いや、ほかの作品に手をつけなければいいじゃんなんですがね……
本編どうぞ
結論から言って、リィンたちは無傷で窃盗グループの制圧に成功した。
導力銃を所持しているといっても、訓練を受けたわけではない、ただのチンピラだったようだ。
だが、だからこそ気になることもある。
「さぁて、洗いざらい、話してもらおうかね?」
「この計画をあんたらに依頼した黒幕がいるはずだ……そいつが誰か、教えてもらおうか」
会話の中にもあった『あいつ』という言葉。何より、少しばかり古い型であるとはいえ、普通なら一般人が手にすることのできない導力銃を所持していたこと。
これらから考えても、誰かしら黒幕がいることは確実だ。
A班全員はそう判断して、尋問を開始しようとしたその時だった。
「…………え?…………」
エリオットが何かに気付き、背後の茂みに視線を向けた。
「どうした?エリオット」
「いや、なんか、笛のような音が……」
エリオットがそう答えた瞬間、森の奥から突然、大型魔獣の咆哮が聞こえてきた。
同時に、地響きにも似た音が徐々にこちらに近づいてきていた。
「総員、迎撃態勢!!」
ルオンがそう叫んだ瞬間、森のほうから巨大なヒヒの魔獣が飛び出してきた。
どうやら、この森のヌシらしく、縄張りには無断で入り込んできた侵入者たちに怒り心頭のようで、かなり興奮していた。
地の底から響ようなその怒号に、拘束されている窃盗犯だけでなく、あまり戦闘慣れしていないアリサとエリオットも委縮してしまった。
「リィン、ラウラ!大丈夫か?!」
「あぁっ!」
「どうにか!」
「そいつぁ重畳!!気合い入れろよ!たぶん、いままでで一番の強敵だ!」
リィンとラウラにそう警告し、ルオンは委縮してしまっているアリサとエリオットの方へ視線だけを向けた。
どうにか立ち直ろうとしていることは見てとれるのだが、
「アリサ!エリオット!!シャキッとしろっ!!」
突風が巻き起こったのではないか、と錯覚するほどの気迫が、ルオンの怒号とともに放たれた。
その気迫に萎縮が解けたらしく、二人は改めて武器を構え、リィン達と合流した。
「大丈夫か、アリサ、エリオット?」
「えぇ……もう大丈夫よ」
「だ、大丈夫。いけるよ!」
「わかった……A班総員、これより目標を迎撃する!ルオンも言った通り、これまで戦った中で一番の強敵だ!気を引き締めていくぞ!!」
『応っ!!』
リィンの号令に全員が答え、戦術リンクを結んだ。
すっかり萎縮してしまい、気絶しているものすらいる窃盗グループをかばいながらの戦闘になる。
当然、今の自分たちの力量では、苦戦を強いられることくらい、リィン達には簡単に予測できた。
そして、案の定、ヌシの意識は動けない窃盗グループへと向いた。
丸太ほどはある太さの腕を振り上げ、窃盗グループに向かって振り下ろそうとしたその瞬間だった。
「お前の相手は、こっちだろうがっ!!」
ルオンの声が響くと同時に、水の導力をまとった斬撃がヌシの腕に命中した。
距離があったことと、毛皮や筋肉の硬さのせいで切り落とすことはもとより、傷をつけることすらできなかったが、注意を向けるには十分な威力があった。
実際、ヌシはルオンたちにむかっていき、その腕を後衛のアリサとエリオットめがけて振り下ろしてきた。
「きゃぁっ!」
「うわぁっ!!」
「アリサ!エリオット!!」
「大丈夫かっ?!」
どうにか防御して大怪我は免れたものの、受けた衝撃の影響か、アリサは軽い脳震盪を起こしたらしい。
幸い、エリオットが回復の導力魔法で治癒を行っているため、それほど時間を置かずに復帰することができるはず。
もっとも、それまでの時間をリィンとラウラ、そしてルオンの三人だけで稼がなければならない。
「リィン!俺とラウラがあいつを引き付ける!」
「そなたは背後へ!!」
「わかった!!」
ルオンが咄嗟にそう叫び、ラウラと戦術リンクをつないだ。
同時に、ラウラがリィンに向かって叫んだ。
戦術リンクでルオンと意識が繋がっているため、ルオンの作戦を理解してのことのようだ。
リィンもそれを理解したのか、何のためらいもなくうなずき、ヌシの背後へと回った。
「せらぁッ!!」
「はぁっ!!」
ルオンとラウラはヌシの背後へ向かうリィンだけでなく、自分たちの後方に控えているアリサとエリオットに意識が向かぬよう、引きつけていた。
その間にも多少なりとも回復したエリオットが
「ARCS駆動――みんな、元気出して!!」
「みんな!頑張って!!」
エリオットが治癒の駆動魔法でルオンたちの体力を回復させると、アリサもようやく立ち上がり、導力弓を構え、矢を放った。
その一撃がヌシの足の腱を貫いたのか、ガクリ、とヌシは姿勢を崩した。
むろん、それを見逃すラウラではなかった。
「リィン!いまだ!!」
その言葉に答えるよりも早く、リィンは太刀の刃に炎の導力を流し込み、気を研ぎ澄ましていた。
「焔よ、わが刃に宿れ!」
その瞬間、リィンの太刀の刃に炎が灯った。
その炎は、昨晩、ルオンと手合わせしたときよりも力強く、濁りもなかった。
雄たけびとともに、リィンは炎の刃を振るい、ヌシを切り伏せた。
いくら固い毛皮に覆われ、強固な筋肉の壁があったとしても、それまでに受けたルオンとラウラの斬撃やエリオットの駆動魔法でダメージが蓄積されていた。
そして、リィンが放った最大の一撃が、ヌシの生命を刈り取る決定打となったようだ。
出現したときと同じように、大きな音を立ててヌシは倒れ伏した。その瞳にはもう、生命の光は宿っていなかった。