リーゼに見送られ、侯爵邸から出たルオンたちは、ハイアームズ侯から渡された課題を確認した。
前回と同様、指定された魔獣の討伐とセントアーク市民からの要請が混ざっているような内容になっていた。
「やっぱり、魔獣の討伐はあるのね」
「軍部からの依頼が一件、後の二件は住民からの依頼で、うち一件が教会からの依頼、か……ますます遊撃士みたいになってきたな」
「前回といい、今回といい、確かにそのような印象はあるな」
ルオンの感想にラウラがそう返すが、すぐに話題を変更し、どれから取り組むかの相談に入った。
「指定魔獣の討伐……これは、イストミア大森林に向かう途中でも大丈夫だろうから、併せてやってしまおう」
「なら、先にこちらの探し物について聞いてから、教会にむかうとしよう」
ガイウスの提案に全員が賛成すると、なぜか、ガイウスたちの視線はルオンのほうへと向いた。
なぜ自分のほうを見ているのかわからなかったルオンが首をかしげると、ラウラが驚くべき言葉を口にした。
「ルオン。ここはそなたが締める場だと思うが?」
「……え?なぜに俺??」
「だってルオン以外に誰がやるのさ?」
「うむ。お前が適役だと思うぞ」
ルオンの問いかけに、エリオットとガイウスがラウラに対して援護射撃を行い、アリサも同じようなことを言ってきたので、多数決が成立してしまった。
断るに断れない雰囲気になってしまったため、ルオンは仕方ないといいたそうな顔をしながらも、号令をかけた。
「しゃあない……トールズ士官学院Ⅶ組B班、現時刻を以って行動を開始する!A班に負けない成果を出すぞ!!」
「「「「応っ!!」」」」
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教会と服飾工房からそれぞれ、採取する素材についての話を聞いたルオンたちは、ひとまず、服飾工房から頼まれた樹脂の採取に向かうことにした。
採取を依頼されたものは、《
樹脂といっても、その輝きは宝石にも匹敵するほど、と言われている。
なお、東方では薬の原料としても扱われており、適切な手順を踏んで処理することで、滋養強壮薬ともなるのだとか。
「今回はそれを三つ、採取するのだったな」
「あぁ。採取できる条件に見合う古木の生息地を順番にあたっていくとしよう」
「……ちょうど、討伐指定されてる魔獣の生息域を通る形になってるわね」
「なら、ついでに魔獣も討伐しちゃったほうがいいかしら?」
「そうしようか」
「ならば、ある程度準備を整えておいた方がいいな」
アリサの提案通りに動くならば、町に戻っている時間はない。
ならば、不測の事態に備えて、ある程度、準備を整えておくことは、必要不可欠なことだ。
「あぁ。それじゃ、準備を整えてから出発するとしようか」
ルオンの一言に、全員がうなずき、さっそく、準備に動いた。
おそらく、ここから一日仕事になるであろうことを想定し、少し多めの薬と昼食を購入し、街道へと向かった。
道中、やはり魔獣の類の襲撃はあったものの、戦術リンクをうまく活用することで、無事に切り抜けることができたことは言うまでもない。
現に。
「これで!」
「終わりだ!」
リンクを結んでいたルオンとラウラが、比較的大きな魔獣を前後で挟み撃ちにし、ほぼ同じタイミングで攻撃を加えた。
うまく急所を捉えたらしく、同時二段攻撃は魔獣の息の根を止めるには十分だったらしく、どさり、と大きな音を立てて、地面に倒れた。
「やるな、ラウラ」
「そなたの剣技もなかなかだったぞ」
こつん、と拳と拳をぶつけあいながら、ルオンとラウラは互いを称賛しあった。
その様子を見ていたエリオットは、二人の剣技の凄まじさに目を丸くしていた。
だが、ガイウスはどこか感心したような眼差しになっていた。
「リィンといいラウラといい、やはり強者がそろっているな、俺たちの級友は」
「あ、あははは……なんというか、僕、ほんとに場違いな気がするよ」
「安心なさい、エリオット。わたしだって自信がないわ」
武闘派ではなく知能派なエリオットの不安そうな声に、体育会系の部活に所属してはいるがラウラほど動ける自信がないアリサがそう慰めていた。
「さぁて、時間が惜しい。さっさと行こうか」
いつの間にか戻ってきたルオンのその一言に、全員、自分たちがまだ目的地まで半分の距離も進んでいないことを思い出した。
思い出したのだが。
「……さすがに、ちょっと距離長くない?」
「うむ……馬を借りてくるべきだったか?」
「いや、そもそも、セントアークに馬いた?」
目的地までの距離が長いことを失念していた。
行く道を阻まれたからといって、無駄に戦闘をしている時間はない。
ないのだが、指定魔獣の討伐を考えて体力や薬類を温存することを念頭に置いての戦闘は、やはり難しいものがあった。
「……あぁ、くっそ。兄貴だったらもうちっとうまくやったのかな……」
「え?ルオン、天涯孤独じゃなかったっけ?」
「あぁ、兄貴っても実兄じゃないよ。俺が勝手にそう呼んでるだけ」
笑みを浮かべながら、ルオンがそう答えた。
どうやら、エマ以外にもちゃんと人間関係を築けているらしい。
はたして、ルオンがその兄貴と呼び慕っているのはどのような人物なのか。
少しばかりの疑問と好奇心を残したまま、一行は目的の場所へとむかっていった。