【転スラ】 〜双星の智慧と新たなる理想郷~ 作:Hyades
俺が率いる『直属都市開発部隊』として選抜された数千の猪人族(ハイ・オーク)たちが、ガルムやドルドといったドワーフの兄弟たちの的確な指示のもと、すさまじい勢いで森を切り拓いていく。
「そこの巨木は切り株ごと引っこ抜け! 根っこは燃やさずに木材として乾燥させるぞ!」
「はっ! かしこまりました、親方!」
ドルドの怒号に近い指示に、筋肉の鎧を纏った猪人族(ハイ・オーク)たちが嬉々として応じる。
彼らは三、四人がかりで大木に太い縄をかけ、掛け声とともに根こそぎ引き抜いていく。
圧倒的な筋力と、進化したことによる無尽蔵の体力。
それらが完璧な統率のもとに発揮される光景は、まさに圧巻の一言だった。
切り出された木材や石材は、ミルドが引いた図面に従って次々と加工され、居住区や工房の建材としてストックされていく。
同時に、広大な地面には複雑な迷路のような溝が掘り進められていた。
俺が最も重要視しているインフラ、上下水道の配管を埋設するためだ。
「よし、このラインの地盤は俺が固める。」
そう言うとシエルは待っていましたと言わんばかりに作業を開始した。
《お任せください。対象エリアの土壌成分を解析し、『土魔法』および『重力操作』の複合による最適な地盤固めの術式を構築しました。いつでもいけますよ》
(おう。サンキューな)
俺は未来の魔王としての絶大な魔力を行使し、シエルが構築した完璧な術式を広大なエリアに一気に展開する。
ズズンッ!という重低音とともに、掘り返されたばかりの柔らかい土が一瞬にしてコンクリートのように強固な地盤へと変質した。
そこにガルムたちが加工したパイプが綺麗に敷き詰められ、あっという間に地下のインフラ網が形成されていく。
「す、すげえ……! 未来の俺って、あんなに大規模な魔法をミリ単位の精度で操れるのか……!」
少し離れた場所で、スライム形態の過去の俺がぽんぽんと飛び跳ねながら目を丸くしている。
とはいえ、過去の俺もただ見ているだけではない。
シュナやリグルドたちと協力して、数千の労働力に対する食事の配給や仮設テントの設営、各部門の調整などの仕事を見事に回してくれていた。
朝から晩まで、村全体が巨大な一つの生き物のように連動し、休むことなく働き続ける。
その進捗速度は常軌を逸しており、数日も経つ頃には、かつての素朴なゴブリン村の面影は完全に消え去り、広大な大地に『大都市』の強固な土台が姿を現し始めていた。
計画通り、いや、それ以上のスピードで進む都市開発。
職人たちや猪人族(ハイ・オーク)たちの顔には疲労よりも充実感が勝っており、このままいけば俺の想定よりも早く、未来の魔国連邦(テンペスト)の基礎が完成しそうだった。
だが、この時期の俺たちが忙殺されていたのは、決して肉体労働や土木工事だけではない。
未来の知識がある俺だからこそ対応しなければならない、あるいは事前に手を打っておかなければならない様々な出来事が、同時進行で水面下を動き出していたのだ。
怒涛の勢いで進む村の拡張工事と並行して起きた大きな出来事の一つ。
それは、新たな移住者たちの到着である。
「ふはははは! リムル殿、お久しぶりですな! このガビル、父上との約束通り、貴方様の配下となるべく推参いたしましたぞ!」
開拓が進む広場の中央で、手にした水渦槍(ボルテクススピア)を天に掲げて仰々しいポーズを決めているのは、見慣れた鱗を持つお調子者の戦士――ガビルだった。
その後ろには、彼を慕って同行してきた百名ほどのリザードマンの戦士たちが、一糸乱れぬ動きで直立不動の姿勢をとっている。
俺の知る歴史におけるこの時期、ガビルはオークロード討伐時の功罪を問われ、父親であるリザードマンの首領から追放という形で湿地帯を追い出されていた。
それを建前として、俺の元へ「修行」に送り出されたのだ。
だが、今回は事情が異なる。
追放するのではなく、首領との事前の話し合いと約束に基づき、本人たちの意思をしっかりと確認した上で、正式な『移住者』として受け入れる流れをとっていた。
ちなみに過去の俺が湿地帯を離れる際に、元の歴史と同じく首領にアビルと名付けを行っていた。
これで、この時代でもリザードマンの統制は盤石なものとなるだろう。
「おお、ガビル。本当に百人も連れてきたんだな。首領から話は聞いてるよ」
過去の俺が、ぽんぽんと跳ねながら出迎える。
