超生体兵器、俺と雑魚AI   作:蓮太郎

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2.異界より

 

「お、おおお、俺は死んだのか?」

 

『一時は心停止しました』

 

「じゃあ何で話せてる!?」

 

『分かりません、ですが肉体の破損状況は生命にかかわる物でした』

 

「…………全部、この身体に引っ付いてる気色悪いのが原因か?」

 

『分かりません』

 

「…………そもそもここはどこだ?」

 

『分かりません』

 

「おい」

 

 自身の状況を混乱しながら判断しようとしたが、機会音声として響く声が思っているよりもポンコツである事を理解して逆に冷静になる。

 

 両手両足、共に何かよく分らない緑色の肉塊のせいでに動ける様子はない。

 

 引っ張ってみても血管の様な管が直接腕や足にくっついており拘束具の様になっている。

 

 そのためどれだけ動かそうとせいぜい口元に手を持ってこれる程度、立つことは出来ず座ることを強要されている。

 

「まるで尋問されるかのようだな」

 

『敵生命体は機体を取り込み、私達を閉じ込めました』

 

「取り込み…………丸呑みか?」

 

『はい、その認識で合っていると考えられます』

 

 上を見ても肉塊と所々はみ出ているコックピットの跡だったらしき機械。

 

 正面は真っ暗ながらもモニターとなる部分はそのまま残っている。

 

 残念ながら電源は入っていないようで真っ黒なままである。

 

 しかし、人型兵器『アクティブ』の電源は入っているようで最小限の灯りはともっており、AIがコックピットを監視するためのカメラアイも光っている。

 

 今、彼が会話しているのはAI…………の筈なのだが。

 

「なんか妙に性能が良くなってないか?ずっと片言みたいな喋り方しか出来ていなかったのに、何があった?」

 

『分かりません、ですが性能は良くなりました』

 

「その分らない部分を解析しろよ」

 

『妙な感じです、機械である筈の私が感覚という言葉を使うほどに』

 

「確かに、言われてみればそうか」

 

 AIが人間の様な感性や感情を持つというのはないはずである。

 

 此度の戦闘で人型兵器は完成しても、完全に人間を模したAIを創る事までは叶わなかった。

 

 切羽詰まっていたからこそ未熟で役に立つか分からないAIを投入したのだ。

 

「ここで監禁されてるってことは…………俺、もう何かされた後?」

 

『何か、その基準が分かりません』

 

「あー、なんだ。敵生命体に内臓やら頭やら弄られてないかどうかだ」

 

『頭にチューブらしきものが刺さっています』

 

「マジかよ!?」

 

 頭に手をやろうとしても肉塊のせいで届かない。

 

 どこについているのかさっぱり分からないが頭を軽く振ることで後頭部に一本、太そうな何かがくっついていることは分かった。

 

 だが、何が刺さっているのかまでは理解できなかった。いや、理解したくなかったともいえるだろう。

 

「完全に道具みたいになったな…………」

 

『私も道具です。つまり仲間』

 

「んなわけねえだろぉ!?いや、じゃあ俺何でこうしてのんびりしてるんだよ」

 

 捕獲され頭に何か接続されていてなお洗脳やら拷問やら受けた覚えがない。

 

 敵生命体の意図は分からないが、できる限りの抵抗はしてみるべきかもしれない。

 

「…………なあ、こんな状態でも機体は動かせるか?」

 

『命令を受諾、機体スキャン開始』

 

 ちりちりちり、と電気が流れる音が男の耳に入る。

 

 最低限の灯りからチカチカと他の灯りやコンソールにも電源が入る。

 

 意外と機能が生きているんだなと男は感心し、それ故に何故このような状態になってしまったのか疑問に思う。

 

 機体ごと捕獲され中身までこんなことになっているのに機体の機能が生きている事。

 

 明らかに低級スペックだったはずのAIが進化している事。

 

 そして男自身が何故か生かされている事。

 

 生きて帰れても実験動物扱いになりそうだな、と昔に見たことがある映画を思い出して時間を潰す。

 

 体感で10分ほどだろうか、十分な明かりが灯ったコックピットのモニターが点灯し始める。

 

『全システムオンライン起動中…………一部武装オフライン。現時点で起動可能な機能を利用しますか?』

 

