壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
ぞろぞろ、と引き連れて教会の方まで進む。
「……なんか、このメンバーの中に入っていいの?」
「わかりますよ、シリルさん。私も、なんでここにいるのかわからないんですけど」
「そうだよね」
アクイラとシリル、二人とも常人枠だからなんかちょっと仲良くなってる。
ってか、俺もどっちかというとそっちに混ざりたいんだけど。なんで、俺こんなことになってるの?冷静におかしくない?
だって、普通に現代社会で生きてるだけのアラサーがなんで、聖女様とかの集団に囲まれてるんだよ。異端殲滅官揃い踏みだし。
「ちょっと、ディオネばっかりライを独り占めしてるのずるいわ?」
「……ん、私もちょっと抱き締めてみたい」
「だめです。ライさんは私のですから」
……別に、ディオネのものじゃないけどな。抱きかかえられてるけども。
「なんでずっと抱きしめてるんだ?」
「ふむ!ディオネはどうやら、ライのおかげで立ち直ったみたいだから、そういうことじゃないか?」
「ディオネは、ライのことをよく気に入ってるからな」
なんか、自然と異端殲滅官も男女で分かれてるな。こいつら、仲がいい印象なかったんだけど。もしかしたら、同性だと仲良かったりするんかな。
「にしても、異端殲滅官をこんなに見かけるのも珍しいっすよね」
「そうだねー、あんなにいた神罰執行官もいないし。連絡でもいってるのかな」
なんとなく、イリスとエオスの会話も聞いてたけど。確かに、神罰執行官も追ってるみたいな話だけど、すっかりいないな。
シリルと戦ったらしいけど、そっちから話が通じてるんかな。
なんて、考えているうちに教会本部にまで来ていた。
そもそも、本部がある区画には神官がたくさんいる。本部は事務局とかもあって、手続きしにくる神官も大勢いるからな。
んで、そんな神官たちが全員こっちを見ている。たぶん、俺に関することとかは知らない。
ただ、神聖力の密度がいかれたやつらがいっぱいいるからさ。それでびびってるんだと思うんだよな。わかるよ、マジで。
俺も異端殲滅官たちと当たった時、本当にびびったもんな。こんなやばいところに連れていくなってなったしな。
本部の中に入って、進んでいく。すれ違っていく神官たちがすれ違い様にこっちを見てくる。
これ、なんか抱きかかえられてる俺も注目されていない?
だんだんと、神官たちが少なくなって、誰もいないような通路に進んでいく。
そこを突き進むと、一つの扉にたどり着いた。
「ディオネ、降ろして」
「わかりました」
ディオネから解放されて、扉を勢いよく開けた。
「……おや、ここまで大勢が来るのも珍しいですね」
中にいるのは、一人の男。枢機卿グレゴリー・コーエン、クソ野郎。
「よう、探してるらしいから来たぞ」
よく見ると、その奥の方に拘束されている残りの俺がいる。これ、イェルクに最初に捕まっていたやつか。
「……やほ」
小さくあいさつしてくるけど、余裕あるな。
「捕獲するように頼んだのですがねえ」
「だから、こっちから来てやっただろ」
「それに従ってしまう辺り、あなたは異端殲滅官を味方につけてしまった。……それにしては、別の神官もいるように見えますが」
ちらり、とグレゴリーの視線がエオスとイリスに向く。まあ、確かにこいつらまで合流してるとは思わないよな。たまたま、なんか俺の分裂体がそこにいただけなんだけど。
「お前が味方いないだけじゃない?」
「あなたが多すぎるだけな気もしますが……」
「んで、俺を捕獲したいとか言ってたけど。俺が利用できそうだけど、危険だからってことでいいのか」
「ええ、よくわかってますね」
くつくつ、とグレゴリーが笑う。まあ、想像通りだけどこいつむかつくな。仕事させておいて、危険だからポイ!じゃないんだよ。
「俺を捕まえてどうすんの?消すわけ?」
「消すなんてとんでもない。あなたの力は優秀ですからね。救世主の伝説をなぞった結果、一般人でありながらとんでもない神聖力を出せる逸材。暴走しないように制御しながら、神官として運用できるようにするために、一度預かろうとしていただけです」
預かる、ねえ。その後、なにされるかわからないし。
「でもそれ、俺が無事でいられる保証はないよな。どうせ、封印したりした後に強引に俺の体いじくりまわしてめちゃくちゃするだろ」
「おおよそ、似たようなことをすることにはなりそうですがね」
こいつ。
「嫌だね」
「ならどうするのですが」
「ちょっと待ってくれます?」
と、思わず飛び掛かりそうな時にイリスが割り込んできた・
「ライさんの調整に関しては、私が結構強力な仕切りを作って、暴走しないようにすることはできると思うんですけど」
ちゃんと、枢機卿みたいにすごい存在には"ライちゃん"じゃなくて"ライさん"なんだな。
ってか、助け舟出してくれるんだ。よかった、イリスがいて。
「ほう、治癒局長のあなたがですか?確かに、結界だとかその分野においてはあなたよりも上の神官はいないでしょうが。それでも、そこのライの存在はかなり得意なもので、あなたが調整してもうまくいくとは限らないのでは?」
「やってみせますよ」
「気合の話をしてるわけではないのですが」
でも、あんまりいい方に進んでないな。しょうがないな。
元々、そういう話があると思ってなかったしな。……正直、あんまりこういう話はしたくなかったんだよな。
だって、やっぱ未練とかあるからさ。でも、しょうがない。
手の先を、どろりと溶かして変化させる。そのまま、それを伸ばして拘束されている俺を取り込んだ。
これで、分裂していた俺は全部回収する。
イリスと、グレゴリーの会話も自然と止まって、こちらに自然が向く。
「俺さ、この状態になってからディオネを通して自分の体の状態がよくわかるようになったんだ」
しん、と静まり返った中に俺の声だけが響く。
「ディオネと繋がってるけど、その先にある本当の俺の体への繋がりも、よくわかるようになった。たぶん、そこに通っていくことが出きるんだと思う」
ぴくり、とグレゴリーの眉が上がる。
いや、そこにいた全員が、驚いたように俺のことを見ていた。
「正直、こんな厄ネタなやつがここにいていいとは思わないんだよな。だからさ、俺は最悪帰ることができるよ」
「ライさん、それは……」
「前から帰れたんだけどさ、ディオネを置いていくのもあんまりだったしさ」
「ライさん……」
「お前は、一旦異端殲滅官やめて治癒局とかいった方がいいよ」
こくり、と小さくイリスも頷いてる。
ディオネは、なんて言っていいのかわからないようで。口を動かしては、言葉にうまくできなくて、視線を下に向けている。
他の連中も、何か言葉をかけようとして、それがうまく言葉にならないみたいだ。
「本当に帰るのですか?」
「そうしてもいいと思うけど」
グレゴリーが、驚いたようにこちらを見てから、口を開こうとしたとき――
「――面白い話をしてるね?」
部屋の中に、一人入ってきた。
中性的な見た目の神官。年老いてるようにも、若いようにも見える不思議な風貌。
身に纏うのは純白の法衣。
それを着ることができるのは、たった一人。
「教皇様」
「やあ、グレゴリー。何やら、大事になってそうだから来たよ」
教会のトップが急に乱入してきた。
実は終盤の可能性がある