そうま転生~錚々たる早々無双の装魔による壮大な一掃と奔走~ 作:Curry&Rice
ドラゴン討伐の一年前、
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ
「11秒22」
「よっしゃー!俺の勝ちだ、リョーマ。」
似合わない茶髪で、ダボダボの陸上ウェアを着た坂本颯真は蟹股でベンチでばてている黒髪で長身のリョーマに向かってダブルピースをかます。
「勝ち誇んなよ、差はたったの0.01秒だろが。それに、今日の俺はちょっと本調子じゃねぇんだよ。」
「おっ、負け惜しみか?100メートルの0.01の差はデカいぜ~。」
ソーマは足をふらつかせながら、リョーマの隣に座った。
「うるせぇな。」
ペシッ
「いてっ」
リョーマはビチャビチャに濡れたタオルをソーマの顔面に当てる。
「でも、本調子じゃねぇってのは本当みたいだな、リョーマ。途中で、フォームが崩れてたぜ。何かあったのか?」
ソーマは顔に濡れたタオルをくっつけたまましゃべった。
「実はな、最近体がうまく動かねぇんだ。なんか、鎧つけてるみたいに重いっていうか。」
リョーマは真剣な面持ちで語る。
「じゃぁ、いつものやめとくか?」
ソーマはタオルの下から目を少し覗かせた。
「いや、それはそれ、これはこれ、もちろんやるさ。」
「そういうと、思ってたぜ。」
二人は部活終わり、夜の河川沿いの道路の鉄道橋の下で横並びで立っていた。
「いつも通り、あそこの橋の下がゴールでいいよな。」
「あぁ、大丈夫だ。」
二人は適当にアップをし、同時にピタリと止まる。
ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン
遠くから鉄道橋を渡る電車の音が聞こえる。
ガタンゴトンガタンゴトン
段々と音は近づき、彼らの上の線路を通った瞬間、二人は同時に走り出す。
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ
二人は呼吸のリズム、歩数、腕を振る速さ、脚を上げる角度、いつも通り全てが同じだった、ただ一つのアクシデントを除けば。
ガッ、クルッ、ドシッ
石に躓いたリョーマの体が空中で半回転し、転がる。
「リョーマ!」
ソーマが全速力でリョーマに駆け寄る。
「クッソ、脚が、脚が動かねぇ。」
リョーマは右足を力一杯何度もたたく。
「落ち着け、リョーマ。大切な足を傷つけんじゃねぇ。とりあえず病院行こう。」
ソーマはスマホを取り出す。しかし、スマホは充電切れを示す表示が出ていた。
「あっ、朝充電しとけばよかった。リョーマ、スマホあるか?」
リョーマは首を横に振った。
「なんで?」
「今、修理に出してる。」
「でも、替えのスマホはもらうだろ普通。」
「今日の登校中に側溝に落とした。」
「なにやってんだよ。」
ソーマは頭を抱えた。
「とりあえず、俺が肩貸すから一緒に近くの病院まで行くぞ。」
ソーマは荷物をまとめ、リョーマに肩を貸す。
「ありがとう・・・・な。」
「何言ってんだよ、俺はお前と走りてぇんだ。そのためだったらなんだってするぜ。」
「この借りはいつか返す。」
「いいんだって、走れりゃそれで。」
ソーマは足を引きずるリョーマの右肩とリョーマとソーマ二人分の学生カバンと陸上部のリュックを持ちながら、横断歩道を渡っていた。
「ここ・・・・、越えたら・・、っく、もうすぐ・・・・だぜ。」
信号が青から赤に変わる。
(やっべぇ、ここの信号変わるの早いんだった。くっそ、この荷物じゃ、走るに走れねぇ。)
パー、パッパー、キュルルルルキー
トラックのライトが二人を照らす、満身創痍の彼らが気づいた時にはトラックの前に付いているエンブレムが目と鼻の先にあった。
バーン
轟音と共に彼らの意識はプツンと切れた。
チューン、ピロロロ、ピー、ピー、ピー
聞き馴染みのない鳥の鳴き声でソーマは目を覚ます。気づけば何処か森で仰向けで倒れ込んでいた。
「眩しっ。」
倒れたソーマが目を開けた先には生い茂った葉が一面に広がっていた。
「ハハハハハ、マジでここどこだ?まさか、トラックに跳ね飛ばされてここまで来ましたって訳じゃねぇだろ。」
ソーマは起き上がる。
グチャ
起き上がったのと同時に、ひどくグロテスクな音が彼の体の中で響く。
「おいおい、嘘だろ。」
ソーマが自身の腹部を確認すると、奇妙な金色の装飾が柄に施されたナイフが真っすぐ彼のへその上の当たりに刺さっていた。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ。」