転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす!   作:遊燐千

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第9話 解き放たれた厄災

 

 

 

 

 この日、ジュラの大森林の周辺に位置する国々に衝撃的なニュースが告げられた。

 

 

 

 ” 天災(カタストロフ) ”級モンスターである暴風竜ヴェルドラの封印される封印の洞窟にて、厄災(カラミティ)級モンスターに匹敵する魔素の起こりが2つ確認されたのだ。

 

 新たな暴風大妖渦(カリュブディス)のようなモンスターが出現した可能性が高く、西方聖教会は新たな脅威であるとして其れを公表した。

 

 

 

 

 

 

* ブルムンド王国にて

 

 

 

 

 

 

 新たな脅威が出現したというニュースに、頭を悩ませている男が居た。

 

 小国ブルムンドの大臣であるベルヤード男爵だ。

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()。当然、君の耳にも届いているだろう?」

 

 

 背後より、部屋に入ってきた男に問いかける。左眼に傷跡を持つ、背の低い男であった。

 

 

「勿論、その話は聞いていますよ。男爵」

 

 

 目に傷を持つ男は肯定し、男爵の対面へと座る。

 

 

「ふん、流石はギルドマスターだな」

 

 

 男爵は鼻を鳴らし、吐き捨てるように言葉を続けた。

 

 

「さて、聞いているのならば当然。何かしら対策があるのだろう?」

 

「そうですね…… 、対策という対策をするつもりはありません」

 

「なっ …… !? 厄災(カラミティ)級の魔物が出現したというのに、対策を何も行わないだと?」

 

「はい。特に必要だと感じませんので」

 

 

 ギルドマスターである男は淡々と答え、対してベルヤード男爵はその態度に不快感を覚え、苛立ちが目に見えていた。

 

 

「必要がないだと? 其れはおかしな言うものだなギルドマスター。かの厄災(カラミティ)級モンスター暴風大妖渦(カリュブディス)に匹敵する魔物が2体も出現しているのだぞ! 一体でも国を滅ぼしかねない厄災が2体もだ! それなのに、対策を立てないだと!?」

 

 

「おかしいのはそちらの方ですよ。対策を立てるのは国の仕事。我々は自由組合であり、ボランティアではありませんよ?」

 

 

 息を継ぎ、ギルドマスターは続ける

 

 

「国民の財産を、領土を守るというのは国家としての最低限度の義務でしょう? 同様に、組合としても、組合員は守りますとも。お互いに大変ですなぁ?」

 

 

 余りにも白々しい言い草のギルドマスターに、栓が切れたのかベルヤード男爵は青筋を浮かばせ、机をばんっ! と叩いた。

 

 

「御託はいい!! 自由組合から傭兵を何人出せる? 戦闘に長けている冒険者は? この都市の防衛に何人回せるのだ!」

 

 

 ギルドマスターは溜息を着くと、

 

 

「先程も言いましたが、我々ボランティア団体ではありません。国家と自由組合の協定に基づく動員ならば、組合員の1割に当たる人数を動員いたします。ですが、それ以上を求めるのであれば、対価しだいとなりますな」

 

 

 ブルムンド王国に所属する組合員は7000人程度。 国家によって自由組合との協定に基づく動員を発令された場合は、その10パーセントの人数が国家の指揮下となる。

 

 そして、この協定が発令されている期間は国家が定めることが可能なのだが、その期間中は税収を2割減とするように取り決められている。

 

 強制力は持ちつつも、乱用ができないように仕組まれているのだ。

 

 もっとも、徴収される組合員の給料に立て替える必要のあるため、当然な取り決めである。

 

 

 だが……、仮に全員を徴収と言われたとしても、対応は不可能である。

 

 

 組合員の半数は非戦闘員であるのだから。

 

 

 

 

「……、兵としては300人弱か ……。我々ブルムンド王国と合わせても …… …… はぁ、やめだ」

 

 

