※寿命、死亡、消滅ネタ、オリキャラなどが含まれております。苦手な方はご注意下さい。
吸い込まれそうな程に青い空、天高くそびえ立つ白い雲、すっかり夏の陽気の幻想郷の空を、漆黒の翼で駆ける一人の天狗の少女が居た。
「今日も平和平和…っと。やれやれ、毎日空の観察日記をつけるのも飽きて来ますよ。もっと記事のネタになるものは無いですかねえ」
カメラのファインダー越しにいつもの風景を眺める彼女は、夏空から目線を地上に落とす。ふと、彼女の目は違和感を感じた。
「おや、あんな場所に小屋なんてありましたっけ?」
今まで暇を持て余し何万里と空を飛んで来た彼女は、この些細な変化も見逃さなかった。
「ちょっと行って見ましょうかね」
次の瞬間、彼女は小屋の戸を叩いていた。
「ごめんくださーい」
………返事は無い。人の気配も妖力も感じ無い。無人と判断し、彼女は小屋に入ってみる。そこには、優しげな老婆が一人座っていた。
「珍しいわね。こんな所にお客さんなんて。」
「いえ、空からこの小屋が見えたので訪ねた次第です。」
「空から見えた?」
老婆は少し驚いたようだった。
「私、天狗でして。妖怪の山で新聞記者をやっております。」
「そうでしたか。」
ここには案外普通の反応であったが、話を続ける。
「私も昔は新聞記者をやっていましてね。映写機片手に幻想郷を駆け回ったものです。今の記者さんは随分と可愛らしいのね。」
老婆の意外な話を聞いたが、なんだか先輩に褒められた気分になった彼女は机の上のスクラップに目をやる。
文々。新聞と言う名の記事はどれも素晴らしく、完成度の高い物だった。
「素晴らしい記事ですね。これら全てあなたの作品ですか?」
「作品と呼ぶのも奢っているかもしれませんが…そうです。良かったら読んで行っても構いませんよ。」
彼女は大先輩の記事を読みふけった。特に紅霧異変、永夜異変、守谷神社の台頭など、博麗霊夢を巫女とする幻想郷の動乱期、通称暗黒の世代の記事が多く、大半を占めていた。しかし彼女には気になる点があった。暗黒の世代の終焉となった事件の記事が無いのだ。さらに、そこからは新聞を書いていない。
理由を聞こうと顔を上げると、窓の外は既に日が落ちかけていた。
「もう暗くなるわ。早くお帰り。」
「そうさせて頂きます。また明日来てもよろしいですか?」
老婆は微笑みながら言った。
「もちろんです。あなた、お名前は?」
「翼、上柳棋 翼(かみやなぎ つばさ)です。あなたのお名前は?」
「射命丸文…今はもうそう呼ばれる事も無いわね。」
翼は小屋を後にした。だがまだ引っかかる事がある。記事の事、そして、あの老婆の正体…
射命丸文…どこかで聞いた事がある名…まあ、それも明日聞けば良いか、と考えつつ山へ戻る。しかしその日以来、その小屋は忽然と姿を消した。
皆さん初めて。射手柊と申します。小説は初投稿になりますが、中々に楽しいです。時間の合間を縫って制作して行くので不定期更新になりそうですが宜しくお願いします。