次回から、実習回に入っていきます
次回の特別実習の班分けに、当然、異議申し立てをしたマキアスとユーシスだったが、当然却下された。
それでも折れなかった二人に、サラは力づくで、言うことを利かせてみろ、と挑戦状をたたきつけてきた。
頭に血が上っている二人は、その挑発に乗ってしまい、リィンとルオンを巻き込んで、サラに挑むことになった。
挑むことになったのだが。
「くっ……」
「す、すまない……」
ユーシスとマキアスは早々に退場することとなった。
ユーシスはリィンと、マキアスはルオンと、それぞれリンクを結んでいたにもかかわらず、なぜかマキアスとユーシスが互いの足を引っ張り合う結果になった。
それを見たとき、ルオンもリィンもひそかに、もしかしてお前ら本当は仲いいんじゃないか、と思ったのは内緒の話だ。
「くっそ、わかっちゃいたがやっぱ強えぇ」
「あぁ……だが、どうする?」
「どうするもこうするも、全力で抵抗する!」
リィンの問いかけに、ルオンは長脇差を構え直して答えた。
補習の対象者であるマキアスとユーシスがダウンした今、巻き込まれたリィンとルオンがこれ以上、サラとの模擬戦に付き合う理由はない。
だが、それを理由にサラが試合終了のホイッスルを鳴らすかどうか考えたとき、二人とも「否」という結論を導いていた。
当然、ここまで来たら諦めるという選択肢も二人にはないため、破れかぶれというわけではないが、全身全霊で立ち向かうしか道がない。
ルオンとリィンは戦術リンクを結び、得物を構え、サラを見据えた。
その姿を見て、サラはどこか楽し気に微笑みを浮かべ、大型銃を構えた。
「なら、せいぜい抗って見せなさい!リィン、ルオン!!」
「上等っ!!」
サラの発破に応え、ルオンとリィンはサラとの間合いを詰めた。
当然、ただで近づけさせるほど、サラも甘くはない。
構えた大型銃の引き金を引き、弾丸の嵐を放った。
だが、その嵐の中を、ルオンは真っ直ぐに突っ切ってきた。
「縛っ!!」
その一言がルオンの口から飛び出てきた瞬間、導力で顕現した銀色の細い鎖がサラの手足に絡みついた。
手足の自由を失ったサラに向かって、ルオンはさらに間合いを詰めた。
だが、サラはその鎖を無理やり引きちぎり、自由を取り戻し、接近してきたルオンと切り結んだ。
「ほんと、相変わらずわけのわからない術を使うのね!」
「わけのわからない実力持ってるあんたに言われたくない!」
互いに理解できない部分があることに文句を言いながらも、二人は互いの剣を受け止め、あるいは受け流していた。
時折、銃弾がその中に混ざってくるのはご愛嬌というものだろう。
数回、ルオンとサラが切り結ぶと、鍔迫り合いになり、そのまま膠着状態に入った。
「……なるほどね、わたしの意識をあんたに集中させてリィンが隙をつく作戦か」
「……ばれたか」
戦術リンクで互いの意識をつないでいるからこそできる連携だ。
もっとも、経験値の差からあっさりと読まれてしまったのだが。
それでもかまわない、とばかりにリィンは太刀を鞘に納め、居合の構えを取った。
瞬間、ルオンと目が合うと同時に、太刀を引き抜いた。
それと同時に、ルオンは長脇差を逆手に持ち直し、長脇差に雷の導力を流しながら右足を軸にして回転した。
「『紅葉切り』!」
「『雷旋刃』!」
前後から同時に攻撃したのだが、サラはしゃがみこんでルオンに足払いをかけ、リィンに銃口を向けて引き金を引いた。
「「なっ??!!」」
「これで、おしまい!!」
足払いされたルオンと、眉間に弾丸をお見舞いされそうになったリィンはとっさに回避できたものの、バランスを崩してしまった。
その隙を見逃すほど、サラは甘くはない。
手加減しているとはいえ、かなりきつい一撃を二人に放ち、K.Oに持ち込んだ。
「「ま、参りました……」」
「ふっふふ~ん♪まぁ、あんたら二人は頑張った方じゃない?ま、とはいえ結果は結果。班分けはこれで決定だから、悪しからず」
それじゃ、お土産よろしくね。
と、余計な一言を付け加え、サラは授業をお開きにした。
結局、
-
その日の夜。
リィンたちはすでに就寝しているが、ルオンとエマはリビングにいた。
弁当や朝食の準備をしているわけではない。
実習で起こるであろうユーシスとマキアスの対立に不安を覚え、なかなか眠れなくなってしまったエマがルオンを呼び出し、話し相手になってもらおうとしたのだ。
もっとも、ルオンもなんとなく察していたらしく、カモミールとレモングラスをブレンドしたハーブティーを用意して、文句を言わずにお茶を淹れてくれた。
「ごめんなさい、ルオン」
「気にするなって。気持ちはわかるから」
呼び出しはしたが、やはり気が引けているのか、エマは申し訳なさそうに謝罪してきたが気持ちはわからないでもないため、文句を言うことはなかった。
「まぁ、リィンもいるからどうにかなるとは思うが……」
「リィンさんがいても、どうにかなりそうな気がしないのは……」
「……言うな」
リィンが頼りない、というわけではない。
だが、リィンがいても、あの二人をつなぎとめることができるかどうかがわからないのだ。
前回の実習でも、Ⅶ組の中で一番落ち着いていて、どこか悟っているようなガイウスがいても無理だったのだ。
たとえリィンだったとしても、前途多難であることに間違いはない。
とはいえ、こればかりはどうしようもないことなので。
「がんばれとしか、言えんな。すまん」
「う、ううん……また、ご褒美を期待してもいいかしら?」
ご褒美、というのは、以前、ルオンがエマのために調合した紅茶のことだろう。
そう思ったルオンは二つ返事でうなずくと、エマは柔らかな笑みを浮かべて、カモミールティーを口にした。
そうして、二人だけの静かなティータイムは過ぎていき……。