「いかにも! 父上より『リムル殿の元で世界を見てこい』と提案された時は驚きましたが……先の戦いで己の未熟さを痛感した私にとって、これほどありがたいお話はありませんでした! ここにいる百名の同胞たちも、皆自らの意思で私と共に歩むことを選んでくれた者たちです!」
ガビルは胸を張り、真剣な眼差しで過去の俺を見据えた。
相変わらず大げさな身振り手振りではあるが、その言葉には嘘偽りのない真っ直ぐな決意が込められている。
勘当されて行き場をなくしたわけではなく、自らの意志で強くなるためにこの地を選んだ彼らの顔つきは、元の歴史よりもどこか誇り高く見えた。
「「「ガビル様! かっこいいーっ!」」」 「「「我らもどこまでもガビル様についていきますぞーっ!!」」」
……後ろの百名が感極まって謎の歓声を上げているのを見ると、やっぱりいつものガビルとその取り巻きたちだな、と少し脱力してしまうが。
ともあれ、彼らが優秀な戦士であり、これからの開拓に欠かせない貴重な戦力であることは間違いない。
そして、歓声を上げる百名の戦士たちの後ろから、スッと静かに進み出てくる者たちがいた。
「リムル様。再びお目にかかれて光栄に存じます」
恭しく片膝をついたのは、リザードマンの親衛隊長と、その直属の部下である数名の親衛隊員たちだ。
髪の下から覗く涼やかな瞳が、過去の俺と、少し離れた場所から見守る未来の俺を交互に見据えている。
「ああ、首領の側近の。確か、親衛隊長だったよな? 湿地帯での同盟会議の時にも首領の護衛をしてた……」
「はっ。お顔を覚えていてくださり、恐悦至極に存じます。我ら親衛隊は首領の命により、リムル様にお仕えし、見聞を広めるために派遣されました」
凜とした声で毅然と答える親衛隊長。
もちろん、俺は彼女の顔を忘れるはずもない。
未来の記憶から、彼女がこの後『ソーカ』と名付けられ、ソウエイの優秀な部下として、密偵や情報収集の要へと成長していくことを知っているのだから。
「もちろん、これも我ら自身が強く望んだこと。どうか、我らも末席に加えていただきたく存じます」
親衛隊長は深く頭を下げた。
その後ろで、数名の親衛隊員たちも一糸乱れぬ動きでひざまずく。
(これで、ガビルたちも俺の知る歴史通り合流したわけだ。あとは『名付け』だな)
《はい。過去のマスターは現在、彼らに与える名前を一生懸命に考えておられるようですね。なお、ガビル個体への名付けによる魔素の消費量および、それに伴う進化の推移はすべて私の予測範囲内に収まっております》
脳内でシエルが涼やかな声で報告してくる。
元の歴史でもそうだったが、名付けというのは相手の強さやポテンシャルに応じて魔素を大きく消費する危険な行為だ。
よほどのことがない限りは大賢者が完璧に制御するとは思うが、それでもこの数のリザードマンを一気に進化させるとなれば、それなりの負担は避けられないだろう。
「よし、それじゃあお前たちにも、順番に『名前』を授けようと思う。」
過去の俺がそう言うと、ガビルがあからさまにそわそわし始めた。
「…お前、そんなうらやましそうな目で見るなよ。お前にはもう名前があるだろうが」
過去の俺が呆れたようにツッコミを入れる。
ゲルミュッドから名付けられているガビルは、自分にはもう新たに名前を貰う必要がないとわかっていながらも、期待と羨望の入り混じった熱い視線を過去の俺に送っていたのだ。
「うぅ……しかし、リムル殿の配下となるからには、私も皆様のように……」
ガビルが少しシュンとしてうつむきかけた、その時だった。
「いや、こいつにも名前をやっていいぞ」
俺は過去の自分に向かって、ひょいっと横から口を挟んだ。
「えっ? でもこいつ、もうゲルミュッドから名前をもらってるんだぞ? 二重に名付けることなんてできるのか?」
「ああ。厳密には『上書き』になる。お前の魔素で上書きして魂の格を書き換えちまえば、ゲルミュッドとの繋がりは完全に切れて、正式にお前の配下になる。だから、あいつにも名前をやってやった方がいい」
「なるほど、そういう裏技があるのか……」
俺の言葉を聞いた途端、ガビルはバッと顔を上げ、水渦槍を力強く突き立てた。
「はっ! むしろ望むところであります! リムル殿の魔素を賜り、このガビル、さらなる高みへと上り詰めてみせましょう!」
過去の俺はコクリと頷き、スライムの体の一部を伸ばしてガビルの額にそっと触れた。
「……お前の名前は、今日から再び『ガビル』だ。俺の名の下に、新たな力を解放しろ」
その瞬間だった。
