転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす! 作:遊燐千
あの宴会から数日──。
地獄の修行……は、また今度ということになった。
今の俺は、以前からヴェルドラと交わしていた「話し相手になる」という約束を果たすため、再び封印洞窟へとやって来ている。
……というのが表向きの理由だ。
本当の目的は──。
そろそろ、リムルが転生してくるはずだから。
転生地点であるこの洞窟がどうなっているのか、その様子を見に来たのだ。
まあ、リムルがいつ転生してくるのかについては、伝達者に確認している。
だから、今頃来てもおかしくはない。
……というか。
下手をすると、もう転生してたりして。
「……まあ、その時はその時か」
そんなことを考えながら、俺は洞窟の奥へと進んでいく。
ヴェルドラが封印されている深部へと続く道。
以前はただひたすら長く感じた道のりも、今となってはそこまで苦ではない。
むしろ──。
「また湧いてきたなぁ」
前方から、ぞろぞろと魔物たちが姿を現す。
その他にも、この洞窟に生息する様々な魔物たち。
ヴェルドラの魔素を大量に浴びているせいか、どいつもこいつもなかなかに強い。
だが──。
「……まあ、今の俺なら敵じゃねぇな」
相変わらずうじゃうじゃと湧いてくる魔物達を倒しては食ってを繰り返している。
「……ヴェル置いてきて大丈夫だったかな……」
ふと、そんな疑問が頭をよぎる。
今回は洞窟内でヴェルが暴れ回ると色々と面倒なことになるため、
「まっ、全部あいつらに任せよ!」
『伝。水転移を使用できる範囲内です。使用しますか?』
「おっ、ようやくか」
水転移、結構初めに手に入れてはいたけど全く使っていなかったスキル。
まぁ、使わなかったというよりそんなに使えなかったのだ。
理由は単純。
このスキル、消費する魔素量がとんでもないのだ。
なんと、一回の使用で魔素を三割も消費する。
しかも、この「三割」というのは総魔素量の三割。
つまり、単純計算なら連続使用できるのは三回まで。
……まあ、俺のスキルで生成した水がある場所なら転移できるという、条件自体はかなり緩いからそう考えれば、この消費量も妥当なのかもしれない。
早く魔法とか使えるようになりてぇなぁ。
「嗚呼、使ってくれ」
◇◇◇
「クワァ〜ッハッハッハ!!!」
封印洞窟の奥深く。
どうやらヴェルドラは転移してすぐに、俺が来たことを感じ取ったらしく、やたらと声量の大きい笑い声が迎えに来た。
「うわっ、うるせっ!」
あまりのうるささに思わず両手で耳を塞ぐ。
「なっ! ……数日ぶりだと言うのに冷たいではないか……」
「嗚呼、すまんすまん」
俺が適当に謝ると、ヴェルドラは少しだけ不満そうな顔をしながらも、すぐにこちらへ視線を向けた。
「……ん? ヴェルは一緒では無いのだな」
「嗚呼」
暴れさせないためってのもそうだが……、ヴェルドラと一緒にさせると変なノリし出すからな……。どんなこと言い出してやり出すかわかんねぇから連れてこなかったんだよな。
「んで……調子はどうだ?」
「相も変わらず囚われの身よ……」
ヴェルドラはそう言いながら、自分を縛り付けている封印を見下ろししょぼぉんっと哀愁漂うお顔に──
「……だが!」
クワッ! と目をかっぴらいて、アクラを見つめる。
「アクラが来たことで我の気分は最高潮である!」
「お、おう……」
ずぉん! っと竜の拳を振り上げては、再び元気に笑い出すヴェルドラに若干引きつつも、相変わらずの元気さにちょっぴり安心して。
「ところでどうだ? 我が番いになる気になったか?」
「そんなことより、外で会ったことを話してやるよ」
「そんなことよりって……」
バッサリと切り捨てられたせいか、ヴェルドラの表情が露骨に曇る。
だが、俺は気にせず話を続ける。
だって気にしたら絶対に延々と行ってくるじゃん……、たしかにヴェルドラは好きだけどさぁ? そういう好きじゃなくてね? キャラというか推し? に似たような好きだからねぇ? そんな番になろう! とか言われても……な?