「おい、フューズ。幼馴染として、そろそろ本音で語り合おうじゃないか」

 

 

 ギルドマスターもとい、フューズは驚いた表情を見せるがすぐに表情をただし、口を開いた。

 

 

厄災(カラミティ)に匹敵するモンスターが2体となると、ジュラの大森林周辺の国家としてはかなりの驚異となる」

 

「魔物殲滅を掲げている西方聖教会が動きはすると思うが、国家の安全は保証されないだろう。最悪、ファルムス王国を戦場とする可能性もある」

 

「教会としては、小国だろうが大国だろうが崩壊しても懐は痛まんからな」

 

「1度、個人的に調査だけは行ってやる。2体の厄災(カラミティ)級となるとあまり期待はしないで欲しいがな」

 

「すまん……助かる」

 

「ともかくは、出現したとされる2体の脅威の情報を掴むことだな。時間も限られている。俺は行くぞ!」

 

「頼んだ…… 」

 

 

 

 ふたりは頷き合い、そして別れた。

 

 

 

 

 

 だが、この2人はまだ知らない。

 

 3ヶ月後、この厄災(カラミティ)の出現よりも衝撃的なニュースが公表され、同じようなくだりをもう1回することを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 *一方的その頃、原因2人は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 番いになれだの何だのと騒ぎ続ける邪龍を放置し、2人ヴェルを連れて封印洞窟の出口へと向かっていた。

 

 

 

「アクラ──ー!!!」

 

「我は諦めぬからな──ー!!!」

 

 

 背後の方から、やたらと聞き覚えのある叫び声が反響してくる。

 

 なんか巨大なトカゲが遠吠えしている気がするが、きっと気のせいだろう。

 

 うん、気のせいだ。

 

 

 あ、ちなみにヴェルの心の中を読めるってやつは解除して貰った。

 

 やっぱ、全部ダダ漏れって恥ずかしいからな ~ 。

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

『あ゛〜暇ッス〜!!』

 

 

「そりゃ……あんだけ暴れ回ったら魔物も怖くなって出てこねぇよ……」

 

 

 

 思わず深いため息が漏れた。

 

 ヴェルドラの魔素が充満するこの封印洞窟には、エビルムカデ(デカムカデ)アーマーサウルス(デカカメレオン)なんかの強力な魔物がそこら中に生息している。

 

 まぁ、今の俺にとってはひょいっと倒せるような魔物だけど、進化したスキルやらを試すには良い狩場であった。

 

 

 

 

 ──本来ならなぁ!! 。

 

 

 

 

 一番のデカすぎる問題は。

 

 俺の隣で石ころを蹴飛ばしながら鼻歌を歌っているこの厄災(ヴェル)だった。

 

 

 ついさっきもそうだ。

 岩陰から現れたアーマーサウルスを見つけたので、腕試しと昼飯ついでにさっさと片付けようとしたら 、

 

 

 

『任せるッス!!』

 

 

 

 な〜んて言いながらヴェルが元気よく前に飛び出て 、

 

 

 

「あっ 、おい──」

 

 

 

 俺の静止も聞かぬまま、ヴェルはまっすぐ指先からアーマーサウルスに青白い光の光線を放ったのだ。

 

 

 

 

 

ゴォォォォォォンッ!!! 

 

 

 

 

 

 耳をつんざく轟音に眩い閃光。

 そして──

 

 

 

 

「は?」

 

 

 

 まるで最初から何もいませんでしたよ、なんて言うようにアーマーサウルスが蒸発していた。

 

 

 

 

『やったッス♪』

 

 

 

 ぶいっ、と満面の笑みでピースサインを決めるヴェル。

 

 

 

「やったッス♪ 、じゃねぇよ!?」

 

 

 

 思わず突っ込んでしまった 。

 

 

 

「んな事したら、魔物がわらわらと ……!」

 

 

 

 こんな話をしている間にも、轟音を聞きつけた魔物たちが四方八方からわらわらと集まってきて …… 、

 

 

「はぁ …… 、もういいや」

 

 

 

 と、諦めては。

 指をぱきぽきと鳴らして。

 

 

 

「進化した腕試しと行くかっ !!」

 

 

 

 ビュンっ……と、水色の影が通り過ぎる。

 

 

 

「え? ちょ──」

 

 

 

 

『おかわりッス〜♪』

 

 

 

 

ドッカァァァァン!! 

