仕事と他作品とが重なって重なって……。
はい、タイトルの通りです。
三話くらい、自由行動日の話にしようかと思います。
なお、今回の話で八葉一刀流にからむ話が出てきますが、あくまで作者の独自解釈です。
そこはご容赦を。
その夜。
自室にこもって符をしたためていたルオンだったが、不意に聞こえてきたノックオンに集中をかき乱され、これ以上、符をしたためるのはまずいと悟り、ドアの方へ向かった。
今まで使っていた符は、すべてルオンの手製によるものだ。
しかし、それを一枚したためるだけでも、かなりの精神力と集中力を要する。おまけに、それなりに力のある符を作ろうと思うと、時間や場所、道具、さらには向いている方角にも気を使わなければならない。
そのため、一度集中が切れたら、それ以上、符を作ることは難しくなってしまうのだ。
ドアを開けると、そこにはリィンが立っていた。
脇に抱えている生徒手帳から察するに、おそらく生徒会館で生徒会長から渡されたのだろう。
「サンキュ」
「どういたしまして。それより、ルオンは何をしていたんだ?勉強……ってわけじゃなさそうだけど?」
ルオンが着ているのは純白のバスローブのような服だった。
が、明らかに生地が違うし、部屋からはかすかに炭のにおいが漂ってきている。
「あぁ……札の補充をな。いろいろと面倒なんだよ、あれ作るの」
「へぇ……てっきり、書くだけの簡単な作業だと思っていたが」
「あぁ、無理無理。そうなると力のないただの模造品になるんだよ……ユン老師はそこまでは教えてくれなかったか?」
その言葉に、リィンは眉をひそめた。
その反応にルオンは、やはりな、とどこか納得したような顔になった。
太刀を使う流派は、ここ西ゼムリア大陸ではごく限られている。
いや、一つしかない、と言っても過言ではない。
それが"八葉一刀流"。東方の剣術、そのすべての流派の理に通じた"
ルオンもリィンと同じく東方に伝わる流派を扱うが、ルオンの得物はリィンの扱う太刀よりも一回り短い"長脇差"と呼ばれるものだ。
もちろん、八葉一刀流を修めてもいない。
彼が扱う流派は、ユン老師が東方の国にいた頃に学んだ流派であるため、八葉一刀にその面影があることは否定できないが。
「俺が扱うのは"
ルオンは答えながら苦笑を浮かべた。
まさか、自分の本当の故郷の話をすることになるとは思わなかった。
だが、なぜだかそれほど悪い気はしていない。
それだけ、故郷に愛着があった、ということなのか。それとも、自分と自分の母を捨てた一族とそこに住む人々を憎悪しているのか。
自身もわからないこの感情に、ルオンはただただ苦笑を浮かばせるしかなかった。
「すまない。立ち入った話だったな」
ルオンの表情に何かを感じたのか、リィンは困惑しているような笑みを浮かべた。
「いんや、かまわんさ……まだ、自分のことを話そうって思えるような雰囲気でもないからな……」
まだ入学式を終えてから一カ月も経っていないこの時期に、自ら進んで自分のことを話す気には、やはりどうしてもなれない。
それは、Ⅶ組のメンバー全員が同じことなのだろう。
もっとも、ルオンからしてみれば、エマの話は自分の過去ともかぶる部分があるため、聞く気すら起きないのだが。
「あぁ、そうだな……まぁ、そのうち打ち解けてくれるだろう」
「……ユーシスとマキアスを見てると、どうもそうは思えないけどな……どっかの誰かさんも、同じようなもんだし」
「あ……あはははは……はぁ……」
指摘され、リィンは重々しいため息をついた。
どうやら、まだ謝るきっかけをつかめていないらしい。
リィンが空回りしているのか、アリサが一方的に避けているのか。はたまた、その両方なのか。
――前途多難だな……
ルオンはリィンに気づかれないようにそっとため息をついた。
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翌日。
最初の自由行動日を迎えた第三学生寮は、意外にも静かな雰囲気をまとっていた。
それもそのはず。
なにせ、今、第三学生寮にはほとんど人がいないのだ。
唯一、エリオットの部屋の方からヴァイオリンの音が聞こえてくるくらいで、他には人の気配がない。
どうやら、ほとんどの同級生たちが出かけているようだ。
――さて、俺はどうするかな……
呪符をしたためようかとも考えたが、占いの結果では、今日はあまり日が良くないらしく、作ることは断念したばかりだった。
――ま、歩きながら考えるか
部屋にこもっているのはあまりよろしくない。
風と水は流れるからこそ穢れを祓い、陽気を導くのであって、今のルオンのように部屋に閉じこもっていることは、そのまま、穢れや陰気をため込むことと同義だ。
ただでさえ、人間関係がごちゃごちゃしている現在の状況で、これ以上、陰気をため込むと、さらに悪影響が出てくることは目に見えている。
そんなわけで、ルオンは町を散策しながら、今日をどう過ごすか考えることにした。