしょう?」

「どいて」

「はあ、これだから人形みたいな女は」

「……あなたも、大概変人」

「へえ、いい度胸ね?」

「……ん、そっちこそ」

 

 まずい、こいつら喧嘩を始めたぞ。

 

 このままだと、あんまりよくないな。

 

「お前ら、落ち着け。……一応、分裂体もいるからそっち抱き締めるとかもできなくないけど」

 

 うん、誰かを犠牲に差し出すか。

 

「……本体の方がいい」

 

 ダメなのかよ。……しょうがないので、後で交代してやろう。それまでは、クラリッサに我慢してもらって。

 

 それから、交互に無駄に抱き締められることになった。抱き枕にされかけてたけど、それはなんとか回避した。

 

◇◇◇

 

 分裂したライのうち、ほとんどは本体へと回収された。

 

 けれど、イリスとエオスの元へは一人ずつまだ存在している。

 

 その他に、存在している分裂体が一人。

 

「……解放してくれる?」

「ダメだ」

「そんな、ひどいね?」

 

 くすくす、と分裂体のライは笑う。その体には、触手のような黒いものが巻き付いている。

 

 それは、影から伸びていた。

 

 対面しているのは、イェルク。仕事をしている最中に、急にやってきたライが偽物らしかったので、そのまま拘束していた。

 

 そして、教会への報告はすでに済ましている。結果、そのライを解放はするなと命令を受けていた。

 

「これ、まるでえっちなことでもされてるみたい。するの?」

「……何を言ってるのかが、いまいちわからないが」

「だって、触手が巻き付いてるのと同じでしょ。エロじゃん」

「……よくわからないが、そういうことをされたいのか?」

「うーん。気が乗って、そのときにイェルクのことをもう少し好きになれてたら、やってあげないこともない、みたいな」

 

 あはは、と軽快に笑う。そのどこまでが本心かはわからない。

 

「まっ、冗談だけど。暇だから、変なことを言いたくなっちゃうってわけ」

「そうか」

「あーあ、淡白な返事。つまんない」

 

 いつまでも、拘束されたままのライ。それを監視しているようなイェルクに一つの命令が来た。

 

「……ライを捕獲、か」

 

 異端殲滅局が通信局を経由して、送られてきた内容はおおよそそんなものだった。

 

 ディオネの代わりに仕事をさせようとしてすぐに暴走してしまったライを、そのまま放っておくのは危険じゃないか?

 

 だから、教会で管理する。

 

 イェルクにも思うところはある。だが、ライをそのままにしておけば、いずれは処分をせざるを得なくなる。

 それだけは避けたい。

 

 渋々、命令に従うことにする。ライをきつく縛り上げて、本体の元への足を進めることにした。




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