そうま転生~錚々たる早々無双の装魔による壮大な一掃と奔走~ 作:Curry&Rice
第一話 双魔
ドラゴン、それは最強の
それを、この世界で誰も疑う余地はない。
そして......
ガアァァァァ
今、まさにそのドラゴンが家々を踏みつぶしながら闊歩する、まるで其処が我が道といわんばかりに。
「もう限界だ。撤退、撤退ぃ。」
大楯を持った騎士がドラゴンに一矢報いようとする兵を諫め、撤退を宣言する。
ドラゴンの尾は家を薙ぎ、木を薙ぎ、人を薙ぎ、更地を作っていた。そこにある何もかもが、焦げた臭いを放つ。
「勝てるわけがない。」
そこにいる全ての兵士は踵を返す。
「残念だが、この村はもう......。」
誰もが諦めていた、彼ら二人を除いて。
「よし、リョーマ、しくじんなよ。」
片手に錫色の包帯を巻いた青年は黒い髪をかき上げ、隣の歩く黒鉄の鎧と共にドラゴンの方へ歩を進める。
「わかってるよ。ソーマこそ指示、間違えないでくれよ。」
鎧は青年を小突く。
「あぁ、はいはい。」
彼らのノリはこの惨状には浮いていた。
「やめておけ、お前みたいな青二才が勝てる相手じゃ・・・」
二人は息絶え絶えで頭から血を流す兵士の忠告を待たず、ドラゴンに向かって突っ走る。
ガァァァァァァ
ドラゴンは挨拶代わりに火球を口から撃ちだす。
『
黒鉄の鎧はソーマという青年の掛け声を合図に、彼に装着させられ、彼を火球の攻撃から庇う。
「やっぱ、リョーマの中は快適だな。」
ソーマは黒鉄の鎧を纏いながら、炎の中を真っ直ぐ、そして力強く突き進む。
「ドラゴンの喉の奥にある魔方陣を狙って。あれを傷つければ火球は吐けない。」
黒鉄の鎧はソーマにアドバイスをする。
「わかった。」
ソーマはドラゴンとの距離、二十メートルの地点にまで近づいていたが、ドラゴンもただ口を開け、彼らの攻撃を許すほど単純ではない。
グァウ
ドラゴンは口を閉じ、ソーマとは反対方向の逃げ遅れた一人の兵士に狙いを定める。
「マ、マズイ」
兵士は後退りをするも、ドラゴンの前ではそれは意味をなさない。
ガァァァァァァ
ドラゴンは兵士に火球を撃ち出す。
『
ソーマの纏っていた黒鉄の鎧は彼から離れ、兵士の体に装着された。
「うわぁ、なんだ急に体に鎧が......!って、うわぁぁぁ」
兵士は戸惑いながら、火球を鎧越しに受ける。
「あれ、熱くない!」
兵士はぴょんぴょんと跳ねた。
ウゥゥゥゥ
ドラゴンは再びソーマを見下げる。
「ゲッ、俺はこんがり焼いたって、おいしくねぇぞ」
ソーマは構える。そして、彼はこのドラゴンの強さ、恐ろしさを肌に感じ、目を強張らせた。
「ねぇねぇ」
ソーマの脚のズボンを少女が引っ張る。
「なっ、逃げ遅れたか!」
少女がコクリと頷く。
(マズイ、俺がリョーマを纏って防御をすれば、この子は火球でやられちまう。かといって、この子をリョーマで守っても、今度は俺が焼かれちまう。仕方ねぇ、ここは奥の手を使うぜ。)
『
兵士の纏っている鎧から腕と脚の部分が外れ、ソーマの手足に装着される。
(チャンスは一回、決めるぜ一発。)
ドラゴンは次の火球を撃ち出すために大きく息を吸う。
「ねぇ、空気がざわざわ揺れてるよ。」
ソーマのツンとした黒髪も揺れる空気に煽られ、波打つように靡く。
「大丈夫だ。少し、離れてな、危ないぜ。」
ソーマは少女を自分から片手一本分離す。
ガァァァァァァ
ドラゴンが口をソーマに向けて開き、火球を撃ち出す準備を完了する。
(待ってたぜ、この時を。)
ソーマはドラゴンの口内に狙いを定め拳を構える。
『
ソーマの脚から鎧が射出される反動を利用し、ソーマはミサイルのように勢いよくドラゴンの魔法陣が描かれた喉元を鎧の纏う拳で突き破る。
(これが本当の、喉元過ぎれば熱さを忘れるってね。さてと、とどめ。)
ソーマは空中で五指をドラゴンの脳天に向ける。
『
彼の指の鎧の部分が射出され、ドラゴンの脳幹を貫通する。
「何もんだ、アイツ」
遠くの山から彼らの戦いを観察していた撤退済みの兵士たちが皆、愕然とする。
「あ、あの鎧は、間違いない。」
大楯を持った騎士が単眼鏡でソーマとリョーマを見た。
「あれは、双魔だ。」