壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

91 / 91
おまけ
聖女代理


 ライこと、鏑木湊がこの世界を経ってからすぐのこと。

 

 ぐらり、と揺れたその体はすぐに俺たちのものになった。

 

 あの魂は、世界の向こう側へと消えていったらしい。

 

 一応、こっち側の魂はひとつに一応まとまったけど。ちょっとうるさいというか、たまに別れていきそうになる。なんだ、これ。

 

 私たちわがまますぎる。

 

 本体のライが向こうに消えていったとき、ディオネは、泣きそうな顔をなんとか堪えてから顔を上げて決意をしたような顔をしていた。

 

「私、ライさんを追いかけます」

 

 と、ディオネが言うと、しんっと静まり返った後に、あははと教皇が笑っている。

 

「魂だけ世界を越えるのも大変なのに?」

「なんとかします」

「向こうでの生活もうまく行くかはわからないのに?」

「なんとかします」

「君がいなくなると困るのに?」

「……それはなんとかしてください」

 

 教皇の言葉に強気に返していたと思えば、さすがに自分がいなくなる分の負担を誰かに押し付けるのは気が引けるんだ。

 

 聖女だもんね。

 

「自己犠牲の塊だった聖女にそこまで言わせたんだ。だったら、私がなんとかしてあげないこともないよ」

「教皇様」

「黙って、グレゴリー。君が聖女をボロボロにしたツケじゃないのかい?」

「……意図的にボロボロにしたつもりはないですが」

「ははは、君は人間の強度を見誤りすぎだよ」

 

 くすり、と笑ってから教皇はこちらにやってくる。

 

「聖女の代理を、代わりに君にやってもらうよ。ライ」

「へ?」

「君の本体のせいで、聖女ディオネはその役割を辞退するわけだ。だから、その分の役割を君にやってもらわないとね?」

「……」

 

 えっ、それ俺たちがやるの?

 

 そういう雰囲気だっけ?

 

 っていうか。

 

「それ、向こうの世界に行けるってこと?」

「行けるんじゃないかな?神は、強い意思を持つ人間が好きだからね。彼女のことを後押ししてもおかしくはないよ」

 

 そっちの神様の方が好感触かも。

 

 にしても、聖女の代理って。できるもんなの?

 

 ……ディオネのためだし、やってやれないこともないけど。

 

 

 

 

 なんて経緯があり、俺たちは聖女代理として活動することになってしまった。

 

 暴走しそうなこの体もばっちり調整されて、別にその心配もない。

 

 別に、俺たちの本体が向こうに帰ったことに関しては何も思わない。帰りたかっただろうし。

 

 私たちはどうなのか?となると、別にこっちに居着いてもいいかなと思ってる。

 

 そもそも、分裂した俺たちはこの世界で生まれたようなもので。向こう側の世界への執着はあんまりない。

 

 こっちのやつらと生きていけるならまあいいかな、と思ってる。

 

 ただ、一つが問題があって。

 

 本体がいなくなってから、その感情の一端をこっちが受け止めることになってる。

 

 例えば、俺たちは今はディオネの住んでた場所で暮らしてるんだけど。そこにはアクイラもいる。

 

 ディオネはもう旅立ってしまった。

 

 世界を繋ぐような通路の形成だとか、向こうで生きていくための準備だとか。そういうものを全部、結構すぐに達成してしまった。

 

 あいつ、すごいな。

 

 んで、ディオネがいなくなってからアクイラの距離が妙に近い。

 

 すぐ真横にいる。

 

「ライさん」

 

 ぴと、と肩をくっつけてきた。

 

「……なに、アクイラ?」

「なんとなく」

「お前、そんなこと言うキャラだっけ?疲れてんだなー、よしよし」

 

 アクイラの頭を軽く撫でてやると、ぐりぐりと頭を押し付けてきた。

 

「……なんとなく、寂しくなって」

「アクイラも向こうに行きたい?」

「それはなんかこう……ディオネ様を邪魔したくはないですし」

「代わりに俺にじゃれついてるってわけね」

 

 そのまま、ゆっくりと俺の後ろに回り込んできたかと思えば、ぎゅっと抱き締めてきた。

 

「あったかい」

「子供体温で抱き枕に最適って言った?」

「言ってないですけど……」

「その通りだから、抱き締めて癒されてもいいよ?」

「……なんか、みんなみたいにだんだんとライさんのこと好きになりそうで怖いです」

「なんだ、そりゃ」

 

 みたいな感じで、アクイラがだんだん重たくなってきてる。

 

 まあ、いいか。アクイラかわいいからね。あんまり大きくないのにしっかりしてるのに、こうやってたまに年相応なところを出してくるのがね。

 

 そもそも、だ。こんなやばい世界に生きてるわりにちゃんとしてるから、アクイラはすごいよ。

 

 シリルもまあ、わりと普通だけどなんか。知らない間に俺たちが情緒を壊してしまったらしいことしかわからないから。

 

 そういえば、シリル的には俺は告白した本体ではないので、そのまま好き好きアタックはされないで済んでる。

 

 お嫁さんになりたい方の私たちもいるから、押されるとそのままいつかは了承してしまいそうなので、実はちょっぴり危ない。

 

 そんなこんなで、あいつの尻拭いみたいな感じで、聖女代理中です。

 

 代理とは言っても、ちょっとだけ仕事してるだけだからね。

 

 さーて、今日も働くぞ。

 

 ……アクイラがまだ抱き締めたそうにしてるから、ちょっどけ休むか。




おまけをどうせやるならメイン登場キャラとのくっつくifぐらいは作ってもいいかもねぐらいの機運だけど、今はこんなのを弾に出していきます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生者がTS魔法少女になって頑張る話。(作者:メルヘン侍)(オリジナル現代/冒険・バトル)

TSして魔法少女して頑張る話です。▼カクヨムでも同時投稿しております。


総合評価:1492/評価:7.52/連載:42話/更新日時:2026年06月03日(水) 11:57 小説情報

TS転生外宇宙系魔法少女ダークネス・ルーシィ(作者:SIS)(オリジナル現代/ホラー)

SAN値直葬系マスコットとそれを心から愛する転生者(正気)の日常。▼※序盤とタイトルを書き直しました。▼気分転換に書いた作品を投稿欲を満たすために投稿してみます。▼続き書いたら増えます。


総合評価:2203/評価:8.52/連載:23話/更新日時:2026年07月29日(水) 18:09 小説情報

TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女(作者:こばみご)(オリジナル現代/コメディ)

魔法少女パワーをチューチューするために原石を誘拐したら、とんでもねえ変態だった。恐ろしい!


総合評価:2714/評価:8.69/連載:22話/更新日時:2026年07月25日(土) 23:00 小説情報

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1600/評価:8.37/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました(作者:ユーラ@Yura0628)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ミサイルの爆発に巻き込まれた強化人間イーグル1。目覚めた先は、魔法少女が戦う過去の地球だった…!▼自身の体が女性に成っている事に困惑しつつ、元の世界に戻るため、イーグル1は魔法少女として戦う事の対価に、この世界の組織に協力を取り付ける。だが、襲いくる強力な魔獣を相手していく上で、身体的損傷を許さざるを得ない状況に追い込まれ…彼女に救われた魔法少女達は、目から…


総合評価:2053/評価:8.52/連載:37話/更新日時:2026年05月09日(土) 11:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>