仕事やら他作品やらで投稿ペースが少し落ち気味。
まぁ、展開をどうするか考えているってこともあるのですが。
さて、お気づきの方もいらっしゃるとは思いますが、思い切って、タイトルを変えてみました。
もともと、どんなタイトルにするか、悩んでいたこともあったので、最初に考えていたこれに落ち着きそうです。
これ以上、変更することはないと思います……たぶん!
第三学生寮を出ようと、玄関に向かったルオンは見慣れた背中を発見した。
「……リィンか。おはよう」
「あぁ、おはよう。ルオン……どうしたんだ?」
「ん?町を散策しようかと思ってな。そっちこそ、どうしたよ?」
「俺はこれだよ」
そういいながら、リィンはルオンに何枚かの紙を見せた。
それを受け取って、書かれていた文面をざっと流し読みしてみると、どうやら、生徒会からの依頼であるようだった。
「ふ~ん?……なんというか、これって生徒会がやる仕事なのか?って感じのものばかりだな」
「そう思うか?けど、実際、学院の生徒会は町の人たちに頼られているからな」
「いやまぁ、それはそうなんだろうけどさ」
そっとため息をつきながら、ルオンはリィンに手渡された紙を返した。
そこに書かれていたのは、確かに学生に手伝わせるにはうってつけの内容ではあったが、生徒会に送るのではなく、自分たちからアルバイトという名目で人を募った方が良いのではないか、と思うような内容だった。
それについて、ルオンはそっとため息をついた。
「……
遊撃士とは、民間人を守るために設立された民間団体であり、民間人を守る、という目的のためならば、国とも対立することも辞さない互助団体だ。
だが、エレボニアではその活動はあまり行われていない。
帝国の政治を実質的に動かしている宰相、ギリアス・オズボーンの政策により、
だが、その影響で民間人の間でこうした些末な不祥事が起きるわけで。
「別に帝国の政治をどうこう言うつもりはないけど……これはこれで考え物だな」
「そうだな。でも、宰相にも何か考えがあってのことなんだろう」
「そうなんだろうが……ろくでもないことじゃないといいんだけど」
ルオンはリィンの返答にそっとため息をついて返した。
その返しに、リィンは苦笑を浮かべることしかできなかった。
「それはそうと、手にあまりそうだったら呼んでくれ。手を貸すことぐらい、俺にもできるだろ」
「……いいのか?」
意外、とでも言いたそうな顔をして、リィンは問いかけた。
予想していたとはいえ、その態度にルオンはため息をついた。
「あのな、俺たちはⅦ組のクラスメイトで仲間だ。仲間なら助け合う。それが普通だろ?」
「いや、君からそれを言われてもな」
「……まぁ、前科持ちってのは自覚してるし、何より柄じゃないってのはわかってんよ」
リィンの言葉にルオンは半眼になった。
確かに、ルオンは母親と死別してからは流浪の旅の中で生きてきた。
しかし、母親が健在だったころの時間と、エマの故郷やサラたちと過ごした時間は、間違いなく、記憶としてルオンの中に存在している。
その記憶が、少なくともルオンが人と関わることを避けるような性分にはさせることはなかったし、ひとまず、お人好しとは言われない程度に他者を気遣うこともできるようにしていた。
それを知ってか知らずか、リィンは、すまない、と謝罪し、改めて協力を頼んだ。
依頼へむかったリィンの背を見送り、ルオンはそっとため息をつき、何をしようか、と思いを巡らせた。
――そういえば、まだ部活を何にするか決めてなかったな……
基本的に、トールズ士官学院は部活動の参加は自由なのだが、サラから、できる限り参加するように、と念を押されてしまっている。
それに逆らう勇気は、ルオンにはなかった。
かといって、どの部活に入ろうか、それもまだ考えていなかった。
――見学自体は自由、ということだったので、今日のところは見学だけにしておこうか……
ルオンは、寮の扉に手をかけ、生徒会館へと向かうのだった。
そして、のちにルオンはこの選択をしたことを軽く後悔するのだった。
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文芸部の部室に入ると、部長と思われる黒い長髪の先輩が一足先に来ていたエマに、何かを熱く語っていた。