 

 

 

「ま っ ──」

 

 

 

『まだまだッス〜♪』

 

 

 

 

ドゴォォォォォン!! 

 

 

 

「俺にも試させ──」

 

 

 

『まとめていくッス〜♪』

 

 

 

 

ズドォォォォォン!! 

 

 

 

 

 結果。

 俺が試す暇もなく周囲に居たはずの魔物が全滅した。

 

 

 

 

『これで食いやすいッスね!!』

 

 

 

 両手を腰に当て、やり切ったと言わんばかりのドヤ顔である。

 

 

 あれだ、料理したシオンのような顔だ。

 ダークマターの代わりに消し炭を差し出してきてやがる…… 。

 

 

 

『ほらほら〜♪ 温かいうちに食べるッス♪』

 

 

 

 なんて言われて差し出されたのは、元魔物だったであろう何か。

 誰が好き好んで温かい炭なんて喰うんだよ…… 。

 

 

 

『じぃ ~ …… 』

 

 

 

 じぃ〜 っと見つめてくんな!! 

 …… 無駄に面がいいなぁ! こんにゃろぉ!! 

 

 

 

『んっへへぇ~ ♪』

 

 

「って、心を見るな!!」

 

 

 

 あ ~ もう!! 

 こうなりゃやけだ! 

 食ってやらぁ ~ !!!! 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 

 

「うっぷ ……」

 

 

 口の中に残る苦味と炭特有の香りに吐き気がする。

 馬鹿気持ち悪い。

 幸いなこと、一応元々魔物だったお陰で大食いは使えたので良かったが、それにしても気持ちが悪い……。

 

 

『伝。断れば良かったのでは?』

 

 

 いや、あんなに目をキラキラと輝かせ、期待に満ちた目で見られると…… 断りずれぇじゃん ? 

 

 

『…… はぁ 』

 

 

 我ながら、ちょっと美少女に甘いというかちょろいというか…… 。

 

 

 

『ど〜したッスか?』

 

 

 

 隣からひょこっと顔が覗き込んでくる。

 

 

 

『元気ないッス?』

 

 

「嗚呼、口の中が炭まみれで元気ダダ下がり中だよ …… 」

 

 

『じゃあこのかんわいいヴェルちゃんが癒してあげるッスよ〜!!』

 

 

 

 そう言って腕を広げているヴェル。

 

 

 

『ヴェルちゃんの胸に飛び込んでくるっす !』

 

 

「遠慮しとくわ …… 」

 

 

『えぇ〜!? なんでなんスかぁ ~ !!!』

 

 

 

 だって、見た目は女だけど中身はガッツリアラサーの男なんだもん。

 恥ずかしいったりゃありゃしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出口を目指して約3日程。

 出口が近づいてきたのか少し雑草やら苔やらが見え始めている。

 

 

 いや ~ この3日間本当に色んなことがあった。

 

 馬鹿(ヴェル)が逃げた魔物を追って迷子になったり。

 

 馬鹿(ヴェル)が歩くの面倒になったからって洞窟の壁ぶち抜こうとして、道が潰れたり。

 

 馬鹿(ヴェル)の寝相が悪すぎて何故か上半身だけ地面に埋まって犬神家みたいになってたり。

 

 

 馬鹿(馬鹿)が……

 

 

『ちょっと待ったッス ~ !! 馬鹿のルビが馬鹿になってるッス!! それじゃあただの馬鹿ッスよ ~ !!』

 

