転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす! 作:遊燐千
更新が遅くなってさ〜せんっしたぁ〜!!!
こりゃ色々と立て込むわ、なんにも思い浮かばないわで筆が進まず…。
ってことで、本編どぞ〜。
重苦しい灰色の雲が空を覆い尽くし、激しい雨が絶え間なく森を叩いていた。
木々を打つ雨音だけが辺りに響く。
その森の中、一人の男が静かに刀を構えていた。
「っ……」
男は腰に差した刀をゆっくりと抜き放つ。
白刃は雨を受けて鈍く光り、その切っ先は眼前の巨影へと真っ直ぐ向けられる。
全身を覆う武具は幾度もの戦を潜り抜けた証か、小さな傷が無数に刻まれていた。
彼は故郷を離れ、生活のために出稼ぎをしている一人。
今回もまた、商隊の護衛依頼を終え、里へ帰る途中だった。
その帰路で──運悪く、"それ"と遭遇してしまったのである。
視線の先。
木々の隙間から現れたのは、全長三十メートルを優に超える
漆黒の鱗は雨粒を弾き、濡れた身体はまるで鋼鉄のような鈍い光沢を放っている。
黄金色の双眸が獲物を見据え、二股に分かれた舌が雨の中を不気味に揺れた。
その巨体が僅かに身じろぎするだけで、大地が低く震えるようだ。
だが、この魔物は違う。
山のような巨体から繰り出される圧倒的な膂力。
斬り裂かれても瞬く間に傷を塞ぐ、異常な再生能力。
その二つが知性という優位を容易く覆し、危険度をA級相当にまで押し上げていた。
男は静かに息を吐く。
雨が頬を伝う。
柄を握る手に、自然と力が籠もった。
「……逃がしては、くれぬか」
返事などあるはずもない。
黒蛇はゆっくりと鎌首を持ち上げる。
その巨大な口が開かれ、牙の隙間から低い唸り声が漏れた。
雨音が止んだような錯覚を覚えるほどの静寂。
──次の瞬間。
「 っ …… !!!」
速い……!!
巨体に見合わぬ速さに1歩出遅れ、咄嗟に刀を横へ構える。
耳を裂くような金属音と共に、凄まじい衝撃が走る。
「…… く゛っ …… 」
1本、2本、3本……と次々と大木をへし折り、その度に背中へ激痛が走る。
ようやく勢いが止まった頃には、甲冑は所々が砕け、雨に濡れた地面には鮮血が滲んでいた。
「……がはっ!」
口から血を吐き出す。
肺が焼けるように痛む。
腕は痺れ、刀を握る指先から感覚が薄れていく。
それでも男は、刀を杖代わりに地へ突き立て、震える腕に力を込めながらゆっくりと身体を起こした。
膝が笑う。
指先は痺れ、四肢には思うように力が入らない。
全身を駆け巡る激痛に意識さえ霞み始めていた。
「……ここで立てねば……我らの名折れ」
雨に濡れた刀の柄を、血で滑る手で握り直す。荒い息を吐きながら、それでも黒蛇から視線だけは逸らさない。
「……ここで膝をつけば──」
男は歯を食いしばり、震える足に最後の力を込める。
「
咆哮にも似た叫びを上げ、地を蹴り駆ける。
「一太刀浴びせねば、死ぬに死にきれん……!!」
残る力のすべてを刀へ乗せる。
勝つためではない。
生き延びるためでもない。
武士として、最後まで戦い抜いたという誇りを貫くために。
男は一直線に、巨蛇へと斬り掛か──
「──竜拳」
凛とした、よく通る少女の様な声が聞こえた刹那。
蒼き竜が大気を裂いた。
圧縮された魔素が龍となって一直線に駆け抜け、
ギャァァァァァァァッ
轟音が森を震わせる。
分厚い鱗が砕け散り、肉が抉れ、二十メートルを超える巨体がまるで叩き落された羽虫のように地面へと殴り伏せられた。
どッッッこ゛ォォォォん!!!!!!!