「やれ」

 

『命令を受諾。起動』

 

 ぶぅん、とモニターが光る。

 

 外のカメラが奇跡的に生きていたのか周囲の状況がそのまま映し出される事になる。

 

「な、何だこれ…………」

 

 絶句、それが合うように男は絞り出した言葉の後に何も言うことが出来なかった。

 

 周囲は肉片のような、否、肉の洞窟と言わんばかりの気色悪い光景が広がっていたのだ。

 

 その中に吊るされている人型兵器『アクティブ』、敵生命体の体組織に侵食され異形となりつつあるものが眼前に広がっているのだ。

 

 何秒か、何分か、それとも何時間か呆然としたのか分からない。

 

『大丈夫ですか、思考が停止していますか?』

 

 少なくともAIの呼びかけに答えることもできなくなるほどの衝撃を受けていたことは間違いない。

 

 いくら流暢になったとは言え棒読みに等しい呼び掛けは戯言に等しかったのだろうか。

 

「…………通信、他の『アクティブ』と通信は出来るか?」

 

『通信機能は現在使用できません』

 

「何故だ!」

 

『現在の機体内の通信装置は敵生命体の組織が詰まっています』

 

「要するに壊れて動かないって事だよな?」

 

『そうです』

 

「なんでそんな回りくどい言い方を…………」

 

 性能が多少向上したところでポンコツはポンコツ、根本的な部分は変わってないのだろうと男は悟る。

 

 そんな悩みはいったん置いておく。そうしなければ話が進まないからだ。

 

 もしかすると同じように吊り下げられている『アクティブ』の中に自分と同じように人がいるかもしれない。

 

 自分がこうして生きているだけでも奇跡と思っているが、同じ奇跡が他にも起こっているかもしれない。

 

 そんな淡い期待を抱き、どうにかして脱出を試みようと手足を力いっぱい動かす。

 

 何度も何度も、もがくように抗うが体力だけが消耗する。

 

『肉体的疲労が見られます。休息を推奨』

 

「くそっ!ここは牢獄か!?」

 

『当機を捕獲して改造しているため実験生物であると認識しています』

 

「だったらお前も脱出する手段を考えろ!こいつらが何を考えているか分からん上に、国が、仲間が戦って傷ついてるんだぞ!」

 

 男は怒鳴り、己の無力さに歯噛みした。

 

 男には多少の愛国心と強い仲間との思いが詰まっている。

 

 男は兵士であった、厳しい訓練を乗り越えて友人たちと兄弟といっていいほどの関係を築き上げてきた。

 

 そのほとんどは先の戦闘で死亡し、生きているかどうかわからない状態で吊られているのだ。

 

 怒りが無い訳がない。

 

『提案があります』

 

 あまり役に立たないと思っているAIが語り掛けてくるが、先ほどの調子から大したことは無いと思い込んでいた。

 

『当機を動かし、友軍を救助するべきではありませんか?』

 

「………………………………は?」

 

 思いもよらない提案がスピーカーから流れ出る。

 

 コックピットがこんな状態なのに動かせることが出来るのか?

 

 操縦桿も肉塊に埋もれてどこにあるのか分からないのに動かす?

 

 馬鹿なことを言っていると呆れそうになるが、AIが言うことに一理あるとも思った。

 

 …………何故、そう思った?

 

「まさか、やれるのか?」

 

 腕も足も拘束されている、否、文字通り接続(・・)されている。

 

 半信半疑ではある、何せ今からやろうとしているのは現時点の技術では不可能とされている行為だからだ。

 

 思念による操作、あるいは身体に直接接続してることによる思考での操作。

 

 人体実験を敵生命体に受けた今ならできるかもしれない。

 

 吹けば飛ぶような微かな希望ではあるが、機体のチェックをしたAIがそう言うのであるなら可能なのかもしれない。

 

「…………分かった」

 

 意を決して手に、足に思いを込める。

 

 もし動くのであれば、想いは1つ。

 

 戦い、敵を倒し、仲間の仇を討て。

 

「う・ご・けええええええええええええええええええええええ!」

 

 その想いは。

 

『ぎちっ。ぎちちちちっちっ!』

 

 肉と機械がこすれる音と共に応えてくれた。

 

 

 

 

 

 




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