賢い蝗害   作:メガメガネ

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覚醒

子供のころから虫が好きだった

 

夏になれば山に行って蝉をこれでもかと籠の中に入れて、バナナで罠を作って夜に見に行って、カブトムシとかクワガタムシとかオオムラサキとかスズメバチとか綺麗で、艶やかで、危険で、かっこいい虫が好きだった

 

でも、そのうちコンピューターが普及して、外に出ることが少なくなった。大学を卒業したあとは上京して、そもそも自然をあまり見なくなった。

 

デスクワークに続くデスクワーク。デスマーチを繰り返して最後は過労で倒れた。

視界が暗転する瞬間に引き継ぎのことを考えてしまってどうしようもないなと思いながら痛む頭に身を任せて意識を落とした。

 

そうして目が覚め、見えた景色は病院の知らない天井でもなく、会社の床でも部屋のベッドでもなく、悠々と木々が生える森だった。

 

苔むした岩と横に根を張った木々、うっそうと茂る葉の間から注ぐ太陽の光はとても幻想的な景色だろうと思う。とても美しく、荘厳で、昔見たスタジオジブリの映画に出てくる、不思議な生きものたちと、ばったり出くわしそうだといった感想も出てくる

 

体は動かない。そもそもここはどこなのだろうかという疑問が出てくる。

誘拐などの事件に巻き込まれた線が頭をよぎるが、そもそも最後の景色が会社の時点でなぜ森で拘束されているのかわからない

 

アニメや漫画、ライトノベルはよく後輩からおすすめを押し付けられたりしたから転生とか憑依とかそういったものは知ってるし、記憶に新しいがまさか自身に降りかかったかと思うと乾いた笑いも出ない

 

体は動かせず声も出ずこのままマイナスイオンを体に浴びて会社をバックレるのもいいなぁと現実逃避しかけたところで妙なことに気づく

 

昨日は雨が降っていたのか、自身の周りは水で囲まれ小さな池のような広さになっている

そしてその水面に映る姿はとうてい人間と呼べるものではなく、緑と黒で彩られた、醜いバッタの化け物だった。

 

(はぁ??)

 

思考がやけにうるさい。

 

(何だ?え?俺?これ俺?)

 

水面のそれが、わずかに揺れる。

同じように、こちらも揺れている。

 

(ロボとーちゃんでも原型はあっただろ!!なんでバッタなんだよ!!)

 

反射的にツッコミが出る。

 

(いやバッタかっこいいけど!!でも違うだろ!!)

 

(てかなんだ特殊メイクか?どうなってんだこれ)

 

笑う。

 

――つもりだった。

 

だが笑みは出ず、代わりに“ガチリ”と

 

顎が、鳴った。

 

「…………」

 

思考が、一瞬止まる。

 

ゆっくりと。

 

水面の“それ”が、口を開く。

 

同時に。

 

自分の“口”も、開いていた。

 

(……は?)

 

言葉は出ない。

 

静寂と沈黙がただただ理解だけを進めていく。

 

噛み砕くための顎。

 

引き裂くための歯。

 

すり潰すための――

 

(いやいやいやいや待て待て待て)

 

思考が、拒絶する。

 

だが。

 

その拒絶を、上書きするものがある。

 

腹が、減っている。

 

さっきよりも

 

明確に

 

強く

 

(……なんでだよ)

 

視界が、勝手に動く

 

いつのまにか自身よりも少しコミカルな化け物が視界の端で蠢いている*1

 

小さな虫のような人面のようなものがついたモノ

 

(……やめろ)

 

思考が、制止する

 

(それは違うだろ)

 

だが

 

欲に忠実に

 

勝手に

 

 

がちり

 

 

世界が満ちた、音がした。

 

「……ぁ」

 

何かが、崩れる

 

理性か

倫理か

 

それとも――

 

“人だった何か”か。

 

その奥で、微かに、笑い声がした。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ーーーーーー

 

ーーー

 

 

そうして100年くらい経つうちに慣れた

 

なんなら開き直った

 

(仮面ライダーよろしく謎の機関があったとして封印的なノリでここにいるってことはヒーローは来ないしクヴァールよろしく封印されてんならいつか解けるかもしれんけどそしたらフリーレン的な人が来て殺しにかかったりしてくるんやろうなぁ)

 

(俺がここにいる前の記憶はあるから多分憑依?なのかなぁ...てか何なんだよ手が四本で腹に口のある雷と風の炎と斬撃を使うバケモンと戦って炭のまま生き残ってる俺はよ

その後どうなったかは記憶にないし...)

 

(ここが剣と魔法の中世ファンタジーってより陰陽師って感じの世界なことはわかったからまだいいとして専門用語的なのが分からん!

術式だの呪霊だの領域だの極の番だの多すぎる!!!)

 

 

ーーさらに200年後

 

 

(よし大体わかるようになってきた。記憶をたどっていけば外殻はつかめてきたぜ

俺とかあの四本腕みたいなやつらが呪霊。異能力の術式とそれの必殺技みたいな領域と極の番。上記の力の全ての源の呪力。つかみかけてきたぜ核心をな)

 

 

ーーーさらにさらに500と6年後

 

 

突如襲ってきた歓喜に近い震えと力の奔流

封印が弱まったのではと思ったが違う。自身の力が強くなっている

 

世界の均衡が崩れたような、そんな感覚がほとばしる

400年ほど前にも似たような感覚があったがそれの非じゃない

 

ふと、脚を前に出した。水の感覚がした。大地を踏みしめた

 

動ける

 

歓喜の感情が湧き出た。まだ人らしい心が残っていたのか、呪霊にも喜ぶ感情があるのか、まぁ今はそんなこと気にする必要はない

 

本能に従え

 

「もぉぉういぃかぁいぃぃ??」

 

ちょうど目の前には餌がある

 

「ちくたくちくたく」

 

腹を満たせ

 

「こっちにおいでぇ」

 

俺はもう自由だ

 

*1
蝿頭




憑依転生者君覚醒

天元最大のガバ
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