地鳴りと共に土煙が舞い上がり、森一帯を衝撃波が駆け抜けた。
刀を振り下ろそうとしていた男は、その場で動きを止めた。
自らの渾身の一太刀が届く、その寸前。
命を奪うはずだった怪物は、蒼き一撃によって地に伏せた。
雨が降る音だけが、しばし森を支配する。
「……な」
あまりに現実離れした光景に、思考が追いつかない。
そんな男の耳へ、不意に穏やかな声が届いた。
「──大丈夫か?」
はっと顔を上げる。
そこには、雨の中でも静かに佇む一人の少女がいた。
長い青髪を雨風になびかせ、黒蛇を吹き飛ばしたとは思えないほど落ち着いた様子で、こちらを見つめていた。
◇◇◇
洞窟の周辺を散策し始めて、かれこれ数時間。
鬱蒼と茂る木々の間を歩き回ったおかげで、周囲の地形はある程度把握できるようになっていた。
というのも、《伝達之者》が周囲の地形を自動で記録し、頭の中へ地図として映し出してくれているからだ。
いやぁ……本当に便利。
方向音痴気味な俺からしたら、まさに神機能と言っていい。
「これで道に迷う心配はなさそうだな」
『えっへん』
どこか誇らしげな《伝達之者》の声に、思わず苦笑する。
「アザッス、伝達之者」
思わず両手を合わせて礼を言う。
それと、もう一つ分かったことがある。
どうやら俺たちの魔素は、これまでずっと垂れ流し状態だったらしい。本人は何もしていないつもりでも、魔王級の魔素が四六時中漏れ出していたとか……。
だから、魔物とかに全然襲われなかったのか。
伝達之者が言うには今は《水源庫》が常に稼働し、身体から溢れる魔素を外へ漏らさないよう制御してくれている……らしい。……いや、正確には消費し続けてるのか?
その辺の仕組みは正直よく分からない。
まぁ、隠せているならそれでいいか!
一方のヴェルはというと──
『ぐっ……ぎゅっ……できたッス〜♪』
と、本人曰く「なんか、ぎゅーっとやってごごごっでそぉい!」でできたらしい。
何言ってんのか全く分かんなかったけど、まぁ、実際できてそうだからヨシ。
そんなこんなで、ようやく俺たちは普通に外を歩けるようになった……はずだ。少なくとも、魔素を垂れ流して歩く災害みたいな存在ではなくなっただろう。
……多分。
そんなことを考えていた、その時だった。
──ぽつ。
「ん……?」
何か冷たいものが頭に落ちた。
ぽつ、ぽつ、ぽつ。
一粒だった雫は瞬く間に数を増やし、俺はゆっくりと空を見上げた。
いつの間にか空一面は重苦しい灰色の雲に覆われている。
ザァァァァァ──。
雨脚は一気に強まり、森全体を白く煙らせていく。
「……うぉっ!? 雨が降って来やがった」
『伝。半径0.3メートル圏内の雨粒を〈水源庫〉へ貯水します』
直後、俺の周囲だけ不思議な光景が広がった。降り注ぐ雨粒が身体に触れる寸前で吸い込まれるように消え、まるで透明な傘でも差しているかのように、一滴たりとも身体を濡らさない。
「そういう使い方も出来んのか」
水源庫って便利〜、これから傘いらずじゃん。
あんま濡れたくなかったから、これは本当にありがてぇな〜。なんて考えていたアクラの隣では。
『わぁぁぁぁぁ!!』
ヴェルは両手を広げ、その場でくるくると回り始めた。
『雨ッス! 雨ッス〜!!』
降り注ぐ雨を全身で受け止めながら、子どものようにはしゃぎ回る。
『冷たいッス! 気持ちいいッス〜!!』
「ったく…… 転ぶなよ?」
『はいっす〜!!』
雨に濡れた前髪を払うこともなく、満面の笑みで頷く。
「ぴゃ〜!! 雨って楽しいッスね〜!!!」
そう言って空を見上げるヴェルの表情は、本当に嬉しそうだった。
その無邪気な笑顔を見ていると、少しくらい振り回されるのも悪くないと思える。
『……ん?』
らんららーんっ♪なんて、鼻歌を歌いながら歩いていたヴェルが足を止めた。
「んぁ? ヴェルどうし──」
『伝。前方約2Kmに推定・A級の魔物を確認』
「……A級の魔物…?」
『それと〜、なんか戦ってるっすね? 共有するッス〜 !』
「えっ?」
ぎゅっと手を握られては、視界は移り変わり大きな黒蛇と1人の武士のような男が戦いっているような場面が見える。
「ちょちょちょちょちょ、なんだこれ!?」
『ヴェルのスキルッス 〜 ♪』
話を聞いてみれば、進化した時に新たにスキルをいくつか獲得していたらしくこれもそのうちの一つなんだとか。
「……、取り敢えず。た──」
『戦いに行くッス 〜 !!』
「助けに行くんだよバカ!」
