そうま転生~錚々たる早々無双の装魔による壮大な一掃と奔走~   作:Curry&Rice

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第三十話 滝魔

(足を上げようとすると......)

 

グググッ

 

(泥水の抵抗力によって、上手く上がらない......逆に、足を下げると......)

 

ズボッ

 

(泥水の重みそのままに沈む......まるで、底なし沼だな。やはり......)

 

「やはり、危険だ。今すぐ、脱出しなければ......」

 

ルードは興味深そうに周囲の観察を始める。

 

「ちょっと、ルード!?なに呑気に突っ立ってるの?早くこっちに......」

 

「姉さん、こいつの縄張りは今、底なし沼のように変化している。下手に動けば、今以上に沈むことになる。」

 

ルードは眉一つ動かさず、自重で段々と泥に沈んでいく足元を眺める。

 

「じゃ、じゃぁ、どうするのよ?諦めるの?」

 

フィーナの拳が軽く筋張る。もう既に、モグラコブラの影がルードの脚に向かって勢いをつけて飛びかかるために、彼の背後で蜷局を巻いていた。

 

「姉さん、言ったよね。”下手に動けば”沈むって、だから、僕は()()()()()。『旋転(ロール)』」

 

ルードは左手の平を沼と化した縄張りに突っ込み、縄張りをルードを中心とした濁流の渦へと変化させた。

 

(さっき起こした渦は、姉さん達を縄張りの外へ逃がすための位置替えのために半回転しかしていない。だが、今からのは......)

 

 

 

渦巻く泥水の流れはまるで塔のようにフィーナ達の目の前にそびえたつ。

 

「なに?これ?」

 

「フィーナさん、渦って知ってるっスか?」

 

「えっ、まぁ、うん......って、ソーマ、あんた起きてたの?」

 

「えぇ、すまねぇっす。」

 

ソーマは軽く両手で顔に付いている泥を拭う。

 

「別に怒ってないけど......」

 

フィーナは拭いきれていないソーマの鼻についていた泥をサッとふき取った。

 

「フィーナさん、コップに入った水をマドラーとか使って混ぜて小さな渦を作った時、巻いてる渦の中心はどうなってるッスか?」

 

「水位が下降してる?」

 

「そうッス、これは多分、ルードの左手の触れたものを回転させる魔法陣の力で作った渦の超強化バージョン。これなら、ルードのいる渦の中心の水位を下げて、自身が沼に沈まないようにしつつ、潜っているモグラコブラを水流で牽制できる。」

 

「凄いじゃない!これなら、モグラコブラから逃げられる。」

 

「まぁ、確かに状況的にそう見えなくはないっスけど......」

 

「何か問題なさそうだけど?」

 

「でもっスね......うーん、でも......」

 

 

 

(でも、これだけじゃ不十分だ。姉さんたちを渦に巻き込まないように回転速度の速くして、らせん状にする必要があった。だから、モグラコブラが重力や僕との距離が遠さによって勢いの弱まった渦の上部まで泳いで登れば、容易に渦から抜けられてしまう。かといって、今回転を止めれば、たちまち自分はらせん状にするにあたって上に押し出している泥水に覆いかぶせられ、溺れて、死ぬ。)

 

ルードは左手で矢を取れるように後ろ肩で斜めにかけられた矢筒に右手を伸ばすが、つっかえて取ることがかなわなかった。

 

(今、左肩にかけている弓は左手を使わずとも右手に持てるが、矢が取れないな。一応、感熱(サーモ)の魔法陣で右目の眼帯越しに位置はわかる、でも、モグラコブラは変温動物だから、かなり見えずらい。もし、今矢を放てたとしても、水流も考慮して放たなければならないし、当てられないだろうな。うーん......)

 

 

 

「うーん?フィーナさん、確か炎出せる魔法陣あったッスよね。」

 

「あぁ、これ?」

 

フィーナは鞄から魔方陣の描かれた大きな羊皮紙を取り出す。

 

「あぁ、それッス。確か、詠唱は......」

 

「「『(ヒート)』」」

 

魔法陣から渦状の炎がゆらゆらと燃える。ソーマはフィーナからかすめ取る。

 

「ちょっと、貸して欲しいっス。」

 

「えっ、ちょっと」

 

「ほいっ」

 

ソーマは未だ燃ゆる魔方陣を渦の中に投げ入れた。

 

「えっ?」

 

「これでよし。」

 

ソーマは満足気に胸を張る。

 

「あんたの事だから何か考えがあるんでしょうけど、何してるの?」

 

フィーナは肩を落とし、ソーマに問いかける。

 

「えぇっと、熱い炎+冷たい泥水=......」

 

「ぬ、ぬるい泥水?」

 

「そうッス。そして、コブラにはピット器官という、赤外線によって温度を視えるようにする器官があるんッスよ。もし、俺がコブラなら、獲物と間違えて......」

 

 

 

(吞み込んだ!!視えるッ、視えるぞ!!ちゃんと、右眼で追える。コブラは獲物を丸呑みする習性があると聞くが、まさかそれを魔方陣をかみ砕かず飲み込むことに利用できるとは......)

 

ルードは思わずフムフムとつぶやき、軽く首を揺らした。

 

(だが、矢を放てないなら、視えても、なんの意味も......)

 

 

 

「ルード、上!」

 

フィーナは斜め八十七度に矢を放つ。

 

 

 

フィーナの放ち、重力によってルードの頭上に落下する矢を、彼は右手でがっしりと掴んだ。

 

「姉さん!!」

 

 

 

「私の目では、水が濁ってて上手く視えない。でも、あんたは違うよね、ルード。」

 

 

 

「あぁ、そうだよ。悪かったな、モグラコブラ、僕達の......」

 

ルードは弓と矢尻辺りを右手に持ち、そのまま口で矢筈(矢の後端部)を口に挟み、体を仰け反らせ......

 

口を開くと同時に放つ。

 

「勝ちだ。」

 

バヒュゥという音と共に、矢は濁流とモグラコブラに致命的な大穴を開けた。

 

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