転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす! 作:遊燐千
やぁ、俺だ。
いやぁ〜やっぱり風呂って良かったな〜! めっちゃ気持ちよかった。
ん……?
あのヴェルとの潜り対決の結果はどうなったのかって?
そりゃ、当然俺の圧勝に決まってんだろ?
だって水竜だぜ? 水を司る存在が負けるわけね〜じゃん? それに、水操れるスキルもあるからそれ使えば.って、ん?
そんなの反則だろって?
いやいやいや、なぁに言ってんのさ。これは戦いだぜ? 使えるものは全部使わね〜とな!
……ちなみに。
あれだけ長い間、風呂に潜り続けていたせいで、俺もちょっとのぼせてしまった。うん…。
『ぶぇ〜……クラクラするっすぅ〜……』
「……そりゃあ、あんなに長い間潜っていればそうなりますよ」
湯船から上がった俺たちは、そのまま用意してもらった
着慣れない服ではあるが、思ったよりも動きやすい。
のぼせた俺はその場に腰を下ろし、ゆっくりと身体を休める。
隣ではヴェルも座り込み、未だに頭をふらふらと揺らしていた。
……こいつ、本当に大丈夫か?
さっきまで「どっちが長く潜っていられるか」なんてくだらない勝負をしていたとは思えない姿である。
まあ、乗った俺も俺なんだけど。
そんなこんなでしばらくして、身体の火照りも少しずつ落ち着いてきた。
「ふぅ……」
軽く息を吐き、立ち上がる。
「んじゃ、そろそろ宴会行こ〜ぜ」
『えんかい……! いくッス!!!』
さっきまでクラクラしていた奴とは思えないほど、ヴェルが勢いよく立ち上がった
「はい。では、案内します」
「よろしく頼むわ」
『よろしくッス〜♪』
こうして俺たちは、
◇◇◇
宴会の会場となる大広間へ足を踏み入れる。
そこには、すでに宴の準備が整えられていた。
広間の中央には牛鹿の串焼きをはじめとした、様々な料理が所狭しと並べられている。
焼き上げられた肉からは香ばしい匂いが立ち上り、まだ火の残った炭火の上では脂がじゅうじゅうと音を立てていた。
そして、少し離れた場所には酒樽がいくつも積み上げられている。
見るからに豪快な量だ。さすが
……ってかこれ、宴会っていうよりちょっとした祭りみたいじゃないか?
そして、その周囲には大勢の
談笑する者。
料理を並べる者。
酒を準備する者。
それぞれが忙しそうに動き回りながらも、どこか楽しそうな表情を浮かべている。
そんな中、俺たちが広場へ足を踏み入れたのを確認すると、族長と呼ばれた
手にしているのは、並々と酒の注がれた大きな盃。
周囲にいた大鬼族たちも、族長の動きに合わせるように次々と手を止め、こちらへ視線を向けていく。
族長は俺とヴェルを真っ直ぐに見据える。
その表情には、族長としての威厳と、恩人へ向ける純粋な感謝が浮かんでいた。
そして──。
「さて、アクラ殿にヴェル殿もいらした。」
族長は手に持つ盃を大きく掲げた。
その瞬間、周囲の大鬼族たちも一斉に酒を手に取る。
「強大な魔物から我らが同胞を守ってくださった、アクラ殿、ヴェル殿に感謝を……! 乾杯……!」
族長の声が大広場へ響き渡る。
そして──。
「「「「「「「「「「乾杯っ!!!」」」」」」」」」」
無数の声が重なった。
掲げられた盃が一斉に揺れ、酒が波打つ。
「飲めぇ!!」
「今日はとことん騒ぐぞ!!」
「肉もまだまだあるからな!!」
一気に大広場が活気を取り戻す。
料理の匂い、酒の香り、そして大鬼族たちの豪快な笑い声。
それらが混ざり合い、夜の里を賑やかに彩っていく。
俺は手にした盃を眺め、それから周囲を見渡した。
……なんだかんだで。
俺たちは、本当に歓迎されているらしい。
『お肉ッス〜!!』
宴会が始まった瞬間、ヴェルは料理が並べられた長机へと駆け寄った。
その目に映っているのは、酒でも他の料理でもない。
山のように積まれた牛鹿の串焼きだけだった。
「好きなだけ食べるといい、これは礼の品だ」
族長が笑みを浮かべながらそう告げる。
『本当ッスか!?』
「っは!言われずとも食うに決まってんだろ!」
俺もまた、目の前に置かれた串焼きを一本手に取る。
炭火で焼かれた肉からは香ばしい匂いが立ち上り、食欲を刺激する。
一口かじれば、肉汁が口いっぱいに広がった。
「……うめぇ…!」