ドクンッ、と大気が脈打つような感覚とともに、過去の俺の体から強大な魔素がガビルへと流れ込んでいく。
上位魔人から与えられた名を上書きし、魂の格を書き換えるという前代未聞の儀式。
「おおおおっ……! 力が……内なる力が、あふれ出してくるゥゥゥッ!!」
ガビルの全身がまばゆい光に包まれ、その肉体が急激な変化を遂げ始めた。
分厚い緑色の鱗がより強固で美しい漆黒の硬鱗へと変質し、背中からは一対の立派な竜の翼が生え出揃う。
頭部には鋭い角が伸び、その体躯は一回りも二回りも屈強に引き締まっていった。
『龍人族(ドラゴニュート)』への進化。
リザードマンの限界を超えた、上位種族としての新たな姿だった。
「す、すげえ……これが、リムル様のお力……!」
「ガビル様が、さらにかっこよくなられたぞーっ!」
圧倒的な魔素の奔流と、生まれ変わったガビルの姿に、後ろに控えていた百名の戦士たちがどよめきを上げる。
「ふははははは! 素晴らしい! 素晴らしい力がみなぎっておりますぞ、リムル殿!」
「ああ、似合ってるよ。……さて、次はお前たちだな」
過去の俺は少しだけ疲れた様子を見せつつも、親衛隊長の方へと向き直った。
「お前は……そうだな。これからは『ソーカ』と名乗れ」
「ソーカ……! ありがたき幸せ……!」
親衛隊長――ソーカが感動に打ち震えながらその名を受け入れると、彼女もまた光に包まれた。
そして、光が収まった後には、先ほどのガビルとは全く異なる進化の形がそこに現れた。
「えっ……!?」
「うおおっ、なんだあの美少女は!?」
広場で作業をしていたドワーフやゴブリンたちから、驚愕の声が上がる。
それもそのはず。
ソーカの姿は、リザードマン特有の爬虫類のような外見から、人間に限りなく近い美しい女性の姿へと劇的な変貌を遂げていたのだ。
涼やかな目鼻立ちに、背中には可愛らしい竜の翼。
そして頭には小さな角がちょこんと生えている。
(ふふっ、相変わらず美人だな。ソウエイのやつがまた無表情でこき使う未来が見えるぜ)
俺は懐かしさを感じながら、その様子を微笑ましく見守っていた。
過去の俺はその後も、親衛隊員たちに「トウカ」「サイカ」「ナンソウ」「ホクソウ」と次々に名前を与え、残る百名の戦士たちにも順に名付けを行っていった。
だが――百名を超す上位魔物への連続した名付けは、やはり今の俺の魔素量では限界があったらしい。
「ふぅ……よし、これで全員だな。……あれ、なんか急に……眠気が……」
最後の一人に名付けを終えた直後、過去の俺の体が急激にしぼみ、地面にポスッと崩れ落ちた。
魔素の枯渇による、強制的な休眠状態(スリープモード)だ。
「リ、リムル様ぁぁぁっ!?」
「どうされたのですか!? しっかりしてください!」
ガビルやリグルドたちがパニックになって駆け寄ろうとするのを、俺はスッと片手を上げて制止した。
「慌てるな。ただ魔素が空っぽになって、自己防衛のために休眠状態(スリープモード)に入っただけだ。数日もすればケロッと目を覚ますさ」
俺が落ち着いた声でそう告げると、パニックになりかけていたガビルやリグルドたちはホッと胸を撫で下ろした。
「な、なるほど。そういうことでしたか……。我らのためにあそこまで御力を使い果たされるとは……なんという慈悲深さ……!」
ガビルが再び滝のような涙を流して感動している横で、シュナがそっと進み出て、地面に転がっている過去の俺を優しく抱き上げた。
「リムル様は、私が天幕へお運びして休ませておきますね」
「ああ、頼んだ。……シオン、羨ましそうな顔でシュナを見るな。お前が運ぶと途中で力余って潰しそうだからな」
「そ、そんなことありません! 私だって優しく抱っこくらい……!」
抗議の声を上げるシオンを適当にあしらいつつ、俺は改めて、俺の魔素によって美しく、そして強大に生まれ変わった百名の『龍人族(ドラゴニュート)』たちを見渡した。
「さて。あいつが寝ている間も、この都市開発を止めるわけにはいかない。むしろ、お前たちが進化したことで、ようやく任せられる仕事ができた」
「おおっ! なんなりとお申し付けくだされ、未来のリムル様! このガビル、粉骨砕身の覚悟で挑む所存!」
ガビルが勢いよく胸を叩く。
俺はその頼もしい姿にニヤリと笑い、村の奥に広がる森の方向――ヴェルドラが封印されていた洞窟の方角を指差した。