 

「ただの馬鹿だから言ってんだよ 」

 

 

『アクラちゃん酷いッス ~! 従者虐待ッス ! もしもしポリスメンッス ~!! 』

 

 

「んな事でもしもししてもポリスメンに ” は? ” って言われるだけで終わるわ」

 

 

『うわぁ〜ん! ポリスメンが薄情ッスぅ 〜 !!!』

 

 

 

 こんなことを3日間続けていたからか、すっかりこいつ(ヴェル)の扱いにも慣れ……、少しは慣れた。

 

 

 

『 んで ~ アクちー、何時になったら出口に着くんスか ~ ?』

 

 

 

「 …… 、多分もうすぐ着くと思うぜ?」

 

 

 アクちーってなんだ…… ? なんて、思いつつ進んでゆく度に増えてゆく緑を見てはそう言って。

 

 

『アクラちゃんって毎回言うのもなんかッスから ~ 、アクちーって省略したッス!』

 

 

「別に聞いてねぇよ…… 、ってか見るのやめろって何回言わせんだよ!?」

 

 

『だってぇ ~ 、開けたらいけない宝箱があればこじ開けたくなるんスもん~ 』

 

 

「とにかく、心を見るんじゃぁない !」

 

 

『りょ〜かいッス ~ 』

 

 

 

 

 このくだりも何回目か……、

 

『伝。16回目です』

 

 伝達者も伝達者で何数えてんだよ。

 

 

 

 あ、大事なことを忘れてた。

 なんと、進化したスキル達を試すことが出来たのだ。

 

 

 

 

 〈妖竜覇気〉:

 

 まぁ、魔王覇気とか竜覇気とかと同じような覇気系のスキルだな。

 使うと魔物の気配が全く感じなくなったから、魔除けには結構使えそう。

 まっ、俺がその魔なんだけどな。

 

 

 

 〈魔力妨害〉

 これはヴェルが使ってたやつ同様、スキルやら魔法やらを効きずらくするやつだな。

 試しにヴェルになんか撃ってもらったけど、使ってるのと使ってないのとではかなりの差が出た。

 これは常用しておこう。

 

 

 〈水源庫〉

 かなり強いってか使い勝手がいい。

 水 → 貯水 → 伝達者 → 俺

 魔素 → 水源 → 貯水 → 伝達者→俺

 が、魔素・水 → 水源庫 → 俺

 になり、工程がかなり短縮された。

 しかも、貯蔵量もかなり増え魔素との変換効率も大幅に上昇したお陰で、自然回復分の魔素でもかなりの水が生成できるようになった。

 

 

 〈水圧支配〉

 

 水圧系スキルの他に、色々応用ができるようになった。

 それと、水素爆発とか言うやつ馬鹿みたいなスキルも統合されたことで、心配だった決め手ができた。

 だが、自滅する可能性もあるため使い方はちゃんと考えないとな。

 

 〈逆鱗〉

 使ってみたがよくわかんなかった。

 逆鱗という名前から、怒りとかそこら辺の関係するのだと思う。

 まぁ、怒ってる時限定のスキルとかってことなのかな? 

 

 

 〈竜拳〉

 なんか、ちょっと見覚えのあるようなやつだけど一旦置いといて 。

 どうやら魔素を込めれば込めるだけ強くなるという単純のして強いスキルの様だ。

 多分、ヴェルマナとの戦いで拳をめっちゃ使ってたから覚えたのだろう。

 

 

 〈暴風〉

 なんで覚えてんのかよくわかんない。

 伝達者に聞いてみたら、暴風の因子を獲得したから云々って言ってたけど、聞いたことない単語だったのでまじでよくわかんない。

 スキルとしては強めの風を起こす程度で、暴風か? と言われればそこまでではない。

 にしても、暴風の因子ってなんだ? 