『んん〜〜!! やっぱり肉は最高ッス〜!!』
ヴェルは両手に串焼きを抱え、嬉々として次々と口へ運んでいく。
「おいおい、ヴェル殿。そんなに急いで食わなくても肉は逃げんぞ!」
「ははは! 気に入ってもらえたようで何よりだ!」
◇◇◇
色々と飲み食いをしていたら、気がつけば日はすっかり落ちていた。
昼間はまだ明るかった空も、今ではすっかり暗くなり、夜空には無数の星が瞬き始めている。
里の周囲を照らしているのは、あちこちに置かれた松明や焚き火の明かり。
その橙色の光が、大鬼族たちの顔を照らしていた。
……とはいえ。
宴会そのものは、まだまだ終わる気配がない。
「おら、もう一杯いけるだろ!」
「無理に決まってるだろ! お前、さっきから何杯飲んでると思ってんだ!」
「まだ五杯だ!」
「五杯もだ!」
「細けぇこと気にすんな! ほら、飲め!」
「お前は人の話を聞けぇ!」
少し離れたところでは、酔っ払った大鬼族たちが酒の飲み比べを始めている。
その隣では、焼き上がったばかりの牛鹿の肉を巡って、何故か小さな争いまで起きていた。
「その串、俺のだぞ!」
「先に取ったのは俺だ!」
「なら半分に分けろ!」
「肉を半分にしたら串焼きじゃなくなるだろうが!」
「知るか!」
「ははははは!」
最初こそ俺たちへの歓迎会という雰囲気だったはずなのに、いつの間にか完全に普段の宴会と化している。
いや、むしろ。
俺たちがいることすら忘れて楽しんでいるんじゃないかと思うくらいだ。
という俺もすっかりこの空気に馴染んでしまい、酒を片手にのんびりと料理をつまんでいた。
「アクラ殿!こっちにも来い!」
「いや、俺はここで──」
「遠慮するな!恩人なんだから真ん中に座れ!」
「そうだそうだ!」
「ほら、酒もあるぞ!」
「いや、もう十分──」
「いいから飲め!」
「話聞いてる!?」
断る暇すら与えてもらえない。
気がつけば新しい酒が杯に注がれ、目の前には追加の串焼きまで置かれていた。
……こいつら、押しが強すぎる。
その一方で──。
『ん〜〜♪ このお肉おいしいッス〜!!』
「お前はお前で食いすぎだろ……」
少し離れた場所では、ヴェルが山積みにされた牛鹿の串焼きを次々と平らげていた。
『だってお肉がいっぱいあるッスよ!? 食べ放題ッス!!』
「だからって限度ってもんがあるだろ」
『限度?』
「そう。限度」
『そんなもの知らないッス!!』
「威張って言うな」
俺が呆れていると、周囲の大鬼族たちから笑い声が上がる。
「ははは! ヴェル殿は本当に食うな!」
「見ていて気持ちがいいくらいだ!」
「もっと焼いてやれ!」
『本当ッスか!?』
「だから調子に乗らせるなって!」
そんなやり取りを何度繰り返しただろうか。
気がつけば、宴会は昼間とは比べ物にならないほど盛り上がっていた。
そんな時だった。
「なぁ、アクラ殿」
「ん?」
声を掛けられて顔を上げる。
そこにいたのは、赤髪の若い大鬼族──。
……ベニマル。
いや、まだ名前を付けられていないんだったな。
今は若様と呼ぶべきか。
そんなことを考えていると、若様は手にしていた杯を一度置き、少しだけ真剣な表情を浮かべた。
「改めて、彼奴を助けてくれたことを感謝する」
「……ああ」
どうやら、昼間助けたあの武士鬼のことらしい。
「彼奴は俺の友なんだ……。良くコマを回し、剣をぶつけ合っていた」
「そうなのか」
思わず若様の顔を見る。
なるほど。
あの武士鬼、若様のダチだったのか。
そう考えると、宴会中にやたらと俺へ絡んできたのも納得できる。
命を救われた恩人。
しかも、自分の大切な友人を救ってくれた相手。
そりゃ、酒も進むわけだ。
「俺は……彼奴が戻ってきた時、本当に嬉しかった」
若様はそう呟き、少しだけ笑った。
普段の豪快な雰囲気とは違う、年相応の表情だった。
「また一緒にコマを回せる。そう思うとな」
「……そっか」
俺も小さく笑って、杯を傾ける。
こういうのを見ると──。
助けてよかった。
素直にそう思える。
すると──。
「私からも、兄を助けてくれてありがとうございます!」
横から、シオンが飛び出してきた。
「……ん?なんて?」
俺の聞き間違いだろうか、兄とかなんとか言っていた気がする…。
「私の兄を助けてくれてありがとうございます!」
「…え?」
……待て。
シオンに兄っていたのか?