「ガビル、お前と百名の部下たちには『封印の洞窟』の管理を任せる。あそこは魔素が濃く、回復薬(ポーション)の原料になるヒポクテ草が群生しているからな。お前たちにはその栽培と、ゆくゆくはポーションの研究開発を行ってもらいたい」
「洞窟の管理と、研究開発……! なんと、我らのような新参者にいきなりそれほどの重任を!」
「お前たちの真面目さと適性を買ってのことだ。近いうちに優秀なドワーフの研究者も一人合流させる予定だから、そいつと一緒に俺たちの国の『要』になる最高品質のポーションを造り上げてくれ」
俺の言葉に、ガビルは感極まったようにプルプルと震え、「必ずや、ご期待に応えてみせますぞーっ!」と天に向かって咆哮した。
後ろの百名も「ガビル様、かっこいいーっ!」と再び謎の盛り上がりを見せている。
(ふふっ。ベスターが来たら、また賑やかな研究室になりそうだな)
そんなガビルたちを微笑ましく見送った後、俺はまだその場に片膝をついて待機しているソーカたち親衛隊へと視線を移した。
「ソーカ。お前たち五人には、別の役目がある」
「はっ。なんなりと」
「お前たちは、その隠密性と機動力を活かして『諜報』や『情報収集』の専門部隊になってもらいたい。……ソウエイ、いるか?」
俺が虚空に向かって声をかけると、音もなく、俺のすぐ背後の影から涼やかな顔立ちの鬼人が姿を現した。
「御呼びでしょうか、リムル様」
突然現れたソウエイに、ソーカたちはビクッと肩を揺らして驚愕の表情を浮かべた。
彼ほどの隠密スキルを持つ者の気配を、進化したばかりの彼女たちが察知できるはずもない。
「ソーカと、トウカ、サイカ、ナンソウ、ホクソウの五人を、お前の直属の部下として預ける。徹底的に鍛え上げて、お前の手足として使えるようにしてやってくれ」
「承知いたしました。私の技術のすべてを叩き込み、必ずやリムル様のお役に立てる影へと育て上げましょう」
ソウエイが冷徹な視線をソーカたちに向けると、ソーカは一瞬だけ息を呑み……すぐに、その瞳に強い決意の光を宿して深く首を垂れた。
「……よろしくお願いいたします、ソウエイ様!」
「返事は『はっ』の一言でいい。ついてこい」
「は、はっ!」
ソウエイがふっと姿を消すと、ソーカたち五人も慌ててその後を追いかけるように影の中へと飛び込んでいった。
(相変わらずスパルタそうだけど、まあソーカなら大丈夫だろう)
これで、リザードマンたちの受け入れと配置も完了した。
ドワーフ三兄弟とハイ・オークたちによる都市開発は順調すぎるほどに進んでおり、ガビルたちの研究施設や、ソウエイの諜報部隊という国を支える重要な基盤も整い始めた。
まさに順風満帆。
過去の俺が目を覚ます頃には、村の景色はまた一変しているだろう。
*
翌朝。
東の空が白み始め、朝霧が立ち込めるジュラの大森林。
村の中心部ではすでにドワーフとハイ・オークたちが活気ある声を出して作業を再開していたが、俺は少しだけ足を伸ばして、村の周辺の森を散策していた。
過去の俺は、シュナが用意してくれた天幕のふかふかなクッションの上で、相変わらずスヤスヤと休眠状態(スリープモード)を満喫している。
(さて、この辺りの魔素の濃度も安定してるし、危険な魔物の気配もないな)
未来の『魔国連邦(テンペスト)』の首都機能を持たせるためには、周辺の生態系や防衛線の確認も欠かせない。
俺は朝の冷たい空気を胸いっぱいに吸い込みながら、のんびりと木々の間を歩いていた。
《マスター。この先、およそ三百メートル先の茂みに、微弱な生命反応が二つあります。どうやら瀕死の重傷を負っているようですね》
脳内でシエルが、何事かを察知したように声をかけてきた。
その口ぶりには焦りや警戒の色はなく、むしろ「懐かしいものを見つけましたよ」とでも言いたげな、どこか楽しげな響きが混じっている。
(ひん死の重傷? この時期の森で、二つの生命反応……まさか)
俺はピンときて、シエルが示した方角へと一瞬で空間移動(ショートジャンプ)した。
朝露に濡れたシダ植物の葉を掻き分けると、巨大な木の根元に、黒い体液を流して倒れ伏している二つの小さな影があった。
一つは、体長五十センチほどの、漆黒の甲殻を持ったカブトムシのような魔物。
もう一つは、それより少し小さい、黄色と黒の縞模様を持つ蜂の魔物だった。
間違いない。
後に俺の配下の中でも最強クラスの武闘派として名を馳せることになる蟲型魔物(インセクター)、『ゼギオン』と『アピト』だ。
(ああ……そうか。元の歴史でも、村の開拓が始まったばかりのこの時期に、俺が森で拾って助けたんだったな)
