そうま転生~錚々たる早々無双の装魔による壮大な一掃と奔走~ 作:Curry&Rice
(クッ、起きたかッ.......だが、)
ルードは泥を落とし、艶のある鱗だらけの表皮を露出させたモグラコブラの尾を注意深く観察する。
(奴は尾を地面に突き刺し、ウン百もの尾の関節を鞭の様にしならせ、泥だらけの地面の中に発生させた無数の
ルードは後方で、泥に顔を埋める謎の少女とソーマ、ブルブルと唇を震わすフィーナを呆れた目でチラッと一瞬目を向け、即座に真正面にいるモグラコブラの方に向き直した。
(後ろを庇いながら、モグラコブラを相手取るのは、不可能だ.............待てよ、確かモグラコブラは自身の縄張りの一番末端部分で眠る習性があったはず。もしかして......)
『
ルードの右目の眼帯側の視界に水分を多く含む泥の部分、つまり縄張りの中が少し青緑色に映り、縄張りの外側が黄色く映る。
(やっぱり、地表温度から考えて.......間違いない奴のすぐ後ろ側は縄張りの外だ!!)
ルードは目線をモグラコブラから外すことなく、フィーナにジェスチャーを見せる。
(僕が・詠唱・したら・そこの・二人を・後ろに・思いっ切り・引っ張って・後退して。)
フィーナには、何故自分達が歩いてきた泥だらけの道の方向に向けて引っ張るのか不思議だったが、何も言わず、泥に塗れた間の抜けな状態で重なり合う二人の片足ずつ腕と脇の間に挟み、いつでも引っ張れるよう準備する。
(後は......)
ルードは膝、腰、首を前に曲げ、体を小さく見せる様に縮める。
(僕は獲物、僕はか弱い獲物......)
モグラコブラは今にも泣きそうな顔で丸めた体を小刻み震わすルードを舐め回す様にじっくり眺め、まるで舌なめずりをする様に、長く細い舌を高速で激しく動かす。
(未だか.......)
ルード履いている靴にこびり付いた泥がだんだんと乾き、灰色の土へ変わっていく。
(未だかッ.......)
ルードの目は瞬きを忘れ、集中していたせいか大粒の涙が頬を伝う。
ルードの取って継いだ様に、凸凹のある頬を蛇行しながら、重力に従ってゆっくりと涙の一滴が地に落ちる............一瞬。
ズボッ
モグラコブラは尾を地面に奥深く突き刺し、ヂッヂッヂッヂッと音をたて、地が波打つ。じわじわと泥濁した水がルード達の足元を浸食していく。
「今だ、『
ルードが左手の平を接地させ、詠唱を言い放つと同時に、フィーナは二人の足を脇に抱えたまま、重心を後ろに倒す。
「フンッヌヌヌ......」
ドドドッと真横から迫りゆく濁流を気にもとめず、フィーナは誰にも見せられない顔で二人を引く。
「ヌヌヌヌヌヌ............ヘヒャッ」
「シャーッ」
フィーナ達とモグラコブラはほぼ同時に濁流に飲まれ、双方の位置がルードを中心とした濁流の渦によって丁度位置が入れ替わった時。
『
ルードの唱えた逆詠唱によって、濁流の勢いはスッと収まり、慣性によって、ルードの目の前でフィーナ達は彼から見て右斜め前方、彼の背後に移動したモグラコブラは彼から見て左側に吹き飛んだ。
「痛っ」
「キャッ」
「うわっ」
ソーマ、フィーナ、謎の少女の三人は同時に尻もちをつく。
「じ、地面が硬い。縄張りから出られた!!」
フィーナが安堵したのもつかの間......
「......クッ」
縄張りを示す泥水がルードの膝を完全に浸していた。
「ルード、後ろ!!」
フィーナが指さす方向の先では、長細く泥水を這う影がモゾモゾとまるで掘り進める様に、ルードの足元めがけて潜行していた。
「まだ......終わっちゃいないか。」