なんかみんなの兄貴的なポジのヒイロとかじゃなく兄が!?
俺が助けたあの武士鬼。
思っていた以上に、この里で重要な立ち位置にいる人物だったらしい。
「……」
俺は無言で酒を一口飲む。
……なんか、とんでもなく重要な奴を助けちゃったんじゃないか?
ただ目の前で襲われていたから助けただけなんだけど。
俺の知っている物語なら、こいつは後々──。
いや、考えるのはやめよう。
「……まあ、助けられてよかったよ」
「本当にありがとうございます!」
シオンが満面の笑みで頭を下げる。
その横では、若様も静かに頷いていた。
「……こちらこそ」
俺は苦笑しながら杯を掲げる。
「ほら、せっかくの宴会なんだ。そんな堅苦しい話はここまでにしようぜ」
「そうだな!」
「飲もう!」
「肉もまだあるぞ!」
『お肉ッ全部食うッス〜 !』
「ちょ、俺も食いてぇんだけど!」
再び大きな笑い声が上がる。
……結局、また宴会に引き戻された。
俺も酒を飲み、肉を食い、大鬼族たちとくだらない話をしながら時間を過ごす。
そうしているうちに、ふと頭の中に別の疑問が浮かんだ。
……そういえば。
リムルって、あとどのくらいで転生してくるんだ?
俺がこの世界に来てから、色々とありすぎて時間の感覚が若干おかしくなっている。
ヴェルドラと出会って。
進化して。
人化して。
ヴェルまで増えて。
挙句の果てには、大鬼族の里で宴会までしている。
……まあ、今更考えても仕方ないか。
起きてしまったことをいちいち気にしていても仕方がない。
それより、今後の予定だけでも把握しておこう。
なぁ、伝達者。
リムルが転生してくるまで、あとどのくらいだ?
『伝。約10日です』
……あと2週間もねぇのか。
これからどうすっかな〜、なんて考えていたら。
「アクラ殿……」
「ん?」
不意に声を掛けられた。
振り向くと、先ほどから俺たちの世話をしてくれていた大鬼族が立っている。
「族長から話があるそうです」
「……族長から?」
宴会の最中に?
俺は手にしていた杯を置く。
どうやら、まだ今日は終わらないらしい。
「ん、わかった」
俺はゆっくりと立ち上がる。
「ヴェル、ちょっと行ってくる」
『んぇ? アクちーどこ行くんスか?』
「族長のところ」
『ヴェルも行くッス!』
「お前はそこで肉食ってろ」
『えぇ〜!?』
そんなヴェルの抗議を背中に聞きながら、俺は族長のもとへ向かう。
夜の里には、まだ宴会の笑い声が響いていた。
その喧騒を少しずつ背後へ遠ざけながら──。
俺は、族長が自分に何の話をするのかを考えていた。
◇◇◇
族長のもとへ向かうと、彼は酒を片手にこちらを待っていた。
先ほどまで宴会で賑わっていた大広間から少し離れているため、周囲の喧騒もここまで来れば遠く聞こえる。
俺たちの姿に気付いた族長が、ゆっくりと顔を上げた。
「よく来てくれた、アクラ殿」
「んで、話って?」
俺が尋ねると、族長は手にした盃を置いた。
先ほどまでの宴会で見せていた豪快な笑みは消え、その表情にはどこか真剣な色が浮かんでいる。
「アクラ殿さえ良ければ、我らの里に住まないか?」
「……え? いいのか?」
思わず聞き返してしまう。
まさか、そんな話をされるとは思っていなかった。
この世界に転生してから、まだそれほど時間は経っていない。
自分がこれからどこで暮らすのかなんて、まともに考えたことすらなかった。
強いて言えば、これまで暮らしていたあの洞窟くらいだ。
……住む場所、と呼んでいいのかは甚だ疑問だけど。
そんな俺に、族長は迷うことなく頷いた。
「我らはそなたに大きな恩がある。住む場所がないのであれば、なおさらだ」
「……」
「それに、そなたとヴェル殿ならば、我らの里にいてもらって困ることはない」
一度言葉を区切り、族長は僅かに口元を緩めた。
「むしろ──こちらとしては、いてもらえる方がありがたいくらいだ」
「……そうなのか?」
思いがけない言葉に、俺はしばらく黙り込んだ。
この里には、俺たちを受け入れてくれる人たちがいる。
今日会ったばかりだというのに、こうして居場所まで用意してくれようとしている。
なら──。
わざわざ断る理由なんて、どこにもなかった。
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
そう答えると、族長は満足そうに頷いた。
「そうか。それは何よりだ」
その言葉を聞いて、俺も小さく笑う。