俺は当時の記憶を懐かしく思い返しながら、そっと二匹に近づいた。
「ギ、ギジジジッ……!」
気配に気づいたカブトムシ――後のゼギオンが、ボロボロに砕けかけた甲殻を引きずるようにして俺の前に立ちはだかった。
自分も今にも死にそうな状態であるというのに、後ろで動けなくなっている蜂(後のアピト)を庇うように、必死に威嚇の音を鳴らしている。
その姿は、未来において迷宮の守護者として君臨する無敵の『蟲皇帝』の姿とは程遠い、ただの弱々しい虫ころのようだった。
だが、その気高い精神性だけは、この頃から何一つ変わっていない。
「大丈夫だ。怖がらなくていい、俺は敵じゃないよ」
俺はしゃがみ込み、威嚇するゼギオンの頭をそっと撫でた。
最初はビクッと身を強張らせていたゼギオンだったが、俺から発せられる魔素の温かさや敵意のなさを感じ取ったのか、やがて力尽きたようにカクンと俺の掌に寄りかかってきた。
《二体とも、何らかの強力な外敵から逃れてきた際についた傷ですね。特に甲虫型の個体は、内臓器官まで深刻なダメージを受けており、このままでは数分以内に完全に沈黙します》
「わかってる。助けるさ。……こいつらは俺にとって、絶対に欠かせない大切な『家族』だからな」
正史における俺は、この二匹を助けるために、自分のスライムとしての身体(細胞)の一部を切り離して分け与え、それを欠損部位の修復にあてた。
それが結果として、彼らが俺の細胞と融合し、後に規格外のバケモノへと進化する最大の要因となったのだ。
「さて。今回はどう修復してやるべきか。寝ている過去の俺の細胞を使う手もあるが……」
俺が少しだけ迷っていると、シエルがふふっと笑うような気配を伝えてきた。
《過去のマスターの細胞で修復するのも確実ですが、ここは未来のマスターの細胞をベースに『調整』して与えてみるのはいかがでしょう?》
「調整、か」
《はい。今のマスターの『竜魔粘性星神体(アルティメットスライム)』の細胞をそのまま与えたら、彼らの肉体は強大な魔素と情報量に耐えきれず、間違いなく崩壊(自滅)します。ですが、うまく適合させることができれば……ええ、とても『面白い』進化の形が見られるはずですよ♪》
(だよな……。いくら将来有望とはいえ、まだ進化する前だ。強すぎる力は猛毒になる)
俺は少し楽しそうな雰囲気のシエルの助言を受け、慎重に自らの細胞から『神性』や『竜種』の要素を完全に切り離し、純粋な「スライムとしての修復力と成長性」だけを抽出した。
元の歴史で過去の俺が与えた細胞よりも少しだけ質が良い、いわば『特製マイルドバージョン』だ。
これなら自滅の心配はないし、こいつら自身のポテンシャルを自力で引き出せるはずだ。
俺は指先をわずかに変化させ、透き通るような青銀色のスライムの粘液を滴らせた。
膨大なエネルギーを適度に抑え込み、生命力のみを凝縮させた雫。
俺はその青銀の雫を、ゼギオンのひび割れた甲殻と、アピトの千切れた羽の付け根にそっと落とし込んだ。
シュウゥゥッ、と微かな音が鳴り、青銀の雫が二匹の傷口へと吸い込まれていく。
直後、ゼギオンとアピトの小さな身体が、淡く優しい光に包まれた。
瀕死の虫の魔物にとって、いくら調整されたとはいえ未来の俺の細胞は劇薬に近い。
だが、彼らは俺の直感通り、その力を見事に受け入れ、耐え抜いた。
光が収まった後、そこに倒れていた二匹の姿は、先ほどまでの弱々しい虫ころとは完全に別物へと変貌を遂げていた。
ゼギオンの砕け散っていた漆黒の甲殻は、傷跡一つない滑らかな流線型のフォルムへと修復され、その表面には微かに青銀色の光沢が走っている。
小さくも凄まじい重圧感を漂わせる、見事な鎧だ。
アピトの千切れていた羽も、透き通るような美しいステンドグラスのような輝きを取り戻し、毒針を持つ腹部には黄金と黒の鮮やかな縞模様が浮かび上がっている。
《見事な定着率です。最適化された未来のマスターの細胞を取り込んだことで、彼らの肉体構造は根底から再構築されました。現時点で、すでに並の魔物を遥かに凌駕する物理耐性と魔力伝導率を獲得しています。今後、自身の力でどのように成長していくのか……私の演算でも楽しみな存在になりましたね》
シエルの少しドヤ顔の解説に苦笑しつつ、俺は立ち上がった二匹を見下ろした。
(焦らなくてもいい。ゆっくり、自分の力で最強の蟲へと育ってくれよ)
完全に回復したゼギオンとアピトは、逃げ出すことも威嚇することもなく、俺の足元でピタリと動きを止めた。