どうやら、何かの作品についての講義のようだ。
「……だから、ここの二人の心情をかんがみて……」
ルオンが入室したにも関わらず、滔々と文庫本を片手に語るドロテの様子を見ていたルオンだったが、一瞬にして凍り付いた。
――お、おい……あのタイトル、というより、表紙の挿絵は……
いわゆる、若い男同士のくんずほぐれつ、というわけで。
要するに薔薇の世界について記された小説について、熱く語っているのだ。
――今更ながら、俺、大丈夫なのか?いろんな意味で
被害妄想、なのかもしれないが、このままでは自分がⅦ組男子との日常についてあれやこれやと、あることないこと、根掘り葉掘り聞かされそう、というだけでなく、今彼女が手に取っている耽美小説にあるような
そこまで考えると、回れ右して教室の外へ出ていきたい、という衝動に駆られた。
しかし。
「……」
ドロテが熱く語っているその正面で、エマがにっこりとほほ笑みながら、ルオンを見ていた。
その態度に、ルオンはそっとため息をついた。
直接見なくても分かる。
なぜか、エマの背後からまるで鬼女のような顔立ちをした仮面が、青い炎をまといながら浮かび上がってきているように思えたのだから。
あの笑い方は、かなり怒っている、あるいは、言いたいことがある、という時にする彼女の冷笑でもあった。
さしずめ、今回の場合は、一人にしたらどうなるかわかってますか?、という意味が込められているのだろう。
「……」
ルオンはそっとため息をついて、教室からの脱出をあきらめた。
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ドロテの講義から数分。
ルオンは疲れた表情で生徒会館の一階にある食堂のテーブルに突っ伏していた。
正面にいるエマも、心なしか頬が赤い。
何も知らない人間が、ここ光景を目にすれば、二人の間に何かあったと邪推するのだろうが、あいにくとそのような面白い話ではない。
講義の後、ルオンはリィンたちⅦ組の男子メンバーとの普段の行動や会話について、エマはその行動や会話からどのような組み合わせが考えられるかという考察を聞かれ、精神的に参ってしまっていた。
「……正直、トマス教官から暗黒時代についての講義を受けていた方が良かった気がする……」
「そ、それは……その通りかも」
ルオンのつぶやきに、エマはひきつった笑みを浮かべながら同意した。
もっとも、彼女の心境としては、それもそれでどうなのだろうか、という疑問が浮かんでいたということはいうまでもない。
二人そろって、そっとため息をつくと、ルオンのARCUSから着信音が鳴り響いてきた。
「……??」
誰からの通信なのか、あまり心当たりがないルオンだったが、とりあえず、出てみることにして、ARCUSを手に取った。
「ルオンだが」
《リィンだ。いま大丈夫か?》
「あぁ、リィンか。どうした?」
通信をしてきたリィンから、何かあったのか問いただすと、リィンは、すまない、と言いたそうな声色で要件を伝えてきた。
《あぁ。生徒会からの依頼で、すこし手を貸してほしいんだ》
「……ん、OKだ。どこに行けばいい?」
今朝方、手を貸すと言ってしまった以上、手を貸してほしいと言われて、手を貸さないわけにはいかない。
約束を反故にするべからず。それがルオンの信条であり、母からみっちり教え込まれてきたことでもあった。
《ありがとう。そしたら、準備をしたら旧校舎に来てくれないか?ヴァンダイク学院長からの依頼で、旧校舎の調査をすることになったんだ》
「……了解。すぐ向かう」
そう答えて、ルオンは通信を切り、立ち上がった。
それを不思議そうに眺めていたエマは、きょとんとした顔で問いかけた。
「どうしたの?」
「リィンから手伝いの依頼が来てな。悪いけど、ちと行ってくる」
「えぇ。いってらっしゃい」
にこやかに微笑みながら、エマは生徒会館を出ていくルオンの背を見送った。
生徒会館の扉が閉まり、数秒、エマは目の前に置かれていた自分のカップを眺め、そっとため息をついた。
――……一緒に行くって、言えばよかったかしら……
もっとも、また別の機会にすればいい、と切り替え、エマはカップに残された紅茶を楽しむのだった。