星の軌跡   作:風森斗真

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そろそろ粗が出てくる頃です……。
たぶん、これから本文の改訂とかが多くなると思いますが、ご了承を。
それと、ルオンのプロフィールみたいなものをケルディック編が終わるあたりにあとがきで出そうと思っています。


初めての実技試験 二、特別実習

実技試験の順番が回ってきたエマ、ラウラ、ルオン、ユーシスの四人は各々の武器を手に取り、身構えた。

ラウラたちの準備が整ったことを確認したサラは、あげていた右手を振り下ろすと同時に、高らかに試験開始を宣言した。

 

「はじめっ!!」

 

それを合図に、ルオンは空いている手を腰のホルダーに伸ばし、中に収納していた呪符を引っ張り出した。

同時に、ラウラとユーシスにむかってその呪符を投げつけながら、詠唱を開始した。

 

「オン、イダテイタ、モコテイタ、ソワカ!」

 

ルオンの詠唱が終わった瞬間、ラウラとユーシスは自然と体が軽くなったように思えた。

同時に、自分たちがいつも以上に早く動けていることにも気づいた。

 

――こ、これは……?!

――体が軽い……これは、ルオンの仕業なのか?

 

戸惑いながらも、ユーシスとラウラはそれぞれが別れて案山子の左右に回り、切りかかった。

同時に、エマが後方で導力魔法の詠唱を開始し、ルオンも刀を逆手に構えて案山子にむかっていった。

 

一度、リィンたちが戦っている光景を見たためだろうか。ラウラとユーシスは案山子の動きを完全に見切り、的確な箇所に攻撃を仕掛けていた。

そして、前衛二人が作った隙を見逃さず、エマが導力魔法で牽制し、ルオンが案山子のもろい部分を斬りつけていった。

 

「これで決める!」

「とどめだ!!」

 

ラウラとユーシスの声が響いた瞬間、ルオンは刀印と呼ばれる形に手を握り、高らかにどこの国のものかもわからない言葉を詠唱した。

 

「オン、キリキリ、シバリ、ソワカ!」

 

瞬間、ルオンの投げた呪符から光の鎖が伸び、案山子の腕や体の各所に巻き付き、動きを完全に封じ込めた。

その隙を見逃す二人ではない。

完全に動きを封じられたと悟ると、ラウラとユーシスは互いの剣で装甲が薄いと思われる関節部分を斬り、とどめ、と言わんばかりに、ラウラの剛剣が首にあたる部分を切り付けた。

活動機関が停止したためか、案山子は動きを止めた。

 

「そこまで!」

 

サラの高らかな終了の宣言とともに、ルオンたちは自分たちの武器をしまった。

 

「……ルオン。そなたに一つ聞きたいのだが」

「うん?」

「そなたの使っていた術のようなもの、あれはいったい?」

 

通常、魔法はARCSのようなオーブメントを利用し、取り付けたクォーツに秘められた導力を具現化させるものだ。

むろん、それ以外にもアーティファクトを利用することで導力魔法とはまた異質な現象を引き出すこともできる。

 

だが、ルオンが使っていたそれは、どうしても『異質』のように思えてならないようだ。

 

「ん~……まぁ、東方の導力魔法みたいなもの?」

「なぜ疑問形なのだ……まぁ、いまはそれでかまわぬが」

 

ルオンは肩を竦め、微苦笑を浮かべながら、ラウラの疑問に答えた。

だが、ラウラはどこか納得することができないらしい。さらに掘り下げて聞いてみようとしたが、ひとまず、時間がないということもあってか、これ以上の質問はしてこなかった。

 

「まぁ、いずれ、教えることができると思う。俺も、この力についてはまだわかってないことが多くてさ」

「ふむ?ならば、その力も交えて、そなたと剣を交えることができる日を楽しみにしておこう」

 

ルオンの謝罪と、約束を聞いたからか、ラウラはひとまず納得することにしたらしく、待機メンバーが控えている場所まで戻っていった。

ルオンもそれに続いて戻っていくところを見届けたサラは、残されたメンバーを呼び出し、最後の試験を開始した。

 

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「うんうん、なかなかいい感じじゃない?……さてと、実技試験が終わったところで」

 

最期の試験が終了すると、サラが意味深に言葉を切り、人数分の封筒を取り出した。

 

「もう一つの特別なカリキュラム、特別実習について説明するわね」

 

特別なカリキュラム。

それは、リィンたちがオリエンテーリングでサラから聞いたものだった。

 

「まぁ、早い話があなたたちにはA班とB班の二つに分かれてもらって、こちらが指定した場所で課題をこなしてもらうってだけ」

「……ずいぶんあっさりと説明してくれましたけど、それってようは……」

「おっと、ルオン。それ以上はNGよ?さ、みんな班分けと実習先を受け取って」

 

ルオンが何かを言いかけたが、サラはそれを途中で遮り、班分けと実習先が書かれた紙を配布し始めた。

そこに書かれていたのは。

 

