星の軌跡   作:風森斗真

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というわけで、久方ぶりの本編
いやはや、お待たせいたしまして、申し訳ございませんでした


実習初日 三、A班、実習開始

一足先に宿の外に出たルオンと合流したリィンたちは、まず最初に街灯の修理について依頼をしてきたサムスに詳しい話を聞きに行くため、工房《オドウィン》まで向かおうとした。

その途中で、名物である大市のアーチが視界に入り込んだ。

アーチの向こうは多くの出店が所狭しと並んでおり、そこに並べられた商品を目当てに、多くの人々が集まっている様子が目の当たりに出来た。

 

「へぇ、また随分と賑わってるな」

「ほんと、ここからでも騒がしいくらいね。さすが、噂に名高いケルディックの大市ってところかしら」

「商品が集まるところは必然的に人も集まる。人が増えれば、騒がしくもなるってもんだな……」

 

アリサの言葉に、ルオンは薄く笑みを浮かべながらそう返したが、すぐにその表情は引き締まり、鋭い眼光が大市の方へと向かられた。

 

「……もっとも、人が集まるところは必然的に犯罪も多いところってことになるだけどな……」

 

ぽつり、と聞こえないようにつぶやいた言葉だったが、ラウラには聞こえてしまったのか、少しばかり視線を感じた。

だが、ルオンはそれを無視して大市の方へと視線を向けた。

 

「依頼の中には魔獣討伐もあったから、薬の類を補給しておくにはちょうどいいかもな」

「そうだな。けど、まずは工房に話を聞きにいってからだ」

 

淡白な対応に、エリオットだけでなく、リィンたちも呆れたといわんばかりの苦笑を浮かべ、ルオンの後に続いた。

 

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工房の主から話を聞いたリィンたちは、その後も順調に課題を片付け、最後に大型魔獣の討伐に向かっていた。

道中、ルオンは何か気にかかることがあったのか、難しそうな顔をしながら沈黙を守っていた。

その理由は、今日までに片付けた依頼で、自分たちが目の当たりにしてきた、ケルディックが抱える問題についてだ。

 

その多くは、クロイツェンを治める貴族、すなわち、アルバレア公爵による増税が原因だった。

一見すれば平穏そうに見える帝国だが、それはあくまで表面上の話であり、実際には、鉄血宰相ことギリアス・オズボーンが指揮を執る"革新派"と四大名門が指揮を執る"貴族派"の二大勢力による小競り合いが続いている。

その影響は、こうして市民の生活に現れてくるのだ。

現に、彼らの前にいる大型の魔獣は、本来ならば領邦軍に退治の依頼がいくはずのものだ。

 

だが、領邦軍は大部分が貴族、あるいは貴族に準じる身分の人間で構成されている。

つまり、それだけ矜持が高い連中が主ということになる。

そのような人間は総じて、危険なことに自ら首を突っ込まない。ここ、クロイツェン州の領邦軍も、そのような、矜持ばかり高く、かといって領民の困りごとを解決しようとはしない人間で構成されているため、こういった事案のほとんどは片付けられずにそのまま放置されていることが多いのだ。

 

「……あれだな」

「あぁ……でかいな」

 

ラウラがつぶやいたように、目の前にいた討伐対象の魔獣(スケイリーダイナ)はリィンたちより倍以上もある体格をしていた。

それだけ、目の前にいる対象が驚異的、ということになる。

 

「……けどま、どうにかなるだろ」

 

いいながら、ルオンは腰の刀に手をかけた。

その一言に、リィンたちは、確かに、とうなずいていた。

確かに、個々で戦った場合、この魔獣に勝つことは容易ではない。

それどころか、餌になってしまうのがオチだろう。

だが、今の自分たちには、数の利だけではなく、"戦術リンク"という切り札がある。

むろん、一人省けてしまうが、それはそれ。リンクをつないでいる者同士で連携し、カバーしていけばいい。

 

「……よし、いくぞ!」

「応っ!!」

「了解だ!」

「「了解っ!」」

 

リィンの号令とともに、五人は一気に飛び出し、討伐対象の前に躍り出た。

最初に動いたのはルオンとエリオットだった。

エリオットは魔導杖を構え、魔獣の傾向を解析し、その間にルオンが、ホルダーから数枚の呪符を一度に魔獣に向かって投げつけたのだ。

呪符は、魔獣に向かって行く間に光を宿し、その光が互いをつなぎ、網のような形になった。

 

「縛っ!!」

 

一瞬の出来事であったためか、それとも単に魔獣の反応が遅かったのか、ルオンが片手で印を組み、そう叫んだ瞬間には、すでに魔獣は網の中に囚われていた。

一度、旧校舎で見てはいるものの、どんな原理で作りあげているのかまったく理解できないリィンたちは、戦闘中であるにも関わらず、驚愕で動きを止めてしまった。

 

「……長くはもたねぇかな」

「解析完了!リィン、ラウラ!お願い!!」

「心得た!」

「任せてくれ!」

 

ルオンが冷や汗をつたわせながらそう呟いた瞬間、エリオットが解析を終わらせ、リィンとラウラに合図を送ると、二人が同時に答え、魔獣に斬りかかった。

その間に、ルオンとエリオットが戦術リンクを結び、導力魔法の詠唱を開始し、アリサは最前線に出ているリィンとラウラの援護に回っていた。

 

「アクアブリード!」

「シルバーソーン!」

「燃え尽きなさい!ファイアッ!!」

 

詠唱が完了し、ルオンとエリオットが同時に導力魔法を、アリサは導力弓につがえた矢を放ち、スケイリーダイナに命中させた。

三つの攻撃が命中した箇所が、急所をとらえていたのかスケイリーダイナの巨体が大きく揺らいだ。

 

「「いまだ/勝機っ!!」」

 

それを見逃さなかったリィンとラウラが、ほぼ同時にスケイリーダイナに渾身の一撃を与えた。

二人の一撃は、スケイリーダイナの命を刈り取るには十分だったらしい。

リィンとラウラが自分の武器を納めた瞬間、どさり、と大きな音を立て、スケイリーダイナは事切れ、倒れた。

ほんの少しの沈黙のあと、ルオンはその場にいる誰にも聞こえないくらいの小さな声で。

 

「対象、討伐完了」

 

とつぶやいていた。

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