そして、まるで知性ある人間のように、俺に向かって深々と頭を下げるような仕草を見せたのだ。
『……我らに、新たなる命を。感謝の念に堪えない』
『私たちの命をお救いいただき、本当にありがとうございます。なんと御礼を申し上げればよいか……』
脳内に直接響く、二つの声。
一つは、重々しくも静かな、武人を思わせる声。
もう一つは、鈴の音のように澄んだ女性の声だった。
「お、念話か。もう話せるくらいに回復したんだな。よかった」
俺が安心して頷くと、ゼギオンは静かに甲殻を震わせた。
『……我らの命。救い主である、貴方様に捧げる』
『はい。どうか我らを、貴方様の末席に加えてはいただけないでしょうか』
二匹からの絶対的な忠誠の誓い。
未来の最強戦力である彼らが、こうして自分から臣従を申し出てくれるのは非常にありがたい。
だが――俺はここで、一つだけ訂正をしておかねばならなかった。
「その気持ちはすごく嬉しい。お前たちは優秀だし、絶対に俺の『家族』として迎え入れたいと思ってる。……だけど、俺に直接忠誠を誓うのはちょっと待ってほしいんだ」
『……?』
ゼギオンが、不思議そうに首を傾げるような動作をした。
「実は、俺はちょっとワケありでね。これからお前たちに仕えてほしいのは、今の俺じゃなくて……この時代を生きている『もう一人の俺』なんだ」
俺の言葉に、二匹は困惑したような気配を見せる。
無理もない。
命の恩人から「俺じゃなくて別の奴に仕えろ」と言われているようなものだからだ。
彼らと直接絆を結び、名付けを行うのは、未来から来たイレギュラーな俺ではなく、この時代を生きる過去の俺であるべきだ。
彼らが過去の俺を主とし、迷宮の主戦力として育っていく未来を確かなものにするためにも、ここはきちんと筋を通しておく必要があった。
「まあ、言葉だけじゃ説明しづらい込み入った事情があってな。とりあえず、俺たちの村へ来ないか? 詳しい話はそこでしよう。美味い蜂蜜もあるぞ」
俺が優しく付いてくるように促すと、二匹は顔を見合わせるような仕草をした後、静かに俺の後ろに付いてきた。
『……御意』
『命の恩人の仰ることならば、どこへでも』
相変わらず寡黙なゼギオンの短い返答と、アピトの従順な言葉。
どうやら、俺に対する警戒心は完全に解けているらしい。
「よし。お前たちの『名前』も、あと数日して、あいつが目を覚ましたら付けてもらうことにするよ。まずはさっき言った通り俺の部屋で詳しい説明をしないとな」
俺は再び村の方向へと歩き出した。
こうして、未来の最強戦力となる二匹の蟲は、元の歴史よりもはるかにチートな細胞を宿した状態で、俺たちのもとへと合流したのである。
村に戻ると、太陽はすっかり昇りきり、広場ではカイジンやリグルドたちの威勢のいい声が響き渡っていた。
「おう、未来の旦那! 朝からどこほっつき歩いてたんだ? 第一区画の整地が終わって、いよいよ建物の基礎工事に入るぜ!」
俺が広場に戻るなり、カイジンが分厚い図面を片手にずかずかと歩み寄ってきた。
「わりぃ、ちょっと森で大事な仲間を見つけてな」
俺が後ろについてくるカブトムシ風と蜂のような魔蟲を指差すと、カイジンはポカンと口を開けた。
「……虫? いや、ただの魔物じゃねえな。こんなちっこいのに、とんでもなく濃い妖気を感じるが……」
さすがは腕利きのドワーフ、ただの虫ではないと直感で悟ったらしい。
だが、今はここで詳しい説明をしている暇はなかった。
「ああ。こいつらは将来、俺たちの国にとって絶対に欠かせない存在になる。……で、悪いんだが、今から少しこいつらと話さなきゃならない用事ができちまったんだ。基礎工事の最終確認は後で必ずやるから、ちょっとだけ時間をくれないか?」
俺がそう頼み込むと、カイジンは再び大きなため息を吐き、がしがしと頭を掻いた。
「ハッ、虫と大事な話とは恐れ入るぜ。旦那は本当に、次から次へと規格外のモンを連れ込んでくる天才だな。……まあいい、そういうことなら現場の指揮は任せとけ。ただし、昼前には戻ってきてくれよ!」
「助かる! すぐ戻るよ」
カイジンの理解に感謝しつつ、俺は急ぎ足で自分のために用意された仮設の個室へと向かった。
そこは丸太と厚手のテント布で組まれた質素な造りだが、俺とシエルの手によって完璧な防音結界と物理結界が張られている、村で一番機密性の高い空間だ。
天幕の入り口をくぐり、結界を起動して外部からの干渉を完全に遮断する。