 

 〈人化〉

 外に出るために求めていたスキル。

 使用時は常に魔素を消費してるが、まぁ多分自然回復分でどうにかなるはず? 

 伝達者さん頼んだ! 

 

 

 〈爬虫特攻〉〈哺乳特攻〉〈鎧特攻〉

 新たに手に入れた特攻達。

 〈虫特攻〉も合わせて、なんかこのままだと全種族に特攻持ってまっせみたいになりそう。

 まぁ、特攻と言っても格上相手には効果が薄くなるっぽいからそこら辺のバランスはちゃんと組まれているらしい? 

 

 

 

 

 とまぁ、これで一応全部になるけど ……。

 最後にさすがにこれもだよな …… 。

 

 

 

 

 〈切望者〉

 転生した時に手に入れたユニークスキル。

 なんか、死にかけた時に助けてくれるスキルだって話だったけど ……、なんかサラッとスキルの統合進化とかの時に使われててビビった。

 え? もしかしてこのスキル万能か? 

 ついでみたいな感じで変質者の効果あるんだけどなんで? 

 

 

 

 

 

 

 色々と考えてたら、見覚えのある大扉が見え始めた。

 

 

 

「おっ 、やっと出口が見えたな~ 」

 

 

『おぉ ~ !! やっとッス〜!! これで外に出られるッスよ ~ !!』

 

 

「だが、その前にこの扉をどう開けるかを考えねぇとな ~ 」

 

 

『…… ? こじ開ければいいんじゃないんすか?』

 

 

「あのなぁ? ここはあのヴェルドラが300年間封印されてる洞窟だぜ? その間開けられなかった扉が突然開きました〜 とかなったら大騒ぎになるだろ」

 

 

 

 肩をブンブンと回して殴る気満々の様子で

 

 

 

『 ん ~ よくわかんないッスけど ~ 、なら

 ぶん殴って開けるッス!』

 

 

 

 なんて言い出して。

 

 

 

「だからそれがダメだって言ってんだって !!」

 

 

 

 

ギギギ …… 、

 

 

 

 

「『ん?』」

 

 

「…… なんかぎぎぎって音鳴らなかったか?」

 

 

『鳴ってたッス!』

 

 

『伝。この扉の先に人間が3人。扉を開けようとしています』

 

 

「『えっ?』」

 

 

 

 

ギギギギギ ……

 

 

 

 

 もしかして人間3人って …… アイツらか? 

 でもなんでこんな時期に……

 

 

 

 

「ってそんなことよりさっさと隠れ …… !!」

 

 

 

ギィィィィィ ──ー!!!  

 

 

 

 と軋む音を立てて扉が開いてゆく。

 

 

 

 ふぅ…… 、ギリギリ岩陰に隠れることが出来た …… 。

 

 

 

 にしてもなんでこの時期にアイツらが来てんだ? 

 ヴェルドラはまだリムルの胃袋には入ってないし…… 、来る理由がないはずなんだが…… 。

 

 

 

 

「おい、ヴェル。このまま隠れてやり過ごすぞ」

 

 

 小声でそう告げる。

 

 

 しーん……。

 

 

 返事がない。

 

 

 

「……ヴェル?」

 

 

 

 嫌な予感がした。

 ものすごく嫌な予感がした。

 嫌な予感しかしなかった。

 恐る恐る隣へ視線を向ける。

 

 

 

 

 ──いない。

 

 

 

 

 そこにいるはずのヴェルがいない。

 ついさっきまで隣にいたはずなのに。

 綺麗さっぱり消えていた。

 

 

 

「……」

 

 

 

 冷や汗が一筋流れる。

 

 まさか。

 いや、まさかな。

 そんな訳ないよな。

 俺はちゃんと隠れろと言った。

 

 

 

 流石にこの状況で勝手な行動は──

 

 

 

「やっと開いたか。錆付いてしまって、鍵穴もボロボロじゃねーか。」

 

 

「まあ仕方ないさ。300年、誰も中に入った事がないんだろ?」

 

