戦闘描写がなかなか難産で……
まぁ、それはそれとして、本編どうぞ
ラウラから呼び出されたルオンは、愛刀を手に、ホテルのエントランスに来ていた。
数分とすることなくラウラが姿を現すと、ついてきてくれ、とルオンを外へと連れだした。
ホテルを出て歩くこと数分。
二人は街道に出ていた。
「……ここならば、問題ないだろう」
「……なるほど、なんとなく察しはついた」
「そうか。話が早くて助かる」
ラウラがわざわざ市街地を離れ街道に出た理由は一つしかない。
普段はなかなか時間が取れなかったため、果たすことができなかった約束を果たそうとしているのだ。
それも、訓練の枠を超えた、全身全霊の手合わせを。
そのことをわかってはいるルオンだったが、どうしてもわからないことが一つあった。
「なんで俺なんだ?実力から言えば、おそらくラウラに次ぐのはリィンかガイウスだろ」
「あぁ、おそらくはな。ユーシスもかなりのものだが、宮廷剣術にはあまり興味がない」
「ならなおのこと……」
「だが、わたしが興味を持っているのはそなたなのだ、ルオン。形見とはいえ奥義書を受け取り、読み解き、修練をしながらも『初伝』とうそぶき続けるそなたの剣をどうしても見てみたい」
どうやら、純粋にルオンの実力が知りたいから、手合わせをしてほしい、ということのようだ。
そういえば、とルオンはラウラが士官学院に入学した理由を思い出した。
曰く、目標にしている人物に手を届かせたいから。
目標にしている人物というのは、おそらく、ラウラの父であり、《光の剣匠》の二つ名を持つ、帝国守護の片割れ。ヴィクター=S=アルゼイドのことを指しているとすぐに察することができた。
だからこそ、少しでも多く、実戦経験を積んでおきたいのだろう。
「わかった。そういうことなら」
ルオンとしても、またとない機会だと思っていた。
準遊撃士として活動していたころから先輩遊撃士たちに、中伝でもおかしくない、むしろそれで初伝とか噓だろ、と言われるほどの腕前ではあるのだが、その自覚はまったくなかった。
だからこそ、ルオンにとっても今回の誘いはいい機会だった。
聞けば、ラウラは現在、アルゼイド流の中伝を修めているほどの実力なのだという。
帝国守護の双璧、その片翼を担う流派なのだから、中伝に至るには並大抵の努力では足りないはずだ。
自分が本当に中伝でもおかしくなく実力を持っているのか、それを自分で推し量るには十分すぎる物差しだ。
「静心桔梗流初伝、ルオン・ツクヨミ――推して参る!!」
「アルゼイド流中伝、ラウラ・S・アルゼイド――いざ、尋常に勝負!!」
互いに名乗り、一瞬で間合いを詰めて互いの得物をぶつけ合った。
競り合いになるかと思いきや、ルオンはラウラの剣を受け流し、まるで水流のようにするりと背後に回った。
だが、その気配を察したラウラは振り向く勢いを使いながら剣を振り上げてきた。
紙一重でそれを交わし、ルオンは長脇差を逆手に持ち替え、柄頭をラウラに向けて突き出した。
「くっ!!」
ラウラは剣を持ち直し、突き出された柄頭を柄で受け止め、距離を取った。
だが、ルオンはそのまま追撃とばかりに首筋にむかって長脇差を振るってきた。
今度はラウラがそれを紙一重で回避し、ルオンとの間合いを取った。
「さすがに早いな……まるでリィンの抜刀のようだ」
「居合抜きは剣術の中でも速度がものをいう技だからな。あれと比べたらまだ遅い方だ」
ラウラの言葉に、ルオンは長脇差を持つ手を前にかざしながら、返した。
確かに、ルオンの言う通り、居合は一撃必殺を旨とした技であり、回避することは難しい。
その速さに比べれば、ルオンの動きは遅い方だ。
だが、それはあくまで剣速の話だ。
全体的な動きからすれば、ルオンの動きは確かに早い。
「ふっ、それを言われればな……だが、おぬしとリィンとの手合わせはやはり楽しいものだ」
「そらどうも……」
苦笑を浮かべながら、ルオンはラウラの称賛を受け止めた。
だが、まだ気を抜くわけにはいかない。
ほんの一瞬、和やかになった空気は再び張り詰めたものへと変わった。
この場に観客がいて、注意深く耳をすませば、パチリ、と細かな音が聞こえていることがわかっただろう。
向かい合っている二人の剣気がぶつかり合い、細かな火花を散らしているようだ。
「「……っ!!」」
二人は同時に地面を蹴り、互いの間合いを詰め、その手に握られた剣を振るった。
今度は鍔迫り合いに持ち込むことはなく、互いの剣閃の速度と鋭さに物を言わせた一発勝負。
自分の今までの鍛錬と剣にかける想いを込めた一撃が、互いに交差した。
その結果は。
「……さすが、帝国守護の片翼だな」
「そなたの腕もな……そなたの師、母君がご存命であったら是非に手合わせ願いたかった」
互いに背を向け合いながら、最後の一撃を称賛しあった。
その証拠に、ルオンの制服のブレザーは一部が破れており、ラウラの長い髪をまとめていたリボンは半分になってラウラの足元に落ちていた。
どうやら、相打ちになったようだ。
これ以上は明日に響くと考えた二人は、どちらからとなく得物を納め、元来た道を戻り始めた。
「満足したか?」
「あぁ、ひとまずはな。だが、まだまだ足りぬよ」
微笑みを浮かべながら、ルオンの問いかけにラウラはそう返した。
どれだけ強さを求めれば気が済むんだよ、と心中で突っ込みつつ、ルオンはラウラとともにホテルへと戻っていった。