超生体兵器、俺と雑魚AI   作:蓮太郎

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5.大立回

 

『前方より敵生命体4体、右に1、左に3』

 

「押し通る!」

 

 肉の床を踏み締め機体は走る。

 

 人間と変わらない動きで敵生命体の頭を掴み、勢いに任せてぶん回す。

 

 侵略者なだけあって敵生命体も体積や硬度は十分にあり、鈍器として利用は可能なのだ。

 

 右手の槍のようなもので正面の敵生命体は串刺しにし、右方向に回転する事で左手で掴んだ敵生命体で正面の敵をぶん殴る。

 

 圧倒的な質量と速度をぶつけられた敵生命体は皮膚と肉が弾け内臓を溢す。

 

「次だ!」

 

『現時点で接敵した敵生命体は殲滅しました』

 

「…………あれ?」

 

『アドレナリンの分泌量が通常の10倍以上出ています』

 

「興奮しすぎていたのか…………」

 

『なお、常人が命の危機に瀕した際に分泌する10倍以上です』

 

「やっぱ俺も改造されてるな…………」

 

 あっという間に仲間を食い荒らした怪物どもを蹴散らし、その場に佇んでいた男と機体であったが気色の悪い場所にずっと居られるわけが無い。

 

 先ほど敵生命体が入ってきた出入り口へと動いてここからの脱出を図る。

 

『マップが存在しません。マッピングを開始します』

 

「二度と戻ってこないだろうがな」

 

 地形把握のためモニターに現在地らしき箱型の線が表示される。

 

 そういう機能があったことを男は思い出したが、だだっ広い場所での戦闘しかしていなかったため存在を忘れていたのだ。

 

 しかし、好んでこの場所に戻って来ようとも思っていない。

 

 そもそも生きて帰れる保証もないのだ、帰る場所がない事だって承知である。

 

 ならば、やることは1つ。

 

「やるか、殲滅」

 

『敵生命体の個体数は不明。以前の戦場では100万体を観測していましたが、中枢となる場所ではその10倍以上の敵戦力が存在すると思われます』

 

「奇遇だな、俺もそう思う」

 

『それでも戦うのですか?』

 

「見りゃわかるだろ、どう見ても戦う機能ばかりが搭載した改造を施されているんだ。全部、奴らの都合のいいようにしてたまるか」

 

 はっきり言って意地ではあった。

 

 30体を軽く屠れても100万以上の敵を単騎で倒しきれるなどうぬぼれても居ない。

 

 だが、奴らには恨みがある。破壊と混沌をもたらされたことで男が失ったものは数多く、何一つとして取り戻せないのだ。

 

 ならばできる限りこちらからも破壊を尽くしてやる。

 

「どうせ長生きできそうにもないからな…………」

 

 小さな呟きに対してAIは何も答えなかった。

 

 槍のような物から敵生命体の体液を振り払い、肉の部屋から肉の通路へと進んでいく。

 

 これから大規模な戦闘を行うとなれば無事では済まないだろう。

 

 想像するだけでも気分が落ち込みそうだが、男は『アクティブ』に元々搭載されていた機能の一つを思い出す。

 

「おい、音楽は流せるか?」

 

『検索中、機能残存確認。データも破損していないものがあります』

 

「ジャンルは?」

 

『デスメタルです』

 

「丁度いい、気晴らしにはなるな」

 

 これから死神になるのだから死に関する音楽を流すのはぴったりだと述べ、その言葉を告げた後に激しいギターの音が鳴る。

 

 音楽が流れると同時に『アクティブ』はその足で走り出す。

 

 殺せ、殺せ、奴らを殺せとスピーカーから死人の様な歌い出しが始まる。

 

『敵生命体の反応多数、現在計算中』

 

「遅い!」

 

 新たに開けた場所に到達した男は走った勢いのまま飛び出した。

 

 その場所は見るからに生息地と言わんばかりに気色の悪い生命体が集まっており、その数は一瞬で把握することは出来ないほどであった。

 

 だが、裏を返せばそれだけ一気に殲滅できる量が居るという訳で。

 

「死にやがれえええええ!」

 

 男は何の躊躇いもなく飛び込んだ。

 

 敵生命体はというと何が来たのか理解できていないらしく戸惑うような動作が見られたが、男にとって関係ない。

 

 故郷を襲われ、数々の命を奪った相手だ。

 

 もし、万が一、可能性の話としてここにいる敵生命体が非戦闘員的な役割であったとしても必ず殺す。

 

 『目には目を歯には歯を』という諺が存在するように、己のすべきことをするだけなのだ。

 

 デスボイスと激しいギターの騒音は敵生命体の悲鳴をかき消し勇気を与えてくれる。

 

 軍隊に居たら音楽を流しながら戦うなど味方の言葉を聞き逃す可能性があるため言語道断であったが、ここには男と最低限の性能から微妙な性能に格上げしたAIしかいない。

 

 故に、何の心配もない。

 

「お前ら一匹でも向こうに行かせないようにしてやる!だから、念入りに潰してやる!」

 

『その敵生命体は既に死亡しています』

 

「こうやってぶつけてやるんだよ!」

 

 刺して殴って千切って投げて、その姿はまさに無双。

 

 いずれ限界が来ると分かっていても男はその時まで戦い続けるだろう。

 

 二度と悲劇をこいつらに起こさせないために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある実験により開かれた異界の扉。残念ながら実験に参加した研究員の思惑とは大きく異なり友好的な相手に出会うことは無かった。そもそもなぜそのような研究が危険と認識されていなかったのかすら疑問である。

 

 出てきたのは人とは程遠い形をした異形の生命体。研究所の人員を皆殺しにして、最悪なことに研究の産物である異界の扉を確保されて侵略されてしまった。

 

 最初は何とか既存の兵器で対応するが数が多い。空爆で薙ぎ払おうとも数で補われるため効率的に撃破していくにはもっと前線に出る必要があった。

 

 そして世界各国が協力、裏取引を経て完成させたのが彼らが乗る人型兵器『アクティブ』が配備されることとなった。

 

 訓練を経た兵士たちは多く配備されたこれに乗り込み、初実戦で未だに名前が付けられていない異形の生命体を倒すことを命じられ、そして失敗した。

 

 人類は敵生命体を『タラングリズリィ』と命名、長きにわたり侵略者となる生命体と戦うこととなる。

 

 徐々に生存圏を狭めていく人類だったが、1人の天才…………性格に難があるが天才が高性能AIと『アクティブ』を超える人型決戦兵器『パッシブ』を開発し光が見えた。

 

 ただ、明らかに旧式の人型兵器と名前を取り変えた方が良いであろう名前に合うAIのパイロット好みが足を引っ張っていた。

 

 何故か子供、特に少年を載せたいと駄々をこねるという最悪の展開が引き起こされて手詰まりになりかけた時に『タラングリズリィ』の襲撃が起こる。

 

 偶然か、はたまた運命か避難してきた民間人の少年が道に迷い『パッシブ』に見初められパイロットとなり窮地を脱することとなった。

 

 これは、1人の少年が世界を救うために戦うお話である。




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