『それじゃあ、助けるためにあの黒蛇ぶっ飛ばすッス!』
「ダメ」
『えぇ〜!?!?』
「お前は加減ができね〜だろうが! 男ごとぶっ飛ばしたら洒落になんねぇだろ!」
『ぶ〜!』
「ったく……、おら……行くぞ」
しぶきを上げながら木々の間を駆け抜け、戦いの気配がする方角へと一直線に向かう。
駆け抜けること数十秒。
雨を切り裂き、木々の間を疾走する。
やがて、辺りの景色が一変した。
あちこちの木々が根元から薙ぎ倒され、大地は無数の傷跡で抉られている。
まるで嵐でも通り過ぎたかのような惨状。
その中心で、一際巨大な影がうねりを上げていた。
全長二十メートルを超える漆黒の巨体。
雨粒を弾く黒い鱗を纏い、黄金の双眸をぎらつかせる巨大な蛇──。
「……アイツか、適当に相手できるようなやつじゃねぇな」
『伝。〈竜之者〉を発動させますか?』
「嗚呼」
スキルを起動した瞬間、四肢の隅々まで力が満ち、視界は鮮明になる。
「一撃で仕留める」
大地を強く踏み抜く。
ドンッ!! と爆ぜるような轟音と共に地面が陥没し、俺の身体は砲弾のような勢いで宙へと跳び上がった。
黒蛇の頭上へ躍り出る。
身体を捻りながら右拳を固く握り締めると、膨大な魔素が拳へと渦を巻くように集束していく。
青白い光が拳を包み込み、空気そのものが悲鳴を上げるように震えた。
眼下では黒蛇が大口を開き、目の前の獲物へ喰らいつこうとしている。
「竜拳──」
振り抜いた拳と同時に、膨大な魔素が蒼き竜の姿を形作る。
咆哮を轟かせた蒼竜は、そのままアクラの拳と一つになり──。
大蛇の脳天へ、容赦なく叩き落とされた。
轟音が森を揺らす。
大地が陥没し、衝撃波が雨雲すら吹き飛ばさんばかりに周囲へと駆け抜けた。
巨大な黒蛇の身体は地面へと叩き伏せられ、その巨躯が大地を抉りながら大きく沈み込む。
『伝。
土煙がゆっくりと晴れていく。
地面には巨大なクレーターが刻まれ、その中心で
「……ふぃ〜」
小さく息を吐きながら地面へと着地する。
拳に残っていた魔素を散らし、周囲を軽く見回す。
……よし、再生する心配も無さそうだな。
そんで、あの武士みてぇな男は〜。
少し離れた場所に立つ男へと視線を向けた。雨に打たれながらも刀を支えに立つその姿は、満身創痍そのものだった。
「大丈夫か?」
男は数秒、呆然と俺を見つめていた。
やがて、刀を杖代わりに身体を支えながら、小さく頷く。
「……ああ」
「ってか、邪魔したみたいですまねぇな」
頭を掻きながら苦笑する。
どう見ても最後の一太刀を放とうとしていたところへ割り込んでしまった感じだしなぁ、武人ってそういうの気にしそうだし、謝っておいた。
すると、男は一瞬だけ目を丸くし、小さく首を横へ振った。
「いや、どうせ死ぬのなら、最後まで足掻こうと思ったまで」
そう言って刀を鞘へ納める。
「助太刀、感謝する」
その言葉と共に、男は静かに頭を下げた。
「助けて貰った御礼をしたい。我らが
「えっ?
改めて男をよく見てみれば、額から立派な1本の角が生えていた。 って、まじかよ……冒険者とかだと思ってたらまさか
「……まぁ、関わっちまったもんは仕方ねぇか! よし! 行く──」
返事をしようとした、その時だった。
前方から暴走機関車のようななにかが接近してくる。
『アクちぃ〜〜!!』
その暴走機関車から聞き覚えしかない間延びした声が響き、アクラの顔は青ざめた。
「……ん?」
『置いてくなんて酷いッス〜〜!!』
ザザザザザッ!!
雨を蹴散らし、木々の間を青い影が一直線に駆け抜ける。
「お、おい待──」
『とぉ──ーッ!!』
どすっ!!
「ぐふっ!?」
勢いそのままにヴェルが飛びつき、アクラは受け身を取る暇もなく地面へ倒れ込む。
ごろごろごろっ、と泥混じりの地面を二人まとめて転がった。
「いったぁ……」
『えへへ〜♪ 捕まえたッス♪』
「捕まえたッス♪ じゃねぇよ……、泥でぐっちゃぐちゃじゃねぇか……」
抱きついたまま満足そうに笑うヴェル。
アクラは頭を押さえながら大きくため息をついた。
一方、その一部始終を見ていた
「…………?」
礼を尽くしていた姿勢のまま、ぴたりと固まっていた。
「なぁなぁ、にいちゃん。
「ふろ……? 嗚呼、あるにはあるが……」
「……至急俺達を里に連れてってくれ……、とりあえず泥を流したい」
「……嗚呼、わかった」
こうして、俺達は
次回はもっと早く更新できるように頑張ります…。