ありふれたXは世界最強   作:鋼色

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猫変化X

我は今、言い表しようもない現場を見ている。我が友にして、ライバルでもある八重樫が猫に対して「にゃ〜ん、にゃ〜ん」と鳴いている。師匠である鷲三さんから可愛いもの好きとは聞いていたが、心にクルものがある。その姿が可愛いと言えばそうなのだが、その光景を見ていると気まずい気分になってくる。なぜ我は猫の姿をしているのだろうか。猫の姿をしていなければこんな事にはなっていないだろうに……。

チェンジXの練習でアニマルXチェンジ(キャット)になっていなければこの光景を見る事もなかった。

 

どうして今日を修行日にしてしまったのか。過去の我よ、恨むぞ。

……っ!危なかった。八重樫の魔の手が我に迫ってきておった。そんな悲しそうな顔をしても触らせんからな!

うおっ、ちょっ、やめっ、

 

「やめんかっ!!貴殿も嫌であろう、友が変化した猫に触るのは!」

「その声は南雲くんっ……!?いや、いける!南雲くんはクールであり可愛い系でもあるから!全然ベタベタ行ける!」

「ぐぬっ!貴殿が良くても我がダメなのだ。友にベタベタ触れられるなど、体裁が保てな……」

「隙あり!」

「にゃふんっ!?」

 

なんだあの手捌き……!忍びの戦い方を叩き込まれてきた我とて見えない神速と言っても差し支えない抱っこ。貴殿可愛いものを愛でる時だけスペックオーバーしすぎであろう!?しかも力が強い!なんだその力強さは!

猫が本気で暴れ回れば人間の拘束など容易に突破できる。しかも[X]で強化されたアニマルXチェンジであるぞ!これが男女含めた同世代最強八重樫雫か!

 

はぁ……抜け出すのは無理か。仕方あるまい。今日限りではあるが、八重樫の相棒として付いていくとするか。

 

「……八重樫よ。貴殿は今日、何故ここに」

「…猫ちゃんたちと戯れに来ただけよ」

「何故そのような微妙な顔をする。我が何したか?」

「思ったのだけれど、南雲くんって私にだけ名字よね」

「それを言うのなら、貴殿もであろう。他の者には名前だが、我には名字だ」

「じゃあ二人とも呼び名を改めましょう。私はハジメって呼ぶわ。アナタは私の事を雫とよんで」

「にゃ〜お」

「都合のいい時だけ猫のフリしないの」

「なに、冗談だ。雫」

「まったく……ハジメはイタズラが好きなの?」

 

イタズラが好きかどうか……まあ、人並みだろう。我は光輝や雫とは違って子供らしい。楽しいのは好きだし、辛いのは嫌い、宿題は苦手であり、他人に興味を惹かせるイタズラは大好物。ただ、成さなければならないことが目の前にあるから行わないだけで。

そんな思いも、光輝や雫との出会いで消え失せたが。特異な能力を持つのが我一人ではないと知れ、一緒にいてくれる。それだけで少し子供に戻れる。

 

当の本人たちには絶対言わないが。言えばどういう反応が返ってくるかは火を見るよりも明らかだ。だがまあ、礼を言っておこう。あくまでも心の中だけでだが。

 

「ふむ、雫の頭は中々に座り心地が良い」

「私は重いけどね」

「可愛いものを頭に乗せられているのだから感謝すべきだ」

「普通それ自分で言わないのよ」

「ふふ、我だからな。……なぁ、雫。我の気のせいか?あの者、自動ドアに反応してなくないか?」

「え?どれ?………………あぁ、あの人。確かに反応してないわね。なにかタネでもあるのかしら。ハジメよく気付いたわね」

 

いや、恐らくあれは持ち前だろうな。我や光輝のような特殊な能力はあまり感じられん。推測になるが、あの者の影の薄さは生まれながらか。忍者門下生は八重樫流道場で幾度となく見てきたが、あやつ程向いている者は見た事がない。天性の才能、とでも言うべきか。

くく、興味が湧いた。あの者の心を知れば、我がシャドウのXはより強固になるだろう。

 

しかもあの体つき。鍛えれば良い体になるだろう。数年経てば[X]の練習相手にはなるか?

