転生したら竜だったので、折角なら竜種目指して頑張ります。 作:遊燐千
第0話 転生
俺の名前は
年齢は二十代後半。世間的には“アラサー”なんて呼ばれる、もうおじさんなのかお兄さんなのかと微妙な立ち位置の男だ。
そこそこの大学を出て、一応名のしれたIT企業に就職し、現在独身の一人アパート生活だ。
毎朝決まった時間に起きて、満員電車に揺られて会社へ向かい、上司に軽く頭を下げて、パソコンの前に座り、与えられた仕事をこなして、適当に残業して、帰りにコンビニで弁当を買って、アニメを見ながら食べて、寝る。
そんな“同じ一日”を、何度も繰り返してきた。
「……はぁ」
無意識に、ため息がこぼれる。
「彼女、欲しいなぁ……」
ぽつりと漏れた本音。
こんな繰り返しの日々の中に、彩りを欲してしまうのは仕方ないだろう。
なんてったって俺は彼女いない歴=年齢なのだ…… 。学生時代は部活やらなんやらである程度青春は経験したが ……恋愛経験は皆無 。
この歳になってまで相手がいないなんて、悲しい以外の何物でもないよなぁ 。
「……いや、やめよう。朝から自分で自分の事ぶっ刺すのは ……」
これから憂鬱なる労働が待っているのだ、更に気分を落としてどうする……と軽く首を振って、考えを追い払う。
春先の朝。
まだ少しひんやりとした空気が、寝不足の頭にじんわりと染みる。
通勤路の歩道には、すでに多くの人が行き交っていた。
スーツ姿の会社員。
イヤホンをつけたままスマホを見つめる学生。
足早に駅へ向かう人、人、人。
その流れに紛れながら、俺もまた歩いている。
「ふぁ〜……ん……ねっむ……」
大きなあくびが漏れ、涙に視界がにじむ。
まぶたが勝手に落ち意識が持っていかれそうだ。
足取りも、どこかふらついている気がする。
(……流石に眠すぎるな……)
そりゃそうだ。
昨日の夜から今に至るまで完全徹夜してしまったのだから。
「仕事あるってのに……何やってんだよ俺……珈琲でも買うか ?」
思わず小さくぼやく。
本気で、数時間前の自分を殴りたい。
「流石にこの歳にもなって、アニメで徹夜なんてなぁ …… 、少しきついものがある」
昨夜、俺はとあるアニメを一気見していた。
異世界に転生して、チート能力を手に入れて、仲間を増やして、どんどん強くなっていく。
現実とはまるで違う、夢みたいな世界。
「いいよなぁ……ああいうの……ロマンがある 」
ぼんやりと空を見上げる。
雲ひとつない青空。
どこまでも現実的で、どこまでも退屈な見慣れた空。
「俺も転生とかしてぇなぁ……」
『───了 』
「……ん?」
不意に、頭の中で“何か”が震えた気がした。雑踏の音でも、車の走行音でもない。
もっと直接的で、頭の内側を引っかくような違和感。
「なん……だ……?」
次の瞬間──
ゴンッ!!!
鈍い衝撃が、全身を貫いた。
「っ、が……!?」
視界が大きく揺れる。
何かにぶつかったのか、それとも──
考える間もなく、激痛が脳を焼き尽くす。
「ぐっ……ぁ……!」
地面に叩きつけられ、アスファルトの冷たさに生暖かい何かが滲む 。
「キャ──────!!!!!!!!」
「人が弾かれたぞ!!!」
体の内側から、灼けるような熱が溢れ出す。
血液が沸騰しているみたいに、全身が焼ける。
(熱い……、熱い熱い熱い …… !!! )
直後、真逆の感覚が襲う。
氷水に突き落とされたような冷たさ。
骨の芯まで凍りつくような感覚。
(なんだ……これ……寒くなってきやがった……)
理解が追いつかない。
周囲の音が、急に遠のく。
「誰か! 救急車呼べ!」
誰かの声。
でも、それすら水の中から聞いているみたいにぼやけている。
『「熱い」「寒い」確認しました。〈熱変動耐性〉の取得に成功しました』
思考がまとまらない。
というより体が全く動かせない。
指先どころか、まぶたすら動かせない。
自分の体なのにまるで力が入らない。
車にでも跳ねられたか? それともただ倒れただけか? 記憶を辿ろうとしても、うまくいかない。意識が、途切れ途切れになる。
『「力が入らない」 確認しました。
(はぁ……事故死なんて …… ないわぁ ……)
『「事故死」…… 確認しました。〈物理攻撃耐性〉を獲得しました……』
(……死ぬ……のか……?)
世界がゆっくりと遠ざかっていく。
音も、光も、すべてが薄れていく。
(もし……もし転生できるなら……)
意識が沈んでいく。
暗闇に引きずり込まれるように。
(次は……肉食系で……いこう……)
『「肉食系」確認しました、個体名・竜田水生の転生先を“水竜”に変更。成功しました』
『転生の変更に伴い、各種スキルを付与します』
『
意識がさらに沈む。
世界が暗く染まってゆく 。
それでも最後に、ひとつだけ。
「どうせなら……」
かすかな願い。
「どうせ転生するなら……ああいう世界が……いいな……」
昨夜見た、あの物語のような世界。
『「転生するならその世界がいい」確認しました。
「 あの …… 転生したらスライムだった件の世界が …… 」
『これより、個体名・竜田水生の転生を開始します』
その宣告と同時に──
俺の意識は途切れた。
【ステータス】
名前:???
性別:?
種族:水竜
各種スキル:
《コモンスキル》
〈水刃〉NEW
〈水槍〉NEW
〈水流移動〉NEW
〈水圧推進〉NEW
〈身体装甲〉NEW
〈身体強化〉NEW
《エクストラスキル》
〈魔力感知〉NEW
〈水源〉NEW
〈竜炎〉NEW
《ユニークスキル》
〈???〉NEW
〈大食い〉NEW
〈竜之者〉NEW
〈切望者〉NEW
各耐性:
〈物理攻撃耐性〉NEW
〈自然影響耐性〉NEW
〈水攻撃耐性〉NEW
〈熱変動耐性〉NEW