……よし。
これで、とりあえず寝床の心配はなくなった。
そう思ったところで、ふと別の考えが頭をよぎる。
「あ、住まわせてくれるならさ、ちょっと頼みたいことがあるんだけど」
俺がそう切り出すと、族長が僅かに首を傾げた。
「なんだ?」
俺は少しだけ間を置いてから、自分の腰へと手をやる。
「剣を教えて欲しいんだ」
「……剣を?」
「ああ」
俺は苦笑を浮かべる。
「俺、剣術ってまともに扱ったことなくてさ」
今日、黒蛇と戦った時に見たあの大鬼族の剣技。
あの一太刀は、今でも鮮明に記憶に残っている。
力任せに振るうだけではない。
相手の動きを読み、間合いを測り、最後の一瞬に全てを乗せる。
ああいう戦い方を、俺も身につけてみたい。
「せっかく鬼の里に住ませてもらえるなら、ついでに教えてもらえないかなって」
族長はしばらく俺の顔を見つめていた。
やがて──。
その口元に、ゆっくりと笑みが浮かぶ。
「……なるほど」
「?」
何か思い当たったような表情。
そして族長は、俺の後方へと視線を向けた。
「それならば、適任者がいる」
「適任者?」
俺もつられて振り返る。
少し離れた場所。
そこには、宴会の喧騒から一歩引いた場所で静かに佇む、一人の白髪の老鬼がいた。
「……」
その老鬼と、目が合う。
「あ……」
あの老鬼は言わずもがなハクロウのことである。
「そなたには、あの者に師事してもらおう」
俺の視線が、白髪の老鬼へと向く。
改めて見ると、やはり只者ではない。
長年の戦いを積み重ねてきたことが一目で分かる佇まい。
静かに立っているだけなのに、妙な威圧感がある。
「……お手柔らかに」
「儂の修行は厳しいが……まぁ……アクラ殿ならば大丈夫じゃろう」
とりあえず、これだけは言っておこう。
何事も最初が肝心だ。
最初に「厳しくしても大丈夫です!」なんて言ったら最後。
絶対に手加減されなくなる。
俺は自分の身を守るためにも、できるだけ弱々しく見せることにした。
「いやいやいや……そんな事有りませんから。ズブの素人ですから!」
両手を軽く振りながら、必死に訴える。
俺は本当に剣術の素人だ。
剣を持った経験だってほとんどない。
基礎の基礎から教えてもらわないといけないぐらいだってのに……!
「みっちりと扱いてもらって構わん」
「……え?」
横から聞こえてきた族長の一言に、俺はゆっくりと顔を向けた。
「ちょ、待っ──」
「族長のご命令とあっては、仕方なかろう」
ハクロウまでもが、妙に嬉しそうな顔をして頷く。
「おい!そことそこ!結託すんな!」
俺が思わず突っ込むと──。
「はっはっはっは!」 「ほっほっほっほ!」
二人の豪快な笑い声が、夜の里へと響き渡った。
俺はそんな二人を前に、早くも明日から始まるであろう修行の光景を想像してしまう。
あのゴブタ達やヨウム達が受けていた超スパルタの修行を……。
「……」
考えるのはやめよう。
まだ始まってもいないのだから……。
こうして俺は、自ら望んだ剣術修行という名の地獄への片道切符を、半ば強制的に手に入れてしまったのであった。
ふぅ〜、なんか日常回が続いてますけど〜そろそろ原作の方も動きだします!
ここら辺の3話ぐらいは本当なら1話にまとめてやりたかったんですけど、そうしたら1話だけで2万文字とか超えちゃったんで、分けて色々端折ったんですよねぇ〜。
っというわけで!次回もまた見てくださいねぇ〜!
あ、感想とか評価とかそういうのもお願いしますぅ〜!めっちゃ励みになるんで!
あ、ここの設定矛盾してね?なんかへんじゃね?ってのもお願いします!誤字報告もよろ!
ってわけでまたいつか!
オークロードをどうする。
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原作に忠実にいく…。
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助ける!(みんな助かる!)
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助ける!(モブ達が全滅)
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助けるために奮闘。
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敗北