 

「大変そうだな」

 

雫に尻尾で指示をし、影が薄い少年の方へと歩く。

 

「猫が、しゃべった!?」

「なんだ、猫が喋ってはおかしいか?」

「おかしいだろ!!ぇ、これ俺が可笑しいのか!?」

「はぁ、やめなさいよ。この子が可哀想でしょ」

「ふむ、イジメ過ぎたか。すまんな。我は南雲ハジメ。ただの……」

 

爆発音が鳴る。轟音と言うほかない音共に焦げ臭い煙が舞い降りる。咄嗟にバリアXで守ったが、守れたのは我ら三人のみ。それ以外は被害甚大だ。我のヒールXは自己のみ。他者を治すには練度が足りん。こんな時光輝がいてくれれば楽なのだが……あやつは今遊園地だ!クソが!

すまぬ、皆の衆。代わりに我と雫で絶対にこやつを潰す。

 

とは言ったが……今チェンジXを使っている。人間形態に戻るには数秒の期間が必要。数秒もあれば、三回も殺される。この状態のまま踏ん張るしかあるまい。

 

「ウィンドX・旋風」

「ウィンドX・風球」

「ウィンドX・風衝」

 

分類としては風魔法に分けられる数々の攻撃。全て直撃はした、が効いていない。何かしらの能力を発動した痕跡は見えん。つまり、魔法攻撃を素で耐えたのだ。化け物か、こやつ。

いつも[Xタイム]を鍛えていたのが悔やまれる。X技も積極的に鍛えておくべきだった。我以上の攻撃手段となると、雫は持っていない。今あやつは武器を持っていない。

 

一応鷲三さんの指導で拳でも戦えるが、武器の方が攻撃力が高いのは世の理。はてさて、このピンチどうするか。

 

「なーに一人で突っ込んでんのよ」

「雫!?だが今の貴殿に我以上の攻撃力など……」

「別に、剣がなくても切れるわよ」

 

人差し指と中指を向け、何かを放つ。それに匂いはなく、色はなく、何もかも透明。けれど、切れ味はあった。

 

襲撃者の頬から血が垂れる。

 

「ごめんなさい、ミスった」

 

 

 

 

 

 

八重樫雫には術式が宿っている。いや、本来この世界の者たちは皆術式を保持している。呪力の才能が全くないだけだ。陰陽師と呼ばれる者たちが行使する力も正確には呪力はない。ゆえ、この世界には呪いの力はない。そう、天之河光輝を除いて。かの者は世界で唯一の呪術の才能がある。

それは他者に影響を与えるほどに。

 

幼い頃、彼は力の制御ができていなかった。そして、他者を影響させて呪いの道に引き込んでいた。だからこそ裏の者に狙われわけだが。

 

それは家族だけではなく、幼馴染全員に降りかかっていた。忍者一家として生まれた持ち前のポテンシャル、幼き頃からの光輝とのチャンバラ。そして、ハジメと光輝両方の変幻自在の力。

その要素を持っているからこそ、八重樫雫にはないはずの呪いの才能がある。

 

「解……指向性を持たせただけのただの斬撃。えぇ、見えないという付属品もあるけれど」

 

彼女の術式は呪いの王、両面宿儺と同じ………「御厨子」。

 

「雫、いつの間にそんな力を……!!」

「目覚めたばっかりなのよ。だからずっと騙していた訳じゃないの」

「ほら、私が時間稼ぎするから早く人間に戻りなさい」

「了承した」

 

どこまでも冷たい表情にゾッとするが、その感情には付き合ってはくれない。感情を押し殺し、数十もの斬撃を飛ばす。苦虫を噛み潰したような顔が雫に現れる。本来の出力よりも更に劣っている事を強く感じているからだ。

龍太郎との模擬戦で黒閃は経験している。……が、一回。八重樫雫が十全に出力を発揮できるのはもう一度黒閃を放つしかない。

 

それは雫も実感している。そして、黒閃を打つ難易度も実感している。アレは湿度、気分、空気感、調子。自分だけではなく、周りの状態も考慮に入れなくてはならない。加えて、今の状態では近づけない。

時折斬撃を無効化している不可思議の一撃。それを知らなければ近づきたくも近づけない。

 

ゆえ、雫はハジメが戻るまで時間稼ぎに徹する事を決断する。だが、世界はそう簡単に動いてはくれない。不動の襲撃者が今、動く。空気の面を蹴り上げ、異常な速度で接近する。幾数もの斬撃を放つが、直撃はなし。