俺は部屋に、ゼギオン(仮)とアピト(仮)を招き入れた。
「さて、まずは約束の品だ。これを食べながらでいいから、俺の話を聞いてくれ」
俺は『胃袋』から小皿を取り出し、そこに未来のアピトが集めた最高級の蜂蜜をたっぷりと注いで二匹の前に置いた。
甘く芳醇な香りが漂うと、アピト(仮)が「チチッ!」と嬉しそうな念波を発して小皿の縁に飛び乗り、ゼギオン(仮)も静かに近づいてきて上品に蜜を舐め始めた。
「……さっき森で言った『もう一人の俺』についての話だ。突拍子もない話に聞こえるかもしれないが、実は俺、ずっと先の『未来』からこの時代にやって来た存在なんだよ」
蜂蜜を舐める二匹の動きがピタリと止まった。
「この村の別の天幕で今眠っているスライム。あいつが、この時代における本来の俺だ。俺とあいつは、持っている記憶や経験の長さが違うだけで、魂の根源は全く同じ同一人物なんだ」
俺はゆっくりと、言葉を噛み砕くように説明を続ける。
「俺は、とある事情で時を遡ってここへ来た。だが、この世界で正当に時間を進め、歴史を紡いでいく主役はあくまで『過去の俺』の方なんだ。未来の俺がいつ元の時間軸に帰れるのかはまだわからないが、いずれは必ず帰らなくちゃならない。だからこそ……お前たちには、俺ではなく、これからこの国を創り上げていく『彼』に直接仕え、共に歩んでほしいんだよ」
俺の意図を正確に理解したのだろう。
ゼギオン(仮)とアピト(仮)は小皿から離れ、再び俺に向かって深く頭を下げた。
『……御意。貴方様と、眠っておられるというもう一人の貴方様が、同じ気高き魂を持つ御方であるということは、この身に宿った細胞が理解しております』
『はい。私たちの命の恩人は貴方様ですが、貴方様がそう望まれるのであれば、私たちは喜んでこの時代の主様のために命を懸けましょう』
俺の細胞を取り込んだ影響か、彼らの知能と理解力はすでに並の魔物を遥かに凌駕しているようだ。
俺のややこしい事情をあっさりと飲み込み、受け入れてくれたことにホッと胸を撫で下ろす。
「ありがとう。あいつも今はただのスライムだが、ゆくゆくは俺と同じくらい強くなるから、安心して背中を預けてやってくれ」
俺が優しく二匹の頭を撫でると、ゼギオン(仮)が静かに、だが確固たる意志を秘めた念波を送ってきた。
『……我らごときが僭越ではありますが、一つだけ、お誓いいたします。我らはこの時代の主様の剣となり盾となり、未来の貴方様が憂うような悲劇など、決して寄せ付けぬ最強の守護者となってみせましょう』
その頼もしすぎる言葉に、俺は思わず口元を緩めた。
未来の迷宮最強の守護者が、こんな初期段階からそんな覚悟を決めてくれるとは。
これは正史の歴史以上に、とんでもない鉄壁の布陣が完成するかもしれない。
「頼もしいな。……さて、俺の話はこれくらいにして、次はお前たちの話だ」
俺は少しだけ声を低くし、真剣な眼差しで二匹を見つめた。
「俺が未来から来たっていう証明にもなるんだが……お前たち、異界に住む『蟲魔王(インセクター)』ゼラヌスの陣営から逃げてきたんだろう?」
ビクンッ!!
その名前を出した瞬間、ゼギオン(仮)とアピト(仮)の小さな身体が弾かれたように震え、部屋の空気が一気に張り詰めた。
ゼギオン(仮)は警戒するように身構え、アピト(仮)は恐怖を思い出したのか、わずかに後ずさりをする。
それも当然の反応だ。
滅びの象徴とも言える絶対的な力を持つ蟲魔王ゼラヌス。
彼らにとって、その名は恐怖と支配の代名詞であり、自分たちを執拗に追及してくるであろう恐るべき『親』の存在なのだから。
「落ち着け、別に責めてるわけじゃない。お前たちがどういう経緯でゼラヌスから離反し、ボロボロになってこの森に倒れていたのか……未来の俺は、その事情も全部知ってるってことだ」
俺が宥めるように魔素を放つと、二匹は少しだけ震えを収め、俺を縋るような目で見上げた。
『……貴方様は、我らの出自も、あの忌まわしき王の恐怖も、すべてご存知なのですか』
「ああ。ゼラヌスがどれだけヤバい奴かも、奴がお前たちを『裏切り者』として始末しようとしていることもな」
俺の言葉に、アピト(仮)が悲痛な念波を響かせた。
『申し訳、ありません……。
私たちは、あの狂気の世界から逃げ出しただけの、ひ弱な敗北者です。
もしあの王の追手がこの地へ来れば、貴方様や、この村の皆様にも多大なご迷惑を……』
「馬鹿だな。迷惑なんて微塵も思ってないよ」
