「あ、そうだ。ルオン、アリサ、委員長、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
「ん?なんだ?」
「はい?」
「どうしたの?」
ティータイムを楽しんでいたルオンたちは、リィンから唐突に頼みごとをされた。
「例の旧校舎の調査を手伝ってほしいんだ」
「前回、校長から依頼されたあれか」
「あぁ、そういえばサラ教官がそんなことを言ってたわね」
「えぇ……あの、ですが、いいんですか?わたしも同行しても」
急な頼み事、というのもそうなのだが、おそらくエマは、自分が同行しても大丈夫なのかという点に不安を感じているのだろう。
ルオンは入学したてのころに同行しているし、アリサは前回の実習で同じ班員として行動を共にしていた。
そのため、ある程度の実力はリィンも把握している。
しかし、エマは別だ。どんな動きをするのか、どんな導力魔法が使えるのか、そんなことはまったく知られていないはず。
そんな自分が同行しても足手まといになるだけなのではないか。
エマはそれを心配しているようだ。
だが。
「大丈夫だろ。エマの腕は俺が保証する」
「え?」
「だ、大丈夫なの?ほんとに」
「いざとなりゃ俺がフォローする」
その一言にアリサは、それなら大丈夫か、とうなずいた。
先日の実習で、ルオンの実力は、おそらく一端ではあろうが、よくわかっているつもりだ。
だからこそ、彼のサポートがあるのなら、安心できる、と思ったのだろう。
とはいえ、むろん、エマ本人の意思をないがしろにするわけにはいかない。
「委員長、もし予定がなければ、委員長にも協力してほしいんだけど……」
「そう、ですね……わかりました。わたしも興味があったので」
興味があった、というのは建前だ。本当は、現時点でのリィンの力を見てみたい、ということと、もう少しルオンと一緒にいたい、という二つが理由だった。
だが、リィンもアリサも、ルオンさえもその理由に気付くことはなく、旧校舎探索の準備を始めるのだった。
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旧校舎の下に広がる迷宮に足を踏み入れたリィンたちだったが、今回、同行することになったアリサとラウラ、そしてエマ以外のメンツは目を丸くした。
またも旧校舎に変化があったのだ。
「なんだ、これ……」
「先月とはまた違ってるな」
「そうなんですか?」
「あぁ……少なくとも、部屋の真ん中にあんな装置はなかった」
エマの問いかけに答えながら、リィンたちは装置のほうへと近づいて行った。
だが、特にこれといった特色のようなものはなく、罠の類も見当たらなかった。
危険な仕掛けがないことがわかると、リィン達は装置の周囲に散って、装置の観察を始めた。
「これって……もしかして昇降機かしら?」
「てことは、これは階層を指してるってことか?」
「たぶんね……けど、まだ行けない階層があるみたい」
「てことは、旧校舎の迷宮はこのパネルの表示の数だけの階層があるってこと?」
「えぇ、そのはずよ」
エリオットの質問に、アリサは迷うことなくそう答えた。
どうやら、この手の機械のことに慣れているらしい。
だが、ここでそれについて追及するつもりは、ルオンもエマもなかった。
「ひとまず、この「Ⅰ」の階層に先に行ってみよう。もしかしたらこの前に行ったときと迷宮の様子が変わっているかもしれない」
「そうだな。この装置の周囲を探索するだけにとどめて、あまり奥へ行かないようにすれば、さほど時間も取られぬだろう」
「なら、さっさと行くか」
リィンの提案に、ガイウスとルオンが賛同し、ルオンが慣れた手つきでパネルの操作を始めた。
あまりに手慣れたその動きに、エマは少しばかり目を丸くしていた。
「ルオン、いつの間に使い方を?」
「準遊撃士の時に、こういうのを扱うことがあってな」
「昔取った杵柄、ってやつか?」
「まぁ、そんなとこ?」
リィンの言葉に、苦笑を浮かべながら返すルオンに、エリオットは若干の違和感を覚えたが、昔何かあったのだろう、くらいにしかわからないため、それ以上の追究はやめることにした。
結論から言って、「Ⅰ」の階層には特に変化はなく、あまり細かく調査する必要性も感じられなかったため、リィン達は新しく開いた「Ⅱ」の階層へと向かった。
雰囲気こそ「Ⅰ」の階層に似ていたが、先ほどよりも魔獣の気配が濃いように感じられる。
「……こりゃ、気を引き締めないとだな」
「あぁ。なにがあるかわからない。みんな、気を引き締めて探索していこう!」
ルオンの言葉にリィンがうなずき、号令をかけると、全員、意識を周囲に集中させ、探索を開始した。