壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
窓から、エオスとイリスが覗く先に、たまたまイェルクとライを抱えたディオネが見えた。
「あちゃー、鉢合わせちゃったか」
窓を眺めるイリスの視線の先には、筋肉隆々の大男がいる。法衣の隙間から、神官とは思えない筋肉が見え隠れしていた。
異端殲滅官の一人、レオンハルト。異端殲滅官の中では一番信仰序列は低いが、それでも油断ならない相手ではある。
何せ、異端殲滅官は全員異端実体ぐらいなら軽く消してしまうぐらいの力はあるのだから。
「これ、どうするっすか?」
「うーん、どうしよかな」
と、外から見てる二人の後ろで二人のライが外の様子をじっと見てる。
「あっちに本体いるね」
「えっ、合流した方がいい?」
「……でも、あっちバトルしそうだけど」
「確かに。なんとなく分裂しちゃったけど、追われちゃってるし」
向こうでは、レオンハルトとディオネが向かい合っている。
どう見ても、ここから平和に終わらなさそうで、本体のライが争いそうなのでどうしようかなと見ている。
「えっと、ライちゃん?本体が教会に向かおうとしてるでいいんだよね?」
「そうだよ」
「で、今まさにその瞬間に見つかっていると」
「そうだよ」
「今さらなんだけど、そっちのライちゃんたちなんか幼くない?」
「本体以外はみんな、結構緩いよ」
「ライちゃんのかわいい部分たちが分裂しちゃったか」
と、イリスが軽口を叩きながら外の様子を見ていると――
「ぐぅ……」
「がぁっ……」
――急に、ライ二人のうめき声が聞こえた。
「ライちゃん!?……これは」
「何か、巡らされてるっすね……?」
ライの首、四肢を締め付ける目に見えないようなそれを、エオスは正確に掴んで千切った。
「強度の低いのを使ってるなんて、珍しいっすね。セシル」
「やはり、それがライか。ディオネから抜け出して、こうなっているとは不思議なこともあるものだ。にしても、エオスか。何かを探すその恩寵で、この見えにくくした糸を発見したか」
「なるほど、見えにくくした分強度が下がったってことっすか?」
「そうなるな」
灰色の髪の隙間から覗かせる黄色い瞳は、どこを見ているのかわからない。
セシル、異端殲滅官の一人。それが糸を張り巡らせて、ライを拘束しようとしていた。
解放されたライが、ぷりぷりと怒りながらセシルに向けて口を開いた。
「おい、いきなり何するの」
「拘束しようとしただけだが。お前は今、捕獲対象になっている」
「いや、それはわかってるけどさ。いきなりはひどいでしょ。不意打ちするな」
「……何を言っている?」
「うわ、これだから異端殲滅官は!」
もう一度セシルが糸を動かして、ライたちの体に絡み付こうとする。
それが、ぺちりっとイリスの指先で弾かれた。
「はい、こっちは取り込み中なのでそういうのやめてね」
「……教会の命令に背くのか?」
「んー、そう言われると弱いなあ。ライちゃんはね、ちゃんとこう処置はしないといけないけど。そういう無理矢理なのは個人的に嫌いだから」
「好みは関係ないだろう」
「そうかな?今の教会はちょっと強引すぎるからさ、もう少し落としどころはありそうじゃない?」
と、にらみ合いが始まろうとしている中――外から轟音が鳴り響いた。
◇◇◇
「はっはっはっ!やはり、完全に復活したか、ディオネ!」
「いきなり殴ってくるなんて、よほど暴れたりないのですか?レオンハルト」
「そうかもしれないな!」
豪快に笑いながら、いきなり振るって来たレオンハルトの拳をディオネが受け止めた。
その際に、軽く俺が放り出されてしまったけど仕方ない。
ってか、いきなり出会い頭に殴ってくるのは何?
