壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい 作:あまぐりムリーパー
どうも、ディオネがいなくなった後に聖女代理をしている分裂体のライです。
本日は、クソ重くなったアクイラとぐーたらで過ごさせていただきます。
ってか、結構忙しいからこうしてやってないときつい。
一応さ、俺の見た目ってディオネに似てるから、ディオネの親戚っぽそうなやつが代理でやってる!みたいなことを勝手に思われて、仕事がスムーズにできてる。
って言っても、人を癒したりとか異端実体倒したりとかみたいにしてるだけだけどな。
ディオネが信仰序列3位だったけど、抜けたその穴になぜか俺が入ることになって、暫定3位になっている。
信仰序列ってさ、神聖力とか神聖印の強さによって決まるわけで。恩寵とかはぶっちゃけ関係ないみたいなんだけど。
俺ってそのレベルに達してるの?って疑問に思ってるけど教皇が認定してるんだからさ、仕方ないんだよね。
で、そこで知ったんだけどさ。グレゴリーって信仰序列2位じゃん?
こいつ、ディオネとかイェルクと同格なのマジか?って思ってたんだけどそうじゃないんだって。
あいつの恩寵って、神聖印を強化するような力らしくて。そこの強化込みで信仰序列が決定されてるんだって。ずるするなよ。
「ライさん、どうしたんですか?」
「ん、なんでもないよ」
肩に、アクイラの顎がのっかかる。こいつの距離感が徐々にバグってるのはなんとかなんないかな。
まあ、猫に懐かれてるみたいなものだからなんでもいいんだけどもね。
「ライさーん」
とか思ってたら、急にそのまま体重を乗せてきた。軽いけど、ちょっと面倒くさいというか。
「アクイラ、だる絡みタイム入らないで」
「なんかディオネ様もライさんの本体もいないからやる気出ないんですー」
「はいはい、よしよし」
しょうがないので、アクイラの頭をなでてやる。
「今日って、ライさんは暇なんですか?」
「……あー」
たぶん、これは何かに誘おうとしてるんだろうけど。今日って用事あるんだよな。
「なんですか、その反応。何かあるやつ……あっ、もしかして」
「えっ、なに?」
「これ、シリルさんだったりします?」
「うっ、そうだけど……」
俺の本体のことを大好きだったシリルが、なんかだんだんとこっちにもその目線を向けてきているというか。
いやまあ、同一存在ではあるんだよな。
俺たちは、だんだんと一つに統合されてきている。それだけじゃなくて、向こうの世界の俺とは繋がってはいるから。だんだんと、それに寄ってきている。
そのせいで、今の俺はほぼライと同じ、と言ってもいいのかもしれない。
……だからまあ、こうなったのは自然というか。
たまに、ぐいぐいシリルに来られてる。どうにかなんないかな。ってか、それに関してはアクイラもそんな変わんないけどもね。
「――ライ」
そんなことをぼんやりと考えていると、不意に声が聞こえる。
そっちの方へと振り返ると、くすんだ灰色の髪が見えた。
「……うわ、来ましたね」
「なに、その反応」
なんか、アクイラとシリルが睨み合ってる。なんなんだよ。
ややこしいな。仕方がないので、さっさとするか。
「よっ、シリル。さっさと行こう」
アクイラを退けて、シリルの方へと近づいた。
アクイラはムッと、頬を膨らませて不満そうにしてるけど。仕方ないでしょ。
ちょいちょいシリルには助けられていて、そのお礼も兼ねてデートぐらいはしてやろうってだけなんだけどな。
……正直、相手の好意に付け込んでるみたいであんまり好きじゃないけど、強引に手伝ってくるから。
「……しょうがないので、ライさんをよろしくお願いしますね?」
「任されたよ」
おい、任せるな。人のことをなんだと思ってるんだ。見た目が幼いだけだし。
……成長してやろうか?
