壊れかけの聖女に俺がインストールされたらしい   作:あまぐりムリーパー

94 / 94
if?の続きみたいなもんです


if? ディオネアフター/シリルアフター

 ことり、とコップが置かれた。

 

「湊さん、淹れましたよ」

「さんきゅ」

 

 ディオネが差し出したお茶を受け取って口につけた。……こいつ、日本に馴染みすぎ。

 

「なんかもう、向こうでのライさんのことも懐かしいですね」

「お前も随分変わったね」

「湊さんのせいで変えられてしまいました」

 

 ぺろ、とディオネが舌を出す。

 

 昔なら、こんな返しもたぶんできなかっただろうしな。

 

 それにしても、こんな茶目っ気あるやつだっけ。

 

 そそくさ、と俺の隣に座る。そのまま、ゆっくりと体重を預けてくる。

 

「暑い」

「……ひどくないですか?かわいい彼女が甘えてきてるのに」

「はいはい、かわいいかわいい」

「むう」

 

 頬に、柔らかい感触がした。それが、ゆっくりと離れる。

 

 少しだけ、顔に熱が集まる。

 

「……お前」

「ばーか」

 

 顔を赤くしながら、プイッとそっぽ向いた。

 

 ……恥ずかしいのにやるなよ。

 

 っていうかさ、頬とはいえ。キスすることに躊躇がなさすぎるだろ。

 

 ディオネとは、まあその。

 所謂、恋人ってやつにはなってはいる、んだけど。

 

 こいつはまだなんか、子供っぽいしさ。こう、よくないことをしてるみたいでさ。

 

 そもそも、弱ってるところを慰めてこうなってしまったわけだから、悪い大人染みたことはしてるんだけど。

 

 まあでも。こいつは元々、背負わされすぎていたし。

 だから、今みたいなディオネがたぶん本来の姿というか。

 

 あのクソみたいな世界で、聖女なんて肩書きを任されてたんだ。多少、甘やかしてやるか。

 

 そう思って、ディオネの頭にぽんっ、と手を置いた。

 

「ふぇっ!?な、なんですか?」

「なんていうか、お疲れ様」

「何がですか!?」

「色々と」

 

 正直、たまたま俺は巻き込まれただけで。そこに傷ついたこいつがいたから、なんとかしてやらないとって思っただけなんだけど。

 

 なんとかして、そのまま放っておくのもよくないしな。

 

「……なんか、そういうことなら甘えておきます」

「それでいいよ、甘えたがりの聖女さん」

「元ですし。……あの、私恋人なんですよ?」

「そうだな」

「もうちょっとなんか、こう。恋人っぽいこと、とか」

 

 横目で、ちらちらとこちらを見てくる。何かを期待しているような目で。

 

 ……前から思ってたんだけど、なんかがっつきすぎなんだよな。異世界の人間だからなのか、ディオネがそういう人間なのかってのがわかんないけど。

 

 なんていうか、めっちゃ積極的なんだよな。

 

 そんなにぐいぐい来られるとこう、困る。

 

「恋人っぽいことって?」

「……惚けてます?」

「じゃあ、デートでもするか」

「いや、それはしますけどそうじゃなくて。……証明が欲しいんです」

「……」

 

 しょうがないやつだな、本当に。

 

 ディオネをゆっくりと抱き寄せる。

 

 びくり、とディオネが震えた。

 

 唇に、柔らかい感触がした。

 

「これでいいだろ」

「……湊さんも、照れたりするんですね?」

 

 呆けたようにして、ぽつりとディオネが返す。

 

「って、えっ?えっ?今のって、ええっ!?」

 

 と思えば、急に騒ぎ始めた。

 

「うるさいよ、ディオネ」

「いや、だって!」

「恋人らしいことがしたかったんじゃないの?」

「そうですけど!」

「じゃあ、いいじゃん」

「そうですけどね!?」

 

 まあ、こういう騒がしい日々も悪くはないかな。

 

◇◇◇

 

 ゆっくりと、体を起こそうとして何かが俺を包み込んでいるのがわかった。

 

「……ライ」

 

 耳元で、シリルの声が聞こえた。

 

 ……ん?なんで?

 

 ここは、ベッドか。寝ている状態で、後ろにシリルがいる?

 

 というか、抱き締められてる。……ああ、そうか。

 

 そういや、シリルに冗談で一緒に寝ようとか言われてそのまま寝たんだっけ。

 

「ねえ、ライ。一緒に寝ない?」

「……盛ってんの?」

「そういうんじゃないけど。ライと一緒にいると落ち着くから」

「あっそ、別にいいけど。なんなら抱き枕にでもするか?」

「……本気?」

「こっちは散々、いろんなやつに抱き締められてんの。それぐらいどうってことないけど」

 

 とか言って、そのまま抱き締められて寝たんだっけ。

 

 ……本当に何してんだろ、俺。

 

 いや本当にさ、今になって思うんだよな。ずっとやらかしてたなって。

 

 アクイラからも、散々そういうことを言われてた気がする。人たらしだとかなんとか。

 

 ……距離感が近かったのは本当に、間違ってたな。もう少し遠くからでもよかったかなって。

 

 まあ、それだと逆に仲良くなれなかったやつもいるかもしれんし。勢いでいかないと、イェルクとか無理そうだしな。

 

「ライ、起きてる?」

 

 ぎゅっ、と抱き締められる力が強まる。

 

「暑いんだけど」

「抱き締めてもいいって言ったのはライだよね」

「うるさいな」

「……そうやって、反抗的になるならさ」

 

 ぐいっ、と顔を後ろに引っ張られる。目と鼻の先に、シリルの顔があるのがわかる。

 

 ばくばくっ、と鼓動が高鳴った。

 

