そうま転生~錚々たる早々無双の装魔による壮大な一掃と奔走~ 作:Curry&Rice
プハッ
フィーナは勢いよく水面から顔を出し、呼吸を整え、叫ぶ。
「バルドッ!!」
バシャッ
叫びに呼応するように、豪快に水しぶきを上げ、萎んだ風船のようにしょぼくれたソーマを抱えながらバルドは姿を現した。
「
フィーナは詠唱すると、彼女の鞄の魔法陣が反応し、フィーナを中心とした半径5メートルほどの半球状のドームを生成した。
「ふぅ、これで飛んでくる矢の攻撃からは身を守れるわ......一先ず湖畔を目指して泳ぎましょう。」
フィーナは落ち着いた声色で、バルドの腕から離れ、船べりに丸穴の空いたボートに寄りかかりながらプカプカと浮かぶソーマに語り掛けるが、当のソーマは不満げな表情でフィーナに訴える。
「なぁ、ちょっと、待ってくれリョーマはどうするんだよ?」
「彼を、今引き上げて、助ける余裕はないわ。」
フィーナは冷たく言い放った。
「フッフッフッ、”助ける余裕がない”?果たして、本当にそうッスかね?」
ソーマは敢えて俯き、笑いを堪えるように小刻みに震える。
「これがあるじゃないですか。
ソーマは湖の底に向かって落ちるように、ボートを巻き込みながら沈んでいく。
ゴポゴポゴポ
「アホかのぉ?アイツは?鎧は水に沈む。常識じゃろ。」
バルドは呆れて、天を仰ぐ。
「沈んじゃった......」
フィーナは水面に目を向けるが、先ほどまで、ブクブクと浮かんでいた気泡がぱたりと途絶えた。
「あっ......」
「うぅ......」
フィーナとバルドの二人は得も言われぬ空気に包まれた。
「とっ......とりあえず、陸に上がりましょう。は、話はそれから......」
「う、うむ」
二人はゆっくりと岸に向かって泳いでいく。
そして、その様子を湖沿いの木の上から弓を構えた少年エルフが観察していた。
(姉さんとバルドさんは陸に上がるか。だが、アイツがいない。何処だ?)
少年は左目をゆっくり閉じ、詠む。
『
少年の右目の眼帯に描かれてる魔法陣が青く光り、彼の視界がサーモグラフィカメラで撮られた映像のように熱を帯びたものは赤く、そうでないものは青く、彼の脳内に映し出される。
(湖の底に沈んだか?そうならば、遺体を回収せねば。そうでなければ......)
少年は颯爽と地面に降り立つ。
『
少年はエメラルドにも似た左目をゆっくりと開け、黄昏るように左手に目をやる。
(アイツの遺体があれば、俺は、俺は......)
チャポッ
水音に臆し、少年は咄嗟に湖から距離を取る。
(気のせいか?いや、波紋が立っている。魚か?)
少年はゆっくりと湖を覗き込む。
(やはり、気のせいだったか......)
少年は身に纏っていたローブを脱ぎ捨て、足を水につけた。
その時、
(魚影?)
何か大きな影が、遠くの水面下から徐々に少年に近づく。
それはゆっくり、ゆっくり、輪郭を帯び、ついには水面という名のベールを突き破り彼の前に勢いよく姿を現した。
(ボ、ボート!!)
『
左手を突き出し、手の平に描かれた魔法陣をボートに押し付ける。
(廻れ、そして......砕けろ)
ボートは急速に回転を始め、許容回転速度を超えたボートはそのまま木っ端みじんに砕け散った。
「やるねぇ。」
少年の背後から、ソーマが囁く。
「くっ......」
少年は振り返ると同時に右手でナイフの投擲を試みるが、黒鎧の脚に蹴り飛ばされ、ナイフは明後日の方向に飛んでいった。
「ふぅ、あぶねぇ。てめぇが、金色の装魔か?」
ソーマは少年の顔をまじまじと見る。そして、気づいた。
(こいつ、フィーナさんにそっくりだ。)
少年は睨む、少しほくそ笑む、再び睨む。
その表情のどこをとっても、ソーマには彼がフィーナと瓜二つであるように見えた。
「おい、お前は一体......」
「誰だっていいだろ。」
動揺するソーマを少年は静かに一喝する。そして、少年はゆっくりと持っていた弓を引き絞る。彼の口は余計なことを語らずとも、立ち姿や目つき、表情は彼自身の強さを言葉より鮮明に物語っていた。
「準備はいいか?」
ソーマは深く息を吸い、吐く。
「あぁ、いいぜ......」
少年の左手から矢が離れる。
それを合図として、逃げ隠れナシの戦いの火蓋が切られた。