転生したら竜だったので、とりま竜種目指しまっす! 作:遊燐千
俺が
何事かと思って話を聞いてみれば──昨日、この里に「ゲルミュッド」と名乗る魔人が現れたらしい。
しかも、その目的は俺たちだった。
俺とヴェルを要求したうえ、大鬼族たちへ名付けをしてやると言い出したそうだ。それを族長が断ったところ、ゲルミュッドは逆上。あろうことか、里そのものを滅ぼそうとしたらしい。
そして、そこへヴェルが登場。
俺がいない間、里を守るよう頼まれていたヴェルは、その約束を守るためにゲルミュッドを迎え撃ち──ほとんど一方的に叩きのめした。
あとは、ゲルミュッドを倒せるというところで、今度は「ラプラス」と名乗る道化師が乱入。ゲルミュッドを回収すると、そのまま逃走したという。
……なぁんて話を聞かされた。
そして今──。
俺はヴェルと一緒に、のんびりと湯船に浸かっている。
「……はぁ〜……」
湯に身体を沈めながら、俺はぼんやりと天井を見上げた。
色々ありすぎて、逆に驚けねぇんだけど。
つい数日前まで、ヴェルドラと話したり、大鬼族の里で宴会をしたりしていたと思ったら、俺が留守にしている間に魔王の配下が襲撃してくる。
……なんだ、この怒涛の展開。
この世界に転生してからというもの、どうにも落ち着いて過ごせた試しがない気がする。
それはともかく、まず気になることがある。
そもそも、なんでゲルミュッドがこの
俺たちの存在を知っていたこともそうだが、わざわざここまで足を運んできた理由が分からない。
「……なんで俺たちの居場所までバレてんだ?」
『伝。
「成程なぁ……」
それなら、以前エレンたちが封印の洞窟へやって来たことにも納得がいく。
俺とヴェルが進化した際に生じた魔素の変化を、何者かが感知した。
そして、それを手掛かりに俺たちの存在を知った……ということか。
「……ってことは、やっぱ俺のせいか」
思わず、ため息が漏れる。
もちろん、進化したこと自体を後悔しているわけじゃない。今の力を得られたのは、それだけでも十分大きな意味がある。
ただ、そのせいで大鬼族の里まで目を付けられたのだとすれば──少しくらい責任を感じてもいいだろう。
何より問題なのは、ゲルミュッドがただの魔人ではないことだ。
その背後には魔王がいる。
そして、ゲルミュッドが次に狙うのは──。
「……
原作で知っている流れを思い出す。
いつ
それが分からない以上、今のうちにできることはしておいた方がいい。
少なくとも、この里に危険な存在が近づいてきたことくらいは把握しておきたい。
「伝達者」
『了』
「魔力感知を最大限にして、この
『了。周辺の魔素反応を監視します』
「頼む」
これで、少なくとも何かが近づいてきた時に気付ける可能性は高くなる。
とはいえ──。
「……対策を立てねぇとな」
◇◇◇
族長たちと今後族長たちと今後どうするべきかを話し合うための会議を開き、数時間に及ぶ話し合いを終えた翌日──俺たちの地獄の修行が幕を開けた。
……ちなみに、ここで言う「俺たち」について少し説明しておこう。
昨日の会議では、ゲルミュッドの件や、今後起こるかもしれない脅威について話し合った。
その結果、最終的には「相手が何者であろうと、まずは自分たちの力を高め、対抗できるようにする」という結論に落ち着いたのである。
魔王幹部もしくは魔王が相手となれば逃げても無駄だで、ならば最後まで抗おう。
という意見が多かったからである。
流石に逃げることを勧めたかったが、それを言えば
だったら、俺含め今まで以上に鍛えて魔王に対抗できるようにしなければならない。
そういうわけで、
ちなみに、他の若い連中もそれぞれ別の者から鍛錬を受けているらしい。……ただし、ヴェルだけは例外だった。
「剣の扱いとか難しいことはよく分かんないッス! ヴェルは拳で行くッス!」
本人がそう言い張ったため、剣術の修行からは外れている。まあ、あいつの場合は拳でも十分すぎるほど強いので、誰も無理に止めようとはしなかった。
そして現在。
俺たち八人は、里の一角に設けられた修練場へ集められていた。朝早くから呼び出されたというのに、目の前にいるハクロウは疲れなど微塵も感じさせず、木刀を手にしたまま満足そうにこちらを見回している。
「さて、集まったところで早速始めるかのぉ?」
あ~……なんか、すっごいやる気満々だぁ~。
それを裏付けるように、隣にいた
「アクラ殿……剣鬼殿の指南はキツイぞ」
「嗚呼。見た目通りの鬼教官だからな……気をつけろよ」
「…………」
この二人から忠告が出るってことは相当なんじゃないだろうか。
いや、待ってくれ。
俺は剣術なんてまともに習ったことのないどころか握ったことすらない初心者だぞ?