《A班 実習先:交易都市 ケルディック》

メンバー

リィン、エリオット、ルオン、アリサ、ラウラ

 

《B班 実習先:紡績町 パルム》

メンバー

ガイウス、マキアス、ユーシス、フィー、エマ

 

その班分けをみた瞬間、その場にいたメンバー全員が重々しい雰囲気に包まれたことは言うまでもない。

なにしろ、班分け、とりわけ、B班のそれには悪意以外のなにものも感じないのだ。

が、サラからの言葉と、従わざるを得ない、という雰囲気から、問題を抱えている四人はあきらめの雰囲気を作り出していた。

 

――これは……嵐の予感がするな……

 

その雰囲気を肌で感じながら、ルオンはただただ冷や汗をほほに伝わせて微苦笑を浮かべていた。

 

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その夜。

ルオンは特別実習で必要となるものをリストアップし、準備を整えていた。

ある程度の荷造りを終え、ほっと一息ついていると、ARCUSから着信を告げる音が聞こえてきた。

 

――誰だよ、こんな時間に

 

半眼になりながらARCUSを手に取り、耳にあてた。

 

「はい」

《あ、ルオン……ごめんなさい、こんな時間に》

 

不機嫌な声で答えるルオンの耳に、エマの穏やかな声が届いた。

Ⅶ組の良心とも呼ぶべきエマがこんな夜更けに通信をしてくるとは思えなかったルオンは、若干驚いたような表情を浮かべつつ、エマに問いかけた。

 

「どうした?」

《えぇ……今回の班分けで、少し》

「……今更、教官に変更してくれって談判しても無理だと思うぞ?」

《うぅ、そうですけど……》

 

彼女の場合、ガイウスがいるだけまだ救いなのかもしれない。

だが、それでもあの二人(マキアスとユーシス)の喧嘩、というよりもいがみ合いを二人で止めることができるとは思えない。

むろん、フィーがいることを忘れているわけではないが、基本的に面倒くさがり屋の彼女がこの件に首を突っ込むということはまずありえない。

それゆえに、エマは今ストレスをかんじているのだろう。

 

「……帰ってきたら、胃痛に効く薬湯、調合してやるから」

 

そっとため息をつきながら、ルオンはそう告げた。

物心ついて間もなく、母親と死別したルオンだったが、それまでに様々なことを教わってきた。その中には、村で生計を立てるために行っていた、簡単な薬湯の調合も含まれていた。

 

ちなみに、お茶を淹れる技術やハーブの調合も教え込まれていた。

そのため、村にいたころから、ルオンとエマが淹れるお茶はうまい、と評判になるほど、二人はお茶淹れに長けている。

その言葉を聞いて、エマもようやく決心がついたのか、いまだに煮え切らない、と言いたげな口調ではあったが、なんとかやってみる、と答えた。

 

《……薬湯ではなくて、ハーブティーにしてください。それなら頑張れそうです》

「あぁ、わかった。んじゃ、明日も早いだろうから、もう寝ろよ?お休み」

《えぇ、おやすみなさい》

 

いまだに根に持っているのか、ルオンが実習先から帰ってこないことを危惧しているかのような一言を聞き、ルオンは呆れたと言わんばかりに微苦笑を浮かべ、そう答えた。

その答えを聞いて、エマは通信を切った。

 

通信が切れ、ルオンはARCUをしまうと、窓を開け、夜空を見上げた。

街灯がそこそこあるトリスタの町ではあるが、それでも空に輝く星が見える程度には暗い。

星を見上げ、ルオンは急に、胸騒ぎを覚えた。

何かが動き始めている。

そんな予感が、彼の胸の中で過ぎ去っていった。

 

――あぁ、またか……この感覚は、たしか三回目だな

 

自嘲気味の笑みを浮かべながら、ルオンは先ほど覚えた感覚を振り返った。

この感覚を覚えたのは、これで三度目だ。一度目は母親が流行り病で死んでしまったとき。二度目は、エマの故郷を離れるとき。

そして、三度目が今回。

 

いずれも、どこかから旅立つときに限って過ぎ去っていくのだ。

そして、その感覚を覚えるときは、往々にして、何か大きなことが起こる。

それが良いことであれ、悪いことであれ。

 

窓から空を見上げ、胸の中を完全に過ぎ去っていった感覚に思いをはせながら、ルオンはぽつりとつぶやいだ。

 

「……騒がしくなってきた」

 

それは、いまだに落ち着かない自分の心を指しているのか、それとも、これからこの実習で起こるであろう一悶着のことを指しているのか。

はたまた、帝国全土を巻き込むほどの何かを指しているのか。

つぶやいた本人ですら、それはわからなかった。

だからこそ、ルオンは同時に願った。

 

――願わくば、これからさき、穏やかであらんことを。Ⅶ組(我ら)の歩む道に、幸多からんことを

 

しかし、その願いは天に届くことはなく、ルオンを含め、彼らの進む道には多くの困難が待ち受けていた。

ルオンがそのことを知るときは、まだ少し先であった。

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