​『逆転らき☆すた:こなた「兄貴、今日から義務だね(ニチャァ)」』   作:微糖コーヒー

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第1話:目覚めたら『種馬』候補だった件

 第1話:目覚めたら『種馬』候補だった件

 

「お兄ちゃん、おっきいね。……あ、おはよう。同じ日に生まれたはずなのに、なんでお兄ちゃんのそこだけ二十センチも『成長期』が先行しちゃってるのかなぁ?」

 

 朝の洗面台。並んで歯を磨いていた双子の妹──泉こなたが、鏡越しに俺の股間を指さしてニヤリと笑った。

 

 パジャマ姿の彼女は、口元に歯磨き粉の泡をつけたまま、俺のズボンの「異常な隆起」を隠そうともしない視線で観察している。

 

「……こなた。朝から双子の兄の股間を鑑定するな。あと、これは『先行』じゃない。この世界の理不尽な仕様だ」

 

 俺──泉総司(いずみ そうじ)は、口をゆすいで溜息をついた。

 

 鏡に映る俺たちは、確かにどこか似ている。だが、決定的に違うのは、俺がこの三日間で「前世の記憶」を取り戻した転生者であること。そして、この世界の法律が俺を「保護対象」から「義務の執行者」へと強制的にアップグレードしようとしていることだ。

 

 今日は四月十五日。俺たちの十五歳の誕生日。

 

 前世の知識ではただの「中学から高校への進学期」に過ぎないが、この『貞操観念逆転世界』において、十五歳は「性的成人」を意味する。

 

「兄貴、今日から『義務』開始だね。一五歳になった瞬間、その規格外のスペックが国家に登録されるわけだ。……うーん、双子の特権で、最初の『検体』は私が予約しとこうかな」

 

「……さらっと怖いことを言うな。朝飯にするぞ」

 

 俺はこなたの頭を軽く小突いて洗面所を後にした。

 

 部屋に戻り、学校から支給された『保護指定男子用制服』に着替える。伸縮性に優れた特殊素材のはずだが、俺の「自分の一部」──二十センチを優に超える質量を収めると、布地は限界まで引き絞られ、鈍い光沢を放つほどの張りを見せた。

 

(やれやれ、これじゃあ歩く公然わいせつだ。だが、これがこの世界の『正装』なんだからな……)

 

 リビングに降りると、父・そうじろうの姿はなかった。

 

「父さんは朝から『全国男性守る会』の緊急集会だよ。最近、若者の搾精義務が前倒しになった件で抗議するんだって」

 

 こなたが食卓でトーストを齧りながら教えてくれる。

 

「……父さんらしいな。だが、法が変わらない限り、俺たちはこの『狩り場』へ行かなきゃならない」

 

 朝食を済ませ、俺たちは家を出た。

 

 双子の妹と並んで歩く通学路。以前の俺なら、オタクな妹との微笑ましい光景だったはずだ。だが今は違う。

 

「あ、見て。あの人……」

 

「嘘、あの膨らみ……中学生(昨日まで)のサイズじゃないわよ……」

 

 すれ違う主婦や、部活に向かう女子高生たちが、俺を見た瞬間に動きを止める。

 

 彼女たちの視線は、俺の顔を通り越し、磁石に吸い寄せられる鉄屑のように俺の股間へと収束していく。それは「憧れ」などという甘いものではなく、飢えた獣が霜降り肉を見つけた時の、剥き出しの「食欲」だった。

 

 道路の向かい側では、自転車に乗った女子高生が、通行人の男子を路地裏へ引き込もうとして警察官に補導されていた。

 

「義務なんです! 私、彼から義務を徴収する権利があるんです!」

 

「許可証を見せなさい! 無認可の野良搾精は重罪ですよ!」

 

 狂っている。だが、これがこの世界の日常だ。

 

 俺はそんな光景を冷めた目で見つめながら、横で「兄貴、ガードが必要ならいつでも言ってね? 一回につきチョココロネ一個で手を打つよ」と笑うこなたを連れて歩き続けた。

 

 やがて、陵桜学園の校門が見えてきた。

 

 そこには、俺たちと同じ新入生──柊かがみとつかさが待っていた。

 

「あ、総司くん! こなたちゃん! お誕生日おめでとう!」

 

 つかさが無邪気に駆け寄ってくる。だが、その視線が俺の腰元に落ちた瞬間、彼女は「ふぇ……?」と奇妙な声を漏らして足を止めた。

 

「ちょっと! 泉くん、あんた何なのよその格好!」

 

 遅れてやってきたかがみが、顔を真っ赤にして俺を指さした。

 

「……おはよう、柊。格好と言われても、制服だが」

 

「制服の範疇を超えてるわよ! あんた、今日から……その、義務化されるんでしょ? そんな目立つモノぶら下げて……自分がどれだけ女子を刺激してるか自覚しなさいよ!」

 

「自覚はしているさ。だからこうして、双子の妹にガードを頼んでいる」

 

 俺がかがみの頭にそっと手を置くと、彼女は「ひゃぅ……っ」と短く鳴いて硬直した。

 

 前世の記憶がある俺にとって、かがみのツンデレは微笑ましいものだ。だが、この世界のかがみは、その正義感の裏側に「剥き出しの本能」を必死に抑え込んでいる危うさがある。

 

「柊。そんなに真っ赤な顔をして俺を見ていると、他の奴らに『私が一番に彼を搾りたい』と宣伝しているように見えるぞ」

 

「だ、誰が……っ! 私はただ、幼馴染として、その、風紀上の問題を指摘してるだけで……!」

 

「ならいい。……行くぞ、こなた。今日は最初の『健康診断』だ」

 

 俺は呆然とするかがみを置いて、悠然と校舎へ足を踏み入れる。

 

 背後では、こなたが「かがみん、お兄ちゃんのあそこ、今日は一段と『攻撃的』だから気をつけてねー」と余計な茶々を入れている。

 

 十五歳の春。

 

 双子の妹と同じ教室で、俺の「種馬」としての公式なキャリアが始まる。

 

 二十三センチという、この世界のパワーバランスを根底から破壊する「武器」を携えて。

 

(さて……検診でどんな数値が出るか。俺の『平穏な日常』が今日で終わるのだけは、間違いなさそうだな)

 

 俺は、熱狂を孕んだ女子生徒たちの視線の嵐を切り裂き、ポーカーフェイスのまま自分の席へと向かった。

 

 

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