そんな俺が、普段から鍛錬を積んでいるこいつらと一緒に修行なんかしたら──。
そんな不安を抱えている俺をよそに、ハクロウは何事もなかったかのように説明を始めた。
「まずは基礎じゃ。構え、足捌き、そして素振り。何事も基礎が肝要じゃからのぉ。まずは木刀を持つんじゃ」
言われた通り、俺たちはそれぞれ木刀を手に取り、互いにぶつからない程度の間隔を空けて並んだ。
俺も見よう見まねで木刀を構えてみるが、どうにも様にならない。
そんな俺の姿を見たハクロウは、小さく息を吐くとこちらへ歩み寄ってきた。
「……アクラ殿は儂が直接見るとしよう」
「…… お願いします」
ハクロウは俺の立ち方を確認しながら、木刀を握る位置や腕の角度、足の位置まで細かく修正していく。そして他の七人へも視線を向けると、いつもの穏やかな笑みを浮かべたまま告げた。
「言い忘れておったが今回はアクラ殿がおる。いつも以上に入念にやるぞ」
こうして、俺たちの基礎鍛錬が始まった。
最初に教えられたのは、いわゆる中段の構えだった。
時代劇やら何やらで見たことのある、切っ先を向けているあの構えである。
これがまぁムズい!
ただ木刀を前に突き出して立てばいいというものではなく、身体の軸を崩さず、いつでも次の動作へ移れるように重心を整える必要があるらしい。
続いて教えられたのが足捌きだった。
どんな方向へ動こうとも体勢を崩さないためには、足の運び方が重要らしく、ハクロウは俺の足元を何度も確認しながら、細かな動きを一つずつ修正していく。
さらに素振りでは、腕の力だけで木刀を振るのではなく、腰や股関節の動きを連動させ、身体全体で刀をまっすぐ振り抜くことを徹底的に叩き込まれた。
大きく分ければ、構え、足捌き、素振り。
たったそれだけの基礎を、何度も繰り返す。
……いや、これがまぁ、ものすんごくキツい。
腕や肩が痛くなるのはもちろんのこと、足腰までじわじわと疲労が溜まっていく。
俺は竜だし、身体能力そのものにはかなり自信がある。だから正直、最初は「まあ、俺の身体なら大丈夫っしょ!」くらいに思っていた。
ところがどっこい。
身体能力が高いことと、同じ動作を正確に繰り返し続けられることは、どうやら別問題らしい。
「姿勢が崩れておるぞ、アクラ殿」
「はいっ!」
「腕に力を入れすぎじゃ。腰を使え」
「はいっ!」
「足が遅い」
「はいっ!」
「もう一度じゃ」
「はいっ!」
……誰か助けてくれ。いつの間にかマンツーマンになってるよぉ!!
そんな心の叫びも虚しく、修行は容赦なく続いていった。
何度も構え直し、何度も足を運び、何度も木刀を振る。最初こそ余裕を見せていた俺も、時間が経つにつれて口数が減っていき、ただハクロウの指示に従って身体を動かすだけになっていた。
そして──。
「「「「「「「「998!!」」」」」」」」
「「「「「「「「999!!」」」」」」」」
「「「「「「「「1000!!」」」」」」」」
俺たち八人の声が修練場に響き渡る。
最後の一振りを終えたところで、ようやくハクロウが木刀を下ろした。
「うむ。基礎はここまでにしておこう」
その言葉を聞いた途端、張り詰めていたものが切れたように身体から力が抜けた。俺は木刀を地面へ置くと、そのまま大の字になって倒れ込む。
……我ながら、よくやった方ではないだろうか。
だって、こちとらまるっきりの剣術素人だぞ? そんな俺が、半ば拷問とも言えるような1000回の素振りを最後までやり切ったんだ。これはもう、ちょっとくらい褒められてもいいと思う。
「ふぃ~……疲れたぁ……」
地面に身体を預けたまま、ぼんやりと空を見上げる。肩は重いし、腕はもう木刀を握っている感覚すら怪しい。足腰だって、とっくに限界を迎えていた。
周囲を見回してみれば、俺と同じように大の字に寝転がっている奴はいないものの、他の大鬼族たちも木刀を脇へ置き、座り込んで肩で息をしている。
どうやら俺だけが特別キツいというわけではないらしい。
……それだけでも、ちょっと安心した。
「よし……」
さすがに、これだけやったんだ。しばらくは休ませてくれるだろう。
そう思っていた。
「さぁて、休憩は終いじゃ」
「……え?」
思わず聞き返してしまった。
いや、待て。
今なんて言った?