いや、俺が狙われてるのはわかるけど。さっき、久しぶりに会ったな!みたいなノリだったじゃん。殴るまでが早すぎるだろ。
「イェルクがなにもしてないということは、おそらくお前たちはライをただ捕獲するだけではない、何かの方法を見つけたのだろう」
「そんなんじゃないですよ。ただ、ライさんが直接教会に行くらしいので、連れていこうとしているだけです。私は反対なんですけどね」
「そうか!だが、イェルクはそれに賛成なのだろう?」
ちらり、とレオンハルトの視線を受けてイェルクは小さく頷いた。
「教会に自ら行くのであれば、別に拘束する必要もない」
「はっはっはっ!確かにな!だが、それを信じられない自分もいてな。この手で捕まえることにした。俺はディオネにもイェルクにも敵わんが、そういったものに立ち向かわなければ、英雄にはなり得ない」
レオンハルトが、近くにたまたま落ちていた棒切れを拾った。
すると――その棒切れに光が集う。光が形を作っていき、一つの剣になった。
えっ、なにその力。よくわからん恩寵なんだけど?
「レオンハルトの恩寵は、持ったものを自分の武器にできる。まあ正確には英雄の真似をするような力で、身近ものですら自分のものにしてしまう、そんな力だが」
混乱してる俺を見かねてか、イェルクが教えてくれた。
いや、なにその力。棒切れを剣にする力ってこと?
英雄の真似事って感じじゃないけど。たぶん、そこら辺でたまたま伝説の剣を拾ったみたいなものの再現ってことか。
そうなると、その武器にしたものって特別だったりするのか?
「さっさと来たらどうですか?」
ディオネの声は冷たい。澄んだ凛とした声が響く。
一歩、ディオネが進むとレオンハルトがそれに向けて走り出した。
速い。剣の軌跡がディオネの腕に向かうと――それを弾かれた。
軽く、ディオネが腕を振るっただけで、それを防がれる。
ただ、ディオネの腕からは血が数滴だけ滴り落ちた。ほんの少しだけ、棒切れから作られた剣が、ディオネの皮膚を軽く切り裂いていた。
それも、すぐに時間が巻き戻ったように癒えた。
……ディオネって強化されすぎて、めっちゃ固くなってるはずだよな。それをちょっとだけ切り裂いてるって結構すごくないか?
代わりに、レオンハルトが握っていたその棒は折れていた。収束していた光が、崩れて消えていく。
さすがに、ディオネの方が力は上か。
「もういいですか?」
「そうだな!確かに、今のディオネは全力を発揮してるらしい。なら、俺はそれに従ってやってもいい」
えっ、それでいいの?
ってか、試してただけだったのか。
ディオネの恩寵は、精神で振れ幅があるらしい。だから、攻撃してどの程度か確認したかった、みたいな。
怖すぎる。異端殲滅官の言うことは相変わらずよくわからんな。
「ライさん、お待たせしました」
「いや、別にいいよ」
「私がよくないので」
そう言いながら、すぐに俺を抱き抱えてきた。なんで?
「セシル!もういいぞ!」
急に、レオンハルトがどこかに向けて叫んだ。
……セシル?誰だっけ。そもそも、どこに向かって叫んでるんだ。
そんなやついたっけ。聞いたことあるんだよな。
と、思っていると突然そこら辺にある民家の扉が開いた。
中から出てきたのは一人の神官。
ああ、こいつ!見たことあるぞ!
急に攻撃してきたやつじゃん!なんか、ディオネに殺されたかったみたいなこと言ってたやつ。
やばそうなやつだったよな。
「レオンハルト、こっちも取り込み中だったんだが」
「そうかもしれないが、もういいだろう!」
「よくないが?」
なぜか、レオンハルトと睨みあっている。なんなんだよ、この状況。
「いやー、なんかバトルになりそうだったけど助かったね」
「どうもっす、ライさん」
「よっ!」
「よっ!」
と思えば、なんか俺二人とエオスとイリスが出てくるし!
ってか、人が多すぎ!
レオンハルトとセシルは、魔王あたりの時にちょろっとでてきていたキャラです
思えば全員性格変わってないか??