壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
「……はあ、教会に直接行くつもりか。捕獲してくるなら、もう乗り込んでしまえと」
「はっはっはっ!豪快だと思わないか、セシル?」
「バカなだけだ」
呆れたようなセシルと、陽気なレオンハルトが目の前で何か話してる。
合流した後、一応今の状況について軽く説明した。
んで、なぜか近くにいたイリスとかエオスにもそこら辺は話した。
なんか俺の分裂体を送るためにここまで来てくれたらしい。……なんか、ごめん。
満足したのか、ようやくディオネから解放されたので、ようやく地面に立てたなーと思ってると、目の前までイリスがやってきた。
どこか、考え込んでるようで少し表情が暗い。
「ごめんね、ライちゃん」
「えっ、何?」
「私がさ、ライちゃんをいい感じに調整してたでしょ?境界を作って、呪いとしてではなくてちゃんと人っぽくするっていうの」
「うん、そうらしいね」
あんまり、そこら辺は覚えてないんだけど。だって、幼児化してた時が多かったし。
「でもね、私がライちゃんの負担とか考えて緩めにしちゃったから、ああなっちゃったのかなって」
「別に気にしなくていいって」
「いやでも」
「俺が悪かったからいいんだってそういうの。こっち配慮してくれたんでしょ」
「そうだけど」
「だからいいんだってば」
なるほど、イリスの調整がきつめだったらそうはならなかったのかもしれないってわけね。
でも、俺が調子乗って神聖力使いすぎちゃっただけだからな。それはしょうがない。
だから、それは俺のせいってこと。イリスは悪くない。
それを伝えると、イリスがきょとんとしてこちらを見る。
「なーんか、ライちゃんってそういうとこは大人っぽいよねえ」
「なにそれ」
「そういうときぐらい、人のせいにしてもいいのに、やらないから」
「ってか、ライちゃんって呼び方なんとかならないの?」
「だって、かわいい女の子だから」
「違うけど」
大人っぽいの次にそれが来る?
……まあ、なんかそういう扱いにも慣れてきたけど。
「ライさん、どうもっす」
イリスと入れ替わって、エオスが顔を覗かせた。
「よう、エオス」
「なんか、こっちにいたライさんの分裂体ってどうするんすか?」
後ろを見ると、俺達が二人いる。
どうせだから、回収するか。
「こうするよ」
どろり、と指先が溶けるように変化する。
そして、それが伸びて分裂した俺の方に伸びて飲み込んでいった。
「うわ、本当にライさん化物みたいになってるっすね」
「いや、言い方。そうだけどさ」
化物って。ちょっと傷つくぞ。
「まあ、行くなら気をつけてっすね」
「エオスは来ないの?」
「……なんすか、その寂しがり屋みたいな」
「いや、なんか強いやつで固めてたらまあ誰も文句言わずに教会の中までいけるじゃん?」
「ああ、そういう。だったらいいっすよ?イリスも行くっすか?」
「えっ?うん、いいよ?せっかくだし」
やった。エオスとイリスを確保。
……ってか、どうせならセシルとレオンハルトも連れていけばよくない?
グレゴリー威圧しに行くか。
でも、こいつら別に仲間じゃないからいっか。
そもそも、なんかセシルとか怖いし。
ちらり、とセシルの方を見る。
「どうした?」
やべ、目が合った。どうせだから、聞きたいことを聞くか。
「いや、お前ってディオネの信奉者みたいだったじゃん?」
「俺はあくまで、ディオネの一撃で葬り去られてみたかっただけだが」
こいつはこういうところがわからないんだよな。
「そうそう、そういうところ。死にたいん?」
「この世界には、もうあまり興味がないだけだ。俺は、ディオネのあの力がどんなものなのかだけ、興味がある」
なんか、こいつのことはあんまり知らなくてよさそうなんだよな。怖いし。
「……そっか。たまには、別のことに興味持った方がいいぞ」
「別のこと、か。そんな興味のあるものなんてあるわけないだろう」
「じゃあ、俺にでも興味持ってみる?」
と、軽口を叩いてみると、驚いたようにセシルが目を見開いた。
「……ライに、か。興味を持ってもいいのか?」
「えっ、何?まあいいけど。ってかさ、そろそろ教会行くんだけどお前らも来んの?」
「そうか。どうせなら、連行のような形で一緒に行くのがいいだろうな。レオンハルト、お前はどうだ?」
「おう、何か話をしたか?ああ、同行するかどうかか!いいぞ!」
いいんだ。じゃあ、全員で行くか。
「……ライさん、また誰か誑かしてないですか?」
するり、と俺の前にディオネの腕が回される。
「ディオネさ、抱きつくの好きすぎない?」
「ライさんのことが好きなだけですけど」
「こいつ、めっちゃストレートだな……」
……ずっと、ディオネのこの腕の中のポジションにいない?ここが定位置なのもなんかおかしいだろ。
「全員で行くでいいのか?」
端から様子を見ていたイェルクが、ゆっくりと顔を上げた。
「一旦それで。分裂した俺も回収したし」
「そうか」
とだけ言って、歩き始めた。その後を追う。いや、ディオネに抱き抱えられているから俺は歩いてないんだけど。
このポジションおかしくない?
にしても、大人数だな。
そういえば、異端殲滅官の力をこれでほとんど確認したのか。
イェルクが影で、ディオネは回復とか身体強化。
ヴァレンティナが炎で、クラリッサが氷。
レオンハルトがなんか英雄っぽいので、セシルが糸。
すごい力があるのはわかるんだけどさ。どいつもこいつも、なんかこう……ガキっていうかさ。未熟って感じなんだよな。
レオンハルトはわからんけどな。他の連中はそんな感じ。
だから、そんな子供に力を持たせて戦わせてるこの世界はやっぱりカスなんだよな。
そういえば、異端殲滅官には一応グレゴリーは含まれてるんだよな。
……あいつが、信仰序列2位ってのも未だにわからん。
それとこれから会うってのも気が重いなあ。
そう考えているときだった。
「……ライ?」
不意に、名前を呼ばれた。
振り向くと、シリルがそこにいた。
いや、シリルだけじゃない。ヴァレンティナとクラリッサもいる。なんなら、アクイラもだし。
「……なにそのメンツ」
「謎だよね」
ひょっこり、とシリルの後ろから俺が姿を見せる。
……この俺、あれだな。なんかお嫁さんになりたいとかなんとか言ってたやつだろ。
勝手に飛び出して、シリルのところに向かいやがったな。
いやね、シリルをからかうのが楽しいのは否定しないけど。なんかお前の場合、お嫁さんポジション狙ってるとか、そっちの可能性があるからさ。なんか、嫌だよな。
「そっちもなんかあった感じ?」
「神罰執行官に襲われてたけど、シリルが追い払ったら、なんか他の人たちがきた」
「……そっか」
どこもかしこも、よくわからん状況だな。
せっかくなので、そこの俺は回収しておく。
「シリルも、一緒に来る?」
「何かしようとしてんの?」
「教会に乗り込む」
「……なにそれ」
「……ん、私も知りたい」
「うふっ、私にも聞かせてくれるかしら?」
「えっ、ライさん。なんかやばいことしようとしてます??」
みんな一気に聞きに来るから、しょうがないので説明してやるか。
にしても、本当に大人数になってしまった。
このまま、教会に突撃するぞ。
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