 

「入ったという記録は残っていません。それよりも、本当に大丈夫なんでしょうか? なんかすっごい(プレッシャー)を感じたんですけど …… 」

 

 

「がはははっ! 安心しろ。300年前は無敵だったかどうか知らんが、所詮大きなトカゲから生まれたモンスターだろ? 俺はバジリスクをソロで討伐した事もあるんだっ。任せろ!!!」

 

 

「それ、前から思ってましたが、嘘ですよね? バジリスクってカテゴリーB+ランクの魔物ですよ? カバルさんにはソロ討伐なんて無理ですよね?」

 

 

「馬鹿野郎! 俺だってBランクだぞ! でかいだけのトカゲなんざ、敵じゃねーんだよ!」

 

 

「何言ってるんスか! ヴェルドラはでかいだけのトカゲじゃないッスよ!!」

 

 

 

 何やっちゃってくれてんだよあいつ ~

 !!!! 

 

 

 

「そ〜ですよ! あの暴風竜がでかいだけのトカゲなら封印されずに、とっくに討伐されてますよ!」

 

「あのなぁ ~ ? …… って、ん?」

 

「ど〜したガバル」

 

「いや、なんか一人多い気がして …… 」

 

「怖いこと言わないでくださいよ! まあ、いざという時は私の"強制離脱"で逃げますけど……」

 

「二人が仲いいのは分かったから、そろそろ静にお願いしますよ。あっしの"隠密スキル"を発動させやすんで!」

 

 

 

 スキルを発動させたのが、3人の姿がぼやけ見えずらくなる。

 

 そして洞窟の奥へと向かってゆく3人の背後で、あの馬鹿(ヴェル)は外へと飛び出していった。

 

 

 

 いや、なんで気が付かないんだよこいつら!? 明らかに変なのが一人混ざってんだろ!? まぁ、気が付かないでくれて助かったけどさ!? 

 

 

 

 

 と、頭を抱えながらも俺はヴェルの後を追うように洞窟の外へと足を踏み出した。

 

 その背後では──

 

 

 

「……あれ?」

 

 

 

 エレンがふと足を止める。

 

 

 

「どうした?」

 

「いえ……なんだか今、変な音が聞こえたような……」

 

 

 

 不安そうに辺りを見回しながら、彼女は首を傾げた。

 

 

 

「変な音?」

 

「その……足音みたいな?」

 

「足音ぉ?」

 

 

 

 カバルが眉をひそめる。

 

 

 

「こんな所でか?」

 

「気のせいじゃねぇですかい?」

 

 

 

 ギドも周囲を見渡しながら肩を竦めた。

 

 

 

「少なくとも、あっしには聞こえませんでしたぜ」

 

 

「でも確かに……」

 

 

 

 エレンはなおも違和感を拭いきれない様子だった。

 

 先程感じた、妙な圧迫感。

 まるで何か得体の知れない存在に見られていたような感覚。

 それがどうしても引っ掛かっていた。

 

 

 

「考え過ぎだろ」

 

 

 

 カバルが豪快に笑う。

 

 

 

「三百年誰も入ってねぇ洞窟だぞ? 俺ら以外に誰も居ねぇよ」

 

「そうですぜ」

 

「……そう、ですよね」

 

 

 

 この時3人は知らなかった。

 

 気のせいとして見逃したこの違和感こそが、確認するべき対象であったことを。

 そして、脅威として恐れられていた厄災を解き放ってしまったことを …… 。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 

 

 

 

『ひゃっほぉぉぉぉぉ〜ッス!!!』

 

 

 

 洞窟を飛び出した瞬間、ヴェルは両手を大きく広げながら草原へと駆け出した。

 

 

 

『外ッス〜!!』

 

 

 

 風を受けて、深い青に黄金を散りばめたような髪がふわりと舞う。

 

 

 

『空が蒼いッス!!』

 