俺はアピト(仮)の言葉を遮り、自信たっぷりにニヤリと笑ってみせた。
「言っただろ、お前たちは俺の『家族』だ。もしゼラヌスの追手が来ようが、ゼラヌス本人が乗り込んでこようが、俺が……いや、俺たちが全部ぶっ飛ばしてやるから安心しろ、それに……」
俺は驚きで固まっている二匹に向けて、とっておきのネタばらしをするようにウインクをして見せた。
「俺が知る未来じゃ、あのゼラヌスと真正面から一騎討ちをして、見事そいつを打ち倒したのは――他でもない、お前なんだぞ。」
『…………ッ!?』
ゼギオン(仮)の小さな身体が、先ほどの恐怖とは全く違う、雷にでも打たれたような衝撃で大きく跳ねた。
隣にいるアピトも、信じられないものを見るような念波を放つ。
『か、彼が……あの、恐るべき絶対の王を……?』
「ああ、本当だ。俺の自慢の最強の配下として、最高にかっこいい勝ち方をしてくれたよ」
俺はゼギオン(仮)の滑らかな甲殻を指先で優しく撫でた。
「お前には、王を凌駕するだけのポテンシャルが確実にある。さっき俺が与えた細胞は、その高みへ至るまでの時間を少しだけ短縮するためのオマケみたいなもんだ。だから、もう昔の『親』の影に怯える必要はない。お前は将来、自らの力で王を超える存在になるんだからな」
俺の言葉が真っ直ぐに届いたのか、ゼギオン(仮)の震えはいつの間にか完全にピタリと止まっていた。
そして、彼はゆっくりと俺の指先に自分の角をこすりつけると、これまでにないほど力強く、そして深く熱を帯びた念波を響かせた。
『――我が魂に刻まれた、未来の誇りにかけて。必ずや、王を超え……貴方様と、この時代の主様の最強の刃となってみせましょう』
その決意に満ちた姿に、アピト(仮)もまた「私も、彼と共にどこまでも……!」と力強く羽を震わせた。
(よしよし。これでこの二匹のメンタルケアも完璧だな)
恐怖の対象だったゼラヌスの呪縛から解き放たれ、俺たちと共に歩む覚悟を確固たるものにしてくれたゼギオン(仮)とアピト(仮)。
俺の未来の細胞を取り込み、さらに精神的にも大きく成長したこの二匹が、今後どんな規格外の雄姿に育っていくのか、今から楽しみで仕方ない。
「それじゃあ、しばらくこの部屋でくつろいでてくれ。あいつが起きたら、ちゃんと紹介するからさ」
俺はそう言い残し、結界を維持したまま天幕を後にした。
その後、広場に戻った俺は、カイジンやドワーフ三兄弟と共に、日が暮れるまでみっちりと現場の監修にあたった。
結界の要となる地下配管の精密な設置状況の確認から、ハイ・オークたちへ的確に作業を割り振るための指示出しまで、休む間もなく動き回る。
俺の未来の知識とシエルの演算能力が合わさった的確な現場指揮に、カイジンたちも舌を巻きながら必死に食らいついてきてくれた。
そうして怒涛のような開拓作業をこなすこと、三日。
村の拡張が目に見えて進む中、ついに名付けの魔素枯渇でスリープモードに入っていた過去の俺が目を覚ました。
「ふあぁ……よく寝た……って、あれ!? なんか村がすげえ広くなってないか!?」
目を丸くしてポンポン跳ねる過去の俺を天幕に連れて行き、俺は保護したばかりの二匹の蟲型魔物を引き合わせた。
「実はかくかくしかじかでな。お前が寝てる間に、異界から迷い込んできたはぐれ者を保護したんだ。将来絶対にとんでもない戦力になるから、今のうちに正式に仲間に引き入れておきたくてな」
「ゼラヌスのところから逃げてきた? よくわかんないけど、未来の俺がそこまで言うなら相当すごい奴らなんだな。それに、怪我してボロボロだったみたいだし、助けて正解だろ」
過去の俺は、俺の未来の細胞を取り込んで見違えるほど艶やかな甲殻を取り戻した二匹の姿を見て、うんうんと頷いた。
「よし、じゃあ俺が正式に名前を付けてやるよ。お前は今日から『ゼギオン』、そしてお前は『アピト』だ!」
過去の俺から名付けの魔素が与えられた瞬間、二匹の体が淡い光に包まれた。
俺の細胞による肉体強化に加え、主からの正式な『名付け』による魂の格上げ。
ゼギオンとアピトは感極まったように身を震わせ、過去の俺に向かって絶対の忠誠を誓うように深く頭を垂れた。
「おおっ、なんか凄くカッコよくなったな! ゼギオン、アピト、これからよろしく頼むぞ!」
呑気に笑う過去の俺の姿に、俺は思わず口元を綻ばせた。
これで正式に、最強の蟲将たちが俺たちの陣営に加わったというわけだ。
無事に名付けの儀式も終わり、俺たちは再び活気あふれる現場へと戻った。