「休憩……終い?」
「うむ」
ハクロウは当然のように頷く。
「いやいやいや、休憩って言っても……まだ三分も経ってないよ?」
俺がそう訴えると、ハクロウは不思議そうに首を傾げた。
「三分もあれば十分じゃろう?」
「十分じゃねぇよ!」
思わず叫んでしまった。
こっちは今、身体中が「もう動きたくありません」って訴えてるんだぞ!? それをたった三分で再稼働させようとしているのか、この爺さんは!
そんな俺を見かねたのか、若様が苦笑しながら口を挟んできた。
「アクラ殿……休憩があるだけマシだ」
「……え?」
「いつもは、そのまま続けられている」
「…………」
俺はゆっくりとハクロウへ視線を向けた。
そこには、にこやかな笑みを浮かべるハクロウの姿がある。
「…………いや、鬼か!」
……いや、鬼だったわ。
俺が一人で勝手に納得している間にも、ハクロウは手にした木刀を軽く肩へ担ぎ、俺たち八人をぐるりと見渡した。
疲労困憊の俺たちとは対照的に、その顔にはまだまだ余裕がある。
「さて、十分に身体は温まったじゃろう」
「温まりすぎて、そろそろオーバーヒートしそうなんですけど……」
「皆、立てぇい!」
「うぇぇ……」
重たい身体を引きずるようにして、なんとか立ち上がる。周囲の大鬼族たちも、それぞれ疲労の滲んだ顔をしながら木刀を握り直していた。
そんな俺たちの姿を見渡したハクロウは、満足そうに頷く。
そして──。
「ここからは──実践じゃ」
「…………」
……あ、終わった。
◇
「今日はここまでじゃ」
太陽が山の向こうへ沈みかけ、空が茜色から少しずつ夜の色へ変わり始めた頃。ようやく地獄のような実践訓練が終わりを迎えた。
朝早くから始まった修行は、入念が過ぎる基礎に始まり、延々と続く素振り地獄を経て、最後には実戦形式の
ハクロウから終了を言われた途端、俺は手にしていた木刀を地面へ置き、その場に力なく座り込み大の字に寝転んだ。
「…………ボッコボコにされた……」
身体中が痛い。
腕も、肩も、脚も、腰も……どこを動かしても、鈍い痛みが返ってくる。特に実戦に入ってからは酷かった。
ハクロウの木刀は、こちらの動きを見透かしているかのように飛んできて、どうにか防いだと思えば、崩れた体勢へ間髪入れずに次の一撃が叩き込まれる。
攻撃するどころか、防御するだけで精一杯。それでも少しでも隙を見せれば、容赦なく木刀が飛んでくる。
……あぁ、今なら大地さんと一緒になれる気がするぅ。
◇
「……思ってた以上に地獄だったわ……」
たった一日。それも剣術の修行をしただけで、身体は完全に限界を迎えていた。
そこでふと、ゴブタたちの姿が頭に浮かぶ。
なぁ、ゴブタ達。
俺は今日、お前たちへの認識を改めるよ。
今まで散々、ハクロウの修行から逃げようとしたり、文句を言ったりしているのを見て、「よくやるなぁ」くらいに思っていた。正直、逃げずにやればいいのに、なんて思ったこともある。
けど──違った。
あんな修行を毎日のように受けていたのかと思えば、今までのあいつらの態度にも納得がいく。むしろ、あれだけ鬼畜な教官に扱かれ続けても、翌日にはまた修行へ向かい、文句を言いながらも結局は鍛錬を続けているのだ。
……あいつら、すげぇよ。
俺なんて今日一日だけで、もう心が折れかけているというのに。
「俺は……お前たちを尊敬するぜ……」
「アクラ」
「うぉっ!?」
不意に名前を呼ばれ、顔を上げる。
声の主は、少し離れた場所にいた
修行を始めたばかりの頃は、恩人ということもありどこか距離があったが、一日中同じ場所で鍛錬し、何度も木刀を交え、共にハクロウに叩きのめされているうちに、いつの間にかそんな呼び方をする程度には打ち解けていた。
そのお陰で今ではアクラと呼ばれる程になったのだ!
やったぜっ!!