あまりの速さに焦点が定まらないのだ。

 

これでは時間稼ぎは不可能に近い。口の中で舌打ちを鳴らしつつ、肉弾戦で応戦する事を決める。

 

「っ!」

「………」

 

雫が術式に目覚めた際に決めた縛り。それは斬撃を直接触れて放つ「捌」を本来の消費から3倍に上昇させる事で、難度の高い「解」の発動と「捌」の一撃を強めるための縛りである。

未だ呪力のコントロールが甘い雫では「捌」は現在を込めても三発が限度。その弾数が限られている必殺技を、襲撃者は容易に耐えた。

 

右腕に深い傷が刻まれる程度であり、戦闘続行に支障はない。傷の薄さに動揺したところを拳が襲う。頑強であり、研ぎ澄まされた鉄よりも恐ろしい拳が激突……しなかった。

 

「ブレイカムプラズマX・電光石火」

 

胴体部の白いパーカーと青色のイージーパンツには黄色の亀裂が広がっている。瞳は黄金を思わせる。髪には黒の稲妻が帯電している。胴体と下半身には赤の雷が。

 

プラズマXの特徴は速さ。他形態よりも速さに振ったこの形態は、ライフル銃をも凌駕する。

 

「悪い。この形態はあまり長くはいられないんだ」

「だから、飛ばすぜ」

 

ブレイカムプラズマX・電光石火により吹き飛ばされた襲撃者へと手向けられたのは、またプラズマXの攻撃。肉が焼け焦げるような嫌な匂いへと意識を向けたその時、雷速の連撃を叩き込まれる。

1秒の間に叩き込まれた数、53。その合間に術を練り、展開までこげつけた一撃は………発動されない。

 

「プラズマX・連鎖鎖」

 

痺れる雷の鎖によって拘束されているから。強度的には数秒もあれば容易に破壊可能だ。だが、数秒もない。なぜなら、待ち構えているのは呪力を練っていた雫なのだから。

 

腹で回した呪力を体に流し、身体能力を強化する。呪いの力によって研ぎ澄まされた身体は地を駆け、腹部に直撃を果たす。コンマを切ったとき、呪力と物理的衝撃が一致する。

 

「ふふっ、これでお目覚めかい?姫騎士さまや」

「えぇ、完全に目覚めたわ」

 

黒の火花は微笑む相手を選ばない。

 

八重樫雫に、黒き輝く閃光が舞い降りる。彼女の黒閃の型は虎杖悠仁と同じような成長。彼が最終的に魂との境界を穿つ「解」を習得したように、彼女もまた進化を遂げる。呪力の扱いを学び、出力を先ほどの何倍も上昇させる。

 

それにより、次手の「捌」は威力を増す。完全切断には至らぬが、戦闘続行は不可能と思わせるダメージを与える。

 

「雫。こいつに見覚えは?」

「えぇっと…………あ!確か光輝を襲いに来たヤツらの服もこんな感じだったわ」

「なら、光輝の方にも向かっていると考えた方が良さそうだな。んじゃ、八重樫道場連れ帰って尋問だ」

「光輝の方は行かなくて良いの?」

「ヤツの?行かなくても良いだろう。アイツが負けるなら、我らは問答無用で負けるという事だ。悔しい事だが、我らの中で最強はあやつだ」




☆八重樫雫
転生者ではない。ではないが、呪術が生えた特異点の一人。身体スペックや呪術の理解度的に黒閃を花御に出した虎杖に「御厨子」を持たせた程度。現時点でも鉄筋でなければ無強化でコンクリートは壊せるので、高校生になる頃には無強化で鉄筋コンクリートは壊せているだろう。また剣の扱いも一級品であり、剣だけであれば同世代最強である光輝を圧倒できるレベル。同世代の中では黒閃最多であり、光輝以外を除くと最も呪いの核に近づいている。
ちなみにハジメに対しての想いが最近変化しているが、ハジメは気づいていない。とんだニブチンである。
呪力出力・石流+裏梅+伏黒
呪力量・宿儺➖パンダ
補足:現時点では、強さ推定3位。X野郎と純愛に勝てる可能性は低いが、下に対してはほぼほぼ負けない。
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