あんまりそんなことしてたら、また目をつけられるからダメだな。
「もういいよ、行こうよシリル」
「わかったよ」
――自然に、俺の手が掴まれた。
こういうことをするやつだったかな、なんて思ったけど。からかうときにこっちがやったような気がするな。
じゃあ、仕方ないか。
シリルに手を引かれて、外に出た。
王都の街並みを歩いていく。
通りすぎていく人々は、神官がまあまあいて。この世界は結構神官いるんだなー、って思う。
なんとなく、繋いでいる手から熱が伝わってくるように感じた。ぎゅっ、と握る力が少し強まってる。
まっすぐに好意をぶつけられたからだろうか。少し、気恥ずかしい。
「どうしたの、ライ」
「なんでもない」
「そういうのは、気になるけど」
スッと伸びたシリルの指先が、俺の頬を触れた。つつかれている。
急なことだったので、思わずびくりと震えた。
そんな俺の様子を見て、シリルは頬を緩ませる。
「何すんだよ」
「ライが、よくやってることでしょ」
「勝手に触んな」
「許可もらってからするね」
「こいつ」
シリルの指が離れた。
……なんか、調子が狂う。いじりたいだけだったのにさ、それが全部俺に返ってきてるような気がする。
本体のせいにしたいけど、ここにいる俺はもうあんまりあっちと変わんないだろうし。
っていうか、分裂体の一人がやたらとシリルにぐいぐい行ってたこともあるから。
正直、俺が悪いんだよな。
なかったことにしたい、とまでは言わないけど。
――正直、この状況も悪い気がしないから。
「ねえ、ライ」
「何」
指が絡まる。所謂、恋人繋ぎというやつ。
「こういうことしてもさ、拒否しないってことはライも、結構乗り気だったりする?」
「……なに、乗り気って」
「とぼけなくてもいいでしょ。散々、そっちの分裂体がお嫁さんになりたいとかでからかってきたのに。こういうときになると逃げるの?」
手を引き寄せて、顔が近づいた。
シリルと目が合う。まっすぐな瞳がこちらを向いている。
こんな強引だっけ、こいつ。
最初に会ったときは、すごいクソガキだったけど。段々と、普通になってきて。
今では、ずっと助けてくれるやつになった。
前に聞いた話だと、なんか俺を助けたかったのに、ずっと勝手に危険なことになってるせいで、助けられなくて不甲斐ない思いをしたんだとか。
……それは正直、ごめんだけどさ。
成長しても、こうやってぐいぐい来るとは思わないじゃん。
「逃げるつもりなら、こうやってお前とは出掛けてないだろ」
「そういうことじゃなくて。のらりくらりかわそうとしてるでしょ」
「……そんなことないけど」
「ほら、目を逸らした」
だって、好きだとか嫌いだとか。あんまりよくわからない。
そういうことを、今まであんまり考えたことはないし。
「距離感おかしかった癖にね」
「うるさいな」
あんまり考えたことはないけど、たぶん俺はこうやって引っ張られていくのもあんまり嫌いじゃないのかもしれない。
だんだんと、強引に来られるのも、悪い気はしないし。
それに、やっぱり好感度ってものは話していくうちに上がるものだからさ。勝手に上がってしまってるんだろうな。
「ライ、好きだよ」
不意に、そんなことを言うものだから。鼓動が酷くうるさい。
なんだか、顔が熱くて。うまくそれに答えられない。今まで、言われなくてもわかってることだったし。本体が離れたときでも、言ってるのを見たのに。
「今のライは本体じゃないけど。俺が好きなのはライで、分裂しててもその一部なんでしょ。そう思ったら、今のライもやっぱり好きで、自分のものにしたい」
急に変なことを言うな、こいつ。
もっと、引っ張られてシリルに抱き寄せられた。鼓動が伝わっていく。
「ライ、顔真っ赤」
「うっさい」
「めっちゃ心臓がばくばく言ってるし」
「うっさいって」
「そればっかりじゃん」
なんだ、これ。別に今までこんなこと、たくさんあったのにさ。気軽にくっつくとか、ちょいちょいやってたのに。
それと今が違うのは、意識してしまったからなんだろうか。
「ねえ、ライ」
シリルの顔が、近づいた。
「……んっ」
何が起きたかいまいちわからなかった。
何かで、口が塞がれて。いやそれって。
徐々に、顔に熱が集まってくる。頭の奥で血流だとかがガンガンに回ってきて。
「それだけ反応してくれるなら、期待してもいいってことだよね」
「いや、お前」
「覚悟しててよね」
その言葉に、こくりと頷いてしまって。
酷く顔が熱いこととか、鼓動がうるさいその理由を考えないことにして。
今はシリルに身を委ねた。
時系列とか考えると、本体の方へはディオネが行くので、その本体がシリルとどうこうすることはないなと思い、こういう話に
これ以外のキャラのエンドが作られるのかは不明です