「んぁ~? なんだ?」
疲労で重たい頭を持ち上げると、ベニマルは苦笑しながらこちらを見ていた。
「いや、どうやら彼奴らも終わったらしいからな。一緒に飯でも食わないか?」
ベニマルが視線を向けた先には、同じように疲れ果てた
ハクロウ外にも鬼教官っているんだなぁ……
「嗚呼、いいぞ──」
◇◇◇
「どうでしたか? ラプラス」
夜も更けた王城の一室。
クレイマンは顔を上げ、目の前の道化師へ問いかけた。
「どうでしたも何も、飛んだ化け物やで」
ラプラスは椅子に身体を預けたまま、深々と息を吐く。
「……にしても、なんでゲルミュッドの手助けなんかさせたんや?」
「彼を生かした方が、面白いものが見れそうだったからですよ」
クレイマンは涼しい顔で答える。
その答えに、ラプラスは呆れたように眉を上げた。
「面白いもの、かいな……」
ゲルミュッドを助けた理由など、ラプラスにも大体は分かっている。
クレイマンは、自分の手を汚すことなく状況が動くのなら、それを利用する男だ。
そして今回、その思惑通りに事態は動き始めている。
「新たな魔王の誕生だなんて、面白いじゃないですか」
「まぁ、それはそうやけどな」
ラプラスは肩をすくめる。
ゲルミュッドが何を企んでいるのか。
それ自体は、以前から聞かされていた。
問題は、その計画がどこへ向かうのかだ。
「次は
ラプラスが思い出したように口を開く。
「狙いは
「
クレイマンの目が僅かに細くなる。
その名を聞いた途端、先ほどまでの興味とは別の色が浮かんだ。
「やはり、生かして正解でしたね」
「……そこまで見越しとったんか?」
「まさか」
クレイマンはくすりと笑う。
「ただ、彼なら何か面白いことを始めてくれると思っていただけですよ」
「それを世間では『利用する』言うんやけどなぁ」
ラプラスは呆れたように笑った。
クレイマンはそれを否定しない。
ゲルミュッドがどうなろうと、クレイマン自身が困るわけではない。
むしろ、彼が動けば動くほど、周囲の情勢は変化していく。
その変化こそが、クレイマンにとって価値のあるものだった。
「それにしても……」
クレイマンは椅子へ背を預ける。
「魔王を生み出そうとしている者が、次にオークを選ぶとは。随分と大きく出ましたね」
「せやな」
ラプラスは頷きながら、ふと大鬼族の里で見た光景を思い出す。
あの、無邪気な娘にも見える脅威的な存在を。
「……まぁ、ゲルミュッドの方も、そう簡単にはいかんと思うけどな」
「ほう?」
「大鬼族の里には、例の二人がおる」
ラプラスの言葉に、クレイマンの表情が僅かに変わった。
「……なるほど」
封印の洞窟から感じ取った、異常な魔素。
そして、その正体と思われる二人。
ラプラスが実際に目にした力は、未だ底が見えない。
だからこそ、クレイマンも彼らを軽視するつもりはなかった。
「ですが、ゲルミュッドがどこまでやれるのか。それを見るのも一興でしょう」
「ほんま、他人事やなぁ」
「他人事ですからね」
あっさりと言い切るクレイマン。
ラプラスは一瞬だけ呆れた顔を浮かべたものの、すぐにいつもの軽薄そうな笑みへ戻った。
「まぁええわ。ワイとしても、もう一回あの化け物とやり合うんは御免やしな」
「では、しばらく様子を見るとしましょう」
「せやな」
ラプラスは椅子から立ち上がると、軽く伸びをした。
「ゲルミュッドがオークをどうするんか。それに──」
口元に、いつもの人を食ったような笑みが浮かぶ。
「例の二人が、この先どう動くんかも気になるところや」
「ええ」
クレイマンもまた、楽しげに目を細める。
「ラプラス、これから面白くなりますよ」
「……その台詞、聞くたびに碌でもないことが起きる気ぃするんやけどなぁ」
「気のせいですよ」
「ほんまかいな」
軽口を交わしながら、二人はそれぞれの思惑を胸に抱く。
まだ、この時点では誰も知らない。
ゲルミュッドが仕掛けようとしているものが、やがてジュラの大森林全体を巻き込む騒動へと繋がっていくことを。
最近、アクラが新たにスキル覚えたりしてないなぁ〜。
それに進みがおっそいなぁ〜。
というわけで、次回は数ヶ月後にかっ飛ばします!
ほな、またいつかお会いしましょ〜!
オークロードをどうする。
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原作に忠実にいく…。
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助ける!(みんな助かる!)
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助ける!(モブ達が全滅)
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助けるために奮闘。
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敗北