 

 

 見上げた先には、一面に広がる青空。

 封印洞窟の薄暗い岩壁しか知らなかったヴェルにとって、それはどこまでも続く未知の世界だった。

 

 

 

『太陽が眩しいッス!!』

 

 

 

 燦々と降り注ぐ陽光に目を細めながら、今度はくるりとその場で回転する。

 

 

 

『草木が生い茂ってるッス〜!!』

 

 

 

 足元の草を掴み、木々を見上げ、まるで初めて世界を知った子供のようにはしゃぎ回る。

 

 

 

『空気がおいしいッスぅ〜♪』

 

 

 

 胸いっぱいに息を吸い込み、満面の笑みを浮かべた。

 

 

 

 そんなヴェルの姿を見ながら、俺もゆっくりと洞窟の外へ足を踏み出す。

 

 

 頬を撫でる風。

 

 土と草の匂い。

 

 木々のざわめき。

 

 そして、頭上に広がる青空。

 

 三百年もの間閉ざされていた洞窟の空気とは比べ物にならないほど心地良かった。

 

 思わず目を細める。

 

 

 

「……やっと、外に出られたな」

 

 

 

 まだ三週間も経っていない短い期間。

 だが──

 

 俺にとっては、とてもそんな風には思えなかった。

 

 ヴェルドラと(事故で)出会い。

 

(仕方なく)名を貰い。

 

 人化をする為にカリュブディスと殺し合い。

 

 そのカリュブディスが何故か美少女になって蘇り。

 

 挙句の果てには従者になった。

 

 ついでに人化したら雌だった。

 

 

 ……いや、本当に何なんだこの竜生。

 振り返ってみれば、濃すぎる。

 濃すぎて薄めても原液並みに濃い。

 まだ三週間も経っていないはずなのに、何年も洞窟の中で過ごしていたような気さえした。

 

 

 

「はぁ ……」

 

 

 

 頬を撫でる風を受けながら、思わず空を見上げる。

 どこまでも青い空。

 閉ざされた洞窟では決して見ることのできなかった景色。

 

 

 

「……やっぱ、外はいいな」

 

 

 

 この世界でこれから何が待っているのか。

 

 どんな出会いがあって。

 

 どんな騒動に巻き込まれて。

 

 どんな強敵と戦うことになるのか。

 

 不安がないと言えば嘘になる。

 

 

 けれど──

 

 

 それ以上に、楽しみだった。

 

 

『アクち ──!!』

 

 

 遠くから聞こえてくる能天気な声に顔を上げる。

 

「ん?」

 

 振り向けば、草むらの向こうでヴェルがぶんぶんと両手を振っていた。

 何かを手に持っている。

 嫌な予感しかしない。

 

 

『変なキノコ見つけたッス──ー!! 食べていいッスか──ー!?』

 

 

「やめろォォォォォォォォォ!!!!!!」

 

 

 前言撤回。

 

 

 馬鹿(ヴェル)のせいで先行きが不安でしかなかった。

 

 

 まっ、退屈はしなさそうだから良し……か? 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






こんにちはこんばんはおはようございます!
ってことで ~ 、ようやく洞窟からでれたぁ〜!!長かったぁ〜 !!あとはあ〜してこうしてどぉん!って感じでリムル転生までがんばるぞぉ〜!!

そしてぇ!皆様!
UA、お気に入り、感想、評価の方まじでありがとうございますぅ!!!いやぁ、してもらう度にほんっと口角が上がって上がって大変なことになっちゃってねぇ~ ?
まぁ、ノリと勢いで書いているところがあるので~なんか矛盾とか変なところを発見したら、誤字ってんぜ!ってぶん投げてくれると嬉しいですぅ〜 !!

あと、次回から本格的に本編の軸からそれていくようなことをするかもなのでそこら辺はご了承を!
それじゃぁまた次回はいつになるか分からないけどその時までばいにゃら〜!!

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