「また、キスしてもいいけど」

「~~っ、お前」

 

 何を言ったらいいかわからなくて、そこで止まった。

 

 デートだとか称して、こいつと一緒に出掛けたときに。手を繋いだりだとか、そういうことをしたあの日に、触れた唇の感触がまだ残ってるような気がした。

 

 ああもう。めっちゃ意識してしまってる。

 

 おかしいな、俺は別に男であることをやめたつもりとかはないんだけど。

 

 ずっと、女の体になっていたせいだろうか。

 

 いや、たぶん違う。

 

 男である、という鏑木湊の存在は現実に行った本体のあいつにほぼ託してしまっていたんだ。

 

 だから、もうこの体で生きていくこととかに抵抗がなくなって。

 

 前は生意気なガキだった、こいつにぐいぐい来られても、そのまま受け入れてしまいそうになってるんだ。

 

「っていうか、キスしてもいい?」

「嫌」

「そう言いながら、どうせ拒否しないでしょ」

「うるさっ、んんっ」

 

 無理やり、口を塞がれた。

 

 そのまま、押し返そうとしてもびくともしない。

 

 少しずつ、体の力が抜ける。

 

 口が離れて、深く息を吸い込んだ。

 

 顔が熱い。

 

「ライ、顔が真っ赤」

「……早く、ベッドから出たいんだけど」

「もうちょっとだけ、ライを抱き締めてたらダメ?」

「うざ」

「それ、反抗的にしてわざとキスされに言ってる?」

 

 このままだと、またされそうになってしまうから無理やりベッドから抜け出した。

 

「ねえ、ライ。拒否しないってことはさ、このまま俺のものにしてもいいかな」

 

 ……ぐいぐいどころじゃなくないか、こいつ。俺のものとか言うキャラじゃなかっただろ。

 

 そう思いつつ、なんとなく悪い気がしない俺に腹が立つ。

 もしかしてさ、俺って押しに弱かったりすんのかな。

 

「まだダメだよ」

「じゃあ、そのうちいいって言わせるから」

「やってみたら?」

「わかった」

 

 やっべ、煽るとこいつすぐキスとかしてこようとするじゃん。

 

 シリルからなんとか遠ざかる。

 

「お前、ぐいぐい来すぎ。もうちょっと段階踏めよ」

「段階?」

「……まずは、告白とかあんだろ」

 

 と、言うとシリルはぱちくり、と瞬きをした。

 

「好きって、何回も言ったけど」

「……いや、そうだけど。いきなりキスにはならないだろ」

「強引にやらないと、ライには伝わらないから」

「…………そういう、強引なことしないならさ。もうちょっと、その……恋人っぽいことしてもいいけど」

 

 急に、視界が塞がれた。いや違う。目の前に、シリルの胸元がある。抱き締められてる。

 

「好きだよ、ライ」

 

 と、最後に言われたその言葉に、俺はただこくりと頷くだけだった。




他キャラのifエンドを書こうとしたのですが、なんかうまいことできなかったので、アフターを書きました。
本当は設定とかまとめて、ついでにこれを出そうかとしたおまけだけど、なぜかこっちだけでてきたという話
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生者がTS魔法少女になって頑張る話。(作者:メルヘン侍)(オリジナル現代/冒険・バトル)

TSして魔法少女して頑張る話です。▼カクヨムでも同時投稿しております。


総合評価:1538/評価:7.55/連載:42話/更新日時:2026年06月03日(水) 11:57 小説情報

TS転生者、魔法少女世界に転生するも洗脳悪堕ち魔法少女にされて妹と戦わされる(作者:辻契約マスコット)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 悪の組織『シン・アーク』と魔法少女達が日夜戦う世界にTS転生した光の魔法少女オタク(自称)は、ある日悪の組織に連れ去られ、洗脳悪堕ち魔法少女にされてしまった!▼ 一方その頃、彼/彼女の今世の義妹はマスコットと契約し、魔法少女として戦う覚悟を決める。▼ これは、愉快な悪の組織の洗脳悪堕ち魔法少女と、愉快なニチアサ風光の魔法少女の、姉妹の戦いのお話し。


総合評価:1787/評価:8.18/連載:6話/更新日時:2026年07月11日(土) 21:51 小説情報

TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女(作者:こばみご)(オリジナル現代/コメディ)

魔法少女パワーをチューチューするために原石を誘拐したら、とんでもねえ変態だった。恐ろしい!


総合評価:2747/評価:8.75/連載:24話/更新日時:2026年08月10日(月) 23:00 小説情報

死んでも復活して永劫の時を生きる摩耗しかけた女魔王様と死にかけていたところを拾われたTS転生者が互いに互いの脳を焼いた話(作者:団結せよ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 死んでも復活し続けて摩耗している感じの永劫を生きるちょっと抜けてる魔王系お姉さんが、異世界転生して口減らしのために売られてアホみたいに過酷な労働環境から命からがら逃げだしたTS転生者を気まぐれに拾った結果、割と取り返しのつかないレベルで依存しあう関係になっただけの話。


総合評価:1795/評価:8.67/連載:4話/更新日時:2026年05月26日(火) 12:12 小説情報

強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました(作者:ユーラ@Yura0628)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ミサイルの爆発に巻き込まれた強化人間イーグル1。目覚めた先は、魔法少女が戦う過去の地球だった…!▼自身の体が女性に成っている事に困惑しつつ、元の世界に戻るため、イーグル1は魔法少女として戦う事の対価に、この世界の組織に協力を取り付ける。だが、襲いくる強力な魔獣を相手していく上で、身体的損傷を許さざるを得ない状況に追い込まれ…彼女に救われた魔法少女達は、目から…


総合評価:2075/評価:8.52/連載:37話/更新日時:2026年05月09日(土) 11:11 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>