「洞窟を出てすぐな〜?」
「おい! 我の話を聞け!」
「まず外に出た瞬間、ヴェルが『空が青いッス!』とか言いながら走り回ってな」
「……ヴェルらしいな」
「だろ?」
俺は思わず笑う。
「んで、そのあと──」
こうして俺は、洞窟を出てから今までに起きた出来事を、ヴェルドラへと話し始めた。
もちろん。
その中には、ヴェルがどれだけ騒ぎを起こしたかという話も──。
「……ほう」
初めは話を塞がれて不満げだったヴェルドラの目が、話が進む度に輝きを増していく。
「それでだな──」
俺は苦笑しながら、さらに話を続けた。
洞窟の外。
初めて見た空。
大鬼族との出会い。
そして──。
今、自分が鬼の里で暮らすことになったことを。
ヴェルドラは一つ一つの話に耳を傾けながら、楽しそうに笑っていた。
「ふむ……話を聞くと、余計に外に出たくなるな!!!」
俺が外での出来事を話し終えると、ヴェルドラは拳を握り締め、封印されている身とは思えないほど元気よく叫んだ。
「ま、いずれ出れんだろ」
「む、それもスキルでの予知か?」
「ああ……だから、もうちょいの辛抱だな」
そう答えると、ヴェルドラは少しだけ考え込むように顎へ手を当てた。
「ふむ……」
そして、何かを思い出したようにこちらへ顔を向ける。
「ところでアクラよ」
「なんだ?」
「四ヶ月話し相手になるという約束は、どこへ行ったのだ?」
「……」
「人化してすぐに出て行かなかったか?」
「…………」
痛いところを突かれた。
人化できたことに浮かれて。
外に出られることに浮かれて。
ヴェルと一緒に洞窟を飛び出して。
そのまま大鬼族と出会って、宴会までして──。
…………今日まで完全に忘れてたんだよね、うん。
「……さてと」
ここは逃げるが吉と思い、立ち上がってはヴェルドラに背を向けて。
「そろそろ帰ろうかな」
「アクラよ……」
背中にぐさっ! と突き刺さるような視線をめっちゃ感じる……。刺さるどころかなんか貫通しそうな程じぃ〜っと見られてる気がする。
「お主、忘れておったな?」
「うぐっ……す、すまん」
ヴェルドラの方に振り返っては、ヴェルドラの表情を伺ってみる。
ヴェルドラはじと〜っとした目を俺に向けていたが、俺が素直に謝ったのを見ては
「まぁよい!」
お突然、豪快に笑い出した。
「いずれ我が番となるのだからな!」
「いや、だからならねぇって」
「グワァ〜!!! なんでなのだぁ〜!!」
俺の返答を聞いた瞬間、まるで駄々をこねる子供のようにヴェルドラはその場でじたばたと暴れ始めた。
……こうして見ると、やっぱりヴェルと似てんな。
あいつも大概、子供っぽいというか……いや、あっちはもっと酷いか。
そんなことを考えていると、ふと以前から気になっていたことを思い出した。
「あ、そういや聞きたかったことがあんだよ」
「む?」
ようやく暴れるのをやめたヴェルドラが、こちらへ顔を向ける。
「あのさ、暴風の因子ってなんだ?」
「……暴風の因子?」
「ああ。なんか進化した時に『暴風の因子を獲得』みたいなことがあってさ? ついでにスキルとしてもゲットしたし」
せっかく暴風竜であるヴェルドラ本人が目の前にいるのだ。聞いておくに越したことはない。
「ふむ……」
ヴェルドラは顎に手を当て、しばらく考え込みやがて、何かに納得したように頷いた。
「我の魔素により発現した
「あー……」
「実質、我の一部のようなものだからな」
「なるほどなぁ……」
言われてみれば、確かに筋は通っている。
ヴェルドラの魔素から生み出された、あの巨大な魔物。
俺はその核を喰らい、そこから進化した。
つまり──。
ヴェルドラの魔素を大量に取り込んだことが、進化に何らかの影響を与えた。
その結果として発現したのが、暴風の因子。
……そう考えれば、一応説明はつく。
「っても……、ヴェルドラ自身もよく分かってないんだよな?」
「うむ!」
「んじゃ〜、聞きたいことも聞けたしそろそろ帰るわ」
「そうか……」
先ほどまで騒いでいたヴェルドラの声が、途端に小さくなる。
見れば、あからさまに肩を落としていた。
「……」
しょんぼりしている。
ついさっきまで「我が番になれ!」などと騒いでいた奴と同一人物とは思えない。
……なんだか。
ちょっと可愛く思えてきたな。
「はっ、んな顔しなくてもまた話に来るよ」
そう言うと、ヴェルドラがゆっくりと顔を上げる。
先ほどまでの寂しそうな表情は僅かに和らいだものの、それでもどこか名残惜しそうだった。
「……そうか」
「ああ」
「今度は忘れるでないぞ?」
「……わかってるって〜」
そう答えながら、俺は出口へ向かって歩き出す。
背後から感じる視線に、少しだけ振り返る。
そこには、巨大な身体を持ちながら、まるで置いていかれる子供のようにこちらを見つめるヴェルドラの姿があった。
「……またな、ヴェルドラ」
「うむ! また会おうぞ、アクラ!」
洞窟の奥から響くその声を背に、俺はゆっくりと歩き出した。
さて──。
里に戻ったら、ヴェルは大人しくしてるだろうか。
……いや。
期待するだけ無駄だな。
俺はヴェルドラに軽く手を振る。
「そんじゃ、またな」
「ああ! また会おう、アクラよ!」
背後から聞こえるヴェルドラの声を聞きながら、俺は封印洞窟の出口へ向かって歩き出した。
◇◇◇
ある魔王の統べる国の夜も更けた王城の一室。
