ありふれたXは世界最強   作:鋼色

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Xタイムに必要な事

[Xタイム]………[X]の力を体に付与する強化術。異世界にあるどんな強化術よりも優れているらしく、その分負担も強い。先日行ったヒールXはオートリジェネ+自他共に腕欠損程度なら対処可能であり、それに加えて[光属性魔法]を魔法陣と詠唱なしで使用する事が可能であるようだ。魔法を使用する感覚は未だ慣れず、まだまだ足踏みをしている段階ではあるがな………。

 

そんな[Xタイム]であるが、現実世界での使用は現時点では不可能だ。述べたとおり、肉体面への負担が強すぎる。オートリジェネがあるヒールXと言えども、[Xタイム]を使用して地面に立つのは難易度が高いと言う以外ない。異世界に殴り込むまでにへ[Xタイム]を完成させておきたいところだ。そうなれば、行うべきは一つ。

 

肉体の強度と鋭度を底上げさせる。たかだか子供の鍛えた結果。されど、幼き頃からの鍛錬の結晶。この時期から鍛え上げる価値は十二分にある。最重要は一体どの技を習うかだが……空手、剣道、柔道、キックボクシング。ふむ、選ぶとしたら剣道か。

徒手よりも優れているのはいつの時代も武器だ。研ぎ澄まされた使い手になれば武器持ちにも勝てるが、それは格下の場合。同格同士だった場合、武器持ちの方が遥かに優れている。

 

そうと決まれば、剣を習うとするか。……あぁ、大変だろうな。見向きもしなかった道だ。我とて王道を極め、優れた剣人へと至るにはまだまだ先の話であろう。だからこそ、話は面白い。

至れぬ道、極めれぬ道などあるはずがない。それを無理だと断定するのは諦念を抱いたからこそに他ならない。我なら行ける、その心を持って挑むのだ。これは最強への片道切符。もう後ろへは引き返す事はできん。

 

………剣道を習う為にはどこへ行けば良いのか。

 

 

 

 

 

交通人に聞いていれば八重樫流道場という存在を知った。入門してから最初に行ったのは礼法と素振り、足捌きである。最初から剣を交じり合えるとは思っておらず、想定通りであった。……だがまあ、成果は予想以上とも言えるが。相手に感謝する為の礼法。動きを体に染み付かせる為の基礎練習。微細ながらも、肉体の中で積み上げられている感覚がある。

溶け込むような、流れるような。不思議な感覚がある。

 

意外にも、我にはポテンシャルがあった。だが、慢心はしない。我以上の才能を見てしまった故。同日に入門し、すでに我の先へと行っている天之河光輝という少年。同学年ながら圧倒的な実力を見せられた八重樫雫という少女。慢心してはたどり着けない境地に彼らはいる。

だからこその反復練習。綺麗に、丁寧に。毎回の素振りを意識して行う。足捌きは流れる水のよう自然に。……あぁ、これは、凄まじい。[X]の世界が広がるようだ。

 

「すごい集中力ね。いつまでやるの?」

「……八重樫か。我は未だ修練の形も見えぬ未熟者。立ち止まっている時間など無い」

「入ってきたばかりなんて集中力は長続きしないわよ。ほら、あの才能があると言われた天之河でさえ休憩してるのよ?」

「だからこそ努力を続けるのであろう。我は負けず嫌いでな。才能の差異を諦める理由にはしたくないのだ。こういうのは、嫌いかい?」

「いいえ。熱意があるタイプは大好きよ」

 

八重樫との会話を終えたのち、木刀へと意識を戻す。連日の参加で腕と足が筋肉痛になっている。動きが鈍くなっている感覚がある。そんな時ほど自我を持つのだ。強くなろうと、心に据えたのは何故か思い出せ。手を抜くという甘ったれた選択肢など、我にはない……!!

[X]が何なのかすら掴めていないのだぞ……!ここで休むなど誰が許すか!少なくとも、我は絶対に許さん。

 

もっと鋭く!

 

もっと精密に!!

 

もっと疾く!!!

