賢い蝗害   作:メガメガネ

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戦闘

封印から解放された俺が最初にやったことは情報収集だった

 

俺の世界の立ち位置

今の地球の文明レベル

また俺を封印しに来る奴らがいないか

 

とりあえずここが日本の富士山が見える森ってのが分かったのは僥倖だった

このおどろおどろしい雰囲気から察するに富士の樹海と結論付ける

たまに自殺体あったし*1

 

こんな姿を人に見られて警察とか自衛隊とか十中八九あるであろう俺を封印した奴らがいる異能組織とかに狙われるのは避けたい

遊歩道は避けて適当にお仲間喰いながら日々を過ごしている

 

 

――数日後

 

突如空が黒く染まった

 

(……今は昼のはず)

 

遊歩道を無視しこちら側にずかずかと入っていく人間が一人

腰には刀のようなものを携えている

 

観光客?

 

配信者?

 

 

 

 

それの足取りに迷いはなく

 

視線は地面ではなくその上を追っている。*2

 

(やっぱりいんのか)

 

異能組織の存在。

 

ふと、そいつは立ち止まり

 

こちらを見た

 

目は合っていないが、気づいている

 

(……面倒なことになってきた)

 

逃げるか

 

喰うか

 

一瞬の思考をしてしまった

 

次の瞬間、

 

そいつは口を開いた

 

「――そこにいるの、分かってるよ」

 

確信を含んでいる軽い声。

 

「出てこないなら、こっちから行くけど?」

 

足音が、近づく。

 

(……あーあ)

 

面倒な方を引いた

 

けど

 

腹は、ちょうど減っている。

 

木々の影から、黒が滲み出る

 

「ヨォ人間」

 

「ッへぇ...話せるってことは特級?やだぁな樹海で呪霊が減少してるわけをテキトーに調査する簡単なお仕事だと思ったんだけどなぁ」

 

男は武器をを抜き話を続ける

 

「特級呪霊さん。俺とお話しする気はなぁーい?」

 

「話...カ」

 

俺は、わずかに首を傾けた。

 

「イイゼ」

 

一歩、前に出る。

 

「その代わり――」

 

地面を蹴る

 

「喰わせろ!!」

 

次の瞬間、空気が裂けた。

 

――踏み込み。

 

木々を弾き飛ばしながら、一気に間合いを詰める。

 

さっきまでの“会話の距離”が、一瞬で消し飛ぶ。

 

「っと!」

 

男は刀を抜いた。ノコギリのようなギザギザとした鋭い刃が等間隔に並ぶ奇妙な刀

 

「速イナ」

 

(ここにいる以上何かしらの術式を持っていることは確か

あからさまな武器、刀を起点とした能力?)

 

ならばやるべきことは一つ

 

「いきなりそれはナシでしょ!」

 

蠢き、騒ぎ、喰い尽くす

 

森は黒と緑に染まり目の前の餌めがけて進軍を開始する

 

その瞬間、

 

見えない刃が、蝗を貫く。

 

「秘伝、落下の情~」

 

プログラムされて迎撃装置が群れをいなし突破口へと突き破る

 

「いや~やっぱヤバいね、お前」

 

構えを解き距離をとったそいつは笑う。

 

「逃げの一手カ?」

 

こちらも負けじと群れとともに距離を縮める

 

「でもさ――」

 

地面を刀で薙ぐ

 

「こっちも仕事なんで」

 

次の瞬間

 

地から衝撃が走った

 

「――“噛砕(ごうさい)”」

 

地面から嚙み砕かれたかのようなえぐりができる

 

「俺の術式【歯形(キスマーク)】は噛み跡から刺突(犬歯)噛砕(門歯)磨砕(臼歯)を選択し発現させる」

 

そいつは、肩をすくめる。

 

「術式の開示はすんだ。お前に食われる前におれが喰っちまうよ?」

 

ニヤついた笑い。強者だと思い込んでいる故の余裕

 

「上等」

 

顎が鳴る

 

ガチガチと

 

音を立て

 

見定める

 

「遠慮なくいくゾ」

 

男の足元が崩れる

 

(なんだ?雨で地盤が落ちたのか?

いや違う、これは...!)

 

地より湧きでる無数の蝗。

 

地面から、木の幹から、木々の上から

 

あらゆる場所から溢れ出す

 

「うわ……きも」

 

群れが、うねる

 

一つの意思をもって

 

一つの“飢え”として

 

「――喰え」

 

解き放つ

 

黒が、奔る

 

音が、消える

 

ただ、飲み込む。

 

その中心で、そいつは息を吐いた

 

「……あー、これ」

 

手を上げる。

 

「ちょっと無理だわ」

 

呪力が、跳ね上がる。

 

空気が、震える。

 

骨も残らず血すら残さず

 

砕き喰らい啜る

 

全てが終わって残ったのは

 

何もなかった

 

生きている人間をきちんとした意思をもって殺し、喰った

 

でも不思議と感じるものはない

 

想像していたものなんてなかったかのように軽やかな気持ちだ

 

「……次ハ」

 

「モット強イ奴ダナ」

*1
「あんましおいしくない」

*2
うっすい残穢




名無しの一級呪術師君
禪院の超遠い分家
豊富な呪力、弱くはない術式、落下の情を見てラーニングできるぐらいの才能を持って生まれたけど死んじゃった
呪術師のくせにライブ感で生きてて一人だけ死生観がドラゴンボールしてる
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