イストミア大森林を抜け、ルオンたちは街道に出た。
が、その空気は少しばかり気まずいものが流れていた。
いや、A班のそれよりだいぶましなのだろうが、気まずいものは気まずかった。
なぜこの空気が流れているのか。
その原因はルオンにあるだけでなく、エリオットたちが聞いていいかどうか迷っているということが原因だった。
確かに、Ⅶ組結成から一か月以上が経過しているため、互いに互いのことがわかってきたし、気心も知れてきた。
だが、さすがにプライベートなことまで遠慮なく聞くことができるかと聞かれれば、答えは否だ。
特に、アリサとエリオットは、自分の出自について話すことを未だためらっている状態だ。
ルオンのことだから、聞けば答えてくれるのだろうが、一方的に聞くだけではフェアじゃない。
そう考えているため、ルオンに先ほどの少女のことを聞けずにいた。
聞けずにいたのだが。
「……里長については、俺も、たぶんエマも知らないことが多くてな……十年以上、なぜかあの姿なんだよ」
「……え?」
突然、ルオンの口からその言葉が出てきた。
あまりに唐突に聞きたいことを答えられ、アリサとエリオットは思わずぽかんとしてしまった。
「……んだよ、さっき聞きたそうな顔してたじゃないか」
「そりゃまぁ……」
「否定はしないが、少し唐突だったような気がしてな」
「俺からすりゃ、さっきまでの空気のほうが耐えられねぇって。重苦しくて息もできねぇ」
苦笑を浮かべながら、ルオンがそう続けた。
たしかに、さきほどの気まずい空気はすでにない。
どうやら、一番きにしていたのはルオンのほうだったようだ。
「け、けどよかったの?」
「ん?」
「だって、知られたくないこととかだってあったんじゃ……」
「ん~……まぁ、このくらいだったら別に問題ないし、むしろこのままぎすぎすした状態になる方が俺にとっちゃ問題だ」
どうやら、ルオンはこの空気を作っているのは自分であるということを自覚しているようだ。
が、それで困惑しないかどうかはまた別の問題だ。
「で、でも……」
「別に里長のことは知られたくなかったわけじゃない。ただ、どう説明したらいいか俺もわからなかったから、あの場では話さなかったんだ」
「たしかに、なぜあの容姿で里長なのか、どう説明すればいかわからないな」
「あの場でどう説明すべきか考えないまま答えていたら、余計にこじれていたかもしれない、か」
「そ、だからほかの課題もやりながら考えをまとめて、夜にでも話そうと思ってたんだけど……好奇心を抑えられてなかったしな」
苦笑しながら、ルオンはガイウスとラウラの言葉に返した。
Ⅶ組の面々の中でもっとも冷静沈着なガイウスとラウラでさえ、気になって仕方がない、と顔に書いてあるほどだったのだ。
好奇
その評価はさておき、抑えきれない好奇心で集中力が乱されることで、最悪の結果を招きかねない。
それに何より、Ⅶ組であれば、別にローゼリアのことを教えてもかまわないと思っていた。
むろん、隠しておかなければならないことはまだいくつかあるが、それでも、里長のことくらいはかまわないだろう、と判断してのことだった。
「そ、そういうこと……」
「あはは……なんだかせかすようなことしちゃったかな?」
「なに、気にすることはないさ」
ルオンの意図を知ったアリサとエリオットは、どこか安堵したような表情を浮かべていた。
不快に思ったのではないか、と心配していたかどうかはわからないが、少なくとも、仲違いするようなことはないだろう。
この話題にひとまずの決着がついたと判断し、ルオンは笑みを浮かべながら。
「それよか、早く行こうぜ」
と提案した。
確かに、街道を歩いて少しばかり時間を取られてしまった。
急がなければ、日暮れまでに必須の項目すべてを終わらせることは難しくなるだろう。
今はとにかく急いで課題を終わらせることに集中すべき、と判断し、一行は次なる課題の解決へと向かった。