薄暗い室内には、幾つもの蝋燭が灯されていた。
そして、その静寂を破るように、二人の男が言葉を交わしていた。
一人は、魔王。
傀儡国ジスターヴを支配する存在──クレイマン。
そして、もう一人はその協力者である道化師──ラプラス。
「なるほど……」
クレイマンは目の前にいる道化、ラプラスからの情報に僅かに目を細め、納得したかのような表情をする。
「封印の洞窟から感じた、あの魔素の高まりは……この者達だったのですね」
「ああ」
ラプラスは椅子へ身体を預けながら、いつもの軽薄そうな笑みを浮かべる。
しかし、その瞳だけは笑っていなかった。
「んで、気になって遠くから観察しとったら……とんでもない力を見せおったわ」
「……とんでもない力、ですか」
とんでもない力などと、不明瞭が過ぎる言い方ではあるが……それを発している主はあのラプラス。
つまり、そのラプラスですらどんな力なのかを把握でき無かった……知らぬ力であるということ。
ラプラスは頬杖をつきながら、先ほど目にした光景を思い返す。
あの一撃。
巨大な魔物を吹き飛ばしたのは別にどうでもいい、だが…… あの五体に纏った魔素とは違う謎の力……。
「それが、魔王に匹敵すると?」
「嗚呼。やけど、そこが見えてる訳やない」
「…………」
室内に、僅かな沈黙が落ちた。
底が見えていない……、それの意味するところは魔王以上の力を有している可能性があるということ。
クレイマンはしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと口元を吊り上げた。
「……面白い」
その声には、僅かな興味が滲んでいた。
封印の洞窟から現れた未知の力を扱う存在。
あのラプラスの口から、そこが見えぬとさえ言わせ……少なくとも魔王級であるという事。
「……まさか、これほどの存在が動き始めているとは」
クレイマンは静かに笑う。
「ならば……少しばかり、調べてみる必要がありそうですね」
クレイマンはそう呟いたその時
あっ、とラプラスが思い出したように口を開く。
「嗚呼、それと……」
「何か?」
「どうやらその二人、今は
「……ほう」
クレイマンの眉が僅かに動く。
封印の洞窟を出た後、二人がどこへ向かったのか。
その答えが、まさか
「ふむ……」
敵ならば、少々野蛮だが力を持ってひねり潰せばいい。
利用できる存在であるのならば、我が術に堕とせばいい。
だが、それを判断するには情報が足りない。
ならば──。
「ならば……ゲルミュッドにでも行かせますか」
「あ〜……」
ラプラスは少しだけ考えるように目を細める。
「名付けしまくっとる、あの魔人にかいな」
「ええ」
クレイマンは淡々と頷いた。
「何やら、新たな魔王を作るなどと言っていますからね」
その言葉に、ラプラスは口元を歪める。
「なるほどなぁ」
ゲルミュッドが各地を巡り、魔物たちへ名を与えていること。
そして、その目的が強大な魔物を生み出し、いずれ魔王へと至らせること。
丁度、
ならば、それを利用しない手はない。
「ゲルミュッドには、いつも通り魔物たちへ名を与えさせればいい」
そして──。
「仮に彼が死んだところで、我々には損害ありませんからね」
クレイマンにより淡々と告げられた言葉には、ゲルミュッドの命を案じる色など微塵もなかった。
ラプラスはそんなクレイマンを見ながら、肩を竦める。
「相変わらず、えげつないこと考えとるなぁ」
「何を言っているのです?」
クレイマンは笑みを浮かべる。
「これはただの調査ですよ」
その笑顔の奥にあるものを知っているからこそ──。
ラプラスは、それ以上何も言わなかった。
しばしの沈黙が、二人の間を流れる。
やがてラプラスは椅子から立ち上がると、いつもの調子を崩すことなく、ひらひらと手を振った。
「そいじゃあ、またのご利用お待ちしとるで。魔王クレイマンはん」
「ええ。ご苦労でした」
軽い別れの言葉を残し、ラプラスはそのまま部屋を後にする。
──カチャリ。
一人きりとなった部屋。
クレイマンはしばらく閉じられた扉を見つめていたが、やがて月光の照らす窓際へと立ち外を眺める。
「さて、どうしましょうか」
誰に聞かせるでもなく、静かに呟く。
蝋燭の炎の光に照らされたクレイマンの顔は、先程のような穏やかな笑みではなく、口元の吊り上がった笑みを浮かべた。
二日連続投稿じゃぁ〜!!!
ってことで、昨日あまりからオークロードどうする?っていうアンケートを作ったので投票よろ!
あと、感想とかもおなしゃす!!
誤字とかそこら辺もお願い!!
ってことで〜、またいつか!
オークロードをどうする。
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原作に忠実にいく…。
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助ける!(みんな助かる!)
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助ける!(モブ達が全滅)
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助けるために奮闘。
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敗北