 

「南雲くん。そろそろ帰りなされ。親が心配する」

 

いつの間にか、日が暮れている。おかしい。先ほどまでは昼頃だったはずだが。

 

「……承知しました」

「………君はここ最近、無茶が目立つ。何故そこまでして強くなりたい」

「友の悲願のため」

「……そうか。どんな手でも良いから強くなりたいのであれば、明日の朝6時に八重樫道場へと来なさい」

「分かりました」

 

荷物を片付け、帰路に立つ。道を示す明かりに目を細め、胸の奥底にあるXを握る。強さを目指し始めた自分、どんな強さを目指したのか分からない自分。ここ最近、全てが不明瞭になっている。

友のために動いたはずだった。Xの為なら、友の為ならどんな事でも可能だったはず。けれど我は、どうするべきか迷っている。正道を目指すか、邪道を目指すか。そんな典型的な選択肢が我を揺らす。

 

……日に日に思いが強くなる。我は果たして友の願いに寄り添えているのかどうかを。我は本当に友を思えているのかどうかを。復讐というモノは悪だという意見がある事を知った。復讐をした方が良いという意見がある事も知った。

我は果たして後悔がない選択肢を選べているのかどうか。もしかしたらとんでもない失敗をしているのかもしれない。

 

そんな思考が常に頭を駆け抜ける。気にかけても仕方がない。けれど、走るのだ。友の事を想うからこそ、胸が痛む。迷いが生じる。

………最近は精神世界でも[Xタイム]が使用不可になった。あぁ、分かっている。この迷いがあるからだ。後悔がない選択肢が出来ているのかと後ろを振り向いているからだ。

だが、分かったとてどうするのか。あぁ、なんて未成熟か……っ。

 

「南雲……?どうして一人でここにいるんだ?」

「天之河か。お前こそ」

「俺は父さんがコンビニのトイレ寄ってるんだ」

「そうか……天之河。一つ聞きたい。お前は、何の為に剣を振るう?」

「一本の牙を手に入れる為。会話で解決したくとも出来ない時は必ずある。だから、その時のための剣だ。南雲、お前は?」

「我は、友が笑顔になって欲しくて……。だが、最近揺れてきてな」

「優しいお前の事だ。本当に相手を思って悩んでるんだろうな。だけどさ、少しは我儘になっても良いんじゃないか?」

 

我儘、か。

 

 

・△・

 

 

 

天之河に言われ、気づいた事がある。我は我慢が嫌いだという事である。そしてもう一つ。友には笑って欲しいという事だ。それの思いを実現するには願いを叶えるだけではダメだ。全てにおいて最善へと足を進む必要がある。加えてもう一つ。我が歩む道は全て王道であり、正道であり、覇道である。

悩む事自体がバカらしかったのだ。世界は我を望んでいるのだ。

 

我の道は掴めた。歩くのだ!!歩き続け、世界に革命と進歩を訪れさせる!

 

[Xタイム]に真に必要なのは肉体などではない!自身を絶対とする圧倒的自己!!

 

「[Xタイム]」

 

『ダークネス!ダークネス!ダークネス!』

 

「X」

 

『ダークネスXゥゥ!!』

 

暗黒が身を包む。ヒールXとは真逆の悍ましいまでの怨念が、服となり武器となる。ズタボロの黒のローブ。腰に携えられた緑の短剣。カタカタと鳴く下駄。死を象徴するガイコツの仮面。

全てが体に適応する。圧倒的自己の確立とはこれ程までの効果があるのか……。知らなかった。

 

道路に暗黒の風が吹く。悪魔的な風に誘われた我は八重樫道場へと戻る。

 

「先ほどぶりです。鷲三さん。返事を返しにきました」

「私は明日の朝6時と指定していたはずだがね……」

「申し訳ない。待ちきれず、押しかけてしまった」

「なるほど……その装束、異様な力を放っている。そういう訳か。良いでしょう、個別レッスンでは汚い戦い方を。集団では清い戦い方を教えよう。覚悟は良いかい?」

「もちろん」




☆天之河光輝
南雲ハジメと同学年の少年。原作よりも現実的で剣の才能がある。頑張れば漫画の剣術を真似できる。ハジメには秘密が眠っていると勘付いているが、探ろうとは思っていない。ハジメが女の子と仲良くするのは肯定派であり、雫と仲良くしているのを見て笑顔になっている。今度は香織を紹介するつもりである。ついでに龍太郎も。基本的にノンデリカシーなので最低な言葉をポンポンと吐く。それはそれとして人間性は素敵なので好いている者もいる。しかし本人は付き合うつもりは一切ない。常に指輪を持っており、愛でている。時たま異常